1989年の結成以来、長きに渡りロックを鳴らしてきたZEPPET STORE。惜しまれつつも2005年に活動の幕を閉じた彼らが、2011年、5人体制で再始動を果たした。初代ギタリスト・五味と解散時のギタリスト・赤羽根の感性は新たな化学反応を生み、存在感のある木村の歌、そして中村とYANAが練り上げるグルーヴと融合して美しい情景を描き出す。今回は、新生ZEPPET STORE待望のアルバム『SHAPE 5』を完成させた木村、五味、赤羽根の3人を招き、再結成と刺激的なアルバム制作、そして年明けに予定されているツアーについて訊いた。
●まずは再結成のことを訊きたいんですが、2011年夏に再結成し、同年8月に「SMILE」の配信を開始されましたよね。再結成はどういう経緯だったんですか?
木村:僕が福島県いわき市出身ということもあって、東日本大震災を受けてすぐくらいにDr.YANAから連絡があったんです。「世ちゃん(木村)の地元のために何かできないかな?」って。
●はい。
木村:最初は「ライブをやろうか」という話になったんですけど、ライブをやるにしても色々と準備や時間が必要じゃないですか。今は自宅に簡易スタジオがあるし、録音もすぐにできるので「まずそこで曲を作らないか?」ということで、みんなでスタジオに入ったのがスタートなんです。
●なるほど。
木村:そのスタジオで手応えを感じたものが「SMILE」なんですけど、それぞれはライブ活動をしていたので、新曲をライブ会場でも手にして欲しいからCDにしようと。そこで「どうせだったら5人で集まらないか」という話が出たんです。そして5人で集まって1曲完成させたら大きな手応えがあって「5人ってすげぇな」と。そういう流れで今作に発展していったんです。
●実際に5人での曲作りはどうだったんですか?
赤羽根:今までと感覚も作り方もあまり変わらなかったよね。
木村:うん。基本的には誰かがキーワードやきっかけを持ってきて、そこからみんなで膨らませるという感じで作ったんです。最初から弾き語りみたいな感じで形になったものも何曲かあるんですけど、ほとんどはみんなで作ったというか。
五味:違和感はなかったよね。内心“最初の1曲目は探り探りになるのかな?”と思っていたんですけど、その場でもう1曲できちゃって。もちろんバネ(赤羽根)と音を出すのは初めてだったんですけど、他のメンバーとは散々音を出しているので、曲作りの段階ではまったく苦労もなく。
●そうだったんですね。
五味:で、レコーディングに入ってからはバネと2人で密にやり取りをしたんです。それが超楽しくて。
●あら!
赤羽根:僕も“どう出てくるのかな?”と思っていたんですけど、実際にやってみたら“なんだ! 持ってる感覚は一緒じゃん!”って。それが不思議だったんですよね。もともとこの2人はまったく真逆のタイプのギタリストだと思っていたんですよ。五味はノイジーなタイプで、僕はオールドスタイルという風に。
●はい。
赤羽根:でも音を出してみたらサウンドも近いしフレーズも近いし、考えていることも近いし。
五味:もはや録れている音を聴いて「このギターは五味」「このギターはバネ」と判別することはできないと思います。
木村:僕もわからないです。僕は歌詞と歌でいっぱいいっぱいだったので、ギターのダビングに参加していないんですよ。だからどっちがどっちか全然わからない。
●ギターは全体的にさり気ないんですけど、でも随所に予想を上回るアレンジが施されていて。注意して聴くとすごく緻密なことをやっているんですけど、全体的には1枚の絵を描いているというか。だから複数のギタリストがどういう工程で作ったのか、まったく想像できなかったんです。
木村:確かにそこは俺も聞いてみたい。
●1人のアレンジャーが構築したと聞けば納得できるんですけど、複数の人間がこういう音像を作るには感覚を高いレベルで共有させないといけないような気がするんです。
木村:そう。きっかけがまずわかんないんですよ。プリプロの段階でギターが入ってて、仮歌と俺のギター、ベースとドラムが入ってるんですけど、五味と赤羽根のどっちかが着手してから膨らんでいっているのか、もしくはお互いイメージを固めた上で作り込んでいるのかがわからないから聞いてみたい。
●インタビュアーが2人居るみたいですね(笑)。
五味:僕のスタジオで全部作業したんですけど、いつもバネがうちに来て、「何から始める?」「じゃああの曲からいこう」と言って、音を当てていくんです。その時点でバネの中では明確にイメージできているのかもしれないですけど、「それってこういう感じ?」というディスカッションが始まっていって。
●どちらか一方がアイディアを1つ出して、それを元に2人の感覚を合わせていくと。
赤羽根:そうですね。プリプロのときにみんなで作ったものがあるんですけど、それより一段階も二段階も曲のレベルを上げたいので、まずその場で“どういうアプローチにしようか”と1回考えるんですよね。曲によって違うんですけど、浮かぶときはさっきおっしゃっていたように明確な絵で浮かぶんです。
●ああ〜、なるほど。
赤羽根:自分の頭の中に浮かんだ絵を如何に音で表現するのかが作業になるんですけど、誠っちゃんはエンジニアもやっているので、それを伝えるとすぐに理解してくれるんですよね。自分のやりたい方向にちゃんと行ってくれるんです。
五味:その“絵”という表現はすごくわかるんですけど、僕もZEPEET STORE以外の活動でよく絵に例えるんです。音符とか楽器の音として捉えていないんですよね。
●そうなんですね。
五味:だから言葉は使わないんです。流れてくる旋律とか音色を聴いて、「じゃあ背景はこうだよね」「色はこうだよね」「もっとこの色は前に出した方がいいよね」という感覚なんです。…やっぱり近いな(笑)。
赤羽根:その絵も立体的に見えてくるんですよね。たぶんその感性が合ったのかもしれない。
●制作はすごく刺激的な作業だったんですね。作品の全体的なイメージはあったんですか?
木村:特に決めなかったんです。『SHAPE 5』というタイトル通り、5人の個性がドーンとあれば1枚になるだろうと思っていたし、好き勝手にやりたかったんです。楽しめる曲を作ろうっていう。実際に出来上がってみると、際立つくらいの個性が出たと思うし。妥協というか、お互いが引いたりとかもなく、それぞれがどんどん自分を前に出して作ったというか。
●作品全体から感じたことなんですが、どの曲も“陰と陽”だったり“希望と絶望”みたいな、対極となるものが描かれている印象があったんです。どの曲もサビは開いていて、光が差し込むようなイメージがあるんですけど、そのサビに辿り着くまでのAメロやBメロで色を塗り重ねているというか。相反するものを同居させるという表現が今作の特徴なのかなと。
木村:そうですよね。普通はサビにいくに従って音が厚くなるケースが多いと思うんですけど、今作はサビで音数が少なくなってるんだよね。
赤羽根:ちゃんと聴いてるね。
●木村さんメンバーですから(笑)。
木村:そこは過去のZEPPET STOREにはないところで。
五味:やっと世ちゃんわかってくれたんだね(笑)。
一同:アハハハハハハ(爆笑)。
赤羽根:サビのメロっていうのはやっぱりいちばんの聴かせどころだったりするから、そこをどう惹き立たせるかのAメロでありBメロで。サビを考えるのではなくて、イントロやAメロを決めないと先に進めないんですよね。そこにすごく時間をかけたよね。
五味:うん。
木村:それが陰と陽のうまいバランスだったりするのかな。
●今の話からすると、アレンジに関して木村さんとのやり取りはなかったんですね(笑)。
五味:歌詞に専念してもらいました。世ちゃんは歌詞に結構時間をかけるタイプなので、とにかく歌詞をがんばってもらおうと思ってそっとしてました(笑)。
木村:僕は歌を自分の家で録音したんですよ。ということは、2人が作った音を受け取るわけじゃないですか。プリプロの段階ではスカスカだった曲が、2人がアレンジをしたことによって素晴らしくなっているんですよね。そこでまず感動して。「こう来たか!」と。「だったら俺はどうやって歌おうかな?」と。
●ああ〜。
木村:2人のアレンジから受けた刺激が大きかったんですよ。だからそこで歌い方を変えたりもして。楽しいですよね。毎日ワクワクしながらアレンジが仕上がってくるのを待っていました。
●みなさんキャリアのある人たちですし、作り込まれたサウンドから音楽的な志向性が高いバンドかと思っていたんですけど、みなさんの話を聞く限り、音楽的な部分だけではなくて感覚や感性、もっと言えば人間性が音楽に出ているんですね。体温と言いますか。
五味:やっぱり再結成だし、ただ「音を作ろうよ」というわけにはいかないですよね。震災があって再結成して、配信からアルバムを作るまでの流れは、各メンバーとの失っていた時間を取り戻す作業だったわけで。
●はい。
五味:当然、その人間関係が音に反映されますよね。更に言うと、バネと僕は初めてのディスカッションだったから、そこも濃くできたし。
●しかもそれが超楽しかったと。
五味:マブダチみたいになりましたからね(笑)。
赤羽根:ハハハ(笑)。
五味:マスタリングが終わったときに「もう終わっちゃったよ〜」と言ってたもんね(笑)。
●今作は非常に刺激的で楽しみながら作ったとのことですが、リリースツアーが1月に控えていますよね。再結成ということで、このツアーで終わるわけではないですよね?
木村:でもツアー以降のことは決めていないんですよ。
●え?
木村:この再結成は特に期間を設けて活動しようというわけでもないですし、かといってガツガツやるタイプの人間でもないし、それぞれの音楽活動もありますし。
●すごく刺激的な制作でいいアルバムができたわけですし、このツアーで終わるのはもったいないと思うんですが…。
木村:いろんな人に「もったいない」と言われます(笑)。でもこのツアーで終わると決めているわけでもなくて。アルバム作りました、やべぇ作品になっちゃいました…というわけで、僕らのテンションは盛り上がっていますよね。で、こないだ5人で2回目のライブをやったんですけど、それで手応えをすごく感じてまたテンションが上がっていまして。
●はい。
木村:それでツアーが始まったら、またきっとテンションが上がると思うんです。そこで感じたままにツアー以降を決めようと思ってます(笑)。
●なるほど(笑)。どのようなツアーになりそうですか?
木村:新作が出ると、割とその新作に頼りがちなツアーになると思うんですけど、今回のツアーはそうはならないと思います。この5人で出す音がすべて新しいんですよね。だから新旧問わず、やりたい曲をどんどんやろうと思ってます。集大成っぽいというか、今までのZEPPET STOREの曲をこの5人でどう料理するか。そこでお客さんをどう楽しませるか。だから、そこで自分たちが何を感じるか? ということも楽しみなんですよね。
2008年地元高知にて前身バンド結成、メンバーチェンジを機に2012年活動を開始した8g(エインジ)。coldrain、SHANK、Dolls realize、Crossfaithなどと共演を果たして精力的に活動を続ける彼らについて、プロデュースを手がけたZEPPET STOREのG.五味に訊いた。
●8gの水田さんは、五味さんのローディーをされていたんですね。
五味:そうです。ZEPPET STOREを抜けた後にwipeというバンドを組んだんですけど、その結成のタイミングで人から紹介されたんです。「高知の田舎からバンドをやりに出てきて右も左もわからないので使ってやってください」って。やってもらっていたのは僕のギター周りのローディーだったんですけど、初日のライブからトラブルを起こしてですね。
●あらら。
五味:僕が説教したんですけど、その日の打ち上げで、居酒屋のトイレから20分くらい出て来なかったんですよ。もともとヤンチャで地元ではブイブイいわせてたみたいで、溢れる怒りとかをすごく持っている子だったんですよ。でも師匠にその怒りをぶつけられなくて、トイレで20分間悶々としていたという(笑)。
●愛すべき人ですね(笑)。
五味:僕が最初にディスカッションとしてやったことは「おまえが思っている世の中と、俺が思っている世の中は全然違うんだよ」という話で。
●はい。
五味:世の中を偏った目で見るのではなく、ちゃんとフラットな目で見ないと物は作れないからって。音楽的なことではなくて、そういう話ばかりしていたんです。だからたぶんギターは僕より上手いですね(笑)。
●今回のプロデュースはどういう経緯だったんですか?
五味:その後、東京でバンドを組んだんですけど、挫折して田舎に帰ったんです。それが3〜4年前だったんですけど、全然連絡がなくて何をやっているかも僕は知らなくて。と思ったらある日連絡が来て、「バンドがいい感じになってきているので何とかならないですか?」と。それで音源を聴いたんです。
●なるほど。
五味:タツ(水田)はすごくピュアな奴なんですよ。田舎のヤンキーの典型で、暴れん坊でプライドが高くて、だけどすごくピュアで傷つきやすくて繊細で。サウンドも歌詞もまさにそんな感じで、不器用だからそれしかできないんですけど、逆に言えばタツをいちばん理解していて、タツのそういう部分をダイレクトに音にできるのは僕しかいないなと。だから「じゃあやろうか」と。
●プロデュースはどういう作業だったんですか?
五味:実はその時点である程度自分たちで録っていたんですけど、サウンド面に少し手を入れつつ、歌は全部録り直しをしたんです。「ウチで録れ」と。「おまえの心のヒダの中のものを俺がすべて出してやるから」って(笑)。
●ハハハ(笑)。
五味:そこから最終的なミックスまでを僕が担当して。
●そういう関係っていいですね。
五味:そうですね。僕も「羨ましい」と言われますし、タツも周りから言われてると思います。立場的には縦の関係性なんですけど、実は縦では全然なくて。こいつらから学ぶこともすごくいっぱいあって。こいつらから貰っているし、こいつらの駄目なところに対して「こうなんじゃねぇの?」と言っている自分が実は勉強になっているし。そこから吸収する部分がいっぱいあって、それを僕は自分の音にフィードバックしているんですよね。
Member
Vo./G.水田 樹志
G.宮内 新太
Ba.中山 貴夫
Dr.中川 雄矢
Release
1st Mini Album
『Geny』
ZERO COOL
ZCST-011
¥1,680(税込)
2012/12/12 Release
※次号、8gインタビュー決定!!
http://www.eighneg.net/
Interview:Takeshi.Yamanaka