音楽メディア・フリーマガジン

YOU MUST SEE I

京都から飛び出したニューウェーブ・ポップ未確認飛行物体

名称未設定-2女性キーボーディスト3名+男性ベーシストというユニークな編成で京都を拠点に活動する、ニューウェーヴ・ポップバンド“YOU MUST SEE I”。リズムトラック以外のシンセサイザー及びベースを人力で表現するテクニックもさることながら、強烈な個性を持った4人が交わることで生まれるサウンドは他に類を見ない。彼らの初アルバム『Flying Disc U.F.O!!!』では、まさしく誰もまだ聴いたことのない音が宙を舞っている。

 

 

 

 

 

 

●メンバー4人中3人が鍵盤というのは珍しいですね。

シンディ:ライブでは3人が目の前に鍵盤をガツンと置いて、弾き倒します(笑)。

●元々、そういうコンセプトで結成した?

シンディ:最初はウェットが一緒にやりたい人を集めた感じで。彼女の作ったデモを再現するにはどんな音が必要かと考えたら、鍵盤しかなかったという(笑)。

●最初のデモはどんな音だったんでしょうか?

ウェット:私はピアノの音がすごく好きなんですけど、そういう音がありえない感じで鳴っているような…。

ニラ:フンワリしてる(笑)。

●そのフンワリしたイメージを具現化するためにまず、シンディさんに声をかけたんですよね?

ウェット:そうです。私はベースの音が好きなので。ニラは鍵盤がすごく上手で、マサオは…キャラですね。

一同:ハハハ(笑)。

●キャラクターの良さで選んだと(笑)。

ウェット:あと、彼女は器用なんですよ。私が「こういう感じにして欲しい」と言った時のレスポンスが速くて。ちょっと感覚が似ているのかなと思います。

●曲はどういう流れで作るんですか?

シンディ:基本的にはウェットがデモを持ってきて、それを最終的に僕が調整するという流れですね。作曲自体は全員でしている感じなんです。マサオとニラもやりたいことが明確にある人たちなのでまず女子3人で固めて、最終的に僕が参加してまとめます。

ウェット:おおまかなイメージだけを私が作って、あとは自分より演奏ができる人たちに放り投げて、アイデアを出してもらうんです。私の中から出てきた「これ、良い!」というものを、みんなでふくらませていく感じですね。

●サウンド的なルーツはニューウェーヴ?

マサオ:ニューウェーヴは私が特に好きで、DEVOとかも聴いています。

ウェット:私もニューオーダーとかは好きですね。みんなが共通して好きなのがYMOなので、そういうところが音にも出ているのかな。

シンディ:でもジャンル的なものはあまり考えていなくて。最初にウェットから出てきたものを僕らが広げて、またウェットに返してという流れでこうなっています。

●MV曲のM-3「hatenai」もそういう感じで作った?

ウェット:これは結成して2番目に作った曲なんです。

シンディ:断片くらいのデモから広げていったんですけど、最初はあまりパッとしなくて。それがやっていく内にどんどんシックリきて、自分たちの思い入れも増してきたんです。初めて聴く人には一番とっかかりやすい曲なんじゃないかということで、M-2「なぞの中国女」と競り合った末に今回のリード曲になりました(笑)。

●「なぞの中国女」はタイトルからフックがあります。

ウェット:“なぞの中国女”というのは、言葉もわからなくて謎に満ちているミステリアスな女性というイメージなんです。

シンディ:サウンド的には自分たちの想像するチャイナタウンのイメージで、銅鑼の音を入れたりしています。

●歌詞はどれも不思議な感じですよね。

シンディ:基本的にはウェットの生活感が溢れていると思います。M-8「STart」は彼女が初めて美術館でアートに触れた時の気持ちを書いているんです。

●アートに触れて“普通はない”と知った?

ウェット:“普通って何だろう?”みたいな。色んなものを見て、“普通”なんてものはないなと思って。私から見たら、他のメンバーも普通じゃないですね。

シンディ:僕から見ても、普通じゃない(笑)。それぞれに個性が強いので、お互いにそう思うんでしょうけど。そもそもメンバーの選考基準が、まさに“個性的”ということだったんです。そこでイメージしていたものが後々のバンド活動で活きているというか。

●それぞれの個性が組み合わさって、バンドが成り立っている?

ウェット:役割分担がはっきりしているんですよ。私は大雑把にどんどん進めていきたい人で、ニラはそういう細かいところを修正してくれる。シンディはアイデアを色々と出してくれて、マサオはそれを見て「じゃあ、こうしたらいいんじゃない?」と言ってくれるっていう…上手いバランスになっているんです。

ニラ:それで成り立っているね。

シンディ:突出したところがそれぞれに違うので、自然とそうなっていったんだと思います。

●今回が初のアルバムですが、バンドとしてはまだこれで完成形ではないわけですよね?

シンディ:これから先も活動が続いていく中で、まず第一期というか今の集大成を詰め込んだ感じですね。

ニラ:でも長い道のりだったなって…(笑)。色々やりたいことはある中で試行錯誤して、ここで1回まとまったという感じなんです。

マサオ:“最初に出すならこういう形で行こう”というものが、よくまとめられたと思います。ニューウェーヴ・ポップという感じの、聴きやすい曲たちが集まりましたね。

●まずは1つのキッカケになる作品というか。

シンディ:それぞれが聴いてきた音楽を消化して、自分たちもまだ聴いたことのないような音楽を作ろうとしたというか。だから、今回はあえて“スタンダード”というものを決めずにやったんですよ。“曲作りとはこうで、ポップとはこういうことだから”というのを決めずにやったので、人によっては全然違う感じに聞こえると思うんです。その人なりの解釈で聴いてもらえたら嬉しいですね。それもまた僕らにとって、新しい刺激になるから。

Interview:IMAI

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