東京発混沌行きの片道切符、狂気のリズムと轟音で聴く者の意識を埋め尽くすインストバンド・ヨソハヨソ。ポストロックシーンが盛り上がりを見せた後、2008年に結成された彼らは、既成概念をぶっ壊すべくスリリングに音をぶつけ合い、活動を重ねていった。そして2013年、彼らの記念すべき1stアルバム『neandertharloid』が完成。空白を埋め尽くす轟音と狂気のアンサンブルは、聴く者の意識を一瞬で支配する。
●2008年にインターネット掲示板で高橋さんと武藤さんが知り合ったことがきっかけで結成されたということですが。
高橋:僕が募集をかけてて、武藤くんが応募してきたんです。でも彼は大学を卒業して音楽学校に行くという時期で、忙しくなるし音楽性も定まってないから「ちょっと今は無理ですね」みたいな話になって。その2年後に、彼が「またやりましょう」と言ってきたんです。
武藤:で、音楽学校で知り合った永井が加入して。
こうづ:ぼくはもともとやっていたバンドが2008年になくなったんですけど、その頃に武藤と知り合って「手伝ってください」って。最初はその4人でやっていたんですけど、永井と田辺が一緒にバンドやっていたから「田辺も一度スタジオに遊びにおいでよ」って。それで2009年にこの5人になったんです。
●バンドの首謀者は武藤さんなんですね。バンドの音楽性はどうやって定まっていったんですか?
高橋:最初の頃は僕が宅録でしっかり作ってきた曲をやっていたんですけど、スタジオで合わせたらぐしゃってなるんです。だから途中から、しっかり作ってくるのはやめようと。
永井:みんな我が強いからね(笑)。
高橋:4人の頃はそうやってジャムって作っていたんですけど、2009年に田辺が加入してツインドラムになったとき、武藤がリズム主体の音楽性を打ち出してきたんです。曲を持ってくるようになって。
●そこでちょっと気になるんですけど、田辺さんが加入する以前の4人で、バンドとしてはもう基本形はできていますよね? なぜドラムをもう1人入れようと?
武藤:ツインドラムのバンドにしよう、という構想があったわけではなく、最初の頃は田辺がスタジオに来てもやることがないこともあったんです。
●ということは、ドラムのメインは武藤さんで、田辺さんのドラムは言ってみれば上モノだと。
武藤:そうそう。その上で複雑にリズムを絡ませることもあれば、田辺がシンセを弾いたり、暴れたり。
こうづ:このバンドの音楽性も、武藤がメインで決めているような感じですね。
武藤:今は俺がメインで曲を作っていて、高橋も作ってくる、という感じで。後は俺が作ってきたものに高橋が部分的にアイディアを入れたり。
●インストだからセッション性が高いと思われがちかもしれないですが、インプロビゼーション的な要素だけで成り立っているわけではないというか。場面展開もはっきりしているし、場面ごとでやりたいことがはっきりしている。1人の人間が絵を描いているイメージがあるんです。
こうづ:あ〜、そうですね。武藤が絵を描いてます。さっき永井が「みんな我が強い」と言いましたけど、あくまで主体は武藤なんです。みんながアイディを出して、武藤が判断する。武藤が迷ったら高橋が決める。
武藤:俺はドラムなので、判断できないことも多々あるんです。そういうときは高橋に「どうでしょう?」って。
●今作を聴いて思ったのは、明確なメロディが無いこと。バンドとして、メロディはどう解釈しているんですか?
高橋:必要無いって考えてますね。
こうづ:ライブハウスの人に「もうちょっとメロディあった方が」と言われることもあります。
武藤:俺的には入れるつもりがないわけではないんですけど、ドラムなのでなかなか出てこないっていうか。出しているつもりでも、明確なものになっていないというか。
こうづ:絡みが多いからね。メロディを前に出し過ぎても伝わらないと思うし。
武藤:だからリフとかメロディっぽい要素はアレンジの産物ですね。シンセとか。
●あと、今作のトレーラー映像を観たんですけど、田辺さんの暴れっぷりが半端ないですね。今日は田辺さん全然しゃべってないですけど。
田辺:最初は普通にツインドラムの一員として自分の仕事を淡々とこなしていたんです。
こうづ:でもなんかおもしろくないから、「田辺くん暴れてみなよ」って言ったんです。
田辺:それで、ライブでカウベルを持って会場を一周してみたんですけど、それが思いのほか好評だったんですよ。「あ、いいんだ」って思って。
武藤:田辺は学生のときから、人と目を合わせないようなやつで、挙動不審だったんですよ。でも俺はそこに狂気を感じていて。振り切ったときのパワーがすごいんですよね。意図せず、限界を超えたときがおもしろいんです。
田辺:音楽をやるからには崩さなきゃ意味がないと思うんです。崩していかなきゃ音楽なんてやる意味がないですよ!
一同:そんなこと思ってたの?
●急に熱くなった(笑)。
田辺:表現者なんだったらそこを追求しなきゃ意味がないと思うんです。カウンターじゃないと。型にはまったことをやるよりは、もっとおもしろいことやっていこうぜって。僕らはポストロックと言われることが多いですけど、「ポストロックってこうでしょ?」っていう既成概念を壊していきたいですよね。挑戦していきたいです。
●そういう想いのもと、このバンドでの自分の立ち位置を見出したんですね。このバンドが生きがいになっていると。
田辺:そうです。僕は職場に友達がいないので、昼休みとかは1人で(※長くなったのでカット)。
interview:Takeshi.Yamanaka