2012/6/16(土)@ESAKA MUSE
開会宣言:NOHT FRICASSEE(Rhycol.)
出演:Rhycol. / winnie / アルカラ / 秀吉 / dry as dust / KEYTALK / fifi / TheSpringSummer / ゆれる / memento森 / tricot
“YANYA FESTA”は、Rhycol.が2009年にスタートさせた自主企画イベントだ。年々その規模を拡大させ、今年はシーンで注目を集める気鋭10組を集めて開催する運びとなった。
まずはじめに、開会宣言ではRhycol.のG.NOHT FRICASSEEが登場。“YANYAの儀”と称し、謎のかけ声に合わせて奇妙な踊りを見せ爆笑(時々失笑)の渦を巻き起こしたのち、トップバッターの tricotが現れた。ダンサブルなリズムでえも言われぬ高揚感に包まれたかと思うと、G./Cho.キダ モティフォの腕に「ヤンヤ いけるかー」と手書きの文字が書かれているのを見て、少しほっこりする。
続くmemento森は、Vo.宮地のエモーショナルな声を武器に、とてつもない 熱量を放出する。そのうえいくつもの音が絡み合ってうねりをあげているような、質感を感じる音の迫力が凄まじかった。3番手のゆれるも、初期衝動を詰め込 んだかのような激情のステージングを見せつける。「ライブハウスがあればどこへでも行く」と公言するほどのライブバンドである彼らの“ライブ力”に、魂が 震えるほどの衝撃を受けた。そして、印象的なハイトーンボイスときらびやかなギターサウンドが織りなすTheSpringSummerの景色は、まるで梅 雨に濡れた緑葉のように美しい。
ダイナミックな演奏風景、特に一際アグレッシブなベースの姿とは裏腹に、繊細なサウンドを奏でるfifi。激しさと静けさという両極の要素を共存させて いる彼らはどこか危うげで、それゆえに絶妙なバランスを保つ“バンド感”をひしひしと感じさせる。それとは対照的に、KEYTALKのライブはハッピーな ダンスナンバーからヘヴィなキラーチューン、はたまたMCまで抜群の安定感を持って会場を盛り上げた。
MCといえば、dry as dustは「Rhycol.へのお祝いの気持ちを歌で伝える」と言い、なぜか反町 隆史の「Poison」を熱唱。イベントを盛り上げようとする気持ちと、Rhycol.への愛が伝わってきた。ジングルで「ひでよす」とコールされた(随 所で主催者の遊び心が伺える)秀吉のライブでは、柔らかな歌声と3ピースならではの音の掛け合いが辺りに響き渡り、何とも優しい気持ちになった。
自称“ロック界の奇行師”アルカラは、音楽レベルの高さはもちろんのこと、笑いのレベルもズバ抜けていた。ライブ中の出来事や出演者にまつわるエピソー ドを踏まえてのトークは、オーディエンスに幾多の笑顔と感動を与えたことだろう。そして大トリ前の大役を務めたRhycol.のレーベルメイト、 winnie。男女2人のボーカルの幅広い表現力とスピード感のあるメロディを駆使した楽曲で、観客の心を撃ち抜いた。
共演者達の素晴らしいライブを目の当たりにしたことで、オーディエンスがRhycol.に求めるハードルは格段に上がっていたと思う。私自身、並大抵の ステージでは納得しないつもりで臨んでいた。
だが、いざ目の前で観たRhycol.の潜在能力は私の想像を遥かに超えていた。Ba.松藤、Dr.上田の両名が音抜けの良いサウンドでリズムの中枢を担い、ライトハンドを用いたNOHT FRICASSEEのテクニカルなギターがハッと意識を掴む。そしてVo./G.金城から紡がれる言葉達は、1曲1曲がひとつの物語のように雄弁に語りか け、幻想的な非日常の空間へと誘ってくれる。最後の最後にはもう一度“YANYAの儀”を行って、見事有終の美を飾ってみせた。
7ヶ月以上も前から構想し、いくつもの苦労の上に大成功を収めたこの“YANYA FESTA”は、間違いなく会場にいた人々の心に残ったことだろう。そして同時に、主催者であるRhycol.の名も記憶に刻まれたはずだ。今、輝ける未来へと進むべく、Rhycol.は大きな一歩を力強く踏み出した。
TEXT:森下恭子