2010年7月、オーバーグラウンドとアンダーグラウンドを自由に行き来する魅力的な音楽が詰め込まれた1stアルバム『CULT POP JAPAN』でシーンの話題を集め、規格を超えた次元の高いライブで僕らの心を鷲掴みにしたWienners。
あの衝撃から1年3ヶ月、表現者としての憂鬱を乗り越え(社会人としての挫折も経験し)、彼ら自身の人間としてのルーツで鳴り始めた素直な歌とメロディ。シーンが誇るポップアイコンが作り出した、次に進むためのミニアルバム『W』。恐れることはない。桃源郷は僕たちの胸の中にあるのだから。
「気持ちはすごく漠然とあるのに、そこに曲が追いついてこない。そんな中で、音楽について今まで以上に真面目に考えるようになったんです」
●郵政民営化からもう4年ぐらい経ちますけど、政党が変わったりもして、郵政民営化も色々見直しとかされてるじゃないですか。その辺のところを、郵便局で働いているマナブシティさんに訊きたいんですが。
マナブシティ:実は辞めたんですよ(苦笑)。
●え? 辞めたんですか? 7年間勤めた郵便局を?
マナブシティ:はい。
●前のインタビューで「結構いい給料もらってて"社員になれ"という話が来るたびにバンドを続けるかどうか悩んでる」と言ってたじゃないですか。
マナブシティ:時給も下がってですね、バンドが忙しくなって…。
∴560∵:流れに任せてホントのこと言わないつもり?
MAX:アハハハ(笑)。
●え? ホントのこと?
玉屋:辞めたんじゃないんですよ。
∴560∵:ちゃんとインタビューに答えてくださいよ!
●説明しろって言ってんだよ!(by 某新聞記者)
一同:アハハハ(爆笑)。
マナブシティ:書類上は俺が自主退社したっていう形になってるんですけど、本当は「自主退社してくれ」と言われたんです。
●事実上のクビということ?
マナブシティ:そうですね。今年の3/31付けで。
玉屋:重大なミスをしたんだよね。
マナブシティ:ちょっと…○○をなくしちゃいまして。
●え? それアカンやろ!
玉屋:ハハハハ(笑)。
マナブシティ:結局見つかったんですけど、前から課長に目を付けられていて。よく休むし。
●そうだったんですか。
マナブシティ:でもお客さんのところに謝りに行ったら全然怒ってなかったんですよ。
●そういう問題じゃないやろ!
一同:アハハハハハハハ(爆笑)。
●やっとマナブシティさんもバンドを本気でがんばらなくちゃいけなくなったんですね。バンドにとってはいいことですね。
玉屋:そうですね(笑)。
●昨年7月リリースの1stアルバム『CULT POP JAPAN』のレコ発ファイナル、代官山UNITのライブがすごく印象的だったんです。Wiennersの音楽は、歌も含めてバンドの軸が何処にあるのかわからなくて、すごく即興性があるように見えるんだけど、でも実は洗練されているという印象があって。そういう表現の極みが、代官山UNITのライブだったと思うんです。
玉屋:はい。
●もう職人芸の域というか、観ていて鳥肌が立つくらいのライブで。全員がバラバラのことを演奏しながら、1枚の画を描いていくようなライブというか。
玉屋:はい。
●で、今回リリースのミニアルバム『W』ですけど…メロディに沿って歌っているじゃないですか。もうびっくりして。"あのWiennersが歌っている!"って。
玉屋:そうですね(笑)。
●いったいこの1年で何があったんですか?
玉屋:まさに1st アルバム出してツアーまわって、あれはあれで完成したというか…自分たちの中でそうなったんです。前作のままの手法で次の作品を作ったら、もちろんもうちょっと先にはいけたかもしれないけど、進む距離は少しなんじゃないかと。
●ふむふむ。
玉屋:ツアーをまわっていて、前作からもっと広がりのあるものというか、Wiennersのスピード感と爆発力の中に…漠然となんですけど…もっと壮大な感じを入れたいなとずっと思ってて。それを、今までやってきた表現方法の中にどうやったら落とし込めるだろうっていうのをずっと考えていたんです。
●はい。
玉屋:"どうやったらできるんだろう?"と考えながらも、今までと手法は変えずにずっと曲を作っていたんですけど、まぁ~~全然まとめることができなくて。"もっとこういう風にやりたいんだ"っていう気持ちはすごく漠然とあるのに、そこに曲が追いついてこない。そんな中で、音楽について今まで以上に真面目に考えるようになったんです。
●真面目にとは?
玉屋:1stアルバムを出してツアーまわって、色んな人と対バンしたり色んな経験をしたりした中で、一歩突っ込んだところというか、具体的に将来どうやって飯を食っていくかとか…人生について考えるようになって。
●どう音楽と付き合っていくかという。
玉屋:そうですね。今までは漠然と"このままずっとやれてればいいな"っていう感じでやっていたんです。でも年齢もあるし、タイムリミットってあると思うんですよ。それに近づいていくにつれて、"自分はどういう人間になっていくのか?"と考えたときに曲もできなくなって。たぶん今までの手法とかっていうのは、突き詰めていけばいくほど深く入っていけると思うんです。
●そうでしょうね。あれはあれですごくかっこよかった。
玉屋:でも、ある程度で限界があると思うんです。もうこれ以上はできないなっていう壁みたいなのはすごく先の方に見えていて。
●前作『CULT POP JAPAN』の手法ではある程度限界があると思ったとき、次はどうしようと?
玉屋:そこで、"ひとりの人間として音楽をやるってどういうことなんだろう?"って考えたんです。"自分ってどういう人間なんだろう?"とか、自分はどういう音楽を作れて、どういうことができるのか。どういうことが得意でどういうことが苦手か。本当はどう思っているのか。
●結構重症なところまでいったんですね(笑)。
玉屋:でもそういうのって、案外自分ではわからなかったりするじゃないですか。それを一回ちゃんと考えて、どういう曲が作れるのか、どういう曲がいちばん自分の中に自然にあるものなのか…。1stは別に無理して作ったわけじゃなくて、本当にやりたいことだし本当に自分の中からできたものだし。当時は無意識でしたけど、今から考えてみると『CULT POP JAPAN』はパーソナルな部分を敢えて排除している曲たちばかりなんですよね。
●言われてみればそうかもしれない。象徴的というか、記号的というか。
玉屋:でも今回のミニアルバムの曲はすごくパーソナルな部分を出せているんです。ひとりの人間がやっている音楽というか、4人それぞれの人間の音楽っていう。今後、また『CULT POP JAPAN』みたいなことをやるとしても、もっと先にいくとしても、一度こういうパーソナルな部分を出した作品を作らないと次に進めないなと思ったんです。"本当の意味で音楽をやる"というところに踏み込めないかなと思って。
●自分を曝け出すというか、自分をきちんと見つめ直したんですね。…でもそれってしんどい作業ですよね。
玉屋:そうですね~。こんなに大変なんだと思って(笑)。
●そういう話はメンバーにしたんですか?
玉屋:いや、してないです。
MAX:でも直接本人から聞いたわけじゃないけど、空気的に雰囲気でわかるというか、メンバーにもそういうことは伝わるんですよね。
●確かにそういうもんですね。
MAX:私は服飾の学校に通っていたと前に言いましたけど、私のイメージとしては『CULT POP JAPAN』は服飾の学校に通う1年生が作る作品っぽいんです。最初って、奇をてらったことをするじゃないけど、「目立つぞ!」という感じでがんばって作るじゃないですか。でもその後、仕事として作るとなると、一回ちゃんと向き合うというか。"服は人間にとってどういうものなのか?"とか考えて、"単に目立つためだけにあるものじゃないな"とかいうことに気づいたりして…。だから『W』はそれと同じで"自分たちの音楽はどういう音楽なのかな?"っていうことを、メンバーそれぞれがちゃんと考えて見つめた感じだと思います。
∴560∵:俺は目の前にあるWiennersっていうバンドが自分にとってどういうものかっていうか、どういう風にやっていくべきかっていうことについて考えたタイミングでもあって。
●なるほど。で、マナブシティさんは郵便局をクビになって今後のことを真剣に考えざるを得なくなったと。
マナブシティ:はい。
●前作はなぜパーソナルな部分を出すことを避けていたんでしょう?
玉屋:たぶん性格もあるんですけど、照れ隠しというか、思ったことをそのまま言葉にして言わないというか。漠然としたニュアンスだけで言うとか、ちょっと天の邪鬼なところがあるんです。それが理由のひとつで、もうひとつの理由としては、僕はけっこう夢見がちな人間なんですけど、例えばディズニーランドって完璧なエンターテインメントじゃないですか。そういう世界っていうのもすごく好きで、たぶんそういうものを音楽で作ろうとしたんです。
●表現として。
玉屋:はい。今もそういう世界観はすごく好きだし、やりたいとも思っていて。そういう2つの理由から、パーソナルな部分を出さなかったんだと。
●「照れくさい」と言ってましたけど、MCでは熱いことを言ったりするじゃないですか。だから玉屋さんに対して"本性を出さないタイプ"という印象があまりなくて。
玉屋:そうですね。ライブだったら出せるんですよ。でも曲となるとやっぱり「魅せたい」とか「魅了したい」っていう気持ちの方が強くなる。僕は前のバンドをやってるときから、音楽はユーモアとアイディアが全てだと思っていて。『CULT POP JAPAN』はそのユーモアとアイディアに全てを注ぎ込んで作った曲たちっていうか、それで一発勝負の作品だったんです。
●今作にはM-7「午前6時」という、もう"パーソナル"としか言いようがない曲が収録されていますね。
玉屋:そうですね。今回は、この曲ができて初めて"アルバムを作ろう"となったんです。
●この曲がきっかけなんですか?
玉屋:はい。実はレコーディングも2回飛ばしてるんです。曲ができなさすぎて(笑)。
●それほどの状態だったんですか。
玉屋:そうです。もうあまりにもできなくて。さっきも言いましたけど、最初は『CULT POP JAPAN』の一歩先にいきたいという感覚で、"もっと広いものを"っていうイメージが断片的にしか出てこなくて。気持ち的にはすごくやりたかったんですけど、全然まとまらなくて。何十曲、何百曲と作っても駄目で。やっていくウチに逆に狭くなっていってしまって。「アルバム出す度に毎回これじゃあ、俺やっていけないな」と。なんか自分で悪い方向にどんどん落ちていっちゃったんですよ。それで"音楽は自分の人生でずっとやっていけるものなのか?" っていうのをすごい考えて。
●本当に重症だ(笑)。
玉屋:で、その次に、"自分が人生を共にするのは音楽じゃないとしたら何があるんだろう?"と考えて。でも何もないんですよ(笑)。
●前回のインタビューでも言ってましたよね。「音楽がなかったらホームレスになってます」って。
玉屋:はい。でも今回はもっと真面目に"音楽がなかったらどうなっちゃうんだろう?"と考えてみたんです。
●更に掘り下げてみたんですね。で、どうだったんですか?
玉屋:やっぱりホームレスなんですよ。
一同:アハハハハ(笑)。
玉屋:でもそれは嫌なので、自分が音楽以外で興味が持てるものは何か? と。僕の性格を考えたとき、興味がないものを仕事にして一生やっていける人間ではないだろうなと。
●うんうん。
玉屋:だから"自分は音楽以外に何に興味を持って心が動かされるんだろう?"と考えたんです。で、旅行とか。
●旅行かあ~。
玉屋:旅行はお金になんないからダメだなと(笑)。旅行記とか書くにしても文才なんてないし。
●とにかく興味が持てるもの、好きなものを探していったと。
玉屋:そうですそうです。で、更に考えて。そこで、僕はやっぱり男なので、いやらしいことにすごく興味があるんですよ。僕はたぶん人よりも興味があるんです(笑)。
●得意なの? 得意なの?
玉屋:ちょっと得意です(笑)。
一同:(爆笑)。
●人よりも興味があるし、得意だと。
玉屋:だから純粋にすごく興味があって。僕が進む道はそういう世界かもしれないと。
●アハハハ(笑)。おもしろいなあ(笑)。
玉屋:そういうお店に予約して行って、プロのお姉さんと話をして帰ってきたんです。
●どうでした?
玉屋:ダメでした。仕事として本当に熱意を持ってやっている人を目の当たりにしたとき、「俺ってまだ興味本位のレベルなんだな」と打ちのめされて。
●自分のエロスは世界基準ではなかったと。
玉屋:にわかエロスだったんですよね(笑)。それで「午前6時」を作ったわけじゃないですけど、そんな感じで悩んだり迷ったりしている期間が結構あって。そんな中で色んな人と話したりしていて、「とりあえず1回普通に曲を歌ってみるといいよ」と言われたんです。でも自分に普通の曲が歌えるのか自信がなくて。俺は普通の歌が歌えるぐらいの言葉やメロディ、歌唱力とか表現力を持ち合わせてるのか? って。
●うんうん。
玉屋:本当に何もできなくなって…でも「とりあえず1回普通に曲を歌ってみるといいよ」と言われた言葉は頭に残ってたんです。そんなある日、実際に朝6時ぐらいまで眠れなくて、もうお終いだなって思ったときに、寝そべったままギター持ってため息みたいな感じで、パッと「午前6時」の最初のフレーズだけ歌詞とメロディが一緒にできたんです。
●まさに歌詞のままの状況だったと。
玉屋:はい。それがパッと出てきたとき"本当に歌うってこういうことなんだ"という実感があって。
●"作った"んじゃなくて"歌った"んですね。
玉屋:そうなんです。そこで初めて気づいたというか、本当にパーソナルな意味での歌って、シンプルに自分を表現すること、フィルターを通さずに思ったことを口にするということで。自分の気持ちがこもったメロディとか言葉って、素直にならないと出てこないんですよね。削いで削いで作ったというか。
●「午前6時」を作ったことは、自分を認めるというか、受け入れる作業だったわけですね。めちゃくちゃいい話じゃないですか!
玉屋:そうなんですよ(笑)。"これを一回やらないと次には進めないんだな"って思ったんです。前作に関しては、当時から1st アルバムらしい1st アルバムを作ろうと思っていて、何もわかってない感じとかすごくいいし。前までは、バンドとしてはそういう世界観をずっと出していこうと思ってたんですよ。でもやっぱりそれって先を見れないというか、アルバムを出したところで終わりになり、次の作品でまた始まってまた終わって…という繰り返しになるなと。
●「午前6時」を初めて聴いたとき、みなさんはどうでした?
一同:驚きました。
マナブシティ:赤裸々すぎて驚きましたね。
∴560∵:それはみんな思ったよね。たぶんそれがきっかけになって改めてハッとしたというか、バンドをやっていく意識が大きく変わった感じがありました。
MAX:初めて聴いたとき、すごく良くてすごく素直な歌だから…(泣)。
●あっ、泣いた!
玉屋:初めて聴かせたときもこんな感じでした(笑)。
一同:(笑)。
●この曲がバンドのきっかけになったんですね。
玉屋:そうですね。自分がどうこう説明するより曲を聴かせた方が早いと思ったし、これでバンドが動かなかったら解散だというくらいに思ってたし。
●確かにこの曲を聴かせて「なんかノリ違うよね」とか言われたらガッカリですね(笑)。
玉屋:そうそう(笑)。「もっとテンポ速くしようよ」とか言われてたら解散してました(笑)。
一同:アハハハハハハ(笑)。
●「午前6時」ができてからの制作はスムーズだったんですか?
玉屋:そうですね。M-3「シャングリラ」とかM-5「My home」、M-6「Love2060%」は去年ぐらいからあった曲なんですけど、でも入れるつもりはなかったんです。「My home」「Love2060%」っていうのはそれこそパーソナルな曲で、自分の気持ちを音楽にしただけなので人を魅了する様な曲じゃないと思っていたんです。そういう曲をミニアルバムに何曲も入れるっていうのはパンチのない作品になるなと思って。でもそういうのも含めて出せればという気持ちになれたんです。
●素直になれたんですね。
玉屋:今まではNGばかりだったんですよ。「これやったらカッコ悪い」とか「これはアイディアがないよね」みたいな。それこそ「午前6時」なんて昔の自分だったら100%NGな曲なんです。M-1「レスキューレンジャー」とかもNGだったかもしれないし、スウィングビートのM-4「Genie」とかも、スウィングも自分の中では100%なしだったんです。
●ていうか、以前の玉屋さんだったら今作はほとんどNGじゃないですか(笑)。
玉屋:NGなしでやってみようと。それで「ライブで何も考えずにやれる曲があるといいよね」っていう話になって、走ってもいいし演奏ズレてもいいし、テンションだけでできる曲をと考えて「Genie」を作ったんです。超単純だし何のひねりもない。でもそれをアルバムに入れようという気持ちになったのは、いい意味で開き直れたからかな。
●今から考えれば、以前がガチガチだったんですね。
玉屋:そうですね。だから可能性はすごく広がりました。今作を作ってよかったなと。
●作品の全体的なイメージなんですけど、前作と比べるとポップであったりキャッチーな要素が前面に出ていると思うんです。"伝わりやすさ"というか。「午前6時」もそうだし「シャングリラ」とかも"歌"にすごく焦点が当てられているというか、曲の芯がハッキリとわかりますよね。他の曲のメロディにもオリエンタル感が入っていて、それは前作からの流れでもあるし、Wiennersの個性でもある。
玉屋:オリエンタル感は完全に俺のメロディの癖ですね。さっき「旅行が好き」と言いましたけど、ネパールとかインドとかタイとか、そういう所の山奥の無国籍感が好きというのもあるし、もともとある日本的なメロディがすごく好きなんです。お祭りで流れてる様な音楽だったり、演歌だったり、昔の歌謡曲みたいなメロディもすごく好きだし。それがちょっとずつ合わさるとこういう癖になるんだと思います。無意識に出てくるメロディがこういう感じなんです。
●ちょっと土着的なメロディやリズム感に惹かれる?
玉屋:そうなんですよね。ノスタルジーというか、どこか夢の中みたいな怪しい感じというか。「シャングリラ」なんてまさにそうなんですけど、中国の雲南省に"シャングリラ"という場所が本当にあって、そこをイメージした曲なんです。シャングリラってイメージ的に辿り着けそうで辿り着けないし、行ったら戻って来れなさそうだし、行こうと思って行ける場所じゃない。この曲みたいに連れて行かれて辿り着く場所というか、どこの国かわからないっていう感じがあって。そういう雰囲気のメロディが好きだから、素直に作ったら無意識的に出てくるんでしょうね。
●でも今作のメロディは歌だけじゃなくて、MAXさんのキーボードに依るところも大きいじゃないですか。
MAX:私もオリエンタルっぽいのとかノスタルジーを感じるものが好きなんです。だからそうなってると思う。
玉屋:特に前作とかでは、ノスタルジックな雰囲気とか無国籍な感じとかをそのまま表現するんじゃなくて、例えば"江戸時代に実は流行ってたポップミュージック!"とか想像して作っていたんです。
●そうなんですか。
玉屋:"何処にもない"とか"この時代のものじゃない"とか"何処にあるかわからない"みたいな。それは恐竜の化石とかと同じ感覚だと思うんですけど、そういう音楽がいいなと思っていて。「シャングリラ」とかはまさにそういう感じで、"シャングリラのヒットチャートに入ってそうな曲"みたいな。
●ああ~、想像の中で。
玉屋:そうそう。メロディは中国やアジアっぽいけど、ギターソロに入ったときのリズムがサンバだったり、サビでは四つ打ちだったり、日本人っぽさも入ってるし。それが混ざるといい感じに無国籍な雰囲気が出るんですよね。
●歌は前作以上に意識したんですか?
玉屋:すごく考えました。歌詞もそうだし。やっと2枚目で、考えながらメロディを作って歌詞を作るようになったんです。
●今までは考えてなかったんですか?
玉屋:というか、今までは人が歌う歌としてメロディと歌詞を作っていなかったんです。楽器と同じラインで見ていた。歌詞についても、前はイメージを単語にして並べて「聴いた人にお任せします」という感じだったけど、今回は明確に自分の中で"こういうものが伝えたい"というのがまずあって。それから"どういう言葉の組み合わせで"とか、"文章としてどう伝わるか"ということを考えて作るようになりました。
●大きな変化ですね。レコーディング自体はどうだったんですか? 技術的には前作ほど難易度は高くなかったように想像するんですが。
玉屋:それが前作より難しかったんですよ(笑)。
●あ、そうなんだ。
玉屋:こういう音楽やってこなかったので、僕らは普通のテンポの曲が難しいんですよ。良くも悪くも、速くしてごまかしてた部分がすごくあって。それが面白くもありましたけど、今できる中で最善のものを作るにはどうしたらいいかっていう苦労はありましたね。
●この曲たちが新たにできたことによって、ライブはどう変わっていくんでしょうか?
玉屋:現時点では、まだそこまで変化はないんです。でもたぶんこれからツアーをまわって行く中で、一歩広がったところのライブを作り始めることができそうな気がしているんです。
●楽しみですね。ちなみに今後のWiennersはどうなっていくんですか?
玉屋:今作は『W』というタイトルにしているように、ゆっくりで壮大な感じと速くて疾走感のある感じが1曲の中では共存できていないので分けた作品なんです。2面性があるというか。
●そういう意味の"W"なんですね。
玉屋:でも次は、それが1曲にまとめられてたりとか、ひとつのアルバムとしてもっとこの先に進んでいる感じになるんじゃないかなと思ってます。
●なるほど。『W』を経て、一生音楽をやっていくという感覚がより現実的なものになってきているんでしょうか?
玉屋:そうですね、やっと地に足がついたって感じです。今まではフワフワしながらやってたというか。でも今作を作って、やっと一歩ずつ地に足をつけていける感じがあります。
●マナブシティさんは郵便局をクビになったことだし、就職する道は諦めきれたんですか?
マナブシティ:諦めきれました。今はレンタカー屋で働いているんですけど、そのレンタカー屋は社員になれないんです。
●レンタカー屋で働いているんですか。
マナブシティ:結婚もしたので働かないと。
●え? 結婚したんですか?
マナブシティ:はい。
玉屋:しかも結婚したことをメンバーにすぐに言わないんですよ。
●なんで言わないんですか?
マナブシティ:いや~。
●なんか色んなボロがいっぱい出てきますね。レンタカー屋ではなぜ社員になれないんですか?
マナブシティ:社員の道もあるらしいんですけど、実績がないんです。
●会社的には「社員雇用もあり得る」と謳っているけど、周りを見れば誰1人バイトから社員になっていないと(笑)。
マナブシティ:そうです。
●もうバンドがんばるしかないですね。
マナブシティ:そうですね。
玉屋:社員がダメそうだからバンドがんばるの?
マナブシティ:いや、その前からがんばるつもりだったよ。郵便局辞めたときから。
玉屋&MAX&
∴560∵:それ最近じゃん!
interview:Takeshi.Yamanaka
assistant:HiGUMA