音楽メディア・フリーマガジン

Wienners

一瞬の陶酔感と得も言われぬ多幸感に包まれるウィーナーズ・ワールド

いつも僕らをワクワクさせてくれるWienners。今回もその期待を裏切ることはなかった。

Wiennersがシーンに登場したのは2010年7月リリースの1stアルバム『CULT POP JAPAN』。音の隙間をすべてテンションで埋め尽くし、ポップなのに高い次元でアンサンブルを成立させているその音楽は、4人が出す音で1つの立体的な物語を展開させていくようで、おもちゃ箱をひっくり返したような高揚感に溢れている。

特筆するべきことは、その音像をライブでも見事に再現させること(!)。ストイックに研ぎ澄ませた呼吸感、メンバーとメンバーの目に見えないコンタクトの瞬間を連続させて空間を塗りつぶすステージは興奮を突き抜けて感動すら覚えさせる。

そして2011年10月にリリースしたミニアルバム『W』では“旋律”をその音楽性に加え(そもそもそれまでのWiennersにはメロディという概念があまりなかったのだ)、トランス状態を作り出すとともに、玉屋2060%の人間性を投影させることに成功。生粋の体育会系だと思っていたのにポロッと吐露した人間性は、まるで“ツンデレ女子”もしくは“ギャップ男子”のようにWiennersの魅力を更に深めることとなった。

そして、今年3月に東名阪でのワンマンライブツアー「Wienners “W” Reversible ONEMAN Tour」を大成功させた彼らは、この度1stシングル『十五夜サテライト』を完成させた。

タイトル曲「十五夜サテライト」は、今までになくポピュラリティのある楽曲。オリエンタルな情緒で流れゆく清流のようなメロディ、動的に作用するエモーショナル・ビート、散りばめられた輝かしい音の粒が活き活きと躍動するサウンドスケープ、新たな表情で魅せる玉屋2060%とMAXのヴォーカル。まるで一夜限りの桃源郷よろしく、一瞬の陶酔感と得も言われぬ多幸感に包まれて意識を失いそうになったかと思えば、ウィスパーな語りが差し込まれて現実へと引き戻し、またすぐに陶酔の渦へと聴き手を誘っていく。こういったストップ&ゴーな急展開は彼らの得意とするところだが、同曲ではそのセンスと構成力を更に磨いた感がある。ポテンシャルの高さを思い知る完成度の高い楽曲だ。

カップリングのM-2「FUTURE」、M-3「午前6時 ブランニューエモーショナルタイプ」も聴き逃すことはできない。「FUTURE」ではアルバム『CULT POP JAPAN』で僕たちを存分に暴れさせたテンションが鋭敏さを増し、ライブハウスを狂乱の渦に落とし込むこと必至。
更に「午前6時 ブランニューエモーショナルタイプ」は、ミニアルバム『W』収録「午前6時」のアンサーソング「午前6時 ブランニューアーバンタイプ」として配信されている楽曲のエモーショナルヴァージョン。「午前6時」で垣間見せた玉屋2060%の苦悩に対して、MAXが作詞/作曲を担当して3人のメンバーの心情を綴った同曲は、四畳半フォークのような叙情性と高いトランス性を兼ね備えており、「午前6時」に続くWienners第2の名バラードと言える。

バンドの成長と軌跡を感じさせる1stシングル『十五夜サテライト』は、これまでのWiennersの全てが詰め込まれた濃密なウィーナーズ・ワールド。但し、これは通過点にすぎない。今作を完成させた彼らは一瞬も立ち止まることなく、次なる桃源郷を求めて突き進むことだろう。自分の言葉をどこにもないリズムとメロディで鳴らすために。

TEXT:Takeshi.Yamanaka

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