TRIPLANEが初のミニアルバム『イチバンボシ』を、8/3にリリース決定! サッポロビール北海道限定CMのイメージソングとしてオンエア中のタイトル曲を筆頭に地元を盛り上げるタイアップ3曲など、珠玉の名曲たちを収録している。今年は地元・北海道に活動の軸足を置き、重点的にツアーなども行ってきた彼ら。原点に立ち返ったことにより、4人はバンドとしての結束と決意をより強くした。自分たちのアイデンティティと現在の充実したメンタリティを証明するかのような今作を手に、彼らは再び夢に向かって飛翔していく。
「責任感を持って、トップとも勝負していくんだっていう強い気持ちを今は持っているんです。そこにも自分たちが負けているつもりはないから」
●今回のミニアルバム『イチバンボシ』は、最初に何かコンセプトがあって作り始めたんですか?
江畑:今、僕たちは地元・北海道での活動をもう一度固めようというスタンスでやっていて、今作も根底にはそのコンセプトがありますね。北海道のことを歌っているM-4「North Road~夕陽を集めて~」や北海道でのライブ音源も収録しているところに、それが顕著に出ていると思います。
●M-1「イチバンボシ」もサッポロビール北海道限定CMのイメージソングなんですよね。この曲の歌詞にある500ml缶のプルタブを弾いた時の"キャッチーな響き"というのはどんなイメージ?
江畑:その音によって、自分が弾ける感じというか。実際にはまだ一口も飲んでいないんだけど、ビールをもう飲んだ気分になるくらいの清々しい音がする時があるんです。だいたい僕の場合は曲を先に書いて、歌詞は歌入れのギリギリ直前まで書いていることが多いんですよ。前日もあまり寝ていない状況で、静かな部屋に一人で歌詞を書いているとそういう音がすごく耳に飛び込んできて。
●この曲の歌詞は、そういう制作作業中の情景?
江畑:まさにこの曲の歌詞を書いている時の状況そのものですね。朝方までのレコーディングで疲れて家に帰ってきて、そこから歌詞を書かなきゃいけないんだけど、ビールを飲んでちょっと一息ついている時の情景をそのまま描いています。
●ビールを飲んだら、そのまま寝ちゃいそうな…。
江畑:もちろん"このまま寝ちゃいたいな"っていう気持ちはあるんですけど、その音によって"これを1本空けたら仕事に戻ろう"と思わせてくれたというか。リラックスするというよりは、逆に仕事のスイッチをもう1回入れてくれる感じでしたね。実はこの曲は1日で作り上げたんですよ。
●そんなにタイトなスケジュールだったんですか?
江畑:タイアップの話があった時に最初は別の未発表曲が候補として挙がっていたんですけど、自分の中ではその曲じゃないと思って。自分たちにとってすごく思い入れのある地元の企業だし、サッポロビール自体も普段から飲んでいるから、妥協した曲を出して失敗したくないと思ったんです。でも他にストックがあったわけでもなくて…。
●そこから急に作ったと。
江畑:コンペに間に合わせるには、翌朝までに音源が必要だったんです。だからその時にしていた別のレコーディングを中断して、すぐ制作に取り掛かって。昼間にスタジオでオケを録って、家で少しだけ仮眠してから翌朝には歌入れをして提出したっていう感じでしたね。本当にギリギリだったけど、その時の"時間はないけど、やろうぜ!"っていう勢いも詰め込めたかなと思います。
●曲のイメージはすぐ浮かんだんですか?
江畑:CMの絵コンテを見た時点で頭の中にイメージが浮かんでいたので、自信はあったんですよ。それを音に具現化していくだけの作業だったので、時間に追われてはいてもアイデアが出てこなくて困ることはなかったですね。
●演奏をする方も大変だったのでは?
川村:でもメンバー全員のテンションがすごく高かったし、デビューしてからの7年で培ってきた経験が活かされたと思っていて。現場で瞬時に判断しながら、ガツッと自分のアイデンティティも出せたというのは成長した証なんだろうなと。
広田:他のレコーディングを途中で止めてまでやっているのでプレッシャーもありつつ、それも楽しんでやれたと思います。だから結果として、こういう前向きな良い曲になったんじゃないかな。
●プレッシャーも楽しめた。
広田:あと兵衛は音に対してすごくイメージがあるので、それと自分のイメージとの間を埋める作業も面白いんです。
●兵衛さんの中では曲を作っている段階で、他の楽器の音までイメージできているんですか?
江畑:そういう場合が多いですね。逆に全員で一緒に曲を作っている時は、それぞれのメンバーがどんなイメージでやっているのかを想像しながらやっていて。最終的に自分が1人で作ってきたモノと同じ段階まで音のイメージを持っていかないといけないので、僕にはそっちの方が刺激的だったりするんですよ。
広田:そこで妥協せずに作ったモノが良い音になる。だから、それは必要な時間だと思います。
●〆切がある中で、その作業は大変そうですが…。
江畑:毎回、朝までかかります(笑)。だから翌朝はつらいんですけど、レコーディングを始めてノッてくると、そういうことが関係ない身体になって。そのまま突っ走ってゴールした時の"呑みに行こう!"っていう感じがすごく気持ちいい。
川村:朝の7時に開いている店はないけどね(笑)。
●(笑)。でもそうしたいくらいの充実感がある。
江畑:ライブにもそれと近い感覚はあるんですけど、また違うモノですね。逆に無限に時間を与えられた時に、果たして良いモノができるのかっていう…。この感覚は今しか味わえないモノかも知れないから、大事にしようと思っています。
●そういう感覚になれたキッカケは?
広田:それはセルフプロデュースになったからじゃないかな。
川村:3rdアルバム『君に咲くうた』(2009年)までは、プロデューサーに入ってもらっていたんですよ。もちろん良い面もあったんですけど、自分たちらしさを出し切れない部分もあって。そこに対する欲求が兵衛の中にあったので4thアルバム『リバーシブル』(2010年)をセルフプロデュースで作ってみたら、より自分たちらしさを出せたんです。
江畑:自分たちの立ち位置みたいなモノに悩んでいたんです。好きに音を出して終わりという世界じゃないし、第三者に評価してもらえることも1つの目的としてやっているわけで。そこで、聴いた人にカテゴライズされやすいモノを作ろうとしてしまっている時期があったんです。
●第三者の目を意識しすぎてしまっていた。
江畑:それって実は自分たちの初期衝動とは違うモノだし、枠組みを作ることで自分たちらしさが失われているっていうことにしばらく経ってから気付いて。このままじゃいけないと思ったから、セルフプロデュースでやるようになった。そこから各メンバーの責任感も増して、TRIPLANEらしいモノに今はなっていると思うんです。
●セルフプロデュースにしたことで、自分たちらしさに回帰できたというか。
江畑:もちろんそこまでの時間も無駄じゃないし、迷ったことやプロデューサーの方に教えてもらったことも今に活きているんです。ただ僕らには時間が必要だったのかもしれない。なるべくして今の時期に、こういう心境になれているのかなとは思いますね。
●その心境は「イチバンボシ」の歌詞にも出ている気がします。
江畑:歌詞を書いている時に色んな断片はあったんですけど、最初はなかなかまとまらなくて。でも「イチバンボシ」っていう言葉が浮かんでからはどんどん言葉が浮かんできて、全てがつながって1つになった感じですね。サッポロビールのタイアップがあったので、最初から(ロゴマークの)"星"は入れようと思っていたんですよ。
●M-2「Greendays」も映画『大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇』の主題歌というタイアップがついていますが。
江畑:これは映画の台本を先に読んでから書きました。でも観る人によって受け取り方が違う映画だなと思ったので、勝手に"こういう映画なんじゃないか"と説明してしまうのも失礼かなと。だから僕なりの解釈は含まれているんですけど、映画の内容には寄せすぎないようにして。自分がお客さんだったら、映画館でエンドロールが流れている時にどんな曲が流れていて欲しいかっていうことだけをイメージして書きました。
●タイトルはどんなイメージで?
江畑:僕の中では無邪気に音楽をやりたいと思っていた頃の気持ちと、プロとして7年間やってきた今の気持ちには温度差があると思うんですよ。その溝を埋めたいという気持ちが最近ずっとあって。北海道時代の自分をイメージした時に出てくる色を考えたら、緑だったんです。僕の中で、緑は濁りがないイメージなんですけど。
武田:僕も北海道のイメージといえば緑ですね。その頃、僕は自衛隊にいたので…。
江畑:それは緑じゃなくて、迷彩だろ(笑)。俺のはもっときれいな緑だよ!
一同:(笑)。
●「North Road~夕陽を集めて~」は自分たちが北海道に住んでいた頃のことを歌っていたりする?
江畑:そういう回想的な面もありますね。この曲は僕らが初めて北海道でレコーディングした曲なんですよ。環境的にもやりやすかったし、これから春が来るっていうドンピシャのタイミングだったのでイメージもしやすかったです。
川村:合宿でレコーディングしたんですけど、外の景色を見ると一面銀世界で。空気も全然違うし、音も良くなりそうな気がしたんです。みんな精神的にも落ち着いていたし、地元でレコーディングすることがプラスになっていたと思います。
●レコーディングも良い雰囲気でやれたと。
武田:でも最近のレコーディングは良い意味での緊張感があるんです。時間がない中でいかに良いモノを出すかっていうスピード勝負なところもあるし、兵衛が作ってきた曲に自分も応えなきゃいけないという意識があって。
江畑:"良いフレーズが出てこなかったら、どうしよう?"っていう状況になることによって、その曲に緊張感が出ると思うんですよ。必死になってやっている感覚をメンバーと共有したいっていう気持ちはありますね。
●緊張感があるから集中力も高まるわけですよね。
広田:それがライブにも反映されていると思います。ライブはその日の精神状況に左右されるモノだから、本番に向けて集中力が高まるようにそれぞれがモチベーションを持ってやっている感じはしますね。今回収録したライブ音源は"トライプレイン道内サーキット2011"のモノなんですけど、この時も色んな人に「変わったね」とか「すごく良くなっている」と言ってもらえたんです。バンドとして今までよりも1つの塊になってきたのかなと。
●バンドとしても良い方向に変わってきている。
江畑:今まではキーボードを入れてライブをすることが多かったんですけど、この時は初めて4人だけでやったんですよ。原点に返る意味でも、4人ということにこだわってやってみた。他人に頼れないことで"自分のパートは死んでも守るんだ"っていう意識が全員に出て、それが良い方向に働いたんじゃないかなと思います。本当に自分たちだけでやるようになって変わったと思いますね。他に任せられる人もいないし、ジャッジも自分たちで全部やらなくちゃいけない。そういう責任感を持って、トップとも勝負していくんだっていう強い気持ちを今は持っているんです。そこにも自分たちが負けているつもりはないから。
Interview:IMAI