タイトで性急なリズム。そしてエッジィなツインギター。疾走する哀愁のメロディ。アメリカ西海岸系に代表されるパンク、メロディックに影響を受けたサウンドを響かせるTORNADOが、前作より7年振りとなる2ndアルバム『New Stories』を発表した。2005年発表の『FIGHT FOR YOURSELF』(以下 1st)は話題を呼ぶが、翌年からメンバーが不安定になり、サウンドの変化も生まれた。フロントマンのTAKESHIと、バンドの変遷を見守ったリードギターのTAKKAに話を聞いた。
●今作は爽快なメロディックパンクが心地良い作品に仕上がっていると思います。まずはご本人から、聴きどころを聞かせて下さい。
TAKESHI:ありがとうございます。そう言ってもらえると嬉しいです! 7年振りの今作は、やっとTORNADOの新作だって、胸を張れる作品になりました。
TAKKA:自分たちで聴きどころなんて言うのも恥ずかしいんだけど、“一発録りの良さ”ですね。今作は一緒にやってるノリみたいなところを出したかったんです。
●続いて7年振りの新作ということで、今作までの流れを聞かせて欲しいのですが。
TAKESHI:1stはもうエネルギーが有り余ってたんで、とにかくガツンと激しくコアなものを提示しました。その後メンバーチェンジやシーンも変わってきて、自分達の中でメロディックというジャンルが確立されていったんですよね。
●そんな中、メンバーチェンジがバンドを襲い…。
TAKESHI:そうなんです。一時TAKKAと2人きりになった時には、心が半分折れました。TAKKAに「どうする?」って聞いたら、「やりましょう」って言われて。ホントにその言葉に救われましたね。
TAKKA:そんなにカッコイイ話じゃないですよ。電話が掛かってきたんですけど、とりあえず2人で笑いましたね(笑)。人間は追い込まれると、逆に笑うしかないってのが本音でした。
TAKESHI:で、やっとドラムにGENさんが見つかりました。良いメンバーに巡り合えたので、必死になってベースを探しました。だけどそんな出会いなんて、中々なくって。そこで考えを変えたんです。当時ギター&ボーカルだった自分がベースを弾いて、自分より上手いギターを探した方がいいんじゃないかって。そういうイチかバチかの賭けをして見つけたのがHAYATOです。彼は若く順応性が高いので、TAKKAに追いつけ追い越せとなって、バンドの活性剤になりました。それからピアノをやってたんで、コードにも詳しくて、絶対音感があるんです。TAKKAが野性的っていうか、アドリブでガーっと行くタイプなので、結果的にバランスがすごく良くなりました。
●それは良いメンバーに巡り合えましたね。しかし、サウンドの志向にも変化が見られ…。
TAKESHI:そういうバンドの移り変わりの中で、デモを重ねていきました。それは試行錯誤でもあったんです。きちっとリリースするなら1stからのファンに対しても、納得のいくものを出さねばならないと考えていたから。そこでキャッチーなメロディック全開の『TORNADO』ってデモと、ポップな仕上がりの『Endless summer』という、共に4曲入りを作成しました。1stでメロディックハードコアというものを提示できたとしたら、反発させてメーターを振り切った形ですね。そうやって自分たちの可能性、振り幅を一度確認した上で、改めてバンドを総合的に見つめ直したのが今作なんです。選曲に関しては今のメンバーで生きる楽曲、今のメンバーが生きる楽曲を選びました。デモに入れた楽曲の方が、今の時代にはウケるんだろうな、と感じた事もありますけどね(笑)。
●『Endless summer』のデモはPRサイト「ロック殿堂」で1位に輝いてますからね。だから次回作にはこういう感じの楽曲も入るのかな、と期待が膨らみます。
TAKESHI:TAKKAとはメロディの面で共通性がありましたからね。なのでTORNADOがメロディック化していくにあたって、メンバーとして、長い時間頼れる相棒として、随分助けられているんです。
●この7年間も必要な時間だったんだと思います。今作のタイトルには、新しいTORNADOというバンドの物語のスタートという意も込められてるのでは?
TAKESHI:今まで話してきた自分たちの流れと、もう1つ別の意味合いも込めています。それは昨年の震災です。少なからず傷跡は残りましたから。自分たちには曲を作って演奏するしかできないけど、それでも毎日陽は昇って、1日がやってくるという自分たちの想いを形にしました。最後にこの想いを収録して完成した作品なので、迷いはないです。とりあえずこれを世間に投げてみて、リアクションを自分たちが受け止めて、そしてさらに新しく投げられるものを作る事が出来たとしたら、文句なしですね!
●新しいバンドの柱を立てたところで、振り幅を決めていった格好ですね。大抵はこういう状況下に置かれると、くじけてしまうと思うんですけど、TORNADOがモチベーションを保ち続けられた要因を教えて下さい。
TAKESHI:最初に僕をTORNADO TEAに引き入れてくれたミチアキに対して、という部分でしょうか。TORNADOは当初TORNADO TEAとして結成されていて、そこに僕を入れてくれたのがミチアキだったんです。兄弟分として、同じ釜の飯を食ったメンバーとして、辛い事がある毎に、「男として全てやったのか?」って、「それでいいのか?」っていうのを互いに合い言葉にしてきました。彼は4年前に病気と闘って人生を全うしたんですけど、その彼に対して、男として心の底から「俺はやった!」と言えるまでは辞められないなって思ってきましたから。そう思うと、無我夢中でやってて、気がついたら道が出来てた、なんて気がします。もう1つ、今回のLEFT HAND RECORDSというレーベル名も、そのミチアキがやってた個人イベントのタイトルに由来してるんです。不器用でも、一生懸命やってればなんとかなるっていう意志を継いで、戴きました。ミチアキを知らないTAKKAの発案なんですけど、経緯を重んじてくれた事がすごく嬉しかった。ホントに頼れる存在になってくれたなあと思っています。
●サウンドの変移とメンバーの移り変わりが絶妙ですよね。
TAKESHI:今作は現在の4人のメンバーで作った作品というのは確かなんですけど、この7年間で変わっていったメンバーたちが残してくれたものも引き継ぎつつ、今のメンバーでまとめたという事でもあるんです。例えば僕のベースは、前ベーシストがいた頃の曲に関してはもう完コピです。彼のベースラインが大好きで、ありがとうって思いながら楽しく弾いています。この7年間のメンバーには心から感謝しています。1stをリリースする際に、当時のメンバーに「命掛けでやろう」って言ってたんですけど、彼らに対しても、そして天国にいるミチアキに対しても、俺はこれがやりたかったんだよって、大声で言える作品だと思っています。
Interview:nakayoshi