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特撮

時代と共に広がりと深みを増す唯一無二の感性が生み出した音と言葉は今こそ最も新鮮に響き渡る

大槻ケンヂ率いるバンド・特撮が、7年ぶりとなるオリジナルアルバムをリリースする。昨年にアルバム『5年後の世界』を発表して、5年ぶりに復活を果たした彼ら。超絶的なテクニックを持つ天才ピアニスト・三柴理、特撮のサウンドプロデュースを手がける一方でCOALTAR OF THE DEEPERSのVo./G.でもあるNARASAKI、VAMPSやOBLIVION DUSTのサポートドラマーでもあるARIMATSUという凄腕のメンバーたちはその間も各自がさらに才能を研ぎ澄ませてきたのだろう。40代も半ばを超えてなお言葉と歌の両面で表現力の幅と深みを増し続ける大槻を核として融合し、とんでもない傑作アルバムを作り上げた。様々なサブカルチャーをバックボーンとしつつ決して古びることのない斬新な感性で生み出されていく音と言葉は、2010年代に生きる若い世代にこそ新鮮な驚きを持って受け入れられるものなのかもしれない。

「今だと盗んだバイクで走り出したり、校舎のガラスを割ってまわる姿をニコニコ動画にアップしても叩かれるだけっていう。歌にしたら英雄になれるのに、ニコ動にあげたら一気に叩かれるって…厳しい世の中だなぁ(笑)」

●特撮としては昨年にアルバム『5年後の世界』を発表して、5年ぶりに復活したわけですよね。そこから勢いがついて、オリジナルアルバムとしては7年ぶりとなる今回の新作『パナギアの恩恵』の制作へとつながったんでしょうか?

大槻:オリジナルアルバムとしては7年ぶりですか! いや、今回のアルバムを作ったのはまぁ、その…簡単に言ってしまうと、メーカーさんのほうから「出しませんか?」という話があったからっていうことですかね。

●それは身もフタもない…(笑)。

大槻:メンバーみんながそれぞれ色々な活動をしているので、昔のようにポンポンとリリースできる状況じゃないんですよね。だから、取っ掛かりがあると「じゃあ、やりましょう」ということになるのかな。

●それが今回はメーカーさんからの話だったと。前作を経て、やる気が出てきたというわけではない?

大槻:うん…、本当はそう言うべきなんでしょうね(笑)。そうです、やる気が出てきたんですよ! 機が熟した感じです。

●無理に言わなくてもいいですから(笑)。今回の収録曲は今作に向けて作ったものばかりなんですか?

大槻:M-7「鬼墓村の手毬歌」はDVD(『特撮復活ライブ 2011! 5年後の世界』の購入者特典)として作ったんですけど、この曲以外はみんな新しいですね。M-10「ミルクと毛布」は僕が作曲したんですけど、生まれて初めてギターで作ったんですよ。

●大槻さんは40歳を過ぎてから、アコースティックギターを始めたんですよね。

大槻:43歳の時にアコギを買って、そこから弾き始めて。今年になって、FOK46(フォークオーケン46歳)として、色んなところでアコースティックライブを始めました。でもギターでの作曲は初めてなんですよ。

●「ミルクと毛布」は元々、FOK46用に作った?

大槻:特撮のアルバムを作ろうとなった時に、「じゃあ、ギターで作ってみよう」と思った記憶があります。ちょうどFOK46をやり始めたのと、特撮のアルバムを作るというタイミングが重なった感じですかね。

●今回のアルバムを作るにあたって、何かイメージはあったんですか?

大槻:ナッキー(NARASAKI)は「シンプルでストレートなものにしたい」と言っていましたね。僕は歌詞を明るくしたいと思っていたんですよ。自分の歌詞を読んでみるとダークなものが多いんですけど、ダークな曲ってだんだんライブでやらなくなっていくんです。結局、ワーッと盛り上がるパーティーソング的なものばかりをやる傾向にあるので、今回は歌詞を明るくしてみようかなと。でもナッキーからあがってきた曲がみんな哀愁を帯びた曲ばかりで…。

●歌詞のイメージとは逆だった。

大槻:ナッキーは「歌詞を明るくしたいと聞いたから、あえてメロディはセンチメンタルで哀愁のあるものにした」と言っていて。実際、曲に関してはストレートなものが多かったですね。あと、ナッキーのサウンドプロデュースだと、歌入れが速い!

●それはどんな理由から?

大槻:人によって、歌入れの感じが違うんですよ。絶叫させたがる人もいれば、ササッと歌ってササッと終わりという人もいて。色んな考え方があるんですけど、M-1「薔薇園 オブ ザ デッド」なんてレコーディングで2回くらいしか歌っていないんじゃないかな。以前はレコーディングというのは全力で歌うものだと思っていたんですけど、そうじゃないと気付いたというか。全力で歌えば声が出るというわけじゃないですからね。楽曲に合う/合わないもあるし、全力で歌うべき部分があればそうでない部分もあるから。

●確かに今回はあまり絶叫していない気がします。

大槻:今回はあまり声を張っていないですね。割りと今までよりキーの低い曲が多いんですよ。

●M-2「くちびるはUFO」は、特に穏やかな歌い方ですよね。

大槻:そうですね。これは新機軸として、良いんじゃないかなと思って。タイトルとかも含めて、僕の中では70年代半ばの資生堂の化粧品のコマーシャルソングというイメージなんです。一時期、化粧品のCMソングが必ず売れる時代があったんですよ。タイトルの感じも70年代後半から80年代のあざといコピーライターが付けそうな感じで…パルコっぽい感じというか(笑)。バブル時代、コピーライターが花形商売だった頃のそういうものをイメージして書きました。

●UFOというのも大槻さんが昔から好きなテーマですが、今作の歌詞にはそういったものが散りばめられていますよね。M-9「じゃぁな」では、文学的な影響を受けたという中原中也も出てきたりもして。

大槻:「じゃぁな」は中原中也の詩をかなり引用しているんですが、はっきり言って今作で僕が一番好きな曲ですね。今まで歌ってきた/これから歌っていくであろう曲の中でもかなり上位に入るくらい、この曲は好きです。今の子供たちも歌っているのかわからないけれど、「グリーングリーン」という曲があって。

●小学校の教科書にも載っていましたね。

大槻:すごく明るい曲調なんですけど、実はお別れの歌で。そういう切ない感じなんだけど、曲調は爽やかというものを僕は「グリーングリーンな曲」と呼んでいるんですよ。この「じゃぁな」は唱歌のようなはっきりとしたメロディで非常に明るい曲調なんだけど、哀愁があって別れの歌であるということで「グリーングリーンの法則」に則っているので、とても好きなんです。本当は(今作が)「じゃぁな」で始まってもいいと思うくらい。

●でも、その曲順にはなっていないのは?

大槻:今回は曲順とかも、ナッキーに任せちゃったんです。だから自分としては、こういう曲順もアリなのかなっていうくらいで。今回のアルバムって、落ち着いていますよね。シックな感じというか…まぁ、大人だからなぁ。

●実際、大人ですからね(笑)。

大槻:あんまり「行くぞ! ウォー!」っていう感じの、アゲアゲなアルバムじゃないと思うんですよ。特撮を始めた頃はまだ30代だったというのもあって、お客さんも若い人が多かったので、ライブでも「行けー!」という感じがあったんです。もう強迫観念的にお客さんをノセなきゃいけない/暴れさせなきゃいけないという気持ちがあったんですけど、大人になって「そうでもないな」っていうことになってきたのかな。

●ライブに求めるイメージも変わってきた?

大槻:やっぱりラウドパンクをやっていると、ライブで体力を非常に消耗するんですよ。ライブで体力を消耗すると充実感はすごくあるんですが、その充実感が“ライブの成功や音楽をやるということと直結するんだろうか?”というのをナッキーと話し合ったことがあって。「ヘトヘトになったから、良いライブなのか?」って言われたら、「確かにそうじゃないよね」と。今作にちょっと落ち着いた印象があるのは、そういう発想の変化も関係があるんじゃないかな。

●とはいえ、冒頭の「薔薇園 オブ ザ デッド」は勢いのあるパンキッシュな曲ですよね。

大槻:「薔薇園 オブ ザ デッド」に関しては、ザ・スターリンな感じでいこうと思って。歌詞を一読して「ああ、こういうお話ね」とわかるようなものじゃなく、言葉遊びもありつつパンクな雰囲気の曲ですね。

●逆にM-8「13歳の刺客 エピソード1」の歌詞なんかは、明確にストーリー仕立てになっています。

大槻:エディ(三柴理)の作る曲は、ロックの歌詞を書く人間にはものすごく難しいんですよね。やっぱり(曲の作り方が)クラシックなんですよ。ロックの人にはない発想で曲が作られているので、なかなかロック的な歌詞は乗らなくて。そこで「どうしよう?」と思った時に、昔の『大江戸捜査網』みたいな時代劇のテーマ曲にしかなりようがないなと。

●曲を聴いた時に時代劇的なイメージが浮かんだ。

大槻:「もう、それにしかならないよ」と思って。メロディだけを聴いたら、これは杉良太郎か舟木一夫が歌う曲ですよ。この曲はこのまま杉良太郎さんに歌ってもらったら、相当なものになるんじゃないかなぁ…。

●(笑)。タイトルにも“エピソード1”と付いていますが、続編も考えている?

大槻:今回はそうやってタイトルにも遊びの要素を入れていて。もしこれが『スターウォーズ』だったなら、たぶん6部作の4部作目でしょうね。だから、この「13歳の刺客」という物語は10数年前に1作目が作られている(という設定な)んですよ。(歌詞に出てくる)13歳の子のお父さんが色々あってダース・ベイダーみたいになっちゃって、2作目で実の父親だったとわかる。3作目で民衆が立ち上がって悪をやっつけて、実はそもそも…っていうのがこれなんです。

●そういう設定の中での“エピソード1”だと。

大槻:M-3「タイムトランスポーター2「最終回ジャンヌダルク護送司令・・放棄」」も、TVシリーズの第2シーズン(のイメージ)なんですよ。時空を超えて色んなものを運ぶトランスポーターが主役のアクションもので、その第2シーズン最終回でしょうね。

●いきなり最終回(笑)。

大槻:上の人から「ジャンヌダルクを殺せ」と言われて、「それはタイムパラドックスが起こるからできない」という話ですね。それをやったら世界が滅びちゃうので、それを回避する話が『劇場版タイムトランスポーター』として上映されることになっているんです。そういうことをよく考えながら、歌詞を書いています。

●そもそも、なぜジャンヌダルクだったんですか?

大槻:“ジャンヌダルク”という言葉は歌詞の世界ではもう消費されすぎていて、死んじゃっているんですよね。歌詞の上では“ジャンヌダルク”っていう言葉はもうダサいんですよ。

●使い古された言葉というか。

大槻:使い古されちゃって歌詞用語としては死んじゃっているんだけども、何となく“ジャンヌダルク”でいってみようと思ったんですよね。使い古されているとはいえ、それほど引用されてきた言葉だからよほど面白いんだろうなと思って。(ジャンヌダルクについて)何となくは知っていたんですけど、詳しくは知らなかったんです。歌詞で使ってみたので、その後にジャンヌダルクの本を読んだりもして「この言葉はまだ歌詞用語として殺しちゃいけないな」と思いましたね。「◯◯のジャンヌダルク」っていう言葉が使われすぎちゃっているんですよ。

●これも先ほどの資生堂の話と同じで70年代後半から80年代頃によく使われていたイメージで、今となっては逆に珍しい気がします。その当時を知っている人にはダサい感じに聴こえても、当時を知らない今の10代にとっては新鮮かもしれない。

大槻:そうだとうれしいですよね。「13歳の刺客 エピソード1」に関しては、『十三人の刺客』(1963年発表の映画。2010年にリメイク上映)という映画がずっと頭にあって。「鬼墓村の手毬唄」も『悪魔の手毬唄』(横溝正史・原作の映画)の鬼首村(おにこうべむら)からだもんなぁ…歳がバレますねぇ(笑)。

●ハハハ(笑)。映画を元ネタにした曲が多いんですね。

大槻:「薔薇園 オブ ザ デッド」については、『桐島、部活やめるってよ』っていう映画からで。僕の小説『グミ・チョコレート・パイン』をオマージュしてくれているらしいんですけど、僕はまだ観ていないんです。人にどんな作品なのか訊いてみたら、『生徒会・オブ・ザ・デッド』という映画を作る話なんだと。その言葉が面白いなと思って、このタイトルにしてみたんですよ。

●オマージュをさらにオマージュしたというか(笑)。ちなみに、“薔薇園”というのはどういうイメージから?

大槻:“薔薇園”は調布の深大寺にある神代植物公園に行ったことがあるので、そのイメージからですね。あと、“ばら園”という名前のシャンプーが昔からあるんですけど、中学生くらいの頃に「素敵な名前だな」と思った記憶があって。“薔薇園”っていう言葉には美しくて、でもちょっとグロテスクな感じがあるんですよ。歌詞の途中に出てくる“ブラン ドゥブル クーベル クリムゾン”というのは全部、バラの名前なんです。

●そういうことだったんですね。歌詞の“やつらに押させろ スタンプを”というのはどんなイメージが?

大槻:植物園とかに行くと、スタンプを押すところがあるんですよ。

●あ、観光地のスタンプラリー的な?

大槻:そうそう! 植物園といえばスタンプだよなぁというイメージがあって…わかんないですよね(笑)。でも、そういうよくわからない感じがいいんです。腑に落ちない歌詞というのも、アルバムには絶対に必要なんですよ。

●意味がわからないから、逆に惹かれるというか。

大槻:昔、鈴木蘭々の曲で「泣かないぞェ」というのがありましたけど、あれを見た時に“ぞェ”って何だろう? と思ったんですよね。鈴木蘭々さん自身が歌詞を書いていて、その中で唐突に“うちのママ ずっと見てれば”って出てくるんです。“うちのママが快活な人だから、それを見ていれば何だって大丈夫”みたいな歌詞なんですけど、それって当人しかわからないだろう! っていう(笑)。

●ハハハハハ(爆笑)。

大槻:でも、そういうのって重要です。当人から後で聞いて「そういう意味だったのか!」ってわかる感じは結構、嫌いじゃないんですよね。

●“いったい何だろう?”と思うことで、耳にも残る。

大槻:ズバリ言っちゃえば、「薔薇園 オブ ザ デッド」は歌詞が聞き取れなくてもいい曲なんです。そういう曲ってあるし、そこが重要なんですよ。やはり何十年も歌詞を書いてくると技法的になるというか、歌詞を書く手法を使って書いてしまうところがあるので、そうならないようには気を付けていて。歌詞を書く上でのイロハをつい考えちゃうんですよね。

●今回のアルバムタイトル『パバギアの恩恵』というのも一見、“何だろう?”という感じですよね。

大槻:今回、最初のほうにM-4「GO GO! マリア」を作ったのもあって、“聖母”みたいなイメージがあったんですよ。(同じく序盤に作った)「ミルクと毛布」にも“母”みたいな雰囲気があって。それで“聖母マリア”で調べてみたら、別の呼び方で“パナギア”というのがあるらしいんですよね。最初のインスピレーションが聖母マリアで、それが今回のアルバムを作るキッカケをくれたということで『パナギアの恩恵』というタイトルにしたんです。

●歌詞には共通するイメージがあったりもする?

大槻:全ての歌詞がそうではないんですけど、実は少女の成長を大人の目線から見ている曲が多いんですよね。小さい子の誕生から成長、そして巣立っていくまでを歌っている曲が多い。「GO GO! マリア」もそうだし、「じゃぁな」や「13歳の刺客 エピソード1」「ミルクと毛布」もそうだし。「タイムトランスポーター2「最終回ジャンヌダルク護送司令・・放棄」」にもジャンヌダルクという10代の少女が出てくるし、「くちびるとUFO」も“パパと 同い歳”と歌っていますからね。

●偶然、そういう目線の歌詞が多かった?

大槻:そこは僕の歳もあって。自分がヤングの頃はやっぱり歌詞の対象も同世代になるし、盗んだバイクで走り出す感じがあったわけですよ。共に“15の夜”だったりもするわけだから。でもどんどん歳はとっていくわけで、歌詞って30代くらいが一番難かしいんです。誰に対して歌えばいいのか、困っちゃうところがあるんですよね。でも46歳にもなると、歌詞で歌う対象がこういう感じになったりするんでしょうかね。

●親くらいの年齢の自分から見た、子どもの世代に対する歌詞というか。

大槻:これから大人になって1人で巣立っていく人たちへ、という気持ちになってくるんじゃないかな。大人になってからのロックの歌詞というのは、若い頃みたいに社会の抑圧とか親や学校に対する憤りとかいうものじゃなくなってくるじゃないですか。そうすると“何を歌ったらいいんだろう?”というところが本当に難しくて。40代以降でロックをやっている人の歌詞が最近、面白いんですよ。僕なんかは元から浮世離れしたことを歌っているタイプなので、SF的なことにすれば怪奇幻想の世界や不条理の世界についてはいくらでも書けるんだけど、青春のロックを書いていた人たちは色々と試行錯誤していますよね。

●40歳を過ぎて、校舎のガラスを割ってまわったりしないですからね(笑)。

大槻:それは、単に近所の厄介者ですよ(笑)。でも「50の夜」とか歌ったら、すごいでしょうね。50歳の男が盗んだバイクで走り出すって、「おまえ、いい加減にしろよ!」っていう話ですからね。

●「いくつだよ!?」っていう(笑)。

大槻:若いとか老けてるとかじゃなく、ただの犯罪者ですからね。今だと盗んだバイクで走り出したり、校舎のガラスを割ってまわる姿をニコニコ動画にアップしても叩かれるだけっていう。そういう“ネオ尾崎”みたいな…それ、おかしいな…今度そういう歌詞を書こう(笑)。

●次のネタが見つかりましたね(笑)。

大槻:“(そんなことをしても)尾崎にはなれないよ”っていう…いいなぁ。歌にしたら英雄になれるのに、ニコ動にあげたら一気に叩かれるって…厳しい世の中だなぁ(笑)。

●昔と同じヒーロー像が成り立たないというか、時代性が違うんでしょうね。逆に言えば70〜80年代を経験した人からするとダサいと思われるようなものでも、今の若い子たちには新鮮に見えたりする。

大槻:だから今の若い子たちがどういう歌詞を書いているのか、ちょっと興味があるんですよ。やっぱりアラフィフにもなると、そんなに歌詞で訴えたいこともないんです。かといって“多事争論”や“天声人語”みたいな、社説っぽい方向に行っちゃうのもイカンし(笑)。政治とかに対する、ただの不満になっちゃイカンでしょっていう。

●床屋のオヤジとの会話みたいな(笑)。

大槻:タクシーの運ちゃんとかね(笑)。「しかし、アレだね。野田さんも〜」みたいになったら、「それはロックじゃないでしょ!」っていう。あと、僕は来年でメジャーデビュー25周年になるんですけど、プロキャリア25年の中でも“これはやっちまったな〜”と思うのが今回のジャケットなんですよ。前作もメンバー写真だったので、今回も「メンバー写真をメインに、何となく『パナギアの恩恵』という雰囲気で」っていう感じでデザイナーさんに依頼したんです。それで送られてきたこのジャケット案を見て、もう爆笑しちゃって。「V系かよ!」っていう(笑)。

●確かにヴィジュアル系っぽい…(笑)。

大槻:自分でも「大槻ケンヂはV系の元祖」って半ばネタ半ばマジで言っているんですけど、まさかこの歳になってV系なジャケットをやるとは思わなかったなぁ(笑)。30代だったら「これはちょっとヤバいっすよ!」と言って変えてもらったんだろうけど、40代も半ばになると「これ、おかしいかも(笑)」と思えちゃって…。

●ある意味、受け入れられる?

大槻:うん。僕が20代の頃からずっとファンでいて下さっている方たちは、脳内修正が効いているんですよ。“オーケンはこう”っていうものがあるから、そこはいいかなと。でも10代の若い子たちがこのジャケットを見て新手のV系みたいに勘違いしてライブに来て、「オッサンが出てきた!」と思われたら申し訳ないなと(笑)。

●ハハハハハ(笑)。

大槻:このジャケットは、ちょっとやらかした感じですよね…(笑)。いや、いいですよ、いい! これは度胸があるというか、開けていますよ!

●ある意味、新しい世界への扉を開くような挑戦というか…(笑)。

大槻:いや、開き直りっていうか、もう何か“いいんじゃない?”っていう感じが出ていて…。今回のジャケットは本当に最高! これでシールとか作りたいなぁ。今回はV系の元祖として、面目躍如ですよ。

Interview:IMAI

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