2002年6月9日(“ロックの日”)に青森で結成された、THE WAYBARK。ロックンロールとプロレスを心の底から愛するVo.成田大致(だいち69)については、青森ロックフェスティバル“夏の魔物”の主催者として知っている人もいるだろう。これまでも数々の強豪ロックバンドたちと対バンを繰り返し、自分たちの音を磨くと同時に数々の賞賛も受けてきた彼らが遂に初の全国デビューアルバムをリリースする。リスペクトしてやまない↑THE HIGH-LOWS↓の元メンバー・Key.白井幹夫氏をゲストに迎え、1発録りのセッションから生み出された爆発しっぱなしのロックンロール。“いつ、何どき、誰の挑戦でも受ける”という猪木イズムと“21世紀最新型明るい青少年のロックンロール”を掲げて、4人はここから新たなリングに上がっていく。
「自分が目指しているのはホールでもやれるしテレビにも出られるような、"みんなのロック"を象徴する存在なんですよ。世間一般の人が僕らを見た時に"あ、ロックの人ね"って言われるようなモノになっていきたい」
●だいち69くんは、ロックンロールとプロレスを心の底から愛しているんですよね。プロレスは子供の頃から好きだったんですか?
だいち69:地元が青森県なので、みちのくプロレスの興行はよくやっていて…って、いきなりプロレスの話で良いんですか!? (笑)。
●大丈夫ですよ(笑)。
だいち69:親父やおじいちゃんもプロレスが好きだったので、小さな頃から観に行って選手と触れ合う機会もあったりしたんですよ。CSでプロレスの番組もよく観ていましたね。
●ロックンロールとの出会いは?
だいち69:ウチは両親ともに、ロックが好きだったんですよ。だから車でどこかへ出かける時は、いつもカーステレオからロックが流れていて。シーナ&ザ・ロケッツや沢田研二からTHE BLUE HEARTSとかも聴いていたし、↑THE HIGH-LOWS↓やウルフルズのライブには家族並んでホールへ観に行くこともよくありました(笑)。
●ロック一家だったんですね。
だいち69:父親がレコードをたくさん持っている中に、THE BEATLESやTHE ROLLING STONESもあって。ロックにこだわっているレコード屋が地元にあったので、小さい時から父親と一緒に行っていました。
●ロックンロールとプロレスに共通点を感じていたりする?
だいち69:ジャイアント馬場さん的な考え方で(笑)、"プロレスラーは24時間プロレスラーでなきゃいけない"というのがあって。それと同じように、僕が好きなロックの先輩方はファンと接している時もイメージを崩さずキャラクターに徹しているんですよ。その先輩方の背中を見ていたら、僕もこうなったという感じですね(笑)。
●どちらも常にファンの目を意識していると。
だいち69:"自分の中にあるイメージが裏切られたら、すごく嫌だな"っていう気持ちがあって。常にファンとしての視点があるので、自分たちを観る人にも色んなモノを掻き立てたいというか。
●良い意味で、夢や幻想を抱かせてくれるような存在。
だいち69:特に田舎に住んでいると、余計に幻想を抱くんですよね。でも今はそんな幻想も抱きづらいし、真似したくなるバンドも少ない気がしていて。シーン全体を見渡してみても、そういうバンドが減ってきているなっていうのは感じていたんです。
●そんな存在に自分たちがなろうとしている?
だいち69:そういう気持ちはありますよね。今ってコピーしづらいバンドが多いと思うんですけど、THE WAYBARKの曲はすごく簡単なんです。そういう単純明快なバンドが今こそ必要なんじゃないかなって。
●THE WAYBARKとしてのサウンドが固まったのはいつ頃?
だいち69:今作『THE WAYBARK』は今のメンバーになってから作った曲がほとんどなので、バンドのサウンドというか"THE WAYBARK"というモノがやっと自分の中で固まったと思っていて。メンバーが何度も変わる中でも"こういう風になっていきたい"っていうのはあったんですけど、今まではどうしてもうまくバンドで表現できてなくて。
●メンバーチェンジも多かったんですよね。
だいち69:僕のこだわりも強いしライブの本数も多いので、それについてこられなくなって辞めてしまうことが多くて。周りから色んなことを言われることも多くて、それが嫌になって辞めたりとか。
●周りから反感を買っていた?
だいち69:僕らにとっては普通なんですけど、イベントとかに出ると"対バン全部を食ってやろう"的なところがあって。常に殺気立っていたというか、ガチンコで臨んでました。でも周りのバンドはたぶん和気あいあいとやりたかったらしくて、反感を買っていたんです。青森では、"THE WAYBARKは出る杭"って言われていましたね(笑)。
●(笑)。そんな中で今の4人になって、うまく行くようになった。
だいち69:元々は僕が曲を書いていなかったというのもあって、このメンバーになってからガッツリ"THE WAYBARK"を作り上げていった感じかな。前回の自主盤『マイ・ジェネレイション』(2010年7月)はバンドを始めた高校生の頃の延長線上だったんですけど、今回は全然違う。"THE WAYBARKっていうのは、こういうバンドでこんなサウンドでやっています"っていう名刺代わりの1枚が出来たと思います。
●元々は自分で曲を書いていなかったんですね。
だいち69:最初は"Johnny(G.葛西)が良い曲を書いてくれるだろう"と思って待っていたんですけど、いつまで経っても出てこなくて(笑)。あと、活動してくる内に自分の中で"有り・無し"が色々と出てきたので、しっくりこなくなったんですよね。
●自分の中でのイメージと現実にギャップが出てきた?
だいち69:以前はフロアに飛び込んでほふく前進したり、尋常じゃないくらい高いところから飛び降りたりしてアバンギャルドなライブアクションをずっとやっていたんですよ。そもそもは大好きなKING BROTHERSと対バンした時に、彼らより高いところから飛んだらインパクトがあるんじゃないかっていうところから生まれたんですけど(笑)。そのアクションを続けていくうちにどんどん過激になり、複雑骨折してしまって。そんときに "これは自分が思い描いているロックバンドの姿じゃないし、ただのイロモノになっている"と気づいたんです。
●目立つパフォーマンスばかりに意識が向いていた。
だいち69:でもある時期から今の4人でのバンド感が凄く出てきて演奏も固まってきて、ステージがすごく良くなってきたんですよ。そういう変わったアクションやバカみたいなことをしなくても"THE WAYBARK"っていうモノを見せられるんじゃないかと思ってから、ライブパフォーマンスも含めて変わっていきましたね。前回の自主盤を作った頃はまだそこを引きずっていたけど、そういうモノを今回は全部やめたんです。
●ある意味、真っ当な王道のロックンロールバンドをやるというか。
だいち69:THE WAYBARKの場合は最初から、そういう王道でストレートなロックンロールを目指していたんですけどね。カラオケでも歌えて、1人でもみんな一緒にでも車の中でも聴けるような幅広い世代に響くロックをやりたいっていう気持ちはあったから。
●それはメンバー全員が共通したイメージを持っているんですか?
だいち69:同じ歩幅で4人が進んで行かないと"バンド"にはならないっていうことを、僕たち4人は常に考えているんですよ。今、バンドとしてすごく良い流れが来ている感触を4人とも感じていて。そのタイミングで今回のアルバムが作れて本当に嬉しいです。
●色んなメンバーチェンジを経て、今の4人がベストメンバーだと考えている?
だいち69:そうですね! というか、僕は"この4人でしか出来ない"っていうことを今は思っていて。ブラック斎藤(Dr.斎藤)が入った時に、初めてそう思ったんですよ。ビビビがきたっていうか。おっくん(Ba.奥本)なんて彼がスタジオでバイトしている時に顔で選んだので、最初は楽器も弾けなかったくらいですから(笑)。
●ルックスが基準だったんだ(笑)。
だいち69:ルックスとハートの部分ですね。共通するロック感覚というか、かっこいいと思うモノをわかってくれるかっていうところもこだわった部分で、やっぱりそこが違うとボタンをどんどん掛け違えていってしまうから。
●バンドとして進みたい方向を共有出来ている。
だいち69:4人でセッションしていても、言葉が変なんですよね(笑)。ニュアンスの部分でしか、会話が出来ないっていうか。僕とJohnnyの中ではカチッとしたモノがあって、プレイ1つに対してもロックンロール的な有り無しがある。メンバーにNGを出したりもするし、それをずっと繰り返していく内に出来たのが今のサウンドなんですよ。
●今作でやりたい音のイメージはあったんですか?
だいち69:僕らはTHE HIVESやJET、Mando Diaoみたいな洋楽の"ロックンロール・リバイバル"ムーブメントの直撃世代なんですよ。彼らのアルバムって、どれも1~3曲目がすごくカッ飛んでいるんですよね。そういうことを日本でやっているバンドがいないっていうことを僕らは常々、話していて。だから今回のアルバムでは、そこを特に意識しました。
●同時代の音楽から影響を受けている?
だいち69:僕らは↑THE HIGH-LOWS↓がすごく好きで4人とも影響を受けているんですけど、彼らの音楽は古い洋楽の要素をごっそりいただいてやっている感じがあって。そこよりももっと新しい、僕らがリアルタイムで聴いてきた洋楽の日本版みたいなモノをやりたいっていう気持ちがあったんですよね。
●洋楽の影響を受けてはいるけど、日本語で歌っているのもそういう理由から?
だいち69:歌詞は、誰でも知っている日本語を使うようにしているんです。たとえばカラオケで歌おうとしても、今のバンドって曲は良いのに歌えないモノが多いんですよね。そうじゃなくて誰でも1回聴いて口ずさめるくらいのキャッチーさが必要だし、ロックンロールはそこのバランスが大事だと思うから。
●確かに↑THE HIGH-LOWS↓は、そういうバンドですよね。
だいち69:今回は元↑THE HIGH-LOWS↓の白井幹夫さんにキーボードで参加してもらっているんですけど、一緒にセッションしながら1発録りでやったんですよ。↑THE HIGH-LOWS↓もやっていたし、白井さんが参加するとなった時に自分の中で今回はそれしかないなと思っていたんです。だからアルバムを通してみて、起承転結がしっかりしていて、ものすごく早いロックンロールアルバムが出来た。あっという間に聴けるアルバムだし、それが出来てうれしいですね。
●キーボードを入れるイメージが自分の中にあった?
だいち69:THE WAYBARKの曲は元々キーボードありきっていうか、そういう音が入っていてもおかしくないモノを考えて作ってきたんですよ。自分が好きなバンドには大抵キーボードも入っているし、特に今回は絶対に欲しかった。でも白井さんとはTHE BLUE HEARTSや↑THE HIGH-LOWS↓の延長線上にある"当時の白井幹夫"のプレイじゃなくて、お互いに"今のロック"を鳴らそうという話を最初からしていて。
●あくまでも、今の自分たちだから鳴らせる音というか。
だいち69:例えばラモーン・パンク的な曲も今作には入っているんですけど、この5人でやればちゃんと2011年の今の現在進行形のロックンロールになっているんですよ。テイストとしてTHE BLUE HEARTSと↑THE HIGH-LOWS↓からの影響はあっても、そのままではないモノになったなと思います。
●自分たちにしか出来ない音にこだわりがある?
だいち69:僕がバンドを始めた頃は青春パンク・ブームだったんですけど、あれはある意味作られたモノだったと思っていて。僕はロックが本気で好きで死ぬほど愛しているので、わざとらしくパンク的なアピールをすることへの拒否反応もあったんです。
●その気持ちが"夏の魔物"を開催することにもつながった?
だいち69:最初にKING BROTHERSを呼んで"夏の魔物"をライブハウスでやった時も、そのときの日本のロックシーンへのアンチテーゼ的な部分もありましたね。
たとえば東京では毛皮のマリーズとか若いバンドがどんどん出てきているのを見て、自分たちも同世代のバンドが集まってシーンを作っていきたいという気持ちはあって。石井聰亙監督の『爆裂都市バースト・シティ』っていう映画があったじゃないですか? その映画に出てくるようなバンドが青森で増えていった時期があったんですけど、「青森爆裂都市だ」って言ってたりもしましたね(笑)。
●共通の想いを持ったバンドも周りにいたんですか?
だいち69:フレディ&ザ マーキュリーデビルやTHE××ズがそうなんですけど、芯にロックっていうモノを持っていて。ロックの歴史の中でちゃんと先輩方から受け継いできたモノをやっていかなきゃということは、みんな自覚していたと思います。「"夏の魔物"に呼んだ一流のバンドとも、ちゃんとガチで戦えるような良いライブをしろ」っていうことを他のバンドにも徹底していましたね。
●そういう中で自分たち自身も磨いてきた。
だいち69:KING BROTHERSのKEIZO(Vox./G.)さんにも"来る度にヤバくなっていってる"と言ってもらって。最初にライブハウスで"夏の魔物"を始めた頃から出てもらっているKING BROTHERSのメンバーに、ライブのMCで"ホンマのロックンロールは間違いなくこの町にある!"と言ってもらえた時はみんなでガッツポーズしましたね。今までは自分が"夏の魔物"を主催はしているけど、THE WAYBARKの音源を渡して"これが僕のバンドです"って言えるレベルでもなかったから…。
●今回はセルフタイトルにもなっているように、ちゃんと名刺がわりに渡せる作品が出来た。
だいち69:やっと出来ましたね。今までは"夏の魔物主催者のバンド"っていう認識でしかなくて、1バンドの"THE WAYBARK"として誰も見てくれていなかったと思うんですよ。でも今作と今のライブはどこに出しても恥ずかしくないモノになったと思えるので、今回でやっとスタート地点に立てたのかなと。それにここ最近は若いロックンロールバンドがたくさん出現してきて、ずっと止まっていたロックの歴史が再び動き始めている状態だと思うんです。先輩方が作ってきた歴史の延長線上にありつつ、僕らの世代で"今のロック"っていうモノを表現していき、若い子たちへどんどんロックを広めていきたいですね。
●観ている人をワクワクさせるっていう、ロックの醍醐味を表現しようとしているのかなと思います。
だいち69:THE WAYBARKがそういう、いろんな人のロックへの入り口になれるようなバンドになっていきたいっていうのはありますね。バンドワゴンに乗って細かく地方をまわっていくようなDIYのバンドも大好きですけど、自分が目指しているのはホールでもやれるしテレビにも出られるような"みんなのロック"を象徴する存在なんですよ。世間一般の人が僕らを見た時に"あ、ロックの人ね"って言われるようなモノになっていきたい。
●名刺がわりの今作を持って、これからは全国でライブ活動をしていくわけですが。
だいち69:前作はリード曲が「アイデン&ティティ」だったのもあって、ライブを観た人から「もっとポップなバンドかと思っていた」と言われたりもしたんです。だけど、THE WAYBARKはもっと肉食系のゴリゴリしたサウンドですからね(笑)。ある意味、論より証拠を地で行くバンドだと思っているので、それを見せていきたいです。
●ライブにこそTHE WAYBARKの真骨頂がある。
だいち69:やっぱりライブを観に行くっていうことは労力もお金も使うことなので、せっかく観に来てもらったからには忘れられないライブにしたいですね。自分自身もそうだったけど、苦労して観に行ったライブっていうのは一生忘れられないモノだから。これからTHE WAYBARKも大きな存在になっていって、いろんな人たちの思い出の一部になっていきたいと思います。
Interview:IMAI
Assistant:小林美咲