音楽メディア・フリーマガジン

THE SKIPPERS

かけがえのない仲間たちと叶えた10年目の夢

2003年、JAGGER(Vo./G.)を中心に大阪で結成された、THE SKIPPERS。幾度のメンバーチェンジや、ツアー中に機材車が壊れ台車でツアーを回った通称“箱根事件”、そしてDr.PAULの2度の脱退と復帰…様々な困難に直面しながらも、彼らはそれを乗り越え、いくつものドラマを生み出して来た。そして結成10周年となる2012年、ついに念願の1stフルアルバム『STAND KIDS IN POSITIVE』をリリースする。どんな苦境に立とうがしっかりと“今”を踏みしめ、ひたすらに前へ進み続けた彼らが手にしたものは、かけがえのない仲間と10年越しの“夢の塊”だった。

#Interview

THE SKIPPERSの軌跡

●早速ですけど、PAULは2010年いっぱいで2度目の脱退を発表しましたよね? その後2011年の8月にTHE SKIPPERSに帰ってきたわけですが、その経緯って?

PAUL:僕が居ない間はサポートを入れてライブしていたんですけど、たまたまどのサポートも体が空いていない時期があって、ライブの前日に「明日入ってよ」って言われたんです。取りあえず仕事も休みをもらって、朝スタジオに入って、いざライブをした時に、その感触が妙に良かったというか。

TAKA:どのサポートよりも良かったよね。

JAGGER:サポートの人たちに比べると全然下手なんですけど…この3人で半年振りくらいにやってみると、なんかしっくりきたんですよね。ライブが終わってから"もう一度PAULとやる道も考えようかな"と思って、しばらくしてから「戻って来たら?」って言って。

PAUL:そこから今に至る感じです。

●良い話なはずなんだけど、感動的な部分であるはずの詳細がごっそり抜けてるという…。

PAUL:感動的な要素がないよね。なんだかんだで2回も辞めてるしなあ。

JAGGER:次はいつ辞めるん?

GALAMMASALA-TAKA(以下TAKA):2年に1回くらいのスパンなん?

PAUL:そういう話じゃないよね!? まあ、その時はちょうど他にも違う誘いがあって決めかねていたんですけど、たかお(TAKA)くんに口説き落とされて。

●サポートの人たちとやるよりしっくりきたっていうのが良いですね。"こいつやなかったらアカン"って感じで。

JAGGER:それはホンマに実感しましたね。居てる時にはまったく思わなかったのに。

●それに、TAKAは相変わらず女房役みたいな感じなんだ。

JAGGER:TAKAは裏方のことは全部やってくれてますね。もともとこいつが入る前は僕がやっていたんですけど、今はTAKAに委ねまくってます。こいつが居なかったら成り立たないですよ。

TAKA:まあ、自然とそうなるんですよね。こいつらは自由奔放やし、よく暴れるし。僕がやるしかないでしょう。

●そういう意味でも、この3人の絶妙なバランスが取れているんですね。ちなみにさっき「暴れる」って言ってたけど、どんな暴れ方するの?

TAKA:ライブの時の暴れ方と、酒を飲んでる時の暴れ方があって。特に酒を飲んだ時の暴れ具合がすごい。

PAUL:カットしないといけない内容が多々あります。

●へぇ、どんな話?

PAUL:実はこの間ですね…(カットしないといけない内容だったので省略)

TAKA:…ということがありまして。

●それは確かに言われへんな(笑)。ライブの暴れ方っていうのは?

TAKA:噛み付いてこない人にも、どんどん噛み付くんです。本人じゃなくて周りで見てる人間が気を遣うんですよね。

●そうなんや。JAGGERってパッと見は穏やかだし、あんまりそんなイメージないけどなあ。

JAGGER:その時言いたいことをすぐ言ってしまうんですよね。僕はナメられるのが大嫌いで。その人たちにはいろいろ言ったし、シバかれたりもしました。

●シバかれたんや。JAGGERは「ナメられたくない」ってよく言うよね。

JAGGER:そうなんですよ時々、年上だからっていうだけで上から目線の人っているじゃないですか。一緒に対バンしてるのに、ベテランだから上だっていうのは違うと思うんです。キャリアとか関係なく、今日の僕らのライブを見て欲しい。それが理由で噛み付いたりすることはありました。

●一種のパンク精神みたいなもの?

JAGGER:結果的にそうなるかもですけど、あくまで性格ですね。今ではそういうこともなくなりました。

●なるほど。いろいろあったんやなあ。

初のフルアルバム『STAND KIDS IN POSITIVE』

●そんな波瀾万丈な流れから10年目にしてやっとアルバムを作ったということで、その内容を語って欲しいなと思うんですが。

JAGGER:我ながら最高なアルバムです。アッハッハ!

●それだけじゃページが埋まらへん。

JAGGER:THE SKIPPERSって、10年間やっているのは僕だけなんですよ。現メンバーになったのは6年前なんですけど、僕の中ではこいつらと10年やってるような気持ちなんですよね。だから"10周年じゃないやん"って思われるかもしれないけど、あくまでも10周年としてやりたいなと。PAULが帰ってきてからは活動も順調に進み出して、"今日は良いライブが出来た!"って感じることも多くなったし、曲のインスピレーションも沸いてくるしで、すごく調子が良くなったんです。

●そうなんや。

JAGGER:だから、本当いいタイミングで10周年になったと思います。10年間活動してきた中で得た、最大限のものを出せてますね。

PAUL:うん。今までの全部が入ってるね。

JAGGER:歌詞の内容もすごくストレートなんですけど、10年前に書いていた歌詞でも、今の気持ちとあんまり変わらないなというのを感じて。昔の曲を唄っても、"あ、今と同じ気持ちやな"みたいな。良い意味で"何も変わっていない10年間の姿"をこのアルバムを出せたから、いっそう集大成が見せられる作品となりました。

●もともとそうだったけど、サウンド的にも下手に作り込んでないというか。加工せずに素の部分を出している感じ?

JAGGER:加工の仕方がわからないだけですけどね(笑)。

TAKA:ホンマにそうです。加工するくらいなら全部録り直しますもん。

JAGGER:他のバンドがどういうやり方ですごい音源を作っているかはわからないけど、僕らは僕らのやり方で納得のいくものができたらいいかなと思っています。周りからしたら"もっとこうしたらええのに"って思うこともあるかもしれないけど、僕は自分らの曲に対して「これで最高にカッコ良いんだ」って胸を張って言えますしね。

●自信作を引っさげて活動することで、より土台がガッシリとするだろうし。今までも結構自主企画イベントで、先輩後輩のバンドを集めてやってるよね。そういう意味でもパンク業界の中では中堅になってるのかな。

JAGGER:たぶんそうですかね。そうでありたいです(笑)。

●TAKAとPAULはこのバンドに入って何年くらいだっけ?

JAGGER:2人とも同じくらいの時期に入ってきて、もう6年目ですね。

●2人から見て、JAGGERってどう?

TAKA:自由にやってるのが一番じゃないですかね。自由すぎて困る部分も多いけど、それを貫き通しているから、それについていこうという気持ちです。PAULもそうじゃないかな。

PAUL:JAGGERは好き勝手やってくれたらそれでいい。

TAKA:そういう気持ちに固まったのはたぶん最近ですね。PAULが帰ってきてからいろいろやっているうちにそうなりました。ライブがしっかりし始めたのも、それからかな。

JAGGER:最近はライブでも、自分らの意志が固まった感じがするよね。レコーディングもすごく良いテンションで出来た気がするし。

●やっぱり、この3人のバランスが魅力なのかなと思います。

JAGGER:今、すごくそれを感じてますね。

●今作で思い入れのある曲というか「この曲はキタぜ!」っていうのはありますか。

TAKA:僕自身はM-3「LOOKIN' BACK」が一番ですね。理屈抜きで純粋に良いと思う曲です。この曲って、元はスタジオで適当に作ったのがキッカケで。

JAGGER:2人がスタジオに遅刻して来た時に、暇やったから何曲か曲を作ってたんですよ。

●遅刻して来た時って(笑)。

JAGGER:いつもはたいがい僕が遅刻するんですけど(笑)。その時はたまたま僕ひとりしか来てなくて、適当に作った曲を録音していたんです。それを2人に聴かせたら、「やろうよ」ってなって。いざやってみたら、感触がすごく良かったんだよな。

TAKA:悩まずにすぅっと出来た曲だし、その後も特にいじったりせずそのままの勢いでシングルにして。コード進行もすごくシンプルでわかりやすいし。シンプルにすることを意識し始めたのは、あの曲辺りからだったかな。

JAGGER:むしろ、シンプルにしかできなくなった。シンプルじゃないとカッコ良くないというか、新しかったよな。あんな曲は他にないと思う。

TAKA:すごく良い曲だよね。もともとシングルになっている曲ですけど、アルバムでも一番です。

●名曲って結構インスピレーションで出来るって言いますしね。

JAGGER:本当にインスピレーションだけで生まれました。でもアルバム作成にあたって、全曲再録で今出せる最高の音を今の感情で入れているから、その時とは違う今のTHE SKIPPERSを出せるよう取り直したんですよ。だから今回の「LOOKIN' BACK」は、シングルを持っている人でも飛ばさずにしっかり聴いて欲しいなと思います。まずは先入観抜きで一回聴いてみてほしい。アレンジは何も変えてないけど、絶対に雰囲気が違いますね。

PAUL:そうそう! そこ、すっごく重要です。M-1「APOLLO」もオムニバス『Ten years for your ears』に収録されていた曲ですけど、その時は僕がいなかった時期のものなので今とは全然違いますよ。当時のドラマーが僕よりも断然上手かったので、完コピができなかったんですけどね。

JAGGER:それをしたら逆にダサいんちゃう? PAULだからこその良さがあるじゃん。

●話を訊いている感じだと、紆余曲折があった中で"このメンバーじゃなきゃアカン"っていう結論にたどり着いたような感じがしますね。

JAGGER:それはライブで特に感じます。

●ちなみに、TAKAやPAULについてはどう思う?

JAGGER:2人とやってると、安心して自分のことに集中できるんですよね。PAULには演奏面で「もうちょっとちゃんとしてくれや」て毎回言ってますけど(笑)、演奏のぐちゃぐちゃさが自分と同じくらいやから、逆に合ってるのかなと思ったりします。僕らって"完璧な演奏だったな"って思うことがないんですよ。「今日はええライブやったな」っていう時は、たいてい同じくらいグダッてる。でも、周りから「THE SKIPPERSは下手やなあ」って言われるんですよ。でも、下手カッコ良いよな」って言ってくれる人が多くて。それを目指したわけではないんですけど、今そうであることに納得してやれている。上手くなりたいという願望よりは、今カッコ良いことをやろうっていう気持ちですね。だから上手くならないのかもしれないですけど(笑)、自分が求めてるのはそこじゃないし、実際に今最高のものができてますから。

"今"を切り取った楽曲たち

●前回のインタビューで「レコーディングの日を決めてから、一気にカッコ良い曲ができた」って言ってたけど、実際にその時期にできた曲ってどれなんですか?

PAUL:新曲の大半は、日程が決まってから出来たよね。

JAGGER:曲自体は前々からずっと作っていたんですけど、実際にスタジオでやってみてから"やっぱりこれは止めよう"っていう曲がたくさんあって。最終的に切羽詰まってから作った曲の方がカッコ良かったというか。その時作った曲は、その時の思いが自然と出てきたものばっかりなんですよね。

●追いつめられた時に改めて自分自身を見返したというか、しっかりと向き合ったということでしょうか?

JAGGER:う~ん、よくわかんないですけど(笑)。作り込んだ曲は結局このアルバムに入っていなくて、自然と出てきたものばかりが残りましたね。それはもしかしたら一般受けする曲なのかもしれないけど、しっくりこなかったんで要らないかなと。

●カッコ良いと思うものは、全部自然と出てきたものばかりだったんですね。じゃあ収録曲には難産のものはなかったんですか?

JAGGER:歌詞はどれも難産でしたね。基本的にいつも悩むんですよ。でもM-5「IMAGINE」は、レコーディングでするっと出てきた言葉がぴったりハマったかな。普段は全然思いつかないから断片的に歌詞を当てはめていくんですけど、この曲に関しては本当にすっと出てきたんですよね。これを作った時に感じた思いがそのまま乗ったというか。一般的にはそう思わないかもしれないけど、僕らの中で「IMAGINE」はバラードで、かなり気に入っている曲なんです。

●お話を訊いていると、THE SKIPPERSはリアルタイムに感じていることを大切にしているというか、"今"というのが大きなキーワードのように感じます。

JAGGER:そうですね。だから歌詞を書き留めようと思っても、そういう言葉って曲にハマらなかったりするんですよね。曲と同時に心境もハマってないとカッコ良いと思わなくて

●今思ったことを、今伝えるタイプなのか。

JAGGER:M-15「WALKMAN」は2009年に出したシングルの曲なんですけど、再録の時に歌詞も変えたんですよ。"今思ってるのはこうじゃない"ってことで、ライブでも毎回歌詞を変えているんですよ。"今日はこういう心境だから、ここの言葉を変えよう"って、その時に思ったことを言うんですよね。だから今回収録しているものも、レコーディングの時に思ったことをそのまま入れています。

●なんだか、誰よりも真摯に今を生きている感じがします。

JAGGER:僕らの代表曲的存在ではあるので、周りの人にとっては抵抗があるかもしれないですけど…僕らにはまったくなくて。レコーディングの時にさらっと「歌詞変えるから」みたいな。

PAUL:僕らも「変えたかったら変えたらええよ」って。

●単なるワガママというよりは、自分に嘘をつけないんでしょうね。

JAGGER:嘘や綺麗ごとを唄うのがダサいと思うから、そうはなりたくないなって。あまりにもストレートすぎて悪評価だったりすることもあるけど、いつだって「俺はこれでええんや」って言える。ずっと聴き続けてくれる人たちは、それを納得したうえで聴いてくれていると思うんですよね。"だからこそTHE SKIPPERSが好きや"って思う人が、どんどん増えてくれると嬉しいです。

●今を表現するために歌詞を変えるということは、明日には歌詞が変わるってことでしょ? それを録音してしまえるっていうのがTHE SKIPPERSらしいというか。

JAGGER:だから、アルバムでもコンセプトを固めて出すわけじゃないんですよね。今この曲に対して思うことを唄ってる。

●アルバムではあるけど、曲単位で考えてるんや。1曲1曲を作り上げてる感じですね。「LOOKIN' BACK」みたいな作り方が一番向いているのかも。

JAGGER:そうですね。そういう作り方の方が多いと思います。

●しかしバラードで曲名が「IMAGINE」なんて、某有名人とまったく同じタイトルじゃないですか。チャレンジャーですね。

JAGGER:あぁ~、考えたこともなかったです。もちろんその曲を知らないわけじゃないですけど、他のタイトルがどうとか、他の人がやってるからどうとかっていうわけじゃないし。その曲があるからって、それを意識して変えるっていうことはないです。

●自分の中に先入観とかはなかった?

JAGGER:この曲はすらっと出来た曲で、タイトルを考える時に少しは悩みましたけど"これはIMAGINEやな"と思ったらそれ以外は考えられなくなって。僕の中では「IMAGINE」になっちゃったから。仮タイトルは「バラード」でしたからね。タイトルを付けていくうちに思いついた言葉を歌詞にしました。

THE SKIPPERSの夢

●これからのTHE SKIPPERSの夢ってなんですか?

TAKA:やっぱりライブが一番なんで、このアルバムを出すことで今よりひとつ上のステージに行きたいですね。単純にキャパの問題だけじゃなくて、THE SKIPPERS自体が一目置かれる存在になればいいなと思います。

PAUL:音源以上にライブを大事にしているので、初見で聴いている人の心をつかみ取りたいですね。知らない人のライブを観た時、"こいつら初めて観たけど、カッコええやん。ビールが進むわ"って感じる瞬間があるじゃないですか。それをもっと多くの人に感じて欲しい。

JAGGER:話し合ったわけではないけど、その気持ちは最初から持ってるよね。やっぱりそういうバンドが好きですし、そういうバンドになりたい。

JAGGER:このアルバムを引っさげてのツアーを全部成功させるのが今の夢というか、目標ですね。ただ"楽しかった"で終わるんじゃなくて、このアルバムをみんなの心の中に叩き込みたい。自分で聴いても鳥肌が立つような、心がブワァってなるアルバムが出来たんですよ。それを同じ思いで聴いてくれる人が、たくさん増えればいいなと思います。ただ売れるだけじゃなくて、人の心に根付いて、傷痕を残したいです。

●心に傷痕を残したらアカンやろ。

TAKA:嫌な思い出になってるやん!

一同:アハハハハ!

JAGGER:間違った(笑)、心に刺さって欲しいです。アルバムを出すのもこうやって雑誌の表紙を飾るのも、そしてBIGCATで一大イベントをやるのも、全部僕らの"夢"なんで。それを10周年である今、このタイミングでやったろうぜっていう。

●そっか、8月にはBIGCATでのイベントも控えてるんですよね。

JAGGER:8/9(パンクの日)に、僕らが最高にリスペクトするパンクバンドを集めて企画イベントをします。まだ発表していないですけど、最高のメンツですね。BIGCATでやるのは正直不安もありますけど…。そこは僕らの頑張りどころやし、絶対に最高のイベントになると思いますんで、自信はめちゃくちゃあります。今年はやったりますよ。

●そんなイベントが出来るのも、10年目にしてフルアルバムが出せたのも、バンドとレーベルの関係性があるからこそじゃないでしょうか。

JAGGER:ホンマにそうやと思います。今回のCDに関して、旭さん(ナインスアポロ社長)は敢えて何も口出しをしないでくれたんですよ。「お前らの最高なもんを作ってこい」って言ってくれたんです。僕らのことを信用してくれていて、かつ僕らの思う"最高のにカッコ良いもの"を、同じようにカッコ良いと思ってくれてる。ついていくのはこのレーベルしかないですね。ワガママな僕らの音源をリリースすることができるのも尊敬するし、全国にCDが並ぶのも僕らの力だけでは出来なかったんで、本当に感謝しています。

Interview:PJ
Edit:森下恭子

  • new_umbro
  • banner-umbloi•ÒW—pj