この日のSHIBUYA-AXは、1月の厳しい寒さを吹き飛ばすかのような熱気に包まれていた。半袖の人も数多く見受けられ、一瞬季節を間違えたのかと思うほどの熱さだ。まずゲストの髭が登場すると、歓声の波が沸き上がる。Vo./G.須藤の声が響くと、爆発したかのようにボルテージマックスなオーディエンスが踊り狂う。絶妙な煽りで会場を華麗に盛り上げながら、高みへと登っていくパフォーマンス。「テキーラ!テキーラ!」では飛び散った音が会場に降り注ぎ、さながら大騒動だった。
髭のアクトで大いに暖まった会場に、お正月おなじみの曲が流れ始め、笑いとざわめきが起こる。そんな中で、The Mirrazのメンバーがステージにしれっと登場する姿も面白い。だが「ハッピーアイスクリーム」からライブが始まると空気は一変し、彼らの色に染め上げられていく。畠山が一息で吐き出すような言葉たちが音に乗り、心の深くまで切り込んでくる。切なくも激しく、吸い込まれそうな音は静かな熱を含み、フロアを満たした。
「うるせー」で雄叫びが反響すると、しっとりとしていた会場は息を吹き返したようにお祭り騒ぎ。ステージ上で堂々と繰り出される演奏に、自分が小さくなって、大きな彼らを見上げているような錯覚に陥った。SHIBUYA-AXが吹き飛びそうなほどに揺れた「ふぁっきゅー」。淡々と奏でられているように見える音たちだが、体内では獲物を待つ獣のようにギラギラと燃えている感情を形にしていることが、耳で、肌で感じられる。
「シスター」では、優しい雨のような歌詞のフレーズが拡散し、ゆったりとした柔らかさに包まれる。じっくりと聴かせるような曲がライブで映えるのも、彼らの持つ魅力の1つだろう。MCでは“2/13にアルバムが出ます! すごくカッコ良いアルバムができたので、聴いてください”と告知。それに続いてアルバムの中から披露された新曲「スーパーフレア」では、まさしく燃え盛る炎のようにオーディエンスを沸かす。真っ赤なライトの点滅とも相まって、火災現場の様相だ。
息つく暇もなく次々と放たれる曲たちは、強烈な印象を次々と植え付けていく。「CANのジャケットのモンスターみたいのが現れて世界壊しちゃえばいい」ではベースやドラムの低音が土台を作り、ギターの切り裂く音と声がその上から飛び降りるかのごとく激しいパフォーマンスを展開し、フロアを渦の中へ導いていく。「ラストナンバー」「気持ち悪りぃ」と立て続けに叩きつけられる渾身の連撃が身体を打ち、最後は力も抜けてしまうほど心地よい光景がただ目に焼き付いていた。
まだ暴れ足りないとでもいうように、アンコールを求める手拍子が客席から巻き起こる。そんなフロアに応え、登場して早々「TOP OF THE FUCK’N WORLD」で本能を解放する彼ら。咆哮を響かせ、光線のように夜を駆ける。「僕らは」では、幸福感と激情を会場中に撒き散らした。Wアンコールの声に応えて、走って現れたかと思えば、ステージを通り過ぎる畠山。その姿はまるで彼らの瞬間性を体現しているようだ。そして最後は全身全霊の愛を注ぐように「僕はスーパーマン」を奏で、颯爽とステージを去っていった。
TEXT:栗山聡美