音楽メディア・フリーマガジン

TearSmilo

ギターロックシーン次代のスタンダード

 2006年の結成以来、自主制作で2枚のシングルと1枚のフルアルバムを発表し、全国ツアーや“COMIN' KOBE”への出演などたくさんの経験を積んで来たTearSmilo。そんな彼らが新しい領域に踏み込むために進化を遂げ、待望のデビュー作を完成させた。4人が個性とアイディアをぶつけ合い、身を削りながら作り上げたミニアルバム『ダーウィンが来た! 』は次代のスタンダードだ。

Interview

●8/10リリースのミニアルバム『ダーウィンが来た!』のクレジットを見ると、杉江くんと田中くんが作曲を担当していますが、曲作りはどんな感じで進めるんですか?

杉江:僕は弾き語りみたいな感じでバンドに持ってくるんです。全部ぶっ壊れるんですけど。

●え? 全部ぶっ壊れる?

杉江:はい。メンバーもアイディアをガンガン出してくるんです。でも僕はそこで自分の考えを押し通さないようにしていて。やっぱり全員が納得した方がいいものができると思うし。

●なるほど。

杉江:例えば僕が1曲最初から最後まで作ってきても、全部壊されるんですよね。結成当初はそれが何回か続いて、もう精神的に保たなくなってきて。

●ハハハハ(笑)。確かに保たないですよね(笑)。

杉江:それでとりあえず1番だけ作るようになったんです(笑)。

●杉江くんは曲を作っているし表現欲は強いけど、他のメンバーの表現欲も強いと。

杉江:めっちゃ強いです。曲作りは基本的に僕と田中のバトルですね。

●あ、そうなんだ。

杉江:田中が作ってくる場合は、オケを持ってきてそこにメロディと歌を乗せるんですけど、どっちの場合にしても削り合いとアイディアの出し合いとぶっ壊し合いがあります(笑)。まあそこがいちばんTearSmiloのおもしろいところですけどね。

●今まで自主制作でシングル2枚とアルバム1枚を作ってこられましたが、今回リリースのミニアルバム『ダーウィンが来た!』は初めての全国流通盤じゃないですか。どういう作品にしようと思ったんですか?

田中:今まで活動してきた5年間で持ち曲は20曲くらいあるんですけど、その中から選ぶんじゃなくて、新たに作った曲ばかり入れたんです。全国の人に知ってもらえる初めてのチャンスだし。

●はい。

田中:自主制作で去年リリースしたアルバム『3mの運命線』はそれまでの活動を集約したベスト盤みたいな作品やったんですけど、結構穏やかでミドルな曲が多かったんです。

杉江:そこで1回、バンドがまとまっちゃったんですよね。それまで作ってきた自分たちの曲を選りすぐって『3mの運命線』を作ったので、"TearSmilo"という形が自分たちの中でできてしまっていたというか。「これ聴いたらTearSmiloの全部がわかります」って言いながら会場とかで売ってたんですけど、次の作品を出すとなったときに"あれ?"ってなっちゃったんです。"TearSmiloの全部が詰まったアルバムはもうあるのに、何をしたらええんやろ?"って。

●ああ~、なるほど。

杉江:じゃあ今までのTearSmilo像なんてぶっ壊そうと。新しい領域に踏み込もうと。

●そういうことか。

杉江:それで、サウンドはまったく新しい感じを目指して、歌詞についてはもっと進化させようとして今まで以上に自分を突き詰めたんです。

●今作の曲作りもかなりのせめぎ合いがあった?

杉江:ありました。

田中:初めてスタジオで有田がキレました。

●キレたのか(笑)。

田中:僕は興奮すると汚い言葉とか使っちゃうんですよ。で、M-1「さぁ」を作っているときにスタジオの空気が最悪になってて、僕が「こんなんアカン」とか言ったら「そんな言い方ないやろ!」みたいになって(笑)。

●「さぁ」は結構爽やかな曲なのに(笑)。

田中:曲は爽やかですけど、裏ではめっちゃドロドロしてます(笑)。とにかくすごい闘いが繰り広げられるんですよ。だからすごく難産です。

●1曲が完成するまでに時間が掛かりそうですね。

杉江:「さぁ」は3年掛かりました。

一同:(爆笑)。

●それと、どの曲も爽やかな印象が強いんですが、アレンジの細かいところにこだわりを感じたんです。例えばギターとかだと1番と2番では同じフレーズを弾いてなかったり。

田中:全員が凝り性なんですよ。その中でも特に有田は職人気質で。
竹村:もうすごいですよ。

杉江:「一回使った音は使わへんぞ」とか「イントロやったら仕方がないから繰り返してもええけどな」とか。

●あ、そこまでですか。
有田:そこまで言ったことはないですよ(笑)。

杉江:言わないけど、でも実際それくらいこだわりが強いんです。特に僕らはギターの音が前面に出たバンドなので、ギターに関してはみんながアイディアを出すし。

●今作のリード曲はM-2「シンカロン」ですけど、この曲名は作品タイトルにも関係していますし、そもそも"今までのTearSmilo像をぶっ壊して新しい領域に踏み込む"という今作のテーマにもリンクしますよね。どういう経緯でできた曲なんですか?

杉江:田中が最初に持ってきたイントロがきっかけですね。

田中:ライブハウスの楽屋で、有田と2人でギター弾いて遊んでたんですよ。オジー・オズボーンとか弾いて。そこでイントロのフレーズを閃いたんです。

杉江:そのイントロをスタジオで鳴らしたとき、セッションでその後の流れが出てきたんですよ。
竹村:シュッ! って出てきたな。

杉江:そこから形にしたんです。僕は歌詞の元となるネタを常に書き貯めているんですけど、「シンカロン」のオケができたとき「あの歌詞がハマる曲がやっとできたな」と思って乗せて。でもこの曲をレコーディングする直前に"もっといける!"と思って歌詞を書き直したんですけど。

●あ、そうなんですか。

杉江:「シンカロン」だけじゃなくて、今作の7曲の歌詞は早い段階でしっかり作ってたんですよ。でもそこでふと"なぜ俺は安心してるんだ? まだレコーディングまで時間があるんだから悔いのないように最後の最後まで全力を出そう"と思って、歌録りの1日前まで全部の曲の歌詞を書き直したんです。

●色んなせめぎ合いや苦労を経て、バンドの進化が作品になったんですね。
Interview:Takeshi.Yamanaka

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