大阪アメリカ村の誕生から、苦節35年。真似事ではない、純粋培養の正真正銘・アメリカ村産ロックが誕生した。底抜けに明るいHAPPYな PUNKROCKから、PUNK、SKA、DUBをも飲み込んで、オリジナリティ溢れるグッド・ミュージックを創りあげたSUNSET BUS。ゲストVo.のMisaki(SpecialThanks)との絶妙コラボも流石です。ああ〜日本に生まれて良かった! と思わせる作品の誕生。絶対に買うべし!!
●今作は、ビックリするくらい良い作品が出来ているよね。TEPPEIとサトシ(SATOBOY)の前身バンド、“サブロク”の愛称で親しまれた3.6MILK解散から6年目…SUNSET BUSになってから、やっと! 表舞台に出て来たってイメージがします。
SATOBOY:「やっと!」をそんなに強調しないでくださいよ!
●去年あたりから名前もよく聞くようになったし、2012年の6月にリリースした『BEER GARDEN』も、ノンプロモーションにもかかわらず今でもロングセラーだとか。その要因ってなんやと思いますか?
SATOBOY:知り合いのバンドマンから「全然サブロクじゃないやん」って言ってもらって“あ、これでいいんや”って思って、ありのままの感覚や自分達のカラーを出していった感じですね。
●サトシ、もうちょっとボキャブラリーを増やしてくれる(笑)? インタビュー成立せえへんよ。それってどういう意味よ?
SATOBOY:自分達としては“サブロク時代と一緒じゃ面白くない”と思っていたので、こんなんじゃあかん! という気持ちで作曲を続けていたんですけど、案外みんなの反応は自分の思っていたのとは違って。だから“今みたいに、自分が思うままにやって大丈夫なんだ”って思えたんです。より吹っ切れたこともあって、純粋に僕らが気持ち良いと思う曲を入れました。
●前作のロングセラーもあって、“最近SUNSET BUSが抜きん出て来たな”と僕も感じるけど、実感としてはどう?
SATOBOY:あんまり感じてないですね。TEPPEIもそうだと思いますよ。
●お前ら鈍感やからな。
SATOBOY:そうですね、昔からそうでした(笑)。
●でもそういったセールス状況に関係なく、昔から豊かな人間関係があるよね。去年の“京都大作戦”では、10-FEETのTAKUMAくんがSUNSET BUSのステージに飛び入りしてたし、なぜかROTTENGRAFFTYのN∀OKIも出てきてたし(笑)。
SATOBOY:TAKUMAとはもともと約束していたわけではなく、「もし来れたら俺らのステージにも来て」みたいな感じだったんですけど、忙しい中駆けつけてくれたんですよ。N∀OKIとは最初から「何かしようや」とは言ってたんですけど。
●それもサトシの人間性やね。計算とかちょこざいなことをしないで、自然体でやっているというのが、みんなに愛される理由だと思う。認知度を高めるためのプロモーションで、10-FEETやPOP DISASTER、G-FREAK FACTORYとツアーを廻ったのは大きかった?
SATOBOY:そうですね。他にも若い世代…例えばHEY-SMITHやSHANK、THE SKIPPERSといったバンドとも分け隔てなくやっているのは、僕らを押し上げてくれた要因になったのかなと思うんです。すごく感謝していますね。
●本当に幅広くやっているよね。やっと時代がSUNSET BUSに近付いて来た? 今作は、僕にとって既に今年のNo.1ディスクになりました!!
SATOBOY:早い! わずか4ヶ月で決定ですか(笑)。
●アメリカ村が発足して35年、やっとアメ村発のバンドが出て来たという感じがする。アメ村には相当の思い入れがあるんじゃない?
SATOBOY:18歳くらいから、この界隈で遊びまくってましたから、思い出も多いですね。
●今回は7曲入っているんだけど、聴いているとすぐに終わってしまうというか、もっと聴きたくなる。
SATOBOY:曲の制作意欲は前作『BEER GARDEN』を出した直後からあったんで、それならミニでも良いから出そうかという話になって。
●M-1「TRY HARD」からM-7「DEAI」まで、実にバラエティに富んでいる。本人達はどんなことを考えながら作っていたの?
SATOBOY:何も考えていないんですよね。
●そしたら、何も考えていない方が良いもんが出来るんちゃうの(笑)?
SATOBOY:あはは(笑)。今はTEPPEIと僕の作った曲が両方入っているので、そのバランスが良いのかも。前作もTEPPEIと僕の持ってくる曲のバランスが絶妙だったし、今回は“お互いの持ってくる曲でどんだけ気持ちよくなれるか”“一緒に作品に入り込めるか”という部分をスタジオで詰めました。僕らも計算しているわけじゃないんで、たまたま今はハマっているだけだという気持ちもあるんですけどね(笑)。
●レノン=マッカートニー、あるいはミック・ジャガーとキース・リチャーズみたいに上手く同化しているというか、二人が別々で作っているという感じがしない。それにボーカルがまた良いよね。M-5「NOT TOO LATE」でのMisaki(SpecialThanks)ちゃんとのバランスも絶妙やな。フェイクの具合も本当に気持ち良い。
SATOBOY:TEPPEIが「Misakiちゃんとやりたい!」と言ったんです。TEPPEIは、絶妙な組み合わせを見つけ出すセンスがズバ抜けてるんですよ。
●日本語と英語のバランスが良くて、メッセージが伝わるよね。それもハードなメッセージじゃなくて、沁みるんやな。このアルバムを聴いていると、10-FEETっぽい部分もあればdustboxもありつつ、HOME GROWNのレゲエっぽさもあったり、なぜか一瞬GARLICBOYSのイメージも出てきた。それぐらいバラエティに富んでるけど、完全なるSUNSET BUSのオリジナルというのがすごい。全然ブレてないもん。
SATOBOY:それは嬉しいですね。ここまでやってきたことの結果が出たというか。
●M-3「ワレワスレテ」はサトシの日本語が生きている曲だけど、あれはどんな心境だったの? 今までなかったような曲だよね。
SATOBOY:前作でよりお客さんと近い楽しいライブが出来るようになったので、特に今回はライブを思って作りましたね。我を忘れて暴れる感じもありつつ、かつアメ村的な雰囲気もありつつ。この曲が一番“みんなにはどう思われるんやろうな”っていう不安がありました。
●あのアプローチは素晴らしいね。サブロクのまねごとではないというのを強く感じる。解散して6年で、心境の変化もいろいろあると思うけど。
SATOBOY:自分達にとって楽しいこと・気持ち良いことを素直に出していこうという気持ちになりました。実は解散しても半年後にはライブをやってたし、2週間後にはスタジオに入ったりしていたんですよ。合わないのなら無理して合わせる必要もないし、自分達のキャパにあったことを続けて来て、やっと今があるんだと思います。
●M-6「PSYCHO FRIENDS」は10-FEETばりのナンバーでギターが炸裂していて、前を向いて行こうぜって感じになる。
SATOBOY:これはサイコイノベーターという先輩バンドのドラムの方をはじめ、身近な人達が亡くなった時に感じた気持ちを歌った曲です。だからサイコイノベーターっぽい“ッタッタ”っていうリズムを取り入れたりして。レコーディングもミックスもマスタリングも、昔からずっとお願いしている人達にやってもらったから、作業中もすごく居心地の良い環境だったんですよね。
●素晴らしいね。バンドとエンジニアとの関わりも、作品に大きく反映されている。
SATOBOY:そういう感じが出ていると思います。
●M-7「DEAI」は象徴的な曲やけど、これはかなり泣けるよね。まさかSUNSET BUSからこういうアプローチが来るとは。とうとう、かりゆし58的なポジションを狙いにきたかという感じやね(笑)。
SATOBOY:いやいや(笑)。でも嬉しいです。これは僕が書いた詩なんですよ。
●!! 絶対そうだと思った。
SATOBOY:昔からああいう歌詞に思うところがあって、歌にしたいという気持ちがあったんです。僕自身実際にそういう体験をしたというか。出会いがあって別れがあって…でもいつしか一緒にお酒を飲み交わすようになって“こんな楽しい日が本当に来るんやな”と思った時の心情を書きました。
●サトシの場合は、架空のことは書けないよね。自分の体験や、想いのどっちかや。
SATOBOY:そうなんですよ。そんなに特別良い歌詞でもないかもしれないけど“これを歌いたいな”と思ったんです。
●完全に伝わってます。全曲申し分なしです。
SATOBOY:ありがとうございます!
●楽曲もさることながら、サトシは『ONE BIG FAMILY』というレーベルもやっているし、『LOU DOG』という服飾ブランドも経営しているよね。
SATOBOY:『LOU DOG』については、僕らがずっと追いかけていたサブライムというバンドの所属している、スカンク・レコードの商品を日本で出せることになって、それがキッカケで作りました。2年前にスカンクの社長に「スカンク・レコードの商品を日本で扱わせてほしい」ってお願いしに行って、OKをもらったんです。
●ということは、スカンク・レコード公認のグッズを取り扱ってるんだ!
SATOBOY:そうです。昔からジャケットの絵を描いてもらったりもしていたから、そろそろ一緒に何かやりたいなと思った時に、スカンクの社長に「お前だったら良いよ」と言ってもらったんです。それなら小さくても良いからアメ村で店を構えて、自分達から発信できる場所を作りたいなと。
●小さいながらも知る人ぞ知る存在になってるよね。西海岸の音楽好きが集うというか。
SATOBOY:アメ村でライブがあったりすると、帰りに寄ってくれたりして、一緒にお酒飲んだりしていますね。
●でもなんで『LOU DOG』のロゴってダルメシアンなの?
SATOBOY:サブライムには、第四のメンバーと言われるダルメシアンがいたんですよ。ステージ上でいつもぶらぶらしていて、ジャケやアー写にも絶対に映ってるんですが、その犬の名前が『LOU DOG』って言うんです。スカンクのこともあって、こいつをキャラクターにブランドを作りました。
●すべてにおいて、自分がキッズの時からインスパイアされたものが繋がって来てるわけや。バンド活動もお店も精力的に動いているけど、そのモチベーションはどこから来るの?
SATOBOY:いろいろ話をする時にTEPPEIがモチベーション高く接してくれるんで、そこに引っ張られる感じはあります。
●今作のリリースツアーも決まってるんでしょ?
SATOBOY:今回は11箇所くらいですね。これからもう一回り大きなツアーも出来るようになるかもしれないし、アメリカツアーも行きたいと思っているし。そうやって、いつも前向きに楽しいことが考えられるからやっていけてるんだと思います。
●歌詞の中にも“ゆったり生きようや”という投げかけもあるけど、それがSUNSET BUSの“らしさ”だよね。
SATOBOY:僕らの性格そのままですよね。ガンガン攻める感じのバンドはいっぱいおるけど、僕らみたいなゆるいバンドはそんなにいないので、ちょうどいいポジションで気持ちよくやれています。
●それでもやっぱり大きなイベントに呼ばれるし、10代から50代まで知っているバンドっていうのは、そうそういないよね。
SATOBOY:今でも二十歳のバンドと一緒に、打ち上げてキャッキャしてますからね(笑)。
●SUNSET BUSは、いろんなバンドの架け橋になれるような存在だと思う。
SATOBOY:僕らがキッカケで、繋がりが出来たら嬉しいですね。でもそんなに大きくなくても、ぼちぼちで良いですよ。
●そういうところがSUNSET BUSの良いとこだよな。ぼちぼちやっていくという強さもあるんやなって思います。これからも自然体で、興味があることをどんどんやっていってほしい。
SATOBOY:音楽も絶対に続けているだろうし、好きなブランドも何かしらイベントをして絡めていきたいと思うから“これは外せない”という部分だけはしっかり押えつつ、ゆったりと気持ちよく続けていけたらいいなと思います。
●こんな作品を作ったら次が大変だよね。間違いなくこのCDは持っていて損はないです。ハイ。
Interview:PJ
Edit:森下恭子