初詣に行っておみくじをひいたら大吉だったんですけど、「良すぎて人に運をわけなさい」っていうくらいベラボウにいい大吉だったんです(※写真参照)。
あっ! 「財産も地位も思うがままになる」とか「最も貴い運勢です」と書いてある!
僕は毎年のことなんですけど風邪ひきました。年末ライブがバタバタとあって、31日のイベント終わりで徳島帰って、2日くらいから寝込みました。あとおみくじは末吉でした。
帰省して親孝行してました。初詣も行って、おみくじひいたら大吉で、僕も「思うがまま」って書いてありました。
僕は中吉だったんですけど、正月はグアムに行ってたんですよ。婚約者の家族と一緒に。
ところで2/17にリリースするアルバム『出世作』はいつくらいから準備していたんですか?
今回は時間をかけてゆっくり作ろうというスタンスだったんですよ。
M-10「MOONSTAR daSH」(2015年8月リリースのシングル曲)は別にして、今作はM-1「出世作」から録り始めたんですけど、それが去年の6月くらい。
結構前ですね。「出世作」から録り始めたということは、アルバムタイトル『出世作』や全体的なイメージもその時点で描いていた?
そうですね。“アルバムタイトルが『出世作』で1曲目は「出世作」でいきたい”というのは決めてました。前のアルバム(2014年10月)のときに“もはやCDではないものにしたい”と思ってタイトルを『もはやCDではない』にしたんですけど、それによって実際に“もはやCDではない作品”になるだろうと思ってそうしたんです。
そうそう。周りからもそう見てもらえるじゃないですか。フレーズ化することによってより鮮明になるというか。だから今回は自分から“出世作”と言ってしまえば、実際に出世作になるのではないかという。
あと、30歳を過ぎて、周りの人たちのありがたみが身に沁みてわかるようになってきたんですよ。そういう感謝の気持ちを作品に込めたいという想いもあったので、これを出世作にして恩返しをしたいなと。
だからこのアルバムについてはコンセプトがめっちゃあるんですよ。前から周りの人たちには感謝していましたけど、ここ1〜2年は関わる人の数も増えてきて。年を重ねているにも関わらずバンドがどんどん濃くなってきていて、そこを愛してくれる人が増えている。そしたら「ありがとう」という想いも強くなりますよね。
あと今作は曲ごとに“1月のうた”、“2月のうた”、“12月のうた”というように時期的なテーマも付けているじゃないですか。このアイディアも最初からあったんですか?
そうです。だからもう、やりたいことが多すぎて。でも“月”というテーマがあることによって、歌詞は書きやすかったんですよね。“1月のうた”、“2月のうた”というように、各曲のキャラがはっきりしているので。
なるほど。そんな今作を聴いてまず思ったのが、音楽面の上達が著しいというところで。
いろんなジャンルを採り入れてるというか…前からそういう傾向はありましたけど、いろんなバンドの音楽を飲み込んで消化して、自分のものにしている感じ。
そこは意識しました。削ぎ落とした結果なのかもしれないですけど。
例え今までとは違うテイストのことをやったとしても、自分たちの色を濃く出して詰め込み過ぎれば同じようなものになると思うんですよ。でも今回は、楽曲的にはシンプルにしようということを意識したんです。
今回もそうなりがちだったんですけど、みんな「シンプルにしよう」と言いながら作ってましたね。
シンプルにすることの難しさを知ったからだと思うんです。そこで熱量を下げずに引き算をする…やっぱりそういうバンドはかっこいいなと。
メロディを出したかったんですよね。ポンと入ってくるようなものにしたくて、そのためにいらないものを削ぎ落としていくっていう。
あともう1つ思ったのは、康雄くんの歌がよりリアルになっているというか、感情的になっている。今までは1つの物語を“四星球の北島康雄”という語り部が語っているようなイメージがあったんですけど、今作はそうじゃなくて、“北島康雄”という1人の人間が想っていることを歌っているというか。
ああ〜、曲によってはそうかもしれないですね。「出世作」とかがまさにそうですよね。でもそもそも、バンドを始めた頃はそんな感じだったと思うんですよね。バンドを始めた頃は自分のパーソナルな部分をガンガンと出していたんですけど、いろいろと技術を覚えて筆が立つようになってきてからは、「こんなことできるよ」「あんなこともできるよ」って見せたくなるじゃないですか。正直なところ、1回それにちょっと飽きた部分がありますね。ストーリーがあるものだったり、言葉の数が多いものは、がんばったらできることやんと。
ダブルミーニングだったり、歌詞のある部分と別の部分が繋がっていたり。それは時間を費やしてがんばればできることなんですけど、それを1回置いといたんです。で、わかりやすさを出そうを思ったら、やっぱり経験からなんですよ。経験を表現して、その表現が聴いてくれる人にハマるかどうか。その言葉選びや選択が今回は難しかったかもしれないです。
僕は何度もインタビューさせてもらっているし、イベントやフェスで会ったら話すことも多いので、康雄くんの素のキャラクターがだんだんわかってきたんですよ。ステージの上でのおもしろい感じだけじゃなくて、本当は人見知りで少し毒があって…そういう部分が音楽に出るようになってきたのかなと。
そういう意味でバンドとしての成長も人間としての成長も感じさせるアルバムなんですけど、同時に今回も相変わらずツッコミどころが満載というか、めちゃくちゃふざけている。
全部ツッコんでいたらキリがないので特に印象的なことだけ訊きますけど、例えばM-4「チャーミング」って今までにないくらいのラブソングですよね?
ラブソングと言われればそうですよね。「チャーミング」は“女の人は素敵だな”っていう女性讃歌なんです。
「女の人は素晴らしい」という曲って案外みんな歌ってないんですよ。SMAPにはあるらしいんですが(「Dear WOMAN」)。
SMAPとかベッキーとか、旬の芸能ネタが多いインタビューだな。
“女性讃歌が歌えるのはSMAPレベルなんや”と気づいたとき、だったら歌う価値はすごくあるなと。女の人に産んでもらって、女の人と一緒に死んでいく…やっぱり女の人ありきの人生やなって思ったんですよ。
そうです。母さんが老けていくのとか見たら思いますよね。赤塚不二夫先生をテーマにした『これでいいのだ!!映画★赤塚不二夫』っていう映画があるんですけど、浅野忠信さん演じる赤塚不二夫が、お母さんが亡くなったときに棺桶に一緒に入ろうとするシーンがあるんですよ。そこでジーンときてしまって。自分の母さんが死んだときを想像してみたら“全然有り得るわ!”と思ったんです。
そうかもしれないですね。男は誰もがマザコン的な気質があると思う。
でも母親の歌を作るっていうのはめちゃくちゃハードルが高いんです。“いつかめちゃくちゃいい母親の歌を作りたい”と前から思っているんですけど、今回の「チャーミング」は母親じゃなくて女性の歌にしたんです。言ってみれば女性へのラブソングですよね。
ところで、今作はアルバムのちょうど真ん中のコントでバッサリとそれまでの流れを断ち切っているじゃないですか。M-8「今作ここまでのダメ出し」という、曲というかふざけたトラックがありますけど…。
今作も基本的にはコントを入れたかったんですよ。で、いろいろと考えていたんですけど、アルバム全体を1年と考えたときに上半期を下半期を分けるっていうアイディアを思い付いたんです。それですべてが上手くまわるなと。ひととおり聴いて貰えればわかると思うんですけど、アルバムの前半は音楽重視にしてるんです。
つまり上半期はコミック要素をちょっと抑え気味にして、「もっとふざけていこうよ!」とコントでダメ出しをする。そうすることによって下半期はどんどんボケていける。そしたら上半期と下半期で色も分けられるし、トラック数が多いアルバムによくありがちな“後半ダレる”っていうことを、コミックバンドならではのネタで昇華できる。だから今作に於けるコントは、今までに無いアルバムに必要なトラックなんですよね。
今までのコントもアルバムには必要なものなんですけど、曲にかかっていたりとか、曲と曲の繋ぎの役割だったりとか、そういう使い方だったんですよね。でも今回はアルバムの中にうまいこと入れられたなと。
更に今回のコントで今までと違う点として、コントの中でちょいちょい良いことを言うというところで。要するにコントなのにメッセージ性があるんです。僕の中では、4人でポエトリーリーディングしている感覚に近いんですよ。だから「今作ここまでのダメ出し」はコントじゃなくてポエムです。
ハハハ(笑)。すごくうまいなと思ったんですけど、さっきも僕は「今までにないくらいのラブソングだ」とか「バンドとしての成長も人間としての成長も感じさせる」とか言ってたじゃないですか。でもそれを自らダメ出しすることで、こっちはもう文句が言えなくなるんですよね。
テレビとかはそういう手法がめっちゃ多いじゃないですか。裏側のことをナレーションでいじったりとか。バンドもそういうことをもっとやっていけばええんちゃうかなと。
アルバムの後半でボケ倒しているのはそういうカラクリだったのか。
で、その後半なんですけど…オリジナルバージョンに流行りのEDMっぽいイントロを付け足しただけのM-10「MOONSTAR daSH ~ galaxy edition ~」はまだいいとして、大きな問題が1つありまして…。
僕はiPhoneに今作を入れて、歩きながらM-11「オトダマーチ ~シルバーウィークドライビングmix ~」をイヤホンで聴いてたんですけど、何度も「あれ?」と立ち止まったんです。iPhone壊れたと思って。
音楽止めて、立ち上げてたアプリも全部落として、ミュージックアプリだけにしてもう1回再生しても変な声が入るから怖くなって。「これはどういうことや?」と。
伝わらないでしょうね。聴いてもらうのがいちばんいいと思います。もうね、これひどいです。車で聴いたらあかんと思う。
“MONSTER baSH”と“OTODAMA 〜音泉魂~”を歌った2曲を並べることがおいしいなと思っていたんですよ。だから“この2曲をどういじったろうかな?”といろいろ考えてこうなりました。これいいなと。
僕はそんな四星球に「mixってそういうことじゃないんだよ!」と言いたいです。
あとM-13「もはやMDだ」もひどい。完成度がめちゃくちゃ高いんですけど、完成度が高いが故にひどい。なんでまさやんが歌ってるんですか?
曲自体はいつもと同じ作り方なんですけど、アコースティックバージョンにしたいなと。でもそれを僕が歌ったら普通になってしまうから、よくある“メインヴォーカルじゃない他のメンバーが歌う曲”にしたかったんです。
年に1回か2回くらい弾き語りでやってるんです。でもレコーディングしたのは初めてで、めっちゃマイク立てられて、めっちゃ楽しかったです。
ここまで振り切られたらもう笑うしかないし、更にJ-POPのようなポップな曲を作ることもできるっていう四星球のポテンシャルを垣間見たような気もしたんです。
で、散々腹が立った後のM-14「ワンハンドレッドエイトビート」はすごくいい曲なのに、途中から康雄くんに悪魔が乗り移ってめちゃくちゃになるじゃないですか。かなりキャッチーで勢いもあってライブ映えするような曲なのに、なんで自らめちゃくちゃにしちゃうんですか?
僕、なんで途中から悪魔が乗り移るような曲にしようと思ったか記憶にないんですよ。ごめんなさい、ちょっとインタビューにならないんですけど、僕はほんまに理由がわからないんです。
なんでかわからないんですよね~。なんでこんな曲ができたのかな~。
あとボーナストラックの「桃源郷をやってみた」なんですけど…康雄くんのテンションが異常ですね。異常というか、狂っている。
さっきも話していましたけど、「今作ここまでのダメ出し」でプロデューサーが「もっとふざけていこうよ!」と言っていたじゃないですか。だからどんどんテンションを上げていった結果、こんなことになっちゃったんです。
「桃源郷」は、康雄くんやU太くんが19歳の頃に作った四星球の1stデモ『なけなし』に収録していた曲で、アルバム『もはやCDではない』には「マイナストラック、桃源郷」という形でデモバージョンのまま収録していましたよね。で、今回は現メンバーでやるというバージョンで。