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Sound Schedule

互いの輝きに導かれ、再び3人がこの場所に集まった

 2001年に彗星の如く現れ、その名をシーンに轟かせたSound Schedule。2006年に解散が発表された時には、多くのファンがそのニュースに驚き、涙した。あれから5年。デビューから10年の節目となる2011年に、彼らが期間限定で復活する! 再結成プロジェクトを発表した7月にインディーズ時代のアルバム『ここからはじまるストーリー』(2000年11月に1000枚限定発売)を復刻配信すると、iTunes Storeトップロックアルバムチャートで2位を獲得するなど、彼らの人気は今なお健在。9/14にリリースされるニューアルバム『PLACE』は当時のファンはもちろん、過去のSound Scheduleを知らない世代にも聴いて欲しい名盤だ。今回の再結成にあたり、現在は制作ディレクターとしても活動中のDr./Cho.川原 洋二を招き、本誌発行人・PJが話を訊いた。復活に至った経緯やこの5年における変化、そしてメンバーに対する想いまで、旧知の間柄ならではのディープなインタビューで迫る。

Interview

「離れていてもずっと繋がっているんだろうなと思っていたし、お互いに認め合っている今ならもっと面白いことができるんじゃないかっていうところから今回の再結成に行き着きました。この3人にしか起こせない奇跡を封じ込められたら最高だなと思う」

●以前からJUNGLE★LIFEとも関わりの深いSound Scheduleですが…、再結成したなら真っ先に教えろよ! ホンマに水くさいわ…。

川原:すいませんでした(笑)。でも今回の再結成は、あくまでも期間限定なんですよ。それぞれの生活があるのでアグレッシブには活動できないんですけど、ファンのみなさんとも良い距離間を保ちながらやりたいなと思っていて。

●この話はいつ頃決まったの?

川原:再結成自体は去年の末から決まっていたんですが、本格的にアルバムの作業を始めたのは年明けからですね。今年で解散から5年、デビューからちょうど10年ということで、みんなで集まって演奏するのもいいんじゃないかと。デビューしたのが9/19なので、その日にライブを設定できるようにリリース日も合わせました。

●そうだったんや。そもそもはリーダーである川原くんの一言で解散したバンドだから…。

川原:違います!(笑)。この3人だからこそ成り立っていたバンドなので、大石(Vo./G.)がソロで活動したいと言った瞬間、そこで終わりだとは割り切っていたんです。ファンのみなさんには申し訳ない気持ちがありましたけどね。

●当時はバンドの状況としても絶頂期だったもんね。あれだけ人気があったのに、よく辞められたよなぁ。

川原:スタッフの立場からすれば、「何てことをしてくれたんだ」っていう感じでしょうね。ディレクターとして働いている今なら、よくわかります(笑)。でも最後のなんばHatchのライブで、PJさんがお花を持って来てくださったことは今でも覚えていますよ。

●本当に良いライブだったよね。感極まって、泣いている人もたくさんいたし。

川原:いろんな方に迷惑をかけた分、今回で少しでも返せればと思っています。

●7月に復刻配信された『ここからはじまるストーリー』はiTunes Storeのトップロックアルバムチャートで2位になったし、人気は今でも健在みたいやね。

川原:ニューアルバムのリリースに向けた"前夜祭"的な感じで昔の作品を復刻してみたんですけど、思った以上の反響で。"ずっと待ってくれていた人がいるんや"っていうことがわかって、本当に嬉しかったですね。それもあって今回のテーマは"昔のファンの人達に集まってもらおう"というところから、タイトルを『PLACE』にしたんです。

●青春時代にSound Scheduleを聴きながら育った人は多いと思うよ。新作も聴かせてもらったけど、これほどの音源なら当時を知らない世代にも新しいファンが増えそうじゃない?

川原:僕らの曲を聴いたことがない人達にも、新鮮に響けばいいなと思っていて。それがこのアルバムの勝負どころでもあるんです。レコーディングでもエンジニアさんとしっかり話し合って、良い音が作れたかなと思います。僕もバンドを辞めてからディレクターとしてアーティストに偉そうなことを言っている身だから、良いものを作らないと示しがつきませんし(笑)。

●"川原くんって、こんなシャープなドラムも叩けたんや"と思ったよ(笑)。俺はこのタイミングで再結成することに対して、何となく必然性を感じるんだけど。

川原:解散してからも、やっぱりお互いのことが気になっていて。今は検索キーワード1つであいつらが何をやっているのかわかる時代だから、近況を知る度に"負けないように頑張らなきゃ!"っていう気持ちがあったんですよね。離れていてもずっと繋がっているんだろうなと思っていたし、お互いに認め合っている今ならもっと面白いことができるんじゃないかっていうところから今回の再結成に行き着きました。

●改めて顔を合わせると、今までとは違う良さも見えて来たんじゃない?

川原:沖(Ba./Cho.)が一番変わりましたね。昔は難しく考え過ぎるところがあったんですけど、決断力も早くなってスパッとした考え方になった。大石と共作で歌詞を書いた曲もあるんですけど、"えっ!?"って思うような提案も沖がしてくれたりして。大石にはないセンスと面白さで作り上げてくれました。大人になったのかな…。

●大石くんは?

川原:人間性はさておき…。

●そこはさておきなんや(笑)。

川原:人柄はよく知っているので、あえてそこを踏まえずに評価しようかなと(笑)。相変わらず、大石の歌はひいき目なしに良いと思います。上手い下手の次元じゃなく、聴いただけでグッとくるものがある。歌に入ったときの集中力や表現の幅の広さは、"後ろでドラムを叩きたい"と思わせる魅力があるんですよね。だからソロを観ている時も"自分だったら絶対こうするのに"っていうのがあって、歯がゆかったりもしたんですよ。付き合いが長いだけに、大石の良さは誰よりも知っている自信があるから。

●最初に結成した時から、"良いものを持っているな"という感覚があった?

川原:ありましたね。いろんな人とバンドを組んできたけど、大石の歌を初めて聴いた時に"もしかしたらプロでもイケるかも"と思ったんです。やっぱりSound Scheduleの大きな魅力は大石のボーカルがバンドを牽引しているところにあるから、僕と沖がいかにその魅力を引き出せるかが重要で。そこでも今回は、昔ならできなかったようなアプローチができたと思います。セッションしながら作る感覚で、リラックスして取り組めましたね。

●忙しい中でのレコーディングは大変だったとは思うけど、今までにないこともやれたと。

川原:本当に大変でしたね(笑)。今までは3人の音でしか録音しないって割り切っていたんですけど、今回はその概念を振り払ってみても良いんじゃないかと思って。だから初めてストリングスを入れたり、他のミュージシャンに手伝ってもらったりもしたんです。誰かと一緒にやる時って、他の音を入れるだけのスペースを作っておかないといけないから、自分達だけで好き勝手に演奏すると成り立たないんですよね。それを計算しつつ、僕らが出したい"お祭り感"と"マジメ感"をブレンドするのが難しかった。

●俺は昔から知っているだけに、今回の音源を聴いて"肩の力を抜いて作ったらこんな曲も作れるんだ"ってビックリしたんだよね。

川原:基本的に3人とも凝り性なので、1つ1つの音を大切にしながら上手に合わせていくのが得意なんです。最近は音の塊を全体でぶつけるようなサウンドを重視するバンドが増えてきたけど、逆に歌モノのバンドが少なくなった気がしていて。僕らはシンガーソングライター的な色のあるバンドなので、この機会に歌モノの良さをもう一度見つめ直してもらえたらと思って作りました。

●今回のために書き下ろした6曲はどれも大石くんが作詞したの?

川原:大石が作ったものがほとんどですが、中には沖が書いてきた部分や3人で作ったものもあります。M-1「グッドタイムコミュニケーション」では"思い出バンドにするしない そんなことたぶん僕ら次第"っていう、今回の再結成に引っ掛けたようなフレーズも入れていたりするんですよ。

●今の心境が入っている。

川原:M-5「しあわせの文字」は以前から手掛けていたんですけど、"もう戻れない でも忘れない 僕らが笑っていた頃"っていう歌詞は今だからこそ歌いたいという気持ちもあって。昔を思い出しながらも、前に進んでいく姿勢を伝えたかったんです。ゴージャスにストリングスも入れて壮大なバラードにしたので、心に染み入るような良い曲になったんじゃないかと思います。

●川原くんはディレクターとして音楽と関わるようになったことで、見えた部分もあるんじゃない?

川原:ありましたね。以前もあったようなバラードでも新鮮に聴こえるようにと選曲の段階から考えたので、作品全体がすごく良いバランスになったんだと思います。M-9「ピーターパン・シンドローム」やM-10「ことばさがし」のリミックスも、すごく発見が多かったですね。2曲ともSound Scheduleを代表する曲ですけど、この曲を録った当時はまだアナログテープの時代だったんですよ。

●まだそういう時代だったんやね。

川原:2曲とも10チャンネル程度しか使っていないのにこれだけの曲を作っていたんだと思うと、昔はもっと知恵を使ってやっていたんだなと実感しましたね。アナログ録音では塊になることで活きる良さがあるんですけど、1つ1つの音の立ち上がりは弱かったりもするんです。そこで今回デジタルに立ち上げるにあたって、音を磨き上げて生まれ変わったのがリミックス曲なんですよ。劇的な変化はしていないけど、昔の曲を知っている人にも今の音として楽しんでもらえるんじゃないかな。

●納得のいくものができた?

川原:今までに作ったアルバムよりも達成感がありました。ラジオ等でも流れているし、僕らを知らない人達にも興味を持って欲しいですね。期間限定とはいえ、復活にあたってHPも立ち上げたんですよ。ブログを見たりツイッターをフォローしてもらえば、このオッサンらが何をやっているかがわかると思います(笑)。

●オッサンって(笑)。大石くんはソロ活動も継続してやりつつ、今回の再結成ということだけど。

川原:アクセントとしてこういう活動を入れていけば、みんなの制作意欲も刺激されるかなと思って。大石は今回のアルバム制作後に、すぐソロの制作に入っているんですよ。そっちにはノータッチなので、僕らもすごく楽しみですね。

●解散から5年経った今でもお互いを尊敬し合っている気持ちが曲からも伝わる気がするのは、3人に信頼感や気持ちの繋がりがあるからだろうね。

川原:去年末に再結成の話が出てからは、さらに3人の距離が近くなって。昔なら気を遣っていた場面でも、それぞれがニュートラルに発言できるようになったんです。今の方が自然体でやれている感じがするし、それを音楽にも反映できたと思います。

●サウンドからも本当に音楽が好きで、3人での音作りを楽しんでいる感じが伝わってくる。

川原:みんなが音に関して真剣に考えているから、久々に合わせた時も楽しかったんですよ。以前はレコーディングでもサウンド的なきれいさというか、上手に聴こえることを大事にしていたんです。でも今はそういうことよりも、この3人にしか起こせない奇跡を封じ込められたら最高だなと思うようになって。

●音作りの方向性も変わったんやね。

川原:昔よりも録るのに時間はかかったけど、作業自体は楽しくてしょうがなかったですね。肩の力を抜いて取り組める環境でトライできたことが大きなプラスになったし、だからこそ昔とは違うものができたのかもしれない。昔は昔で良かったんですけど、今もまぁまぁ良いですよ(笑)。

●まぁまぁって(笑)。これからSound Scheduleはどんな動きをしていくの?

川原:最初にも言ったように、あくまでも今回の再結成は一時的なものなんです。でも待ってくれている方も大勢いることがわかったので、今後は1年に1回でもいいから途切れることなくお祭りができたらいいなとは思っていて。

●継続的ではないけど、たまにはやろうかなと。

川原:久々に聴くからこそ"良いな"って思うところもあるかなって(笑)。この音源を大切に何回も聴いてもらって、そろそろ聴き飽きたかなっていう頃にまたライブができたらいいですね。作品にするかどうかは別として、今回を機に大石や沖と一緒にまたスタジオに入るのもいいねっていう話をしているんですよ。機会があれば、また新しい音源も出してみたいですね。ファンの皆さんに応援して頂かないと成り立たないこともたくさんあるので、どうかこれからも忘れずにいてやってください。

●ワンマンツアーもあるし、意気込みも半端じゃないでしょ? アーティスト写真ではふっくらしていた川原くんが、今はプレッシャーで頬がこけてるもん。

川原:(笑)。撮影時は大石も沖も体型的に昔とほとんど変わっていなかったんですけど、僕だけは体重が増えていたんです…。すごく残念なんですけど…。

●(笑)。でも3人ともカッコよく写っているよ。

川原:最初、沖は悪ふざけでリーゼントにしてみたんですよ。でも意外と似合っていたので、そのまま撮影したという(笑)。エルヴィス・コステロみたいになりましたね。

●前からこの髪型だったんじゃないかっていうくらい、全く違和感がないよね(笑)。リリースツアーはどんなライブにしたい?

川原:勢いのある楽曲もありますけど、やっぱり僕らは歌を大切にしているバンドなので大石の声色を上手に引き立てるライブにしたいです。ありがたいことに、既にチケットがSOLD OUTしているんですよ。

●いかに愛されてるかがよくわかるよね。

川原:「もっと広いとこでやらんかい!」っていうファンからのツイートに平謝りしています(笑)。でも本当に嬉しい限りです。

●あのSound Scheduleが復活するとなれば、みんな大騒ぎするよ! 美空ひばりが生き返るとか、山口百恵が復活するようなものじゃない!

川原:そんなにすごくはないですから(笑)。でも、それくらいのお祭り感覚を味わってもらいたいなとは思っています。今回は東名阪だけだから来れない地域の方も多いので、何らかの形でライブ映像もお届けできたらと考えています。

●この反響を予想できなかったのは、ディレクターとして川原くんの落ち度だよね(笑)。

川原:完全に僕の落ち度です(笑)。今回のツアーではニューアルバムの曲も織り交ぜて、ファンのみなさんに喜んでもらえるセットリストでやりたいなと思っていて。当時のバンド仲間達に対しても、今回の再結成で"僕らもちゃんとやっているぞ"っていうのを見せられたらいいですね。

Interview:PJ / Edit:森下恭子

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