来年デビュー25周年を迎えるTOKYO SKA PARADISE ORCHESTRAが、プロデューサーに亀田誠治を迎えて“バンドコラボ3部作”をスタートさせた。第1弾となるシングル『閃光 feat. 10-FEET』は、シーンを代表する3ピースバンド・10-FEETとのコラボレーション。両バンドでリハーサルに入って音と気持ちを重ね、最高の空気に包まれたまま一発録りで生まれた奇跡のテイク。現在ライブハウスツアー“STAND OUT!”真っ只中、来年8/9には伝説のスカフェス“トーキョースカジャンボリー”を開催するTOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA。諦めることを拒み続け、現状に甘んじることなく新たなチャレンジを続ける彼らの音は聴く者を狂喜させ、そのライブは観る者を乱舞させる。
●TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRAは10-FEETが主催する“京都大作戦”に2度出演されていて、なんとなく両バンドの繋がりは見えてくるんですが、そもそも今回の“バンドコラボ”というアイディアに至った経緯はどういうものだったんですか?
谷中:来年25周年を迎えるにあたって、自分たち的に新しいチャレンジをしたかったんです。それで何をしようかと色々と考えていたのが、ちょうど今年の“京都大作戦”に出るタイミングだったんです。
●ということは、バンドコラボをしようと思いついたのは今年の夏?
谷中:そうですね。その前後に“MIYAKO ISLAND ROCK FESTIVAL 2013”や“Sky Jamboree 2013”でも10-FEETとは一緒で、彼らの存在をいままで以上に近く感じていた夏ではあったんです。今年は特に。
TAKUMA:そうですよね。
谷中:それで、僕らの“京都大作戦”の出番前…1〜2分くらい前に、TAKUMAくんがいきなり来て何を言い出すかと思ったら、「その同じスーツを着て、いつか同じステージに立ちたいです!」と。
●本番前にそんな大それたことを?
谷中:そうそう(笑)。でもちょうど新しいことにチャレンジしたいと考えていたときだったので、“これってもしかしたらアリじゃない?”みたいな感じで、メンバー同士で顔を見合わせていたんです。僕もTAKUMAくんに対して「それ言ったことちゃんと覚えといてよ!」みたいな感じで返事をして。その後、具体的に企画が見えてきた段階でギターの加藤くんがTAKUMAくんに電話したんです。バンド同士でコラボをやるというのは結構大変なことだと思ったので、僕は最初“大丈夫かな?”とちょっと心配だったんですけど、今回のバンドコラボ3部作は亀田誠治さんにプロデュースしてもらうことになったので、“まあ亀田さんがいればなんとかなるだろうな”と。
●TAKUMAくんはどういう気持ちで「いつか同じスーツを着て同じステージに」と言ったんですか?
TAKUMA:TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRAは憧れの大先輩で、“京都大作戦”に出てもらって。そこで僕が本番前に挨拶に行って「俺たち本当にコラボしてほしいです!」とかしこまって言うのは、それはそれでちょっと違うというか重いかなと思って。だからちょっとふざけた感じで、しかも未来のこともちょっと織り交ぜつつ。もちろん本気で「いつか一緒にやりたい」と思いながらも、半分は気のいい兄さんたちに甘えて、気持よくステージに出てもらうようにと思ってました。
●いつかやりたいとは思っていたんですね。
TAKUMA:思ってました。みんなが次から次へとスーツを着ていって、俺らはいつまで経ってもGパンにTシャツで、「俺らいつになったらあのスーツ着れるんやろうな?」って。
●TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRAは今までヴォーカリストのフィーチャリングを何度もされましたが、今回のバンドコラボは今までとは違いました?
谷中:そうですね。今回は全部最初から一緒に作ったというか。今までのフィーチャリングは、僕らで全部責任を持って決めて、ヴォーカリストの方に来ていただいて、僕らが最後まで責任を持って作る、という感じだったんです。でも今回は、最初から一緒に作っていく。それは初めてのことだったんですけど、すごく刺激的だったし、有機的なフィーチャリングになったと思います。しかもレコーディングも、前もってリハーサルをやっていたということもあり、0テイクでOKという。
●え? 0テイク?
谷中:何回も演奏してないですもんね?
茂木:うん、してない。
谷中:10-FEETはいつも何テイクくらい録るの?
TAKUMA:結構やりますね。
KOUICHI:まず一発録りということがないです。ほぼ経験がないというか。
TAKUMA:1分半くらいの短い曲じゃないと怖くてできないっていうか。
KOUICHI:そうやな。だから今回は緊張感がほんまにありました。
谷中:あ、そういう意味では初体験に近いレベルだったんだね。
KOUICHI:そうですね。
NAOKI:最初のテイクでOKなんてないよな?
KOUICHI:ないない。
谷中:でもすごく良かったよね。
GAMO:うん。すごく良かった。
谷中:1テイク目でOKっていうのは一緒の気持ちだったよね?
TAKUMA:僕は…実は2箇所くらい間違えていたんですけど。
一同:アハハハハ(笑)。
TAKUMA:みんながいい意味で「これヤバくない?」って興奮しているとき、1人で「まあギター2本あるし、他のアンサンブルもいっぱいあるし、大丈夫かな…」って。
一同:ハハハハ(爆笑)。
●そのコラボ曲であるM-1「閃光 feat. 10-FEET」はどうやって作ったんですか?
GAMO:もともと僕が作ってきた曲なんです。
谷中:でもGAMOさんが作ってきたときはこんなに激しいアレンジじゃなかったですね。
●最初から10-FEETとのコラボということは頭にあったんですか?
GAMO:いや、そこは迷ったんです。10-FEETとコラボすると決まった時点で、一緒にやる前の段階でちょっと迷ったんですよ。元気な感じにした方がいいかなとか。
谷中:アレンジはもちろん10-FEETと一緒にやることを前提に作りましたけど、「曲を書いたときは少し傷心状態だった」ってGAMOさん言ってましたよね?
GAMO:うん。実はそうだったんですよね。
茂木:センチメンタルな感じでしたね。
●傷心状態? 何があったのか気になりますね。
谷中:訊いてみたいですよね。
一同:うんうん。
●GAMOさん、なにがあったんですか?
GAMO:それは…ちょっと言えないんですけど。
一同:アハハハハハハハ(爆笑)。
●言えないけど、とにかくセンチメンタルな心境だったと(笑)。
GAMO:そうなんです(苦笑)。
●この曲、すごく予想外だったんですよね。TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRAに対するイメージとしては、楽しくて、みんなを巻き込むようなエネルギーに溢れている印象があったので、10-FEETとのコラボと聞いて楽しくて元気のある曲だと思っていたんです。
GAMO:普通はそうですよね。でもバンド的にもチャレンジするコラボだったから、個人的にも普段とはちょっと違ったような感じで、センチメンタルなものをバンドに投げかけてみたんです。10-FEETの僕のイメージとしては、なんだかんだで激しい曲が多いですけど、その中に浪花節っていうか、激しい中に泣けるところがないですか?
●ありますね。すごくあると思います。
GAMO:そうですよね。だからセンチメンタルなものでも上手くいくんじゃないかなと。そこに10-FEETの3人の演奏とTAKUMAくんの歌が入ったとき、今までやったことがないような感じになるんじゃないかなって。そしたらドンピシャでハマリました。
●スタート地点は個人的なセンチメンタルだったけど、それが10-FEETの哀愁感とぴったりだったと。
GAMO:そうですね。演奏的には激しくて元気な感じもあるんですけど、なんかTAKUMAくんの歌を聴くと泣けるっていうか。完成したときに「よし! 最初に思っていたのはこれだったんだ!」って思いました。
●10-FEETは哀愁感のあるセンチメンタルな曲だったとしても、ライブでは決してしんみりしないんですよね。極端に言えば、お客さんが涙を流しながら暴れるというか。「閃光 feat. 10-FEET」はそういうベクトルの曲ですよね。
GAMO:そうなんですよ。
●10-FEETの3人は、この曲を最初に聴いたときどう思いました?
TAKUMA:曲調を聴く限りでは、やっぱりあの子ら10-FEETのことがめっちゃ好きなんやなって思いました。
●ん? あの子ら? 先輩ですよね?
谷中:ちゃんと覚えとくからな!
一同:ハハハハハ(爆笑)。
TAKUMA:僕らもやっぱり今までのコラボ曲を聴いてきているので、失礼な言い方になるかもしれないですけど、“どういうアプローチで来るのかな?”と思っていて。
谷中:ああ〜、確かにそっちの立場からしたらそう思うだろうね。
TAKUMA:コラボしていない曲も含めて、TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRAというバンドが持っているどのアプローチで来るのかな? って思ってたら、どこにもないやつが来たからびっくりしました。「こんなアプローチで来るとは!」って。しかもほんまに歌メロとかもすごくフィットして。譜割りとかはちょっと変えさせてもらったりもしたんですけど、自分の曲みたいな感覚になるのもすごく早かったし、すごく自然でした。
GAMO:へぇ〜。
TAKUMA:ベーシックになっている元ネタを“覚える”という感じですらなくて、最初はもちろんコードの場所を調べたりするんですけど、それを1回覚えたらもう楽しくて仕方がない。自然と口ずさむし。リハのときもめっちゃ気持ちいいんですよ。TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRAのメンバーと単に合わせるだけでめっちゃ楽しいんです。自分のことのようにやれたっていう感じはすごくありましたね。だから、あの子らめっちゃ好っきゃねん、俺らのこと。
●あ、また生意気なこと言った。
一同:アハハハハ(爆笑)。
GAMO:何分かに1回絶対笑いが入るよね。
TAKUMA:すみません、我慢できなくなって(笑)。
茂木:この感じがもう日常になってるんだね(笑)。
●NAOKIくんはどうでした?
NAOKI:衝撃的でしたね。ベースラインとかも、僕の手癖にはまったくないものだったし。
GAMO:ああ〜、はいはい。
NAOKI:アプローチとかも絶対に僕では思いつかないことばかりだったし。そういうのもあって、やっていてすごく楽しかったですね。新しいことを覚えた感覚というか“あ! こういうのもすごくいい!”って。
●KOUICHIくんは?
KOUICHI:さっき言ってたように、僕ももっとポップな曲が来ると思っていたんですよ。でも全然そうじゃなくて。ドラムの音も、最初にデモ音源を聴かせていただいたときにどうやって出しているのかわからなくて、茂木さんに「あの音どうやって出してるんですか?」とか訊いたりしたんです。そういうことも含めて、アレンジするのがめっちゃ楽しかったですね。
茂木:「この曲はこうだから、こういうリズムパターンでやって」とかは絶対に言いたくなかったし、お互いどんなものが出てくるのかが楽しみだったんです。だからできるだけ決め事を作らずに、ただ演奏したいなと思っていて。リハーサルをしていてそれがいちばん楽しかったね。
TAKUMA:リハーサル楽しかったな〜。
一同:うんうん。
茂木:リハーサルは3回入ったんですけど、全部楽しかった。
●リハーサルはすごく楽しかったということですが、そこでどんどん曲が変わっていったんですか?
GAMO:うん。どんどん変わっていった。
茂木:途中のラップのパートなんて、TAKUMAくんがすごかった。
●あ、あのラップは最初なかったんですね。
GAMO:もちろんないです。
茂木:でも「ここで何かが起きるぜ」っていう話は、TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRAのメンバーでしていて。
谷中:そういう余白を残してリハーサルに臨んだんです。「そこは何か10-FEETに活躍してもらう場所にしよう」って。最初から10-FEETに色々とアイディアを出してもらおうと思っていたんですけど、実際に入ってみたらもうアイディアどころじゃなくて、どんどん出てきて。リハーサルのときも、TAKUMAくんがすごくいっぱい色んな提案をしてくれたんです。
●そうだったんですね。
谷中:後で聞いた話なんですけど、NAOKIくんやKOUICHIくんが「お前、今日はめっちゃガンガンいってたな」という話をしていたらしくて(笑)。
●え? そんなにガンガンいってたんですか?
KOUICHI:“こいつちょっと怒ってんのかな?”っていうくらい、グイグイいってました。
一同:アハハハ(笑)。
TAKUMA:でもほんまにそうやったよな。僕のことを知らん人が見たら「え? ちょっと大丈夫? 先輩やぞ?」って心配になるくらい(笑)。
茂木:アイディアがバンバン湧き出てたよね。
谷中:それが楽しくて仕方がなくて。
TAKUMA:結果的には、先輩には生意気には映っていなかったから良かったんですけどね。
KOUICHI:亀田さんにもガンガンいくし。
●え? マジで?
TAKUMA:前日に色々と模索していたんですよ。10-FEETの3人では今までできなかったけどTOKYO SKA PARADISE ORCHESTRAと一緒やったらできるかもしれない! と思うようなこととか。そうやって色々とアイディアを考えていたんですけど、次の日の朝に改めて見直してみたら自分でも“ちょっとやり過ぎかも?”と思ったりして。だからリハーサルでは様子を見つつ、出せるところがあったら出すつもりだったんですけど…いざみんなで演奏を始めたらもうすごくて、気持ちが高まってしまったんです。迫力とか、雰囲気とか。
一同:ああ〜!
TAKUMA:その雰囲気も、めっちゃ緊張感はあるんですけど変に力が入り過ぎない部分もちゃんとあったりして。説明が難しいんですけど、みんなから“いい音楽を作りたい”という気持ちがビシビシ出ているんですけど、僕らが萎縮するような雰囲気は一切ない。かと言ってゆるくもない。不思議な感覚だったんです。“たぶんTOKYO SKA PARADISE ORCHESTRAはいつもこんな感じで曲を作ってはるんやろうな”っていう、独特の感じがありました。曲を作るのが当たり前で、そこに対して「いいバイオリズムを保ちながら今日1日やりましょう!」みたいな空気が流れているんですよね。それでもうこっちもテンション上がってしまって、“ちょっとやり過ぎかも?”と思っていたことも言ってみないとわからないし、案外それくらいグイグイいかないとコラボ感も出ないんじゃないかなと思って、とりあえず怒られるところまで言ってみようと。
GAMO:フフフ(笑)。
TAKUMA:雰囲気が悪くなりそうだったらやめようと思いつつ「こ、ここ、こうしません?」みたいな。「変やったら言ってくださいね。例えば、例えばですよ?」みたいな感じで言い始めたら、亀田さんも含めてみんなが「とりあえずやってみようよ」って。
●へぇ〜。
TAKUMA:新しいアイディアが出るたびに「まずやってみよう」って。「やってみてから決めよう」って。「よくわからんかったらもう1回やろう」って。それでやってみたら、僕が想像していたものよりも全然良くて。実際にあのメンバーで合わせてみたら想像できないほどの迫力で。僕ら普段3人で演奏しているからオーバーダビングはどうしても必要になってくるんですけど、TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRAとバンドのコラボでやったら、そこでバーッと出した音がもうマスタリング済みくらいの厚みがあるんですよね。
KOUICHI:そうやな〜。
TAKUMA:それがほんまに良かったんですよね。あのラップのパートも、最初は“カラー的にtoo muchかな?”と思っていたんですけど、いきなり曲のど真ん中にドーンと入れたら、急に展開が変わっているのに繋ぎ目が全然不自然じゃないという不思議な現象が起きて。もっと取って付けた感じが出るかも? と思っていたんですけど、それで「これはいけそうやな」となって、そこから間奏の尺とか展開を考えていったらそのまま綺麗に決まっていったんです。
谷中:うんうん。
TAKUMA:しかも僕はその提案を、TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRAの兄さんたちにもらったデモのバージョンを1回か1回半合わせたくらいの段階で言ったんですよ。要するに、最初に貰ったネタに対して吟味もせずに新しいアイディアを出したというか。だからうちのメンバーは結構びっくりしてたみたいで。終わった後でホテルに帰ったとき、メンバーと「お前いくな〜、亀田さん初めてやろ?」「うん、初めて。めっちゃ優しそうやし大丈夫かなと思って」とか話して。
KOUICHI:それを受け入れてくれはる人たちやったんやな。
TAKUMA:そうそう。「TAKUMAが言ってることはこういうことかな?」って、谷中さんとかも立ち上がって「こうかな?」みたいに演奏してくれたり。めっちゃドキドキしたよな?
KOUICHI:でもそれがスムーズなやりとりで。
TAKUMA:ほんまに気持ちを牽引してもらった感じです。
茂木:いや〜、でもリハーサルのハイライトは本当にあそこだったな〜。興奮したね。めっちゃめちゃ興奮した。
GAMO:そうだね〜。
茂木:確かにTOKYO SKA PARADISE ORCHESTRAは「それはナシでしょ」という発想がないんですよ。全部「それはアリかも」という感じでやっているんですけど、その空気感が伝わって、TAKUMAくんの口から意見がどんどん出てきて。「アリかも!」っていうときの熱意っていうか。“これがバンドのコラボでやりたかったんだよ!”って思いましたね。猪木イズムじゃないけど「行けばわかるさ」っていうね(笑)。「このレールは脱線するかもしれないけどとりあえず行ってみよう」って。「というか、行けるでしょ」っていう。そこが大事。うん。
一同:うんうん。
●同じバンドメンバーとして1つの曲を作ったというか。
TAKUMA:まさにそうで、新しいアイディアが出るときに誰か1人か2人がちょっと立ち止まって考えることが必ずあるんですけど、だとしても誰もが「とりあえず1回やってみよう」ということを拒まないんです。やってみて、終わったら「ああ! そうか!」ってなってる。それがもう、バリバリ健全なんですよね。みんなめっちゃ前向きなんです。一瞬自分の中でネガティブな感じがよぎったとしても、とりあえずやる。魔法がかかったみたいにみんながどんどんやるんですけど、それが全部いい結果になるんです。だから「なんか変やな」っていうのがあまりなかったですよね?
茂木:ないない。
TAKUMA:間奏の候補もあと5パターンくらいあったじゃないですか。でもどれも悪くなかったんですよ。
●え? そんなに候補があったんですか?
GAMO:どれも悪くなかった。全部かっこよかったよね。
TAKUMA:理屈で考えるわけではなくて、みんなが「これがいちばんかっこいいね」っていうのを選んでいった感じでした。
GAMO:こうなるかな? というのを描きつつも、どうなるかわかんない心配もずっとありながらのレコーディングだったんです。最後に歌が乗るまで。当然自分たちとは違うもの…異物がバンドに入ってくるわけじゃないですか。多かれ少なかれ摩擦が起きるだろうし。そこの摩擦がすごくいい感じに働いて、想像していた以上の作品になったと思います。
茂木:さっきNAOKIくんが「手癖になかった」と言っていたけど、僕たちも「あ、そういう発想はなかったわ」みたいなことの連続で、“こんな曲ができたか!”っていう驚きがありましたね。やっぱり聴いたことがないものを聴きたいからさ(笑)。
一同:うんうん。
茂木:でも、今までのフィーチャリングもそうでしたけど、今までに聴いたことがないものを作ったときって最初は驚かれつつも、次第に受け入れてくれるじゃないですか。だから今回も切磋琢磨して作ったけど、出したらこれがデフォルトになるわけですよね。そういう恐怖感もありつつ(笑)。
●これが3部作の1作目ですもんね(笑)。
TAKUMA:そんな恐怖感もありつつ、3部作の2作目も3作目も10-FEETにオファーが来るんじゃないかという期待感がありますけどね。
一同:アハハハハハハハ(爆笑)。
●「閃光 feat. 10-FEET」の歌詞はどうやって書いたんですか?
谷中:ラップ以外の部分は僕が書きました。10-FEETの今までの作品を改めて聴いて、これまでの流れも意識しつつ、10-FEETのファンの人にも感情移入してもらいたいと思ったので、TAKUMAくんのことと、10-FEETのことと、“京都大作戦”のお客さんのことをずっと考えながら書いたんです。
●なるほど。
谷中:“京都大作戦”で歌ったときにいい感じにしたかったので。それに、TAKUMAくんにも色々と相談しながら作ったんです。
TAKUMA:歌詞の相談を谷中さんと携帯メールでやり取りしていたんですけど、お互いが思う正解も、“なんかちゃうな”っていうところもいっぱい出し合ったんです。そのやり取りの中で、2人ともが“これいいんちゃうかな”っていうのが結構多かったのが嬉しかったんですよね。時間が経つにつれて、曲のイメージとかお互いの公約数がどんどん増えていったからだと思うんですけど、そのやり取り自体もすごくドキドキして。曲に向かって進んでいく感じがすごく楽しかったです。
谷中:そうだね。結局、歌詞は3〜4回書き直したかな。レコーディング当日も、歌いやすさや気持ちよさを重視したいから意見を聞きつつ、何パターンか作っていたサビのバースをその場で新たに作ってみたり。基本的には“友情”っていうか、いろんな世代に伝わる世界観にしたいなっていうところは前もって伝えておいたんですけど、色々と相談しつつ。ラップの部分も当日だったよね?
TAKUMA:そうですね。
谷中:僕は、当日に歌詞を変えたりした経験は今までほとんどないんですよ。でも今回はすごく新鮮だったし、スリリングでおもしろかったですね。
GAMO:ラップの部分も、余白を作っていつつも最初は“どうなるのかな?”って思っていたんですけど、当日ラップ以外のパートを録ったあと、オケが録れてから、TAKUMAくんが「ちょっと時間ください」ってブースにこもって。その場で作ってるんですよ。「えーっ!?」ってびっくりしちゃって。
TAKUMA:僕もどんなものができるのか全然わからなくて。
一同:アハハハハ(笑)。
茂木:これすごくない?
TAKUMA:さっき「スリリングだった」と言ってはりましたけど、僕なんてバリバリスリリングでした。その場でブースで作ったものがめっちゃダサかったどうしよう? って。「これたたき台で、ここから変わっていきます」って言うしかないなと思ってました。
一同:アハハハハハハハ(爆笑)。
茂木:自分を追い込むなぁ〜(笑)。
●その場で感覚的に作ったからこそ、それぞれのらしさが自然に出たんでしょうね。
GAMO:すごかったね。
●「閃光 feat. 10-FEET」の歌詞は、情景描写と心情描写のバランスがすごく絶妙だと思ったんです。歌で表現されている情景描写はアレンジとすごくマッチしているし、ラップの部分では赤裸々に近い感じで心情が表現されていて、その対比がいいなと。
谷中:TAKUMAくんが言っていたんですけど、ラップの部分は主人公のナレーションというか、独白するような生々しさがあっておもしろいですよね。この曲ではいろんなことをバラバラと言っているんですけど、共通する色というか景色が出てきたので、最終的にはまとまったのかなと思います。
●最初に話がありましたけど、一発録りというのは最初からそのつもりだったんですか?
茂木:うん。最初から全員で一発録りできるようなスタジオを押さえていたし。
TAKUMA:めっちゃくちゃ緊張しましたね。でも、さっき言ったようなリハーサルの不思議な空気がレコーディングでもやっぱりあったんです。「とりあえず1回音出ししてそれから録りましょうか」って、チューニングして「試しにサウンドチェックでーす」って言って「1、2、3、4…」って録り始めたときにサッと魔法がかかったみたいになったんです。これもう、みんなが言ってたんですけど。
一同:そうそう。
TAKUMA:その瞬間に、すごくいい予感がしたんですよね。
茂木:思ったね。
TAKUMA:あれ、何なんでしょうね?
谷中:1人も不安に思っていないっていう雰囲気があったね(笑)。
TAKUMA:みんながみんな魔法がかかったみたいにフワッと。だから間違えるとか間違えへんとか、テイクとしてのクオリティとか、そういうことじゃなくて。あれ、何て言うんやろうな…。たまにライブとかで、何をやってもすごいグルーヴが生まれることってあるじゃないですか。
茂木:うんうん。
TAKUMA:そういう類の変な魔法に似てたっていうか。「絶対に良くする!」とかじゃなくて「あ、もう良くなる!」っていう感じで、実際に演奏し終わったらみんなインカム越しに「めっちゃ良かったですね。なんでこれサウンドチェックだったんでしょうね」って。そしたら実はエンジニアの方が録ってくれてて。
●おおっ! そのテイクが作品になったんですね。だから0テイクなのか。
茂木:亀田さんもノリノリだったよね。「これすごくいいじゃない!」って。
TAKUMA:「これまさかの? まさかの?」って(笑)。
茂木:「まさかの?」って言ってたね(笑)。
TAKUMA:僕は2箇所間違えてたけど、実際に聴いてみたらそれも全然わからへん。あそこまでいったら関係ないですよね。めっちゃ感動的だった。
茂木:一発録りの良さだよね〜。僕らはライブが終わった後とか、そのライブがすごく良かったら「自動演奏スイッチが入ったね」ってよく言うんだけど、もう自分が演奏している感じじゃないというか。身体が全然力んでないんだよね。
TAKUMA:なのにタイトですもんね。というか、自動演奏スイッチっていい表現ですね。
茂木:いつも“自動演奏スイッチが入ったらいいな〜”とか思いながらステージに上がってるんだけどね。今回のレコーディングは「それが入った!」っていう感じだった。「来たーっ!」って。
TAKUMA:そうでしたよね。それも、僕はあの日まで弾きながらちゃんと歌ったことがなかったんですよ。リハーサルでは弾くとぐちゃっとなってできひんかったんですけど、あの日はギター弾きながら歌いながら録りましたよね。
茂木:きっとそれも良かったんだよね。
NAOKI:もうイントロでちょっと全員が「ニヤッ」としましたよね。
GAMO:した(笑)。
TAKUMA:気持ちよかった。めっちゃ気持ちよかった。僕らはたかだか16年ですけど、あんな気持ちになれるのってほんまにないんですよ。ライブでも1年に数回あるかないかっていう程度のものやし。しかも一緒に曲を作る時間もすごく限られてるのに、たったその日のあの時間にそれが起こったっていうのは、音楽の神様のすごく粋なはからいやなって。それくらいの奇跡でしたね。
GAMO:僕らもよく一発で録るから、最初に“これで決まるかな”っていうのはなんとなくわかるんですよ。今回、TAKUMAくんが歌い始めて“これ来るな!”と思ったから、逆に僕らは“これはちゃんとしなきゃ!”って。
一同:アハハハハハハ(笑)。
GAMO:“これはハズせない!”っていう、いい緊張感があった。
●素晴らしい出会いですね。
TAKUMA:一生忘れないです。
茂木:すごい瞬間でした。
一同:うんうん。
●それとカップリングも粋ですよね。M-2「Mission Impossible Theme」という、愛情を感じまくる選曲で。
GAMO:“京都大作戦”のテーマ曲ですからね。
茂木:たまたまです。
TAKUMA&NAOKI&KOUICHI:おーい!
一同:アハハハハハ(爆笑)。
GAMO:「Mission Impossible Theme」はね、加藤のアイディアなんですよ。アレンジもノリノリの感じにして。
茂木:そうだ。これ、“Sky Jamboree 2013”で演ったんだよね。
GAMO:そうそう。「10-FEETの3人をびっくりさせよう」って言って、いきなり。
TAKUMA:そうですよね! 嬉しかったなぁ。
●TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRAのライブを観ると、純粋な音楽の力を感じるんですよね。音楽でこれだけの人を興奮させることができるのかって。
TAKUMA:それ、すごくわかる。
●他のアーティストとはちょっと違う次元のような気がしていて。中には、MCで熱いこと言ったりおもしろいこと言ったりして盛り上げるバンドもいるじゃないですか。
TAKUMA:それウチやんけ!
一同:アハハハハハ(笑)。
●でもTOKYO SKA PARADISE ORCHESTRAはその場で出す音だけで勝負しているように見えるし、そこがずば抜けていると思うんです。そういうライブに対する姿勢が、今作のレコーディング時の魔法みたいなものにも関係しているような気がしていて。
TAKUMA:うんうん。
●なのでこの機会に訊きたかったんですけど、来年25周年を迎えるTOKYO SKA PARADISE ORCHESTRAがバンドとして大事にしてきたことって何なんですか?
谷中:さっきのリハーサルの話にも関係するんですけど、アイディアをやってみるということですね。面倒臭がらずに、必ず試してみる。あとは、よくミーティングしてます。お互い話し合うっていうことは大事だし。…なんか当たり前のことばかりですけど(笑)。
●いえいえ。
谷中:あとは、諦めないっていうことですかね。“良くなりそうだな”って思ったら、良くなるまで誰も諦めようとしないんです。だからすごく時間がかかるときもあって。誰かが“周りの人が言う意見でいいじゃん”とか、誰かが“最初のアイディアに戻ればいいじゃん”とか思ったりはするんですけど、でも誰も戻ろうとしないんです。新しいアイディアが出ちゃったら、それを超えるアイディアが出るまでは納得しないというか。
TAKUMA:すごいなぁ。
谷中:だから大変なんですけど、それでやるしかないっていうか。「しょうがないから最初のアイディアでいいじゃん」という風に戻んないんですよね。それは自分たちでもすごいなと思います。しつこい。
茂木:あ、しつこいね。うん。しつこい。
谷中:だからライブも、盛り上がらないお客さんがいるのが耐えられない。全員が盛り上がってくれないと納得出来ないというか、フェスとかでも遠くの方で飲食ブースの方に移動していくお客さんとかが見えると、それも耐えられない(笑)。
●ハハハ(笑)。
谷中:そこに意識を持って、メンバーは9人もいるので色んな方向に矢印を出してライブをしていますね。「そこの人、戻ってきて!」「そこの人、笑って!」みたいな感じで(笑)。そういうことは、続けていく上で非常に大きいと思います。
GAMO:昔は演奏よりも動き重視っていうか、「絶対に笑わせてやる!」と思ってやってました(笑)。
茂木:GAMOさんはその辺すごいもんね(笑)。
GAMO:それが映像に残ったり、音楽的にすごく後悔したりする。
一同:アハハハハハハ(笑)。
TAKUMA:アレンジで戻ろうとしないとかって…。
KOUICHI:それはすごいよな〜。
TAKUMA:俺ら2合目くらいで引き返すもんな。
NAOKI:うんうん。
KOUICHI:TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRAってすごいな。
TAKUMA:俺ら、常に誰かが何とかしてくれると思ってるもんな。
茂木:ほんとに? (笑)
KOUICHI:ギリギリまで自分らでやるけど、いつも最後は誰かがなんとかしてくれるし。
NAOKI:なるようになるからな。
KOUICHI:うん。
谷中:うーん、10-FEETは信用できねぇな。
一同:アハハハハハハ(爆笑)。
interview:Takeshi.Yamanaka