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SiM

その勢いはもはや誰にも止められない フロアを狂乱の渦に落とし込むレゲエパンクサウンド

昨年10月にリリースしたアルバム『SEEDS OF HOPE』が大きな反響を呼び、同作のツアーでは全国各地でキッズを熱狂させたSiM。

レゲエやダブといったルーツを持ち、ライブハウスで培ったソリッドかつラウドなサウンドと変幻自在のグルーヴ、攻撃的なリリックとタフな精神性を持つ真のライブバンドが、早くも新作をリリース。

待望のミニアルバム『LiFE and DEATH』はバンドのルーツを掘り下げつつ、進化を遂げたバンドのポテンシャルが存分に発揮された6曲が収録。ライブハウスの狂乱が目に浮かぶ。

Interview

「今回はもう少し掘り下げて、『SEEDS OF HOPE』を聴いてくれた人をもうちょっとSiMの世界に引きずり込めるような部分を見せたかった」

●アルバム『SEEDS OF HOPE』のツアーは大盛況でしたが、ツアーが終わってから今作の制作に取りかかったんですか?

MAH:いや、ツアー中にほとんど曲はできていました。

SIN:ツアーファイナルの"DEAD POP FESTiVAL 2012"のときにM-6「LiFE and DEATH」のデモを聴かせてもらったんだよね。

MAH:ファイナルの時点で5曲はできていて。ツアーは20本弱だったので、ほんのちょっとだけど時間はあったんですよね。そこでなんとか曲を作って、みんなに聴かせて、スタジオにパッと入って。俺らはそんなにスタジオで迷わないので、パッと入ってパッと作って、ツアー終わりに最後の1曲を作ってすぐにレコーディングしました。ツアーが終わってからはレコーディングばかりだったかな。

●なるほど。

MAH:前作を出したときに、俺は曲作りを始めていて。『SEEDS OF HOPE』はいろんな要素が入ってはいるけど、分かりやすくて直球で、SiMというバンドをものすごく簡単に紹介したようなアルバムだったんです。だから今回はもう少し掘り下げて、『SEEDS OF HOPE』を聴いてくれた人をもうちょっとSiMの世界に引きずり込めるような部分を見せたかった。加えて、分かりやすさは失わないというバランスを考えて作りました。

●SiMはもともとレゲエやダブといった横ノリの音楽から始まり、ライブを重ねていくうちに"お客さんをもっと暴れさせたい"という想いが強くなって、自然と激しくて重くてパンチのあるサウンドに変化してきたという歴史があるじゃないですか。そのルーツの部分を、今作はどの曲にも覗かせていますよね。

MAH:それが前作との違いかな。前作の反応として「レゲエじゃねえじゃん!」と言われることが結構あったんですよ。『SEEDS OF HOPE』では敢えてレゲエにならないようにしていて、メロディだけレゲエとか、ドラムとベースだけレゲエという風に意識して作ったんです。レゲエだからと敬遠されないようにと思ったんですけど、逆に「レゲエじゃねえじゃん!」という反応もあって…。「じゃあ今度はレゲエをやろうか」という感じ。

●そんな中で、「LiFE and DEATH」は他の曲とちょっと雰囲気が違うと感じて。ストーリー性もありながら、展開がすごくおもしろくて。

MAH:実は、この曲はもともとSiMでやるはずじゃなかったんです。

●え? じゃあどこでやるはずだったんですか?

MAH:俺は、PCの中だけで作り貯めているオナニーの曲があるんです(笑)。

●SiMとは全く関係ないということ?

MAH:はい。例えば、ただ"ダブレゲエっぽい曲を歌いたいな"と思ったときに作って、歌を入れて、家で聴いて…俺がひとりで「いいねえ~」って言うためだけの曲。

●オ、オナニーだ!
一同:ハハハハ(笑)。

MAH:その中で、ハウスと4つ打ちの中間というか、いい感じのところで曲を作りたくなって、実際に作ってみたんです。完全に打ち込みでタイトルも「LiFE and DEATH」じゃなくて。一方で、SiMでは5曲ができて"6曲目をどうしようか?"と考えたときに、ちょっとこれやってみたいなと思い付いて。

●作品にハマるんじゃないかと。

MAH:そうそう。それで、とりあえずバンドで合わせてみたら意外にいけそうだったので収録したんです。だから他の曲とちょっと違うというのはその通りというか、もともとSiMという前提で作っていないですから。

GODRi:ドラムはいちばん難しかった曲です。

●バンドで叩く前提じゃないんですもんね。

MAH:キックとハットの絡みとかを、あえてバンドとは全然関係なく作っていたので、なかなか難しかったよね。スタジオで「こうかな?」「いや、こうじゃね?」と試行錯誤して。

GODRi:もともとは打ち込みでやるつもりだったんですけど、やっぱりSiMというバンドの生っぽさを出したかったので、レコーディングではできるだけ生でやりたいなと。いろいろ試行錯誤して、結果こういう形になりました。

●ここ最近のSiMの流れとして、ライブ感というか、ライブでの爆発力が楽曲に還元されているじゃないですか。例えばM-1「Get Up, Get Up」とかM-2「Amy」とかは聴けばパッとライブの情景が見える。「今度はレゲエをやろうか」というところから制作が始まった作品かもしれないけど、ライブからのフィードバックも大きいと感じるんですよね。

MAH:最終地点を"ライブでいかにかっこよく盛り上がれるか"というところに置いて作っているので、いろんな要素がまとまっているんだと思います。行き過ぎず、あくまでライブでできるように。やっぱりライブは意識しますね。で、そういうことを考えない創作欲みたいなものは、オナニーの曲で発散しているという。

●なるほど。今回のレコーディングは苦労したところとかあったんですか?

SHOW-HATE:レコーディングはいつも苦労します。RECの初めはいつも欝ですもん。すごく気が重い。曲ができてくるとすっげぇ楽しいけど。

●でも音の1つ1つがすごく雰囲気を掴みやすいという印象がありましたよ。「Amy」のイントロのギターの音とか特に。

SHOW-HATE:あれはすごく悩みましたよ。

●音色的には本編とは繋がっていないんだけど、でもそのコントラストがポイントになっていて。

SHOW-HATE:いろんな機材も試したし、ギターも何本も変えてみて。

SIN:これはPVになる曲だったので、前作でPVになった「KiLLiNG ME」のエグい感じを超えるにはどうすればいいか? というところでめちゃくちゃ考えたね。

SHOW-HATE:あのギターフレーズを持ってきたのはMAHなんですよ。でも、その時点で手癖とかのレベルじゃなくて、"ギタリストだったら普通はそこにいかないでしょ!"みたいなフレーズだったんです。

MAH:音は簡単だけど、弾こうとすると難しいというね(笑)。

SHOW-HATE:最初に聴いたときは"余裕でしょ!"と思ったんですけど、いざ弾いてみたら"え? マジで?"みたいな。めんど…うくさくはないけど、大変でした。

●「面倒くさい」ってほぼ言ってるし(笑)。
一同:アハハハハハハハ(爆笑)。

SIN:ベース的には、「Amy」の途中にすごく変態的な「バァウ!」みたいな感じの音が入っているじゃないですか。あれが以前の取材で話した、新しく導入した機材です。

●3月号のeneloop music boosterのコーナーで取材させてもらったとき「次のアルバムでは新しい機材を導入しないと表現できない曲がある」と言っていましたね。

SIN:あの音は、指にセンサーを着けて手を上下に動かすだけで出るエフェクターなんです。ベースを押さえるだけでピッキングはしない。

●シューゲイザー寄りのバンドとかでギタリストがたまに使っているところを見ますけど、パンク系でしかもベースでっていうのは珍しいですね。

SIN:どうしても生でダブステップ的なニュアンスを出したかったんですよね。最初は全然使えなくて、1人で12時間くらい練習しました。

GODRi:「Amy」はドラムンベースというか、今まで使っていなかったドラムパターンが多かったり、生で叩いたドラムを打ち込みっぽく歪ませて加工したりもして。今作は全体的に苦労しましたけど、楽しく考えながらできました。パーカッションやタンバリンとか色々な音を入れている中で、スタジオに置いてあった灰皿を叩いた音も「LiFE and DEATH」に入れてあるんです。

●え? 灰皿の音も入っているんですか?

GODRi:分かるか分からないかくらいのレベルですけどね。完全にオナニーです(笑)。

●それと今作も歌詞は鋭い表現が多いですが、そんな中でM-4「Happy Home」が衝撃的で。"Happy Home"という温かみのあるタイトルだけど、親と子のかなり切ない心情を綴っているというか…。

MAH:そうなんですよ。俺、この曲を書きながら泣いちゃったんです。

●この歌詞を書くきっかけが何かあったんですか?

MAH:この曲はサビから作ったんです。ふと"if I could save ya"というフレーズを思いついたんですよ。メロディと歌詞と同時に。その"もしも君を救えたら"ということから広げていって、サビのメロを作って、コードを拾っていって作っていったときに…なんでこういう歌詞になったんだろうな? 俺もメンバーも子供はいないですけど、姉貴に子供がいて。いろんな苦労話を聞いたり、ニュースで観る嫌な事件とかがあったりして。そういうところから感じることを書いてみようかなと。

●はい。

MAH:最後の方は自分の記憶とダブる部分もあって、歌詞を思いついたときに泣いちゃったんです。そんな経験は初めてなんですけど、家でこの歌詞を仕上げようとしたときも、レコーディングのときも、なぜか知らないけど泣けちゃうんですよね。何が言いたいのかは自分でもよく分からないんですけど…どちらかというと子供の視点のような歌詞なんですけど、2番では親の苦悩も書いていて。子供の立場の人には「超分かる!」って感じだと思うけど、親もこんな風に悩んでいることを知ってもらいたいし、これから子供を産んで育てる人たちには、子供はきっとこういう風に思うから忘れないでほしい。自分が子供を持つときにもこの歌詞を忘れないでいたいし。

●この曲もそうなんですが、SiMは歌詞カードを読むおもしろさがありますよね。歌詞を読まずに聴いたときと、対訳を読んで聴いたときとではかなり印象が変わってくる。

MAH:英詞って、意味がわからないから聴かない人は一切聴かないし、聴く人も「意味は分からないけどかっこいいからいいじゃん」っていう人が多いと思うんです。ただ、俺はそんなに英語を敬遠するわけが分からないんですよ。だから英詞でも興味を持ってもらえる方法として、音を聴くだけと、歌詞を読んでから聴くのとは、ぜんぜん違うんだよと発信していきたいんです。

●うんうん。

MAH:それに、英詞で歌っているほとんどの人はそこまでメッセージを発信していないような気がするんですよ。「歌詞を読んでから聴いてくれ」とかあまり言わないですよね。でも俺は敢えて言う。風潮として、歌詞というものへの重要性を作者があまり意識していないのかなと思うこともあって。俺は歌詞も詩や小説と同じひとつの文学だと思っているから、数十行の中で言葉を展開していって、言葉遊びを交えながら伝えたいんですよね。

●なるほど。そしてリリース後は、5/11から"LiFE and DEATH TOUR 2012"が始まりますが、どういうツアーにしたいですか?

SHOW-HATE:自分たちが置かれている立ち位置を分かった上で、今自分がどうするべきかというところを考えていこうかなと思っています。やっぱりこっちはお客さんが求めている以上のものを提供しなきゃいけないじゃないですか。前回のツアーで分かったことを踏まえて、もっともっともっといいライブしたいです。裏切らないようにがんばります。

GODRi:前回のツアーで行けなかった箇所もあるので前回の分までという意気込みでやっていきたいです。

SIN:前回のツアーでは動員の多さや反応に自分たち自身が驚いたし、それがすごく嬉しかったんですけど、今作を作る時点では"これは滑れねえな"とハードルが上がっている部分もあって。でも満足度の高い作品ができたので、ツアーでは高くなったハードルも越えていってやろうかなと思っています。

Interview:Takeshi.Yamanaka
Assistant:Hirase.M

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