2008年末に福岡で結成されたSilhouette from the Skylit。
ラウドでエモーショナルなサウンドを基調としつつ、芸術的なまでのサウンドスケープや突き刺さる歌、感情を刺激するメロディ、繊細かつ大胆なアレンジなど、その表現力のポテンシャルは計り知れない。
今年6月にメンバーが上京し、満を持して放つ1st EP『The Great and Desperate』は、そんな彼らの最高到達点であるとともに、記念すべきスタート地点でもある。限界を超えたSilhouette from the Skylitのファーストインパクトは、我々の期待と予想を遥かに上回るだろう。
「なんか…もうちょいなんですよね。今作を作ってそう思えたし、それは1人じゃなくてバンドじゃないとできない」
●会っていきなりで申し訳ないですけど、Rockwellはどう見ても日本人ですよね?
Rockwell:はい。
●Rockwellって…。
一同:(笑)。
●Silhouette from the Skylitは米国留学していたSeishirouさんが帰国して2008年に福岡で結成したということですが。
Seishirou:このメンバーはそれぞれ別のバンドをやっていた頃からの知り合いなんですよ。そのバンドはそれぞれ解散して。
●はい。
Seishirou:留学していた間も3ヶ月に1回くらいは福岡には戻って来ていて、そんなときに半分遊びみたいな感じで始まったのが前身で、僕が帰国してから本格的に立ち上げたんです。その後メンバーチェンジがあって、Rockwellが入ってこの4人が揃ったのは去年の頭ですね。実は僕だけは3年前から東京に住んでいて、残りの3人が上京したのが今年の6月なんです。
●Silhouette from the Skylitは基本的にラウドなサウンドが基調となっていて、エモやメタルなどの要素もあるけど打ち込みも入っていて、なおかつ歌とメロディが立っている…色んな要素を持っている音楽だと思うんです。曲はどうやって作ってるんですか?
Rockwell:基本的にはまず俺が持ってくるんです。最初から最後までだいたい作ってきてバンドで詰めるっていう。もちろんリフやネタの断片からバンドで合わせて作ることもありますけど。
●いちばん最初はどうやって曲を作ってるんですか?
Rockwell:ギターを適当に弾いてるときに気に入ったフレーズとかコードの鳴りとかが出てきたら、それをパソコンで録音するんです。そうやってると全体の流れがだいたいできちゃうっていうか。
●断片から全体像が見えてくる?
Rockwell:そうですね。そこで最初から最後まで作ることもあるし、メンバーに「何かフレーズが欲しい」と言われたりすることもあるので、その場合はフレーズだけ持ってきてみんなで作る場合もあります。作曲はその2パターンですね。
●今作収録の6曲を聴いて感じたんですけど、どの曲もかなり手間暇がかかっているような気がしたんです。打ち込みが入っている曲も多いですけど、そういう音もただ単に曲を装飾しているわけではなくて、まず楽曲の世界観がありきで、足し算と引き算を繰り返した末に行き着いたアレンジというか。
Rockwell:はい。
●だから、例えRockwellの頭の中で曲の全体像が浮かんだとしても、バンドでそれを表現するにはかなり大変なんじゃないかなと。
Tetsurow:そうですね。今回はそういうところをめちゃくちゃ詰めたというか。M-4「Fake and Going to Fade」とM-6「Take Other One, She Said」はRockwellが最初から最後まで作ってきた曲で結構前からあるんですけど、他の4曲はメンバーみんなでああでもないこうでもないと言いながら作ったんです。今作は、僕ら4人が初めて同じ地に揃って初めて出す作品だからということで、最初に「僕らは何を伝えたいのか?」と話し合ったんです。
Kousuke:そこが時間かかったよね。
Rockwell:めっちゃ話し合いましたよね。
●あ、楽器を持つ前の段階というか、メンバー間のイメージ合わせに時間がかかったんですか。
Tetsurow:そうなんですよ。というのも、最初適当にバーッと作っていったら全然手応えのあるものにならなくて、そこで「何が足りないんだろう?」となって。色々と考えつつ、だったら原点に立ち戻ろうということで話し合いだけのために集まったりして。「絵だったらどういう感じだろう?」とSeishirouくんが絵を描いたり、「映像だったりどうだろう?」「景色だったらどうだろう?」っていう感じで、色んなキーワードを出し合ったんです。
Kousuke:それは今回の作品としてのイメージ合わせであると同時に、今後の俺たちの音楽性というか、バンドとしての意識合わせでもあったんですよ。福岡にいたときは、ただできた曲がかっこよかったらライブでやってきた感じだったんです。そもそもSeishirouが1人東京にいて後の3人は福岡だったし。
●あ、そうか。
Tetsurow:「バンドの軸になる1枚が欲しいね」っていうところから始まった作品なんです。自分たちが出したい音だったり、伝えたいメッセージだったり。Silhouette from the Skylitとしてのコンセプトを突き詰めるのにすごく時間がかかりました。
●すごく根本的なところがスタート地点だったんですね。
Seishirou:で、結局のところは「今までの曲を超えるものを作ろう」ということでとりかかったんです。「1曲キラーチューンを作ろうぜ」と。それを軸にして拡げていけば後は大丈夫だという確信があったんですけど、それでできたのがM-1「Raise Your Voice」なんです。
●そうなんですね。
Seishirou:まだ何もない状態で「自分たちの軸になる曲ってどんなのだろう?」とか、「お前にとって軸になる曲はどういうイメージなの?」とか言い合って。バンドの中で考えていることがバラバラだったら、誰がどんなものを持ってきてもしっくりこないじゃないですか。
●そうですね。ある意味、お互いを知る作業でもあったんですね。
Seishirou:まさにそうです。かつてないくらい切羽詰まってて、7月中旬くらいまでそんな状態だったんですよ。8月からドラム録らないといけないのに(笑)。でも今回ばかりは妥協できないから、とにかくじっくりと詰めようと。
●そんな状態を突破したのが「Raise Your Voice」だったと。
Seishirou:「Raise Your Voice」は完全に僕の妄想から始まったんですけど、漠然と"若者の絶望を描きたい"と思っていたんです。で、まずはPVの映像を考えようと。
●曲ができてないのに(笑)。
Seishirou:そうそう(笑)。イメージとしては延々と続く崖があって、崖の下は浅瀬の海なんです。僕らはその浅瀬に立って演奏してるんですけど、崖から人間や動物や自動車や建物、とにかく色んなものがドロドロと落ちてくるんです。要するに世の中が崩壊しているイメージなんですけど、それらがどんどん海の彼方に駆け抜けていく中で僕らが演奏している…そういう映像イメージをメンバーで共有して「じゃあ音にしてみようか」って。
●とても刺激的でクリエイティブな作業ですね。実際の作業レベルではなくて、意識レベルで難産な曲だったとは思いますが。
Seishirou:難産でしたね。でもポッとRockwellが最初から最後まで作ってきた曲だったら意味がないんですよ。全員でイメージを共有して全員がアイディアを出し、全員が納得したキラーチューンじゃないと。そういう曲ができたら最強じゃないですか。だからやり方は曲げずに、ギリギリまで練って作ったんです。
●この曲は今作のリード曲なだけではなく、今のバンドにとっても重要な1曲なんですね。そういう意味でも、今作は今までの集大成でもあり、自ら課したハードルを乗り越えられた結果であり、バンドの新たなスタート地点でもある。
Kousuke:だから今作が完成して、やっとこの場所に立てたなっていう実感がありますね。長かった(笑)。
Tetsurow:作っている間はここまで満足度の高い作品になることが想像できなかったんですよ。さっきレコーディング直前まで話し合っていたと言いましたけど、「1ヶ月先にはなんとかなってるのかな?」という不安しかなくて。でもそのときには想像できないくらいの満足度に達した作品になったと思います。
●人間性で繋がったメンバーが揃い、その4人で満足度の高い作品を作ることができたと。最後にそれぞれに訊きたいんですけど、このバンドをやっている理由というか魅力はどういうところですか?
Rockwell:俺がこのバンドでやってみようと思ったのは、自分が作った曲を素直に受け入れてくれたからなんです。自分が表現する場所はここだと思えたというか。前にやっていたバンドでは俺が好きなラウドさみたいな要素は採用されなかったんです。それでなんとなく"ここじゃないな"と思っていたときに誘いを受けて。だからやりたいことをそのまま出せるし、自分が思っているよりも更にかっこいいものを作ることができる場所なんです。だからすごく楽しいですね。
Kousuke:やっぱり人間的な繋がり大きいです。僕にとって初めてのバンドはSeishirouと組んだバンドなんです。こいつが留学する前の話なんですけど、そこで歌詞や歌に共感する部分が大きくて。今はそれを全員で共有できているから、すごくいいバンドだと思います。
●Tetsurowさんはどうですか?
Tetsurow:ライブが楽しいっていうところがいちばんですね。僕はすごくラーメンが好きなんですけど、美味しいラーメン屋を見つけたら人に教えたくなるじゃないですか。ライブもそれと同じで、僕らが作った最高の音楽を演奏して、その場で反応を見ることができる、っていうのがすごく楽しいです。
●Seishirouさんは?
Seishirou:僕がかわいいと思った駆け出しのアイドルって絶対に売れるんですよ。
●は? 何の話ですか?
一同:(笑)。
Seishirou:それと同じように、僕がかっこいいと思った駆け出しのミュージシャンは絶対に売れるんです。それを突き詰めていけば絶対にみんなが好きになるやん! という謎の自信があるんです。
●そういうことか(笑)。
Seishirou:それを証明したい。僕は作曲を始めて10年くらい経つんですけど、そのことを証明したいから今も続けているんです。当然長いことやってきた経験があるからこそ今があって、なんか…もうちょいなんですよね。今作を作ってそう思えたし、それは1人じゃなくてバンドじゃないとできないということも10年前からわかっていました。信頼できるこのメンバーでそういう音楽を作りたいですね。
●めちゃめちゃいい話だ! ちなみに、Seishirouさんが過去にかわいいと思った駆け出しのアイドルは誰だったんですか?
Seishirou:スザンヌです。
interview:Takeshi.Yamanaka