2011年1月にリリースした3rdフルアルバム『APATHY』で、かねてより定評のある高いソングライティングセンスとライブバンドとしての真価を見 せつけ、自身のツアーはもちろん、数々のライブやイベントでの猛者たちとの競演、4度目の中国ツアー、そして今年2月に川崎 CLUB CHITTA'で開催した自主企画フェス“THICK FESTIVAL 2012”(全20バンド出演/チケットはソールドアウト)など、タフな現場を重ねてきたSECRET 7 LINE。
モッシュやダイヴを誘発させるヘヴィネスとシンガロングを巻き起こすポップネスを兼ね備えた彼らのオリジナリティは、たくさんの経験と幾重にも 重なる想いを携え、4thアルバム『NOW HERE TO NOWHERE』でネクストレベルへと昇華した。彼らは今作で、まだ誰も到達したことのない聖地へと歩を進めていく。
「“WARPED TOUR”や“AIR JAM”だったり、“ウッドストック・フェスティバル”とかの野外フェスを知って“何だこりゃ?”と思ったんです」
●前作『APATHY』リリース以降、自身のツアーはもちろんですが、たくさんの場所でいろんなライブを経験しましたよね。振り返ってみると、やっぱり駆け抜けてきたという感じでしょうか?
TAKESHI:前作リリース以降は本当に駆け抜けてきた感じですね。改めて振り返ってみて、“そういえばこんなこともやったなぁ”という。
SHINJI:ずっとライブをしていた感じだよね。
RYO:ライブかヘルニアか、ヘルニアかヘルニアでした。
●ヘルニア多いな。
SHINJI:その中でも特に印象に残っているのは、去年の中国ツアーとFear, and Loathing in Las Vegas(以下、Las Vegas)のツアーサポートかな。
●中国ツアーは4回目でしたけど、どうだったんですか?
RYO:4回行った中で今回がいちばん盛り上がったと思います。いっぱい人がいたし。
SHINJI:ライブのやり方も去年の中国ツアーのタイミングで変わりました。より噛み砕いてやるというか。
●「噛み砕いてやる」というのは?
TAKESHI:日本でやるときには、アルバムを聴いて来てくれている人が多いじゃないですか。でも、中国でライブを観に来てくれる人たちは僕らのこと全 く知らないわけですから、その場でそのときに表現する楽曲がすべてなんですよね。だから楽曲のことだけを突き詰めて考えて「これはこういうニュアンスに 持っていける曲だから、こういう方向でもっとやってみよう」とか、いろいろと試行錯誤しながらやったんです。
SHINJI:バンド側から分かりやすく提示することを学んだよね。
●楽曲だけでいかにお客さんを盛り上げられるか? とか、セットリストの違いがどのような効果をもたらすだろうか? みたいなことを突き詰めて考えたと。
TAKESHI:そうそう。中国のお客さんはCDも持っていないから、曲順の先入観もないんです。だからいろいろ考えてセットリストも変えてみたりして。
●日本でやるときにも本来は同じ発想でやるべきなんでしょうけど、そういう環境だからこそ改めて見なおしてみたと。
SHINJI:それに、そういった経験を日本に持ち帰ってきたときに“やっぱり間違いはなかった!”と改めて気付かされた部分も多かったんです。だから去年の中国ツアーを経験して、ライブのやり方のバージョンが増えたというか、幅が広がった気がします。
●RYOくんは?
RYO:やっぱり中国のツアーがライブのバリエーションを増やすきっかけになりました。
●あっ! 人が言ったことと同じことを繰り返し言って笑いを誘うパターンだ!
RYO:JUNGLE☆LIFEのインタビューは毎度そんな感じになっています。
TAKESHI:毎度そんな感じになっています。
●また乗っかった!
SHINJI:毎度そんな感じです。
●Las Vegasのツアーサポートも印象に残っていると。
TAKESHI:当然Las Vegasを観に来ているお客さんが多いので、ちょっとしたアウェー感はあったんですよ。そんな中でどれだけやってやるかということで、中国のときみたいな感覚でやってみたんです。
SHINJI:そしたら、そこまでアウェーという感じでもなくて。
TAKESHI:いろいろ試行錯誤をしながら、蓋を開けてみたら受け入れられていた感じがあったよね。Las Vegasがきっかけでライブに来てくれる人もいて。嬉しかったですね。
●そして今年の2月には自主企画フェス“THICK FESTIVAL 2012”を川崎 CLUB CHITTA'で開催しましたよね。チケットはソールドアウトして大盛況でしたが、これはどういうきっかけで開催しようと思ったんですか?
RYO:アルバムツアーが終わった去年の夏くらいに“次はどうしようか?”と考えていて、その中で「フェスみたいなイベントをやりたいな」という話が出たんです。今ならみんなに土下座をしてまわったら出てくれるかもしれないなと(笑)。
●以前は土下座をしてもバンドを集められなかっただろうけど、今ならなんとかできるだろうと(笑)。
TAKESHI:そうなんです。地べたに頭皮を擦りつけて…だから禿げてきちゃったんですけど。
●そうだったのか。
SHINJI:“THICK FESTIVAL 2012”は本当にやってよかったですね。当日はかなり疲れたんですよ。自分たちで直接お願いして出てもらったバンドばかりだったんですけど、先輩もけっこう多くて。だから1日中挨拶周りみたいな感じだった。
TAKESHI:そうだったね。
RYO:朝の9時に入って出番が12時間後とかだったので、ほんまに疲れたね。
SHINJI:めっちゃ楽しかったんですけどね。
●これは定期的にやるつもりなんですよね?
SHINJI:毎年やりたいです。いつかは野外でやりたいし。
TAKESHI:パンクバンドをやりたいという物心がついたときから、“WARPED TOUR”や“AIR JAM”だったり、“ウッドストック・フェスティバル”とかの野外フェスを知って“何だこりゃ?”と思ったんですよ。そういう原体験というか衝撃から“あ あいうイベントを自分たちもやってみたい”と思うようになったのは自然な流れで。もしかしたら日本武道館でライブをやるより、デカいフェスをやる方が憧れ は強いかもしれない。
SHINJI:それすごく分かる!
●次の“THICK FESTIVAL”も楽しみですね。
RYO:何がどうなるかわからなかったので今回はとりあえずイベントタイトルに“2012”を付けといたんですけど(笑)、今後も定期的にやりたいですね。
●そして1年5ヶ月ぶりのフルアルバム『NOW HERE TO NOWHERE』がリリースとなりますが、SECRET 7 LINEは毎回それまでの活動で感じたことや経験してきたことを音にしてきたと思うんですよね。成長という部分も含めて。
3人:はいはい。
●そんな中で、前アルバム『APATHY』はひとつの到達点だったと思っていて。以前から「SECRET 7 LINEはメロディに定評があるバンドだ」と僕は言い続けてきたんですけど、いろんなバンドと一緒にライブをやるにつれて"もっとライブで盛り上げたい" という想いが強くなっていきましたよね。そういう経緯を経た『APATHY』は"ライブでいかに盛り上げるか"という部分にベクトルが向いていたし、元来 持っているメロディの良さも兼ね備えたアルバムだったので、ひとつの到達点のように感じていたんです。
3人:うんうん。
●そして今作ですが、メロディの良さはもちろん健在だし、ライブで盛り上がる要素も随所に入っているんですけど、それに加えて…メンバー は3人しかいないので音数もライブで再現する方法論も少ないんでしょうけど…今作は"3人でどれだけいいものを作るか"というところをひたすら追求した作 品だと感じたんです。例えばメロディひとつの作り方にしても、構成にしても、ツインヴォーカルの活かし方も、バンドが持っているひとつひとつの要素の完成 度が高くて。声も楽器のひとつだという捉え方をしながら、メロディや構成を活かすためのアレンジになっている。バンドとしての今の想いもメッセージとして キチンと入っているし、音楽性の成長も感じるし、ライブでただ単に盛り上がればいいというベクトルだけではない。音源として、楽曲として、伝わるもの、響 くもの…そういういろんな意味ですごく成長を感じたんです。
3人:ありがとうございました(拍手)。
SHINJI:素晴らしいコメントです!
RYO:今日はお疲れ様でした!
●いや、まだ終わりじゃないんですけど…。
TAKESHI:そこまで言ってもらったら、あとは想像で書いてもらっても全然いいんですけどね。
●いつ頃から制作に着手したんですか?
SHINJI:アルバムを意識し始めたのは前作のツアー終わり頃ですね。その頃から考えながらも、ぶっちゃけ曲作りはあまり進んでいなかったんです。ライブもずっと多かったし、曲作りのペースは遅くて。去年の冬になった頃からようやく本格的に進み始めた感じでした。
RYO:本格的に始めたのは11月くらいからですね。ネタ止まりだった曲を少しずつ組み立てていくようになって。
SHINJI:ちょうど去年の11/27のSHANK主催イベントのときに、長崎のスタジオで「こんな新曲があるねん」と聴かせたりしたよね。
TAKESHI:とりあえず曲作りの話なので俺は飯食いますね(カバンからおにぎりを取り出しながら)。
●毎回曲作りの話になると曲を作っていないTAKESHIくんは話すことが無くなる、ということですね。
TAKESHI:はい(おにぎりのパッケージを開けながら)。
●M-5「DOWN TO HELL」とM-4「IT'S ALL RIGHT」は、先行で両A面シングルとしてリリース(ライブ会場限定)されていますよね。「IT'S ALL RIGHT」はここ最近のSECRET 7 LINEらしさというか、ライブでシンガロングが沸き起こるような楽曲ですけど、一方で「DOWN TO HELL」はゴリゴリ感が強くてバンド的に新境地という印象があったんです。この2曲はどういうきっかけでできたんですか?
RYO:「DOWN TO HELL」はシャワーを浴びているときに作りました。
●鼻歌から作ったということ?
RYO:そうです。俺はシャワーを浴びながら考えるときが割と調子のいいことが多いんですよ。それで"これええな"と思って。今まで自分たちが作ってきた 曲の中ではちょっとハードなリフだったり、サビ自体は分かりやすく作っているけどコードはダークな感じだったりするけど、"こういう曲をやってみたい"と 思って作ったというよりも、たまたま出てきて"いい"と思ったものがこれだった。
●なるほど。
RYO:意識レベルで"いろんなタイプの曲を作りたい"とか"ハードな曲を作りたい"というのはありましたけど、だからといって良いものじゃなかったら採用する気はなかったんです。でもこの曲が出てきたときに、"これはいいな"と思ったんです。
●今までには無いという感覚?
RYO:いや、今までには無いというか、ハードでダークな曲も好きなんだけど作る数は少なかったというか。
●ああ、なるほど。
RYO:要するにもともと自分の中には要素としてあったけど、今まではやっていなかったということですね。だから自分たち的には新しいものかどうかは分からないけど、バンドとしては新しかったという感じ。
●アルバム収録曲はどんな意識で曲を作っていたんですか?
RYO:俺の場合は、新しいところも取り入れつつ、この先に進めるような曲を作りたいと思ったものの、なかなか作れず…禿げそうになっていました。
●よく禿げそうになるバンドですね。
RYO:自分で納得できて、更にみんなも「ええな」と言えるようなものは、当たり前かもしれないんですが簡単にはできないんです。"これはどうやろう?"、"これもあかんか?"という繰り返しで。考えても考えてもダメで。
TAKESHI:モグモグ…。
●完全に煮詰まっていたんですね。
RYO:まあ曲作りはいつもそうなんですけど、今回はより一層追い込まれた感じがありました。
●SHINJIくんは?
SHINJI:俺は今回、普遍的なものを作りたかったんですよ。昔から歌われ続けてきた名曲みたいなものというか、ずっと歌い続けられるような曲を作りたいなと。
●そういう意味では、メロディに対する意識が強かったんでしょうか?
SHINJI:そうですね。さらに、そのメロディも忙しいものじゃなくて、素直に歌えるものというか。今作の曲作りではそういう部分をすごく意識しました。
「やっぱり元気になって欲しいし、そういう側面を出したいということもあったんです。でも今作に関してはそういうことを考えなかった」
●今作は今までと比べてエモーショナル感が強いと感じたんですよね。歌っている内容はまさに2011年~2012年のことをクローズアップして、今のバンドの心境や日々感じていることがメロディや歌詞に如実に出ていて。
RYO:それは自分でも思います。
SHINJI:感情や心境だけじゃなくて、自分の考えも上手く入れることができたと思います。思っていることを伝わりやすいように書くことって、実はなか なか難しいんですよね。自分の中で思っていることはいっぱいあるけど、上手く伝えられなくてありきたりな表現になっちゃう。
●あ、難しいという感覚があるんですか。以前SHINJIくんが書いた「1993」(1stシングル及び2ndアルバム『SECRET 7 LINE』収録)みたいに内面の心情をさらけ出した楽曲もあったので、自分の想いや考えを歌詞で表現することに対して"難しい"という意識は持っていない と思っていたんですけど。
SHINJI:「1993」みたいな自分の身の上話だと出しやすいんですけど、思想とかを出すのはなかなか難しいような気がしていて。でも今回は、そういうことも含めていろんな部分に入れることができたんじゃないかなと思います。
●今まで以上に、自分の考えやメッセージを込めたいという想いが強かった?
SHINJI:そうですね。今まで以上に込めたかったです。僕らの音楽を聴いてくれているのは若い子が多いんですけど、誰でもいろんなことを知ると考え方 がいろいろ変わっていくじゃないですか。例えばM-11「STAND UP」とかそうですけど、今まで知らなかったところに目を向けて欲しいなと思って。
●「STAND UP」の歌詞にはちょっと驚いたんです。この曲はめちゃくちゃメッセージが込められていて。
SHINJI:そうですね。めちゃくちゃ込めました。
●ポリティカルなメッセージも含めた想いですよね。ナショナリズムがなくなってしまった日本や世間に対するメッセージというか。
SHINJI:世間に対してとか、けっこう思うことが多くて。政治批判とかではないんですけど…なんか、こういうことを伝えるのって難しいんですよね。
●こういうことはみんなが感じていることだとは思いますけど、SECRET 7 LINEがメッセージとしてリアルに発するイメージがなかったんですよね。『APATHY』では、ジャケットの絵にSECRET 7 LINEなりのシーンや最近の風潮に対するメッセージを込めたという経緯もありましたが、基本的にもう少し狭い範囲というか、手の届く範囲のメッセージを 発するバンドという印象だった。
SHINJI:確かにそうですね。この曲が浮かんだとき、メロディがすごく好きだと思ったんです。好きだからこそ上っ面の言葉じゃなくて、心から歌えるよ うな歌にしたいと考えたときに、このメロディならこういう歌詞を乗せてもいけるかなと思って。俺自身も昔はすごく欧米に憧れたことがあったんです。でもあ るとき、戦争のこととかを別の角度から知ることがあって。それまでは単純に、戦争は日本がすべて悪いと思っていたんです。
●日本から戦争を吹っ掛けたから原爆を落とされたのも当然だ、という論理みたいな。
SHINJI:はい。日本の教育も基本的にそうだし。"平和を大事にする"ということは、いろんなアーティストが発してきたメッセージだと思うんです。で も単純に"争いをしない"ということだけが正しいとは思えなくて。守りたいものがあったら、争わないといけないときもあると思うんですよね。
●その方法が戦争かどうかは別として。
SHINJI:そうそう。でも今の日本人は折れることでやり過ごすことばかりな気がしていて。そんな感じで俺の見方が変わったように、今の若い子たちにも そういう部分に目を向けてもらうきっかけになってほしいという気持ちでこの歌詞を書いたんです。たぶん今の若い子たちが戦争に触れる機会なんて、僕らより も更に少ないと思うんですよね。だからこそ今まで知らなかったことを見てもらいたい。もちろんいろんな感情や見方があるだろうから、別に俺と同じ考えに なってほしいとは思わないんですけど。
●どんなことであれ、思ったことやメッセージをストレートに出すことがパンクの側面だと思うんですが、SECRET 7 LINEはそういう想いを伝えようとする力がどんどん強くなってきているように感じます。
SHINJI:そうですね。今までは思っていることの両端を切った範囲でしか表現できていなかったんですよ。落ちている気持ちも、あまり書くと暗くなると思って削っていた部分があったんです。でも今作はもっとリアルに、両端も含めた全部を出せているかなと思います。
●それに今作は全体的な歌詞のニュアンスとして、リスナーに対して歌っている感じもあるし、一方で自分自身に対して歌っているような感じもある。そういう意味でも、想いの強さが伝わってくるんですよね。
RYO:無理に"がんばれよ"っていう感じを出そうとも思わなくて。例えば自分の気持ちが下がっていたときにはそのままを書いて、自分の気持ちをダイレク トに出した感じがありますね。今までは"明るいサウンドだから歌詞も明るくしなきゃ"みたいな意識もちょっとあったんです。聴いてもらった人にはやっぱり 元気になって欲しいし、そういう側面を出したいということもあったんです。でも今作に関してはそういうことを考えなかった。
●2人ともより感じたことをそのまま歌詞にできるようになったということでしょうか?
SHINJI:そうかもしれないですね。よりリアルに。あとは表現の幅が増えたのかもしれません。僕らは先に日本語で書いて英語に訳すんですけど、日本語 はひとつのことを言うときでもいろんな表現方法があるじゃないですか。でも英語の歌詞はそれが少なくなる。だから今回は、日本語訳を読んだときに別の角度 からも伝わる言い回しを考えました。
RYO:実は今回、対訳というか日本語で書いているものは、1文1文を照らし合わせた訳として書いていないんです。ある程度は沿っているんですけど、直訳はしていなくて、意訳という感じ。
●あ、そうなんですね。
RYO:近い意味だけど、違う言い回しをしている部分もあったり、ざっくりと2行くらいをまとめて書いたりしていて。英語ではこう言ってるけど、日本語で はこういうことを言っていますよと。そこまでリスナーに求めているわけでもないんですけど、もし英語に興味がある人がいたら、英語と日本語を見比べて"な るほどね!"って思ってくれたら嬉しいですね。
●なるほど。
RYO:アメリカ人の方に作詞の段階でいろいろと指導を受けて、英語の表現方法を教えてもらっているんです。単語自体は簡単なんですけど、直訳するだけで は意味がよくわからないようなアメリカ的な言い方が入っていると思います。前作くらいからそういうところも意識するようになったんですが。
●あと、楽器1つ1つの表現の幅も広がったという印象があったんです。例えばM-10「NOBODY ELES」とか顕著だと思ったんですが、間奏のベースとドラムの絡みとかすごく雰囲気があって、言ってみれば楽器が饒舌なんですよね。単純に思いきり叩い て、思いきり弾いてという方法ではできない表現というか。
SHINJI:そういう部分は知らない間に身に付いたんでしょうね。
●意識はしていないんでしょうか?
TAKESHI:あまり意識しなかったですね。楽曲の雰囲気に入り込んで演奏したという感じ。ドラム録りはすごく楽しかったんですよ。エンジニアさんも上 手くノセてくれるんです。「もうちょっといけるから、もう1回やろうかー」って。それでこっちもいい感じで「うっす! やるっすやるっす!」と。
●完全に褒め伸びタイプですね(笑)。
TAKESHI:ドラム録りは曲を録る度にだんだんよくなっていくので、最初に録った曲も「最初の曲をもう1回やってみようか。絶対今の方がいいものが録 れるよ」と言われて、「うっす!」って最後にもう1回録りました。だからレコーディングはいい気持ちで進めることができて、すごく楽しかった。
●TAKESHIくんはメンタルに左右されるドラマーなんですか?
SHINJI:そうです。心で叩くタイプですね。
RYO:感情ドラマーです。
●ハハハ(笑)。
RYO:今回のタイミングでエンジニアさんが変わったことも新たな刺激になったんですよ。今までのエンジニアさんでも同じようなことはあったんですけど、今作はレコーディング作業自体にかけた時間が明らかに今までよりも長かったんですよね。
●だからこそチャレンジする回数も増えたというか。
TAKESHI:その分、時間が長くなった。
SHINJI:あと楽器の表現の手法も、今までは使わなかったようなクリーンっぽいコードを鳴らしっぱなしにするようなことも試みたりして。特に意識した わけではなかったですけど、曲を作っている段階から"今までのままではダメだ"という気持ちが自分たちの中にあったのかもしれないです。
●それは感じました。個人的に、BLINK-182は"メロディックパンク"という枠組みを超えたポピュラリティを持つバンドだと思って いるんですけど、彼らは明らかにメロディと構成力とアレンジがズバ抜けているんですよね。なんとなくですけど、今作はそういう次元に挑戦しようという意気 込みを感じたというか。
SHINJI:そう…ですね。
●ん? なんで歯切れが悪いんですか?
TAKESHI:実はM-3「BAD LOSER」の仮タイトルが「BLINK」だったんですよ(笑)。
●え? マジで?
SHINJI:音楽的にBLINK-182を意識していたわけではなかったんですけど(笑)、さっき言った「普遍的なものを作りたい」みたいな気持ちの象徴として、BLINK-182の楽曲のレベルをひとつの目標にしていたというか。
「僕らしか行けない場所というか、今誰も居ないような場所に行けるんじゃないかという感覚があったんですよね」
●ところでアルバムタイトルを『NOW HERE TO NOWHERE』にした理由は?
TAKESHI:今までにない作品ができたと思ったんですよ。さっき言ってもらったようにいろんな要素が入ったし、メロディも先に進めた。ということで、"今ここからどこでもない所へ"という意味のタイトルにしたんです。
●なるほど。
TAKESHI:僕らしか行けない場所というか、今誰も居ないような場所に行けるんじゃないかという感覚があったんですよね。
●それはきっと今までの作品の中で築いてきた3人のオリジナリティなんでしょうね。メロディックパンクがどうとかではなくて、"SECRET 7 LINEはこうなんだ"というものが表面に出てきたというか、形作られてきた。
SHINJI:そうですね。
RYO:あと、このタイトルをTAKESHIが持ってきたときに、字の並びがイケていると思ったんです。"NOW HERE"と"NOWHERE"って、文字は一緒じゃないですか。これはすごくお気に入りですね。
TAKESHI:そこは狙いました。
●ちょっと上手いこと言っている感じというか。
TAKESHI:そうっす! 俺はこういうのを考えるのがすごく好きなんですよ。パッと"NOW HERE"と"NOWHERE"って同じだなと思い付いて。これなら"新しい場所"という意味も含まれるし、いいんじゃないかなと。
SHINJI:今初めて知った。
一同:えーーー!!
RYO:俺は見た瞬間に気付いてTAKESHIに言うたで?
SHINJI:単に"いい響きやなぁ"と思っていました。こんなに上手い言葉だったとは…。
●まさかメンバーが今まで気づいてなかったとは。
一同:ハハハ(笑)。
●リリース後はツアーがありますが、今回はどんなツアーにしたいと思っていますか?
TAKESHI:楽しいツアーにしたいですね。
●今までたくさん経験を積んできたし、不安もないと。
TAKESHI:いや、まだたまにジタバタしますけど(笑)。
●まだジタバタするのか(笑)。
RYO:ライブに関しては永遠に答えは出ないとも思っているんですけど、でも常に追求していたいですね。この前も九州にライブで行っていたんですけど、個 人的に"今日はよかった"と思える日と"クソやった"と思える日があって。"昨日はよかったのになんで今日はダメなんや?"みたいな感じで、やっぱりライ ブは難しいなと痛感したんです。だから今回のツアーでは、あかんかったときのクオリティを一段底上げした状態でまわりたいと思ってるんです。それは技術的 な話だけじゃなくて、昨日と今日で何も変わっていないのにライブの出来が変わるっていうのは、やっぱり精神的な面のタフさが足りていないからだと思うんで すよ。そこをなんとかしたい。
●いいライブと悪いライブの違いって何なんでしょうね?
RYO:分からないですけど、個人的に変なミスが多かったり、ミスはなくても気持ちが乗りきらなかったり。"なぜ?"という原因を考えても分からないところがあって。
●確かに、普通に生活をしていても日によって気分が全然違うときもありますからね。
RYO:そうなんですよ。だからこそ、その精度を上げたい。
SHINJI:今回のツアーではいろんなライブをしたいですね。今までは良くも悪くも合格点を狙いにいくライブがけっこう多かったんですよ。でも今回は失敗を恐れずに、いろんなことに挑戦したい。
TAKESHI:振り返ってみるとですけど、今までは若干置きに行っていたこともあったというか。でも今回のツアーは攻めたいよね。
SHINJI:うん。だからセットリストもいろいろ変えると思います。
Interview:Takeshi.Yamanaka
Assistant:Hirase.M