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笹木ヘンドリクス

素晴らしき音楽への憧れと敬意、そして遊び心が生んだ黄金のアンセム集

笹木アー写サッカーと音楽を愛する少年が大聖人ジミ・ヘンドリクスから衝撃の洗礼を受け、全てのロックミュージックへの敬愛も込めて、笹木ヘンドリクスと名乗る。札幌から上京した彼を中心に集まった“ヘンドリクス”メンバーと共に作り上げた新作ミニアルバム『GOLD ANTHEM』は、まさしくタイトル通りの傑作だ。素晴らしき音楽への憧れやリスペクト、遊び心が結実。誰もが口ずさみたくなる、極上のポップミュージックに触れてみてほしい。

 

 

 

●まずは“笹木ヘンドリクス”という名前が気になるんですが、この名前で活動するようになった経緯とは?

笹木:最初はソロ名義で弾き語りをしたり、たまにバンド形式でライブをやったりしていたんですよ。でも2年前くらいに、今の“ヘンドリクス”メンバーと一緒にライブをやることが増えてきて。そこでインパクトのあるユニット名を考えようということになって、笹木ヘンドリクスという名前になりました。

●名前からは当然ジミ・ヘンドリクスが浮かぶわけですが、モロにそういう感じではないですよね。

笹木:ジミヘンも好きですしギタリスト志向も強いんですけど、元々がソングライター気質なのかメロディアスな歌が好きなんですよ。今はどちらかと言うと、日本語詞を良いメロディに上手い形で乗せたロックバンドをやりたいなという気持ちが強くて。

●バンド志向は元々強いんですか?

笹木:元々はオアシスやU2が好きで、中学生の頃から憧れていて。オアシスが好きすぎてメンバーになりたいと思って、イギリスに行っちゃったくらいなんです(笑)。

●その行動力と発想がすごい(笑)。

笹木:オアシスみたいに、街の兄ちゃんたちがライブで一緒にメロディを口ずさめるようなロックが好きで。あとはストロークスも大好きで、ああいう出で立ちとかを見て「やっぱりバンドはカッコ良いな」と思って。そういうのもあって、ヘンドリクスを始めたんです。

●バンドをやるキッカケになったのは、比較的最近のアーティストが多いんですね。

笹木:でもその人たちが好きだった音楽を掘り下げて、聴いていくようにもなって。あと、ウチの父親がローリング・ストーンズやビートルズが好きで家では古い音楽もよくかかっていたんですよ。子どもの頃からスティーヴィー・ワンダーや山下達郎さんの曲が家の中で流れていたので、そういうところからの影響はあると思います。

●日本だと、はっぴいえんどの影響もあるのかなと。

笹木:はっぴいえんどの松本隆さんの歌詞には、ビビッと来るものがあって。言葉数は少なくても、それが音楽と相まった時の世界観がすごくカッコ良いなと思うんです。今作だとM-6「僕は電気」は、その路線ですね。

●「僕は電気」は確かにその匂いを感じました(笑)。

笹木:「僕は電気」は狙って作った感じなんですけど、前作(『BCGホーリーエイド』)がそっち寄りだったので今回はもうちょっと幅を見せたいなと。たとえば山崎まさよしさんやスガシカオさんが好きだった頃の自分なら、どんな曲を書くかなという感じで作ったりして。だから日常が見えるような歌詞や、お客さんに伝わりやすいように噛み砕いた歌詞も今回は織り交ぜましたね。

●歌詞の世界観がすごく独特ですよね。

笹木:僕はTHE YELLOW MONKEYが大好きなんですけど、特に「プライマル。」の歌詞がすごく好きで。何となく意味はわかるんだけど、どこかイビツで、でもすごくキラキラしていてカッコ良いっていう。吉井和哉さんの歌詞みたいな意味不明感を混ぜながら、自分にしか言えないようなことを歌うということを考えた結果、今みたいな歌詞になったのかな。

●色んな音楽に対するオマージュ的な要素もあるのかなと思ったんですが。

笹木:1曲全体として直接的に誰かのオマージュになっているものはないんですけど、箇所箇所の細かいフレーズとかではありますね。たとえばM-4「ポイズンマーケット」の間奏はオールマン・ブラザーズ・バンド的な感じで、ソロはサンタナっぽい感じだったり(笑)。そういう遊びは取り入れつつやっています。

●M-1「Sailing's just begun」は、北欧っぽいイメージ?

笹木:これは今回で一番最後にアイデアが出た曲で、レコーディング直前にリハスタで何となくやってみたら意外と壮大な感じになって。笹木ヘンドリクスには色んな方が面白がって関わってくれていて、その感じが船っぽいなと思ったんです。“1つの船にみんなが乗り込んで、いよいよ動き出すんだな”というイメージを作りながら感じていたので、船出といえば北欧かなと思ってケルト音楽的な要素を取り入れてみました。

●色んな時代やジャンルの音楽を咀嚼しつつ、最終的には良質なポップスに昇華しているというか。

笹木:やっぱり、“ポップ”ではありたいなと。ストロークスが初期にやろうとしていたのは、そういうことだったと思うんですよ。実験もしつつ、ちゃんと“ポップ”を見据えている感じというか。そういう作品のほうがリスナーも聴きやすいだろうから。そもそも僕には“アンセム”としてみんながサッカー場とかで一緒に歌えるような音楽をやりたいという想いが根底にあるので、“ポップ”に収めるというのは崩れない部分なんじゃないかな。

●『GOLD ANTHEM』というタイトルにしたのは、そういう意志の表れかなと。

笹木:色んなタイプの曲が入っているけど、その1曲1曲がアンセムになってほしいという想いを込めて作ったので『GOLD ANTHEM』というタイトルにしました。それぞれがキラキラしたアンセムになればいいなって。後から「あの人たち、アンセムっぽい曲をよく作るよね」と言われるよりも、最初に自分から「僕はアンセムを作っています。だから好きになったら、一緒に歌ってください」と言うくらいの気持ちでやっちゃおうかなと。

●全曲をアンセムのつもりで作っているわけですね。

笹木:そうですね。みんなで歌うっていう行為はやっぱり感動するものだから。大勢の人が集まって一緒に歌うことで安心感や高揚感も生まれるし、あとは全く後ろ向きにならないというところが僕は気に入っていますね。サッカーの試合でも点を取られてから、みんなでアンセムを歌い出すとそこからまた前向きになれたりする。それは音楽が持っている、非常に面白い力なんじゃないかと思っていて。だからアンセムは人間がいる以上、地球上に残るものなんじゃないかな。人の声やアンセムっていうのは、すごく大事なものだと僕は思っています。

●そういう曲を作っていく決意の下にやっている。

笹木:そうなれば良いなというか。そこは夢というか、憧れですね。自分が音楽をしっかりやっていくのなら、その憧れはちゃんと追ったほうが良いなという想いはずっと持っています。

Interview:IMAI

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