既にライブ会場で多くのオーディエンスを熱狂させているROTTENGRAFFTYの新たなライブチューン「ハレルヤ」が、前作から約2年ぶりのシングルとして12/18にリリースされる。殺傷能力の高いリフとヘヴィなサウンド、ダンサブルかつダイナミックな展開と、貫通力の高いサビ。“これぞ我らがROTTENGRAFFTY!”とでも言うべきキラーチューンはどのように生まれたのか。カップリングの「相殺微量サイレンス」「ぼくたちの失敗」、同日リリースのトリビュートアルバム『ROTTENGRAFFTY Tribute Album ~MOUSE TRAP~』、そして20年というキャリアに胡坐することなく突き進むバンドのことについて。ROTTENGRAFFTYの楽曲制作を担い、バンドを牽引する“感性”と“狂気”のギタリスト・KAZUOMIにじっくりと話を訊いた。
「いろんなステージや現場で受けた刺激や人のパワーを踏まえて、僕らが持っているROTTENGRAFFTY像を感じさせる楽曲を出したかった」
●“20th Anniversary Beginning of the Story 〜We are ROTTENGRAFFTY〜”はZepp DiverCityのライブを観させていただいたんですが、キレキレでしたね。今回のツアーはどうでしたか?
KAZUOMI:Zepp DiverCityの日は楽しかったですね。楽しくて嬉しかった。
●今年のツアーは前半戦と後半戦に分かれていて結構長かったですよね。
KAZUOMI:計40本くらいになるのかな。前半の方は色々あって楽しいだけじゃなかったけど、後半は吹っ切れた状態になっていました。
●5月にインタビューさせていただいたとき、KAZUOMIくんは「いろんなバンドを観て刺激を受けた。“ただ20年やってきたバンド”と思われるのは絶対に嫌だから、明日から普通じゃないライブをする。“絶対俺ちゃんとしない!”みたいなことを思って気持ちに火を点けている」という話をしていましたよね。
KAZUOMI:はい。“ちゃんとしない”というのは…生真面目な部分をちゃんと生真面目にやると、どんどん型にハマってしまうだけだと思うんです。だからそういうものを全部取っ払う。逆に生真面目だからこそ、真面目にしないこともできると思う。だから適当にやるとかではないというか。
●“ロックをする”みたいなニュアンスですよね。
KAZUOMI:そうそう。
●今回の新曲「ハレルヤ」は既にツアーで披露していて、かなりお客さんも盛り上がっていますけど、いつ頃にどういう経緯で生まれた曲なんですか?
KAZUOMI:当初はリリース予定が夏だったんです。でもリリースできなくてどんどんズレていって、すぐ夏フェスが始まって。それでもやっぱり20周年の間には新しい音源を出したかったんですよ。夏フェスの始まりが“京都大作戦”で…僕らは初日に出させてもらったんですけど…2日目も遊びに行って。その2日間でバンドマンやお客さんからの“人のパワー”をすごく感じて。その感動を曲作りに生かしたかった。それで、そこから3週間引きこもって作ったんです。
●その“人のパワー”というのは、ステージで感じたことだけじゃないんですよね?
KAZUOMI:そうですね。“京都大作戦”に限った話じゃないんですけど、ケツを叩かれたというか。“できないけど作ろう!”と思ってました(笑)。
●それまでの曲作りが煮詰まっていたんですか?
KAZUOMI:煮詰まりまくってましたね。武道館が終わった後はLIVE DVD/Blu-ray『PLAY ALL AROUND JAPAN TOUR 2018 in 日本武道館』(2019年1月リリース)の編集をしていたんですよ。かなり時間がかかったけどなんとか間に合って。
●はい。
KAZUOMI:そこから曲作りを始めたんですけど、全然できなかったんです。少し作っても“こういうことじゃないな”って。でも20周年で何かを生み出したかったし、お客さんもメンバーも“これがROTTENGRAFFTYだよね!”と思える楽曲にしたかった。その上で新しい側面を感じる部分もあるとは思うんですけど、20周年のタイミングで今までの系統とタイプの違う楽曲を出すのはちょっと違うのかなと。そういうことを考えていたので、時間がかかったのかな。
●目標となるイメージがあって、そこに当てはまる楽曲がなかなか生まれなかったんでしょうか?
KAZUOMI:「これぞROTTENGRAFFTY! っていう曲じゃなくてもいいかな?」と思って作ってみて「いやいやそれは違うよな」という試行錯誤の繰り返し。
●そういう試行錯誤の結果生まれた「ハレルヤ」はすごくROTTENGRAFFTYっぽいんですけど、構成というか場面展開がかなり目まぐるしいですよね。Bメロもサビに聴こえるし、A・Bメロが同じ曲とは思えない雰囲気で、かといっていきなり場面が変わるんじゃなくて自然に場面展開していき、ROTTENGRAFFTYらしいサビの拡がりがあって。そういう展開が不思議で、どうやって作ったのか想像できない。
KAZUOMI:僕もどうやって作ったか覚えてない。
●ハハハハハハ(笑)。
KAZUOMI:なにかものができるときって一瞬なんですよ。だから何が起きてそうなったかは覚えていないんです。そこからの構築は時間をかけてるからある程度は覚えてますけど。この曲ができてからも、他の曲も色々と作っていたんです。でもやっぱり「ハレルヤ」だなと。メンバーの反応も良かったし。
●この曲はROTTENGRAFFTYというバンドが持っている要素が全部入っている気がするんです。“ハレルヤ”という言葉のイメージから穏やかな曲調を想像したんですが、期待通りというか、いきなりイントロから殺しに来ていて(笑)。
KAZUOMI:ふふふ(笑)。
●それでヘヴィな曲かと思ったら、Bメロではダンサブルなノリになり、サビで突き抜けていく。ROTTENGRAFFTYが持っているいろんな側面が詰め込まれているなと。
KAZUOMI:さっきも言いましたけど、20周年に出すのであればリスナーにとっても僕たちにとっても、ROTTENGRAFFTYを感じさせる楽曲でないのなら出す意味があるのかな? と思ってたんです。今年は人との別れが多くて、色々と曲を作っていてもバラード調の曲ばかりできていたんです。でもそういう曲をリリースするのはなんか違うと思っていて。
●ほう。なるほど。
KAZUOMI:いろんなステージや現場で受けた刺激や人のパワーを踏まえて、僕らが持っているROTTENGRAFFTY像を感じさせる楽曲を出したかった。
●KAZUOMIくんはよく「ステージ上の5人だけじゃなくて、スタッフやお客さんも含めてROTTENGRAFFTYだ」という発言をするじゃないですか。そういう意味でも、20周年に発表する楽曲は、ROTTENGRAFFTYに相応しいものであるべきじゃないかと。
KAZUOMI:そうかもしれないですね。
●例えばBメロの“ほらアゲアゲアゲてけ ソレソレソレソレ”というフレーズという掛け声の部分。こういうノリは普通のロックバンドでは有り得ないですけど、ROTTENGRAFFTYだから成立するというか。
KAZUOMI:そうですよね。そこはもうノリで作りました(笑)。サビにちゃんと意味があるから、それでいいなと思ったんです。
●なるほど。
KAZUOMI:この曲でいちばん言いたかったのは“逆走のスタイルでもいい”、“から騒ぎのスタイルでもいい”ということで。
●そこ、すごくROTTENGRAFFTYらしいですよね。腹を括っているし、人間くさい。
KAZUOMI:僕の心情もバンドの心情もそうかなって。でもこのスタイルが正しいのか未だに悩んでいるし、今後ずっと付きまとうと思うんです。だから“もういいや”という投げやりな気持ちも入っているし、そうじゃないところもある。そういうことから始まる何かもある。そういう意味でこの歌詞を書いたんです。
●はい。
KAZUOMI:完璧だけを求めるとどんどん苦しくなってわからなくなりますよね。完璧を求めるのは素晴らしいことだと思うけど、未完成のまま進むことは結果的に何かを生むはずなんです。
●結局のところ、自分の道は自分で決めるしかないという心境の表れというか。
KAZUOMI:そうですね。「ハレルヤ」の作詞クレジットは3人(KAZUOMI / N∀OKI / NOBUYA)ですけど、3人表記のときは楽曲としての全体のストーリーはまとまっていないんです。まとまっていなくても全然いいんですけど、その中で僕がこの曲で何を言いたかったかというと、自分やこのバンドで実証済みのことや、今感じていること。そこに「ハレルヤ」というタイトルがバッチリとハマったんです。
●全部結びついたんですね。
KAZUOMI:はい。イントロだけでは“ハレルヤ”という言葉から受ける印象と直接的に結びつかないから、そこもまたいいなと。間奏のわけわからないところも(笑)。リード曲を小難しいタイトルにするのは嫌だったし、音と意味が共通していなくてもいいなと。
●実際ライブで演ってみて、お客さんの反応は想像通りですか?
KAZUOMI:まだ音源を出す前の段階なのでわからないですけど、とにかく音源を出す前に披露できていることが嬉しいです。確かにお客さんは盛り上がっているのかな? 僕はギターのフレーズが細かすぎて、この曲の時全然前を見れていないんです(笑)。
●ハハハ(笑)。
●カップリングの「相殺微量サイレンス」ですが、この曲を聴いてすぐ作詞作曲はKAZUOMIくんだなと思いました。
KAZUOMI:これは松原のことを想って書いた歌詞ですね。
●はい。そう受け取りました。
KAZUOMI:松原が亡くなってからの目に映る情景とか心情をそのまま書きました。松原やっぱり出てくるな(笑)。
●あの人、存在感大きいですよね(笑)。いちばん最後の“今を拾い集めて歩いてゆく”という歌詞が今の心境を表してるのかなと思って、ジーンときました。
KAZUOMI:こういう歌詞しか出てこなかったんですよね。僕は松原依存症だったと思うんですよ。事務所の社長だったし、自分の心情を深いレベルで理解してくれる人だった。この曲は「俺はこんな風に生きてるぞ」という気持ちで、松原に向けて作ったんです。お客さんに向けて作ったとか、リスナーのために作ったとかじゃなくて…いや、そもそも誰かのために書くことなんて無いですけど…あ、でも「リスナーのために書くことなんて無い」とか言うとすごく嫌な奴の感じがするな。
●表現が難しいですね(笑)。
KAZUOMI:そもそも誰のためにでもないところから始まってるし。
●KAZUOMIくんは純度を高めて誠心誠意を込めて楽曲を作るというスタンスで、それが結果的にリスナーのためになることだと考えていますもんね。
KAZUOMI:そうですね。そこの伝え方が難しいです。こうやってインタビューしていただく機会があったとして、僕の意図していない風に伝わると、僕らの音楽の意味も変わると思ってしまうんですよね。まあそんなこと考えても仕方がないですけど、でもとにかく「相殺微量サイレンス」は松原に向けて「俺はこういうことを思っていて、こんな風に生きてるぞ!」と思って作った曲です。
●言い切っていいと思います。松原さんに対しての気持ちはバンドマンもお客さんも、僕らみんなで共有していますから。
KAZUOMI:ふふふ(笑)。そうですね(笑)。
●そして「ぼくたちの失敗」のカヴァーですが、この選曲は意外でした。
KAZUOMI:意外でした? 僕はこの曲が大好きなんですよ。僕たちは「今夜はブギー・バック」をカヴァーさせてもらってるでしょ? もともとはオムニバスの企画であの曲をカヴァーさせてもらったんですが、でも実はその前に「ぼくたちの失敗」をカヴァーしたくて録っていたんです。7〜8年前だと思うんですけど。
●あ、そうだったんですか。
KAZUOMI:はい。この曲を録ってはいたんですけど、当時は諸々の許諾を取る時間の都合で実現しなかったんです。でもこの曲がすごく好きだったのと、凄くいいテイクで録れたこともあって、いつか出したいなとずっと考えていたんです。
●じゃあこれは当時録ったテイクということですか?
KAZUOMI:元はそうですね。今回リリースするにあたって少し音を足したり、リアレンジはしてますけど。歌とかはその当時のテイクです。
●え〜!
KAZUOMI:絶対にこの曲を出したくて、でもアルバムに入れるわけにもいかないし。それで今回のシングルになりました。
●それは感慨深いですね。
KAZUOMI:満を持してという感じですね。
●「あの2人のボーカルがこんな感じで歌うんだ!」とびっくりしました。
KAZUOMI:でもいちばん最初、2人は声を張って歌ってて(笑)。
●アハハハ(笑)。
KAZUOMI:「違う違う! 曲聴いた?」って(笑)。
●このカヴァーいいですね(笑)。
KAZUOMI:この曲は本当に聴かせたかった。ROTTENGRAFFTYの「ぼくたちの失敗」。
●そういう歴史や背景があったんですね。7〜8年前のテイクということにもびっくり。
KAZUOMI:これもひとつのバンドの在り方ですよね。
●うんうん。
「“めちゃくちゃなことができる場所”と思えることがすごく大事だなと思うんです。精神的にめちゃくちゃなことができる場所。“ポルノ超特急”やROTTENGRAFFTYのライブでは、そういう自由を感じることができる場所にしたい」
●あと、今回このインタビューとは別に対談2本もやらせていただいているんですが、『ROTTENGRAFFTY Tribute Album ~MOUSE TRAP~』は素晴らしいトリビュート作品ですよね。
KAZUOMI:もうとにかく嬉しいんですよね。なんだろう、この嬉しさは(笑)。
●それぞれのアーティストからの愛情が伝わってくるからじゃないですか?
KAZUOMI:そうですね。すごいいいアルバムだと思っています。
●それぞれのアーティストの色が出てますよね。楽曲は指定したんですか?
KAZUOMI:「できればこの曲をやってもらいたい」という希望を出したんです。でもオファーしたアーティスト側にも希望があればそれでいいと思っていて。例えばDragon Ashは「マンダーラ」をやりたいと言ってくれたから、それでお願いしたんです。
●錚々たる面々で、素晴らしいカヴァーで。並べて聴いたらすごいですよね。
KAZUOMI:10-FEETみたいに結成当初から知っているバンドも居れば、ヤバイTシャツ屋さんやキュウソネコカミのように知り合って10年も経っていないバンドも居る。清春さんやAA=のTAKESHIさんにはずっと憧れていて、僕たちが聴く側の世代だった頃から活躍している人たち。そういう人たちにも参加してもらえている。特に「マンダーラ」から「響く都」のくだりが大好きですね。
●ハハハ(笑)。
KAZUOMI:Dragon Ashですごく感動させてもらって、そこからの四星球という(笑)。1曲目はやっぱり10-FEETしかないなかったし、そこからのヤバイTシャツ屋さん、coldrain、キュウソネコカミの流れはもう、個性が爆発しているでしょ(笑)。
●めちゃくちゃ個性が出ていますよね。一聴してすぐどのバンドかわかる。
KAZUOMI:それをひっくるめて終着まで持っていってくれるDragon Ashの「マンダーラ」。これでもうアルバムが終わっていいくらいの感動だったので、その後は四星球しかなかった。
●なるほど(笑)。
KAZUOMI:MUCC feat. DJ Santa Monicaの「かくれんぼ」もすごくおもしろいし、清春さんの「寂寞 -sekibaku- 」も最高で、“清春さんが歌っているんだな”と思うとすごく感慨深くて。そしてAA=のTAKESHIさんのリミックスで締め括るのが最高だなと思っています。
●まさか「THIS WORLD」がああなるとは思いませんでした。
KAZUOMI:フックアップするポイントがTAKESHIさんらしいっていうか。感動しましたね。笑えるくらい贅沢なアルバムになりました。
●なんか“ポルノ超特急”みたいな贅沢なトリビュートアルバムですよね(笑)。そういえば“ポルノ超特急”ももうすぐですが。
KAZUOMI:セットリストをそろそろ決めようかと思っていて。セットリスト以外にも色々考えることがあるんですけど、もうめちゃくちゃにしてやろうと思います(笑)。
●ふふふ(笑)。
KAZUOMI:“めちゃくちゃなことができる場所”と思えることがすごく大事だなと思うんです。精神的にめちゃくちゃなことができる場所。“ポルノ超特急”やROTTENGRAFFTYのライブでは、そういう自由を感じることができる場所にしたい。
●モラルを守りながら。
KAZUOMI:そう。何をしていいわけではないし、事故に繋がる場合もある。僕はただ、ライブというのは「細かいことを考えずに裸になれる場所」ということが言いたいだけ。でもどのアーティストもその伝え方の難しさを感じていますよね。そこをちゃんと伝えることができたロックバンドが、ずっと愛される存在になるのかなと思います。
interview:Takeshi.Yamanaka
assistant:Yuina.Hiramoto
Album
『ROTTENGRAFFTY Tribute Album ~MOUSE TRAP~』
Victor Entertainment / Getting Better Records
2019/12/18 Release
[完全生産限定盤:2CD]
VIZL-1684 / ¥4,500+税
[通常盤:CD]
VICL-65290 / ¥3,000+税
Disc1 Tribute Album
1. 金色グラフティー / 10-FEET
2. D.A.N.C.E. / ヤバイTシャツ屋さん
3. エレベイター / coldrain
4. e for 20 / キュウソネコカミ
5. マンダーラ / Dragon Ash
6. 響く都 / 四星球
7. かくれんぼ / MUCC feat. DJ Santa Monica
8. 寂寞 -sekibaku- / 清春
9. THIS WORLD (TAKESHI UEDA [AA=] Remix)
Disc2 Live Album
1. 金色グラフティー (2018/12/23 ポルノ超特急2018 -5th ANNIVERSARY-)
2. D.A.N.C.E. (2018/10/3 PLAY ALL AROUND JAPAN TOUR 2018 in 日本武道館)
3. エレベイター (2019/10/6 逆ロットンの日2019 at 京都KBSホール)
4. e for 20 (2019/6/10 ロットンの日2019 at KYOTO MUSE)
5. マンダーラ (2018/12/23 ポルノ超特急2018 -5th ANNIVERSARY-)
6. 響く都 (2018/12/22 ポルノ超特急2018 -5th ANNIVERSARY-)
7. かくれんぼ (2017/6/10 ロットンの日2017 at 京都KBSホール)
8. 寂寞 -sekibaku- (2018/10/3 PLAY ALL AROUND JAPAN TOUR 2018 in 日本武道館)
9. THIS WORLD (2019/10/6 逆ロットンの日2019 at 京都KBSホール)
ROTTENGRAFFTYオフィシャルサイト
https://rotten-g.com/
ポルノ超特急2019
2019/12/21(土)、22(日)京都パルスプラザ
https://porno.rotten-g.com/19/