12月25日、クリスマス。この聖なる夜に赤坂BLITZでriceのライブが行われた。この日を最後に無期限で活動を休止することが決定している彼らの、最後のライブ。フロアを埋め尽くすオーディエンスの熱を帯びた視線がステージへと向けられているのを見るたびに、この日のライブがどれだけ大切なものかを実感する。
やがて会場が暗転し、薄いカーテン越しに影が映し出された。期待感の高まる演出に胸を踊らせていると、幕が開き威風堂々とriceの2人が登場し、大きな歓声が沸き上がる。サポートのバンドメンバーとゲストも現れ、ライブがスタートした。
1曲目「GAME」から、彼らが鳴らす突き抜けるような音にただ圧倒され、音の壁のようなものが何度も押し寄せては引いていく様に、フラフラしてしまった。間奏ではメンバーと観客の息の合った振りが入り、たくさんの手がひらひらと揺れる。
「Friends the nation」ではゲストメンバーが入れ替わり、ステージ上の色も違ったものへ。「アイスクリーム」が終わると、舞台上には楽器隊のみが残り、「泪-namida-」を楽器オンリーで奏で始める。ボーカル陣に負けじと、激しくも美しく鳴る音に酔いしれた。
再びゲストが入れ替わり、そこで繰り出されたのはバラード曲の数々。「バラードたちを笑顔で聴いて欲しいと思います」と宣言して会場を優しく満たす有紀の声に聴き惚れる。「露の土」では有紀がオカリナを奏で、心が澄んでいく音色が溢れる。子守唄のごとく甘い響きでステージ上が煌めいた。
「最後にいつも笑顔をくれるのは、皆でした。ライブでした。あなたでした」と話す有紀。その表情には哀しみの色もなく、未来を見つめているようだ。「紡ぎ歌」、「Air」でriceという魔法のような、奇跡のような存在がまた大きく羽ばたいていく様を私たちの目に焼き付け、彼らはステージを去っていった。
アンコールを求める声が次第に大きさを増していく。その声に共鳴するように勢いよく始まった「Sing you」が、全てを払拭する。たくさんの拳が上がり、跳ねる会場。全員が笑顔で前を向いていた。有紀がマイクなしで披露した「Fake star」のアカペラには、肌がピリピリと総毛立って、圧巻。彼らが今まで重ねてきた全てのライブの集大成として、記憶に深く焼き付いた。
またしても響くアンコールの声。いつまでも観ていたいと思わせる魅力が彼らにはある。「左半身が痺れている」と言う有紀。それなのにあれだけ天高く堂々と歌って、抱える想いを全て伝えようとしていたのだ。「STAY」は全員で大合唱。ゲストメンバーも再びステージに登場し、歓声に応える。色鮮やかに咲くステージからは未来と希望だけが見て取れ、ファンの愛に包まれたフロアは輝いていた。最後はステージ上に有紀とHIROの2人だけとなり、固く手を取り合い、抱き合い、大いにファンを沸かせる。渦になるほどたくさんの声援に送られて、2人はステージを降りた。
TEXT:栗山聡美