オフィシャルHPにて12/25の赤坂BLITZを最後に無期限活動休止の発表をしたrice。前進バンドRaphaelの活動休止後に結成し、12年間走り続けてきた彼らは、どのような想いを持ち、どのような考えでここまで辿り着いたのか? そして12/15はどのようなライブになるのだろうか? 先月号では10/24にリリースされたシングル『Fake star』を中心に訊いたが、12/25に赤坂BLITZワンマンを控えた今月号では、riceの真骨頂とも言えるそのライブと表現の核について櫻井有紀に訊いた。
●YUKIさんが曲を作るとき、そこに感情や気持ちを投影する感覚なんでしょうか?
YUKI:いや、できる限り気持ちは入れないようはします。
●あっ、そうなんですか。
YUKI:はい。創作時は歌詞とメロディがほぼ同時に出てくるんですけど、人が書いている小説や漫画を読むくらいのつもりで。“自分の中にあるものをすべて吐き出す”ということではなくて。
●それはちょっと意外です。楽曲を聴く限り、完全なるフィクションとも思えなくて。
YUKI:riceの歌詞はリアルとフィクションのちょうど真ん中だと思うんです。どちらも嘘じゃないというか。聴いてくれる方々には、それぞれ心と考える力があるじゃないですか。そう考えると、100%のものを押し付けてしまうとその100%の範囲でしか判断できなくなりますから、聴いている側もつまんないかなって。だから50%くらいのトピックを投げて、残りの余白の部分は自分なりの何かを膨らませてもらった方がおもしろいかなと。
●その方が歌いやすいんですか?
YUKI:そうですね。演じるというか、やっぱりエンターテインメントですから。それこそ今の僕らは派手な衣装も着ないですし、髪の毛をがっつり立たせたりとかしないですけど、そこで何を表現しようか? と考えたとき、楽曲の世界にとにかく集中しようと。
●その楽曲も、100%他者を演じるわけではなくて50%くらいは自分が投影されている。
YUKI:そうですね。ちょうどその真ん中をいつも目指していて。「アーティスティックですね」と言ってもらえることも嬉しいんですけど、一方で「職人ですね」と言ってもらえることもすごく嬉しくて。感覚的に、その真ん中をやりたいんです。
●12/25の赤坂BLITZワンマンで活動休止となるわけですが、当日のセットリストはどのように考えているんですか?
YUKI:セットリストは僕がビシッと決めて、みんなに「お願いします!」って言います(笑)。僕らは持ち歌が100曲くらいあるんですけど、今回は色んな人にゲストとして出ていただくので、ストックの中から「この曲はこの人に弾いてもらおう」みたいに、キャストに対して楽曲をキャスティングしていくというか。頭の中で妄想しているだけですっごく楽しいんですよ。長く続けているとそういう恩恵もあるのか〜って、自分で作った曲ながら思います(笑)。
●セットリストを万全にし、豪華なゲストも迎えて12/25は全力でやり切るだけだと。
YUKI:全力ですね。2012年のいちばん最後のライブですからね。
●ちなみに、ライブ中は何を考えていらっしゃるんですか?
YUKI:僕は、とにかく目の置き位置をずーっと考えながらやってます。
●え? 目の置き位置?
YUKI:視線の先をどこに置くかっていうことですね。“この曲をいちばん伝えてあげるべき人は誰だろう?”って、ずーっと探すんです。
●え? ということは、お客さんの1人を見て歌うということ?
YUKI:その人だけを見るわけじゃないですけど、1人を中心に見てどう派生していくのか? っていう感覚なんです。最前の人なのか、センターに居る人なのか、はたまたいちばん後ろで観ている人なのか。曲毎の主人公をいつも決めています。
●そうなんですね。
YUKI:だからよく「不思議な動きしますよね」とか「ヴォーカルなんだから真っ直ぐ向いて歌えばかっこいいのに」と言われることもあるんですけど、そうはいかないんですよね。ずっと動いていることが多いんです。1曲ずつ自分の中でヒロインを決める。riceが始まってからずっとそうしているんです。
●確かに個性的なステージングだとは思いましたが、そういう感覚だったんですね。
YUKI:ロックが大好きなんですけど、riceは“ロックバラードをちゃんと歌えるシンガーになりたい”と思って曲を作っている部分もあるんです。ただ自分を出すだけではもったいないから、ちゃんと理解して納得してもらえる伝え方をしなきゃ駄目だと思っていて。ライブでは、人並み外れて反応している人って居るんですよね。バラードのイントロが鳴った途端にずっと泣いていたりとかすると、“今日この曲をいちばん必要としているのはこいつか!”って。“届け!”って。でも同じようなパワーを持った人が他にも居たりするから、まったく1人というわけではないんですが。
●おもしろいですね。ということは、お客さんがゼロだったらYUKIさんのステージングは全然違うんでしょうね。
YUKI:違うでしょうね。何をやっていいのかわからなくて右往左往していると思います(笑)。
●最後に村田さんについて訊きたいんですが、ずっと10年間一緒に走ってきた村田さんはYUKIさんにとってどういう存在ですか?
YUKI:あいつドラムバカなんです(笑)。ずーっと叩いてるんですよ。リハで休憩のときもずっとドラムを叩いてます。
●ドラムバカですね(笑)。
YUKI:同時に、僕の歌を誰よりも聴いてくれる奴なんですよ。聴いてアンサンブルを考えてくれて、僕もそれが心地よくて。“卵が先か? 鶏が先か?”の話じゃないですけど、だから僕はあいつが気持ちいいビートを意識して曲を書くんです。その繰り返しで100曲くらい書いてきました。
●素晴らしい相乗効果ですね。いちばんの理解者というか。
YUKI:間違いなくそうですね。出会ってから16年間、1回も喧嘩したことないですからね。「ホモか!」という噂もありますけど(笑)。
●ハハハ(笑)。
interview:Takeshi.Yamanaka