昨年12月にリリースしたシングル『ハレルヤ』以来、約1年ぶりにROTTENGRAFFTYが待望の新作を完成させた。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で2/26のイベント自粛要請以来、数々のライブが延期・中止になっていく中、6/10にLIVE Blu-ray / DVD 『ROTTENGRAFFTY LIVE in 東寺』をリリースし、有観客では過去3本のイベントに出演。他の4人のメンバーが定期的に発信を続けている中でほぼ露出が無かったKAZUOMIはどのような日々を送ってきたのか。デジタルシングル『永遠と影(とわとかげ)』にはどのような想いが詰まっているのか? ありのままの心境をKAZUOMIに訊いた。
●インタビューは6/10にリリースしたLIVE Blu-ray / DVD 『ROTTENGRAFFTY LIVE in 東寺』以来となりますね。
KAZUOMI:ちょうど新型コロナウイルス感染症の影響で緊急事態宣言が解除された直後で、“これからどうなっていくんだろう?”みたいな時期でしたね。状況はあまり変わっていないですけど、また雲行きが怪しくなってきていますよね。
●12月に入って感染者が増えてますね(※取材は12月上旬に実施)。
KAZUOMI:まあ仕方ないですよね。
●コロナ以降、お客さんの前でのライブは8/8の“Osaka Music DAYS!!!”、そして10/11の“GR8 FEST. AT OSAKA-JO HALL “、更に神戸・ワールド記念ホールで11/21に“music zoo KOBE太陽と虎 Real 10th Anniversary MUSIC ZOO WORLD Day.1-肉眼で見る生き物の世界-LIVE編-”がありましたね。今後は12/26に“FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY 2020”への出演が予定されていて、現時点でいうとコロナ以降ではお客さんの前でライブを3回やっているわけじゃないですか。
KAZUOMI:そうですね。…そこで感じるのは、こういう状況に慣れてしまっている自分が居るということで。
●慣れてしまっている?
KAZUOMI:ウィズコロナに慣れてしまっている自分。それでも楽しみにして来てくれた人が居ることに嬉しさもあるんですけど…他のミュージシャンがどういうことを発信しているかあまりわかっていなくて、これは個人的な想いになりますけど…興味を持たれなくなっているというのも事実かなと思います。コロナ前の世界がそのまま戻ってくるということを考えるのは“悪”ではないですけど、そこに期待しすぎたらダメなのかなと。緊急事態宣言が解除されてからずっとそんなことを考えていますね。
●そこに期待しすぎても、囚われすぎてもいけないと。
KAZUOMI:そう。世界が変わってしまったのはどの業種も一緒で、業績が上がった業種もあれば下がった業種もあるじゃないですか。上がったところもこの異常な世界でたまたまハマっただけというか。
●そうですね。
KAZUOMI:例えばゲームとかが当てはまるのかもしれないですけど、どの業種の人も、業績が上がっているのは一時的に起きている出来事だというのはわかっていると思うんです。
●はい。
KAZUOMI:だからミュージシャンだけ以前の世界を待っているというのは“なんかちょっと違うかな”と思っているというか。起きてしまったことは起きてしまったわけだし、変わっていかなければ存続出来ないというか、エンタメ業界がふるいをかけられている気がするんです。
●そうですね。確実に試されていると思います。
KAZUOMI:何か新しいエンターテインメントを作らないとダメなのかなと思いつつ、僕が出来る最大限のことというのは、ROTTENGRAFFTYで音楽を発信すること。僕たちはライブをするバンドだけど、まず音楽が最初にあって、そこから派生して“ライブをしたい”という気持ちが強くなっていった。そのライブについて、これまでのROTTENGRAFFTYのスタイルのままだとビジョンが見えていない部分があるというか。一度はライブが出来るかもしれないと思うけど、規制がある中でやるとして「次の月もその次の月も出来るか?」と問われれば「出来ないな」と。そういう部分では、ちょっと自分の中でもお手上げ状態ですね。
●うーん、なるほど。
KAZUOMI:何をしたらいいのかわからなくなってしまった部分もあったんですね。そういう中で、今回のゲームのオファー(ゲームアプリ『A.I.M.$ -All you need Is Money-』メインキャラ“ディーゼル”キャラクターソング)の話をいただいて。この曲「永遠と影」の歌詞はそういう気持ちを詞にしたんです。簡単に言うと、この歌詞の主人公はバグっているんですよ。
●はい。
KAZUOMI:バグってしまっていて、自分でもよくわからない状態で。でも身近な人の言葉でハッと目が覚める瞬間がある。何も解決していないしはっきりとした答えは出ていないんですけど、ただそれを書こうと思ったんです。
●リアルな気持ちそのままだと。
KAZUOMI:今回のオファーをいただいてから楽曲から作り始めたんですけど、ゲームサイドのスタッフさんから色々情報をもらって、実際のゲームの動画とかを見せてもらったんです。ROTTENGRAFFTYが担当させてもらう“ディーゼル”というキャラクターは身体がいちばん大きいと聞いていたので、音色については最初からある程度答えが見えていたんです。
●サウンド面はイメージしやすかった?
KAZUOMI:格闘ゲームというのと、スピード感があるということと、“ディーゼル”というキャラクターのビジュアルとか個性とか。視覚的な情報も多かったので、“こういうサウンドがいいのかな”とある程度浮かびやすかったんです。楽曲の方は意外と早く出来たんですよね。
●“ディーゼル”というキャラクターから受けたインスピレーションは、ROTTENGRAFFTYというサウンドの枠組みにハマりやすかったんでしょうか?
KAZUOMI:はい。ゲームの製作者の方たちが、ある程度アーティストの個性みたいなものをわかった上でオファーしてくださったのかなと思います。候補曲としてはデモが3曲あったんですが、作っている中で気持ちがいちばん高揚したものを形にしたんです。他の2曲はメンバーにも聴かせていないし、もちろんレーベルの方にも聴かせていない。“これがいいな”と思って制作を進めていったんですけど、苦労したのは歌詞ですかね。
●リアルな気持ちを書いた歌詞が苦労した?
KAZUOMI:そもそも僕は歌詞にすごく時間がかかるんですけど、キャラクターの詞を書けばいいのか、自分たちの詞を書けばいいのか…その辺で迷いましたね。結論としては僕自身の心情をかなりリアルに歌詞にしたんですけど、歌詞ができた後に「身体が大きな“ディーゼル”が実はこんなことを思っている人間だったらすごく好きになれる」と思えたんです。キャラクターと自分が思っていることを照らし合わせて、“ディーゼル”が思っていることと自分が思っていることがシンクロ出来たら納得いくなと。
●なるほど。
KAZUOMI:“ディーゼル”はヘヴィ級のキャラクターだけど、でもこんなに繊細な部分があると知ると…自分のことを「繊細」と言うのはちょっと抵抗がありますけど、僕は本当に細かいので(笑)。
●ハハハ(笑)。
KAZUOMI:良いとか悪いとかの話じゃなくて、僕は他人の気持ちを結構そのまま受けてしまうというか(笑)。
●はい。
KAZUOMI:だからヘヴィ級のキャラクターに、実は器が小さい部分があると考えるとすごく好きになれるなと思えたんです。歌詞を書いたのは僕なんですけど、それが“ディーゼル”というキャラクターに重なっていった感じですね。
●ふむふむ。
KAZUOMI:とは言いつつ、最初はゲームに関係なく書いたんです。“ディーゼル”のことを書こうとしてもよくわからないんですよね。僕はゲームの作り手じゃないので。でもやっぱりどこかを繋げたくて。それでちょっと強引に「自分が思っていることを“ディーゼル”も思っていたら好きになるな」と。弱い部分を持っていたりとか、“実はパニックになっている人なんだ”とかがわかると、ドラマが見えてくる。
●さっきおっしゃっていましたが、歌詞にかなり時間がかかったのはどういうところで?
KAZUOMI:いつもそうなんですけど、歌うのは僕じゃないので時間がかかるんです。僕の言葉で歌詞を全部構築していくと、リアリティが無くなるというか。なぜなら、歌う人間が僕じゃないから。
●そうですよね。
KAZUOMI:楽器のアレンジを考える場合は“ROTTENGRAFFTYのイメージで…”みたいなことはあまり考えていないんです。僕個人としてビジョンを見ていて、今の時代に生きているのでそこで見たビジョンをそのままサウンドに落とし込んでいる。でも言葉とか歌は、無視できないことが多いんですよね。
●そこに歌う人の人間性が乗ってきちゃいますもんね。
KAZUOMI:そうですね。とは言え、歌い手のキャラクターにすべて歌詞を寄せるわけでもなくて、「これはらしくないな」ということを敢えてやってみたりもしてきたんです。「N∀OKIは普段こういうこと言わないけど…」とか、「NOBUYAはこういう歌詞を書く傾向があるから、逆に今回はこの路線は無しにして僕が全部書いてみよう」とか。
●そういう研鑽を積み重ねることによって、ROTTENGRAFFTYというバンドに深みと説得力が出てきましたよね。ROTTENGRAFFTYが愛される所以はそういうところだと思うんです。
KAZUOMI:ここ最近の楽曲の作り方というのは、僕が主に歌詞をズバッと書いて、“なんかリアリティが無いな”と感じる部分をヴォーカル2人に書いてもらって、そこからチョイスし直すという感じなんです。僕らの場合、歌詞のクレジットは名前を併記しているだけなのでわかりづらいと思うんですが、今回の「永遠と影」はほぼ僕のビジョンというか、僕の心の中の情景を書いたんです。
●なるほど。調べてみると、この“ディーゼル”というキャラクターは気が優しくて力持ちで主人公のサポート役みたいな感じなんですけど、もともとバイクのレーサーをやっていて、事故で右腕を失ったらしいですね。
KAZUOMI:そんな設定があるんですね。
●あ、知らなかったんですね(笑)。
KAZUOMI:“ディーゼル”の気持ちを考えてみたときに歌詞が出てこなかったので、そもそもそこは二の次三の次でしか作れなかったんです。
●強くて頼り甲斐があるだけじゃなくて、過去に傷や影があるという設定らしいんです。
KAZUOMI:そこは知らず知らずのうちにリンクしてますね。というか、敢えて知ろうとしていなかった。ゲームの世界に寄せようとしても、あまり上手く作れないと思ったんですよ。前情報や前提条件が多いと、パッションみたいなものが生まれにくくなっちゃうんですよね。題材に持っていかれすぎて、本来の楽曲のビジョンからどんどんかけ離れていってしまうから。
●曲の候補としてデモが3曲あったとおっしゃっていましたが、その中でどれがいいかはすぐにピンときたんですか?
KAZUOMI:いちばん最初に「永遠と影」の原型を作ったんですけど、いちばん気持ちが乗ったものをバーッと広げて完成させた感じですね。
●歌詞では繊細さや弱さみたいな部分を表現したという話がありましたが、サウンドもラウドで激しい側面だけではなくて、“儚さ”だったり“哀愁”のような要素が随所に入っている気がするんです。いちばん顕著だなと感じたのが…おそらくギターだと思うんですけど…間奏の後の“あの夜空を灯す光が/夢だとしても構わない”という歌の背景で鳴っているロングトーン。
KAZUOMI:あれはギターじゃなくてサックスですね。
●あっ、サックスなんですか。
KAZUOMI:ギターソロがあって最後のサビに向かうんですけど、そこのバックでロングトーンで鳴っているのはホーンを入れています。
●あの音、すごく印象的でした。
KAZUOMI:ああいう形のホーンの使い方というのはROTTENGRAFFTYでしたことなかったんですけど、なんか気持ちよかったので(笑)。
●「強さと弱さ」のような、両面性はアレンジ面で意識したんですか?
KAZUOMI:うーん、あまり意識していなかったんですけど、もともとそういうのが好きなのかな。
●ROTTENGRAFFTYっぽいところですよね。
KAZUOMI:イントロはデジタルハードコアというか、僕が若かった頃に聴いていたAtari Teenage Riotとか、今ではEDMのガバと言われるジャンルっぽい雰囲気というか。ああいうぶっ飛んだ感じで幕を開けるのは、バグっている自分の心情がよく出ているなと。
●うんうん。
KAZUOMI:その後、目を覚ますきっかけとなる女性の言葉が入っているんですけど、要するに現実なのか現実じゃないのか、自分がどこで生きているのかよくわからないという歌なんです。
●それはまさに今を生きるみんなの心情でもある。“朝が遠すぎて”という表現から特にそう感じたんですが。
KAZUOMI:そうですね。「いつ見えるんだろう?」というような気持ち。2月からずっと思っていることも書いているし、実は今年の出来事じゃないことも書いているんです。
●ほう。というのは?
KAZUOMI:40代半ばに差し掛かる僕たちが“あと何年出来るだろう?”という不安というか。僕らは20代そこそこでバンドを始めましたけど、いまは明らかに若い頃のような時間は無いんです。自分の中でそういう気持ちが年々大きな割合を占めるようになってきて、限られた時間の中でこのバンドや僕が何を残せるのかな? と。そういう“儚さ”みたいなものを表現している部分もあるんです。このパンデミックの中でバグった気持ちを綴っただけではなくて。
●なるほど。
KAZUOMI:不安な気持ちは生きていく中で何種類もありますよね。仕事のこともそうですし、家庭とか学校のことかもしれないし、人間関係とか。不安な要素はいっぱいある。でも負のオーラのまま作ってしまうと、聴いている人に何も落とせないなと。そこですごく時間がかかりました。
●どこかに光を見たかった。
KAZUOMI:さっきおっしゃっていた、ホーンが鳴っている最後のサビにどうやって持っていこうかと。最初は持っていけないと思っていたんです。最後まで暗いまま曲が終わってしまうなと。
●そうだったんですね。
KAZUOMI:この曲でどう決着を付けるのか、そこにかなり時間がかかりましたね。暗いまま終わろうかとも思ったし。愚痴を言うのはあまり良くないと思うんですけど、やっぱり人前でやらせてもらって何かを形にする職業って厳しいですよね。
●厳しいというと?
KAZUOMI:愚痴を言っているアーティストは1人も居ないんですよ。そういう気持ちを発信する現場が無いのかもしれないけど、「待とう」とか、そういうポジティブな発言が多いじゃないですか。
●そうですね。
KAZUOMI:仕方ないとは思うんですけどね。ROTTENGRAFFTYを好きでいてくれている人とか、今回のゲームが縁で知ってもらえる人も居るだろうし。そういう人たちがこのインタビューを目にしてくれる機会もあると思うので思っていることを言うと…どうしたらいいのかわからないけど、最終的に前を向きたいと思っている希望を最後の方で詞にしたんです。
●まさにそうですね。最後はかなりリアルな心境を書いていると受け取りました。
KAZUOMI:聴いてくれた人がどう生きるか…。所詮音楽で人が変わるものではないと思う部分もあるんです。でも僕は今までの人生で、言葉だけじゃなくて、音とか音楽に変えてもらったり、前に進めたことが何度もあって。
●はい。
KAZUOMI:音楽の作り手は、そういう経験をしている人が多いと思うんです。それに僕は言いたいことを言葉で言うのは上手くないので、音楽で伝えたいという気持ちがかなり強くて。音楽なんて聴き手がどう捉えるかが全てなんですけど、だからこそいま抱いている気持ちをそのまま歌詞にしたというか。強くいれること自体はいいと思うし、かっこいいと思う。でも僕自身が興味を持てないんですよ。実際そこまで完璧な人はほぼ居ないと思うんですよね。順風満帆に見えるアーティストも…アーティストだけじゃないと思いますけど…自分自身で難しくしてしまっているところとか、人生に於いてそこまで器用に出来ている人ってそんなに居ないと思うんです。
●そうですよね。
KAZUOMI:特にROTTENGRAFFTYの場合はまさにそうで、他のメンバーの心情を言葉にしようとはあまり思っていないですけど、弱い部分をさらけ出すというか、音楽の中でいろいろなことを表現したいんです。初期のROTTENGRAFFTYは「俺は負けない!」という精神的姿勢が多かったですけど、そこだけを広げていくのは年齢に比例しないというか、リアリティが無くなってしまったんです。「好き」「嫌い」じゃなくてリアルさが無くなってしまった。
●ROTTENGRAFFTYのヴォーカル2人は、弱い部分をさらけ出した上で強く歌えるヴォーカルですよね。ただ単に強いのではなく、何があっても強く歌おうとする姿勢というか。
KAZUOMI:そうそう。そっちに見えたほうが正しいんですよ。リアルなんですよね。強く歌おうとするところがいいところかなと。ただ強がっているように見えるのは嘘というか、リアリティが無い。
●そうですよね。
KAZUOMI:この世界になって、みんなが抱えている闇がすごく統一されていると思うんです。だからこそ“歌詞をどうしようか?”と悩んだんです。不安にさせるだけの歌詞や楽曲もアリかな? とか。それくらいぶっ飛んだ曲があってもいいかなと。
●ほう。
KAZUOMI:どうにもならないことに凹んでいるくらいだったら、アホになるくらいの気持ちでも別にいいんじゃないかとか。今はアホにならないとミュージシャンはやってられないですよね。そもそも音楽を作る人は行き過ぎた人が多いとは思うんですけど、特にこのエンタメの全滅具合に対しては“どう生きていたらいいのかな?”というくらいの気持ちになってしまうし。
●そうですね。
KAZUOMI:その中でも数あるイベントを繋げてなんとかやってくれている人たちが居て、僕らはそのイベントに出させてもらっている。嬉しい気持ちと、待ってくれている人は居るんだなという実感があると共に、やっぱり世間的には興味をどんどん失われてしまっている世界だなと感じる部分もある。
●うんうん。
KAZUOMI:“Osaka Music DAYS!!!”のMCで言ったことでもあるんですけど、やっぱり望んでいる世界ではなくて。「こんな世界を待っていたわけではないけど、出来ないよりはマシだと思うし、でもこんなんじゃないと思っている」と言ったんです。アーティスト性に依ると思うんですけど、ROTTENGRAFFTYはお客さんとライブハウスでぐちゃぐちゃになって、僕らはそういう中で楽曲を作ってきたバンドなんですよ。いままでそういうビジョンを元にROTTENGRAFFTYは進んできた。だから、規制がある中でこの先のビジョンをどう感じたらいいのか、自分の中でも全然答えが出ていないんです。
●なるほど。
KAZUOMI:世界中の悲しい状況をすべて見ることは出来ていないですけど、肌に感じるというか、嫌でも入ってきてしまう異様な世界観。そういうことは誰とも話す機会が無いんですよね。今回の「永遠と影」も、そういう世界があって出来たというのは間違いないんです。
●話す機会が無かったということですが、敢えて話してこなかったんですか?
KAZUOMI:ライブとかでバンド仲間と会う機会はあったんですが、みんなから「元気づけよう」とか「この世界をなんとかしたい」というマインドを感じるんです。みんな弱音を吐かないんですよね。本当にみんなすごい。バンドマンはみんな強いなと思います。タフだなと。だから僕だけそんなこと言えないですよね(笑)。
●みんなも思ってはいるんでしょうけど。
KAZUOMI:思ってはいるし、言葉にしても仕方がないと思っているんでしょうね。でも実際そうなんですよね。話しても結局“どうしたらいいんだろう?”に行き着いてしまう。
●ミュージシャンに限らず、最後は「どうしたらいいんだろう?」になると思います。未だ誰もはっきりしたことがわからないので。
KAZUOMI:結局そうなんですよね。ミュージシャンは弱い部分を見せたらダメと思い過ぎているというか。でもそういう人間でありたいと思うのも事実だし、実際に僕が今回書いた歌詞もそうだし。なかなか言えないようなことを僕はこれまでにも歌詞にしてきて、今回に限った話ではないんですけど、僕は音楽だからこそ言えると思っているんです。そうじゃないと楽しくないので。
●タイトルを「永遠と影」にした理由も教えていただきたいんですが。
KAZUOMI:歌詞が出来た後もタイトルは最後まで決めていなくて、ギリギリで決めたんですけど、語呂が良かったのもあるし、「永遠に影」にはしたくなかったんです。そんな世界にしたくないから。
●「永遠に影」だとタイトルから受ける印象が全然違ってきますね。
KAZUOMI:僕が作ってきた音楽というのは、必要とされなくなった時代が来るとそこが終わりだと思うんですが、音楽を作ったという事実は残るわけで。
●確かに、事実は変えようがない。
KAZUOMI:永遠にその事実は彷徨うわけなんですよ。そこに光と影を感じるというか。そういうイメージでこの楽曲を聴いていたら「永遠と影」というタイトルがぴったりかなと思ったんです。
●合っているし、すごく印象に残る言葉ですね。
KAZUOMI:僕は楽しいだけの世界というのは存在しにくいのかなと思っていて。自分の人生はそうなので。それはたぶん、この先もずっと続くんだろうなと。僕たちが生きている時代だけじゃなくて、ずっと。この楽曲で表現しようとしていた前を向こうとする部分と、バグってしまうような弱い部分は、自分の人生の中でずっと一緒に存在しているので。
●ところで新曲は出来ているんですか?
KAZUOMI:ありますよ。ライブも無いので曲はたくさんあります(笑)。
●6月にインタビューさせてもらった時には、「曲作りはこれから」という話だったと記憶しているんですが。
KAZUOMI:あれから結構出来上がっていますね。
●ずっと曲を作っていたんですか?
KAZUOMI:ほとんどメンバーにも会わずずっと曲を作っていました(笑)。
●ということは、遠からず将来何らかの形で世の中に出てくるわけですよね?
KAZUOMI:出せたらいいなと思います。これまでの僕はライブ活動をしながら楽曲を作っていたじゃないですか。それは時間的にも大変だったんですけど、制作も全部ライブに向かっていたんですよね。ライブをやるために楽曲を作っていたというか、ライブで表現するための楽曲というか。
●はい。
KAZUOMI:でも向かっていた先が今は無くなっちゃって。無くなったと言うか、ライブをリアルに感じていないんです。その中で楽曲を作っているので、どう捉えられるのかわからないけど、これまでに無いものが形になっていますね。
●おお!
KAZUOMI:ずっとこれまでに無いものを作ってきたんですけど、ライブを身近に感じながら楽曲を作っていたけどそれが無くなったから、ある意味僕の中では新鮮なんです。今までこういう生き方をしてこなかったから。ずっとライブバンドでいたので。
●なるほど。
KAZUOMI:新しい何かを作るいい機会を与えてもらっているとすれば、パンデミックが起きない限りこんな時間はなかっただろうし。今回の「永遠と影」もそうですけど、どんどん新しいものは出来ていますね。ライブ以外のところのリアリティを感じながら楽曲を作れているのかなと思います。
●ライブ以外のリアリティというのは?
KAZUOMI:ライブでも何回か言葉にしたことがあるんですけど、僕は必要とされていない音楽というのは存在していないことにほぼ等しいと思っていて。
●はい。
KAZUOMI:現時点でROTTENGRAFFTYを応援してくれているファンの人に向けて、ということや、この人たちに新しい楽曲を聴いてもらえる、ということ。それはメンバーに対してもそうですね。“この楽曲を聴いたらメンバーはどう思うだろう?”とか。いつも“お客さんが聴いたらどう思うだろう?”とドキドキしながら発売日を迎えたりしているんですけど、そういうリアリティがあるから作れているというのも事実ですね。
●いいことですね。
KAZUOMI:でも“その先はどうしよう?”というような、見えない部分ももちろんあるんです。それをそのまま言葉にしたのが「永遠と影」なんですけど。
●“その先はどうしよう?”というのは、全員に共通する気持ちですよね。
KAZUOMI:そうですね。“いつまで待てばいいのだろう?”と思っている人も居るだろうし、実際にライブから興味を失っている人もいっぱい居る。別にその人たちを責めていないんです。仕方ないですもん。ライブが無いんだもん。その中でもROTTENGRAFFTYを応援してくれている人は本当にありがたいなと。すごいことだなと。音楽で繋がっている存在が居るのは嬉しいですよね。お客さんもそうですけど、事務所の人間とか同じ世界で知り合った人とか、その存在が続ける理由になっていたりする。
●そうだと思います。そういう存在に支えられているというか。
KAZUOMI:こういう風に前向きに思うときもあれば、それだけではどうにもならない世界になってしまっているのも現状だし。僕は音楽を聴いて闘える気持ちになれる瞬間がある人間なので、聴いてもらえる人が居る限り続けられるのかなと思うんですけどね。
●はい。
KAZUOMI:僕個人としては聴き手がいなくなっても何か作っていると思うんですけど、逆に考えると、好きで聴いてくれている人が居る人生はやっぱりありがたいです。お客さんとは個人的に話したことはないけど、何かと何かが繋がったんだなと。近い将来、形にして何か発信するので、そこには期待してもらいたいなと思っています。
●楽しみですね。
KAZUOMI:考えるだけで辛くなることもいっぱいありますけど、でも「元気出していこう!」と言いたいですね(笑)。元気がない人に元気を与えられるような存在でありたいなと思っている部分と、リアリティな部分を形にしたいと思っている部分。色々ありますね。
Digital Single
『永遠と影』
2020/12/16 Release
ROTTENGRAFFTY LIVE Blu-ray/DVD『ROTTENGRAFFTY LIVE in 東寺』特集:KAZUOMI(G./Prog.)に3ヶ月間の想いを訊く
昨年12月、ROTTENGRAFFTYが世界遺産に指定されている京都の真言宗総本山・東寺の金堂前で開催したライブ "20th Anniversary Beginning of the Story EXTRA in 東寺"は、記憶に深く刻み込まれた一夜だった。記念すべきあの日から約半年後、彼らが毎年ライブイベント"ロットンの日"を開催している6/10に、LIVE Blu-ray/DVD『ROTTENGRAFFTY LIVE in 東寺』がリリースされた。現場の熱気と興奮と感動がリアルに蘇る今作は、我々がずっと求め続けているものが詰まっている。今回の特集では、KAZUOMI(G./Prog.)にLIVE Blu-ray/DVD『ROTTENGRAFFTY LIVE in 東寺』について、そしてこの3ヶ月間の想いを訊いた。
ROTTENGRAFFTY All Time Best Album 『You are ROTTENGRAFFTY』特集 21年目の全メンバーソロインタビュー
2019年に結成20周年を迎え、前半戦と後半戦の20周年記念ツアー及び京都の真言宗総本山・東寺でのワンマンライブを大成功させ、シングル『ハレルヤ』と20周年記念トリビュートアルバム『ROTTENGRAFFTY Tribute Album 〜MOUSE TRAP〜』をリリース。冬の風物詩となった"ポルノ超特急2019"で熱い2日間を作り上げた、響く都のROTTENGRAFFTY。彼らの20年間を網羅したAll Time Best Album 『You are ROTTENGRAFFTY』が、この度3/18にリリースされる。一歩も立ち止まることなく加速する彼らの"未来"を知るべく、昨年JUNGLE☆LIFE誌面に掲載した『20年目の全メンバーソロインタビュー』に続く全メンバーソロインタビューを敢行。ベストアルバムを通して彼らの20年間を振り返りつつ、21年目、そして5人が見据える"未来"について訊いた(※当インタビューは2/24に実施いたしました)。