03年の結成以来、数々の大物海外バンドのサポートを務め、PARAMOREやNew Found Gloryなどから突出して高い評価を受けてきたPOP DISASTER。
だが、リリースした作品では秀逸かつ独創的なメロディとハイクオリティな楽曲が賞賛されながら、それに見合うセールス的成功を何故か得られなかった。そんな状況の中で昨年、新メンバーにJunko(Ba.)が加入。
Maiko(Dr.)とのフィメール・リズムという新たな武器を手に、FACTを擁するmaximum10への移籍を果たす。
初のアメリカレコーディングを経てリリースする3rdアルバム『POP DISASTER』には、難産の末に生み出された珠玉の楽曲群からさらに厳選した16曲を収録。自分たちを信じ続けてきたからこそ鳴らせる圧巻の音が、今ここで時代とつながる。
●今回の『POP DISASTER』は、前作の2ndフルアルバム『Take★Action』(09年2月)から2年10ヶ月ぶりの作品になるわけですが。
Takayuki:僕らとしては、もう少し早めに出したかったんですけどね。今回は初めてプロデューサーを立てたこともあって、レコーディングのスケジュール調整に時間がかかったんですよ。その分、曲もすごく練れたし、いっぱい作れたので良かったと思います。
●そういえば前作のインタビューでは、"これが売れなかったら解散する"的なことまで言っていましたよね…?
Takayuki:解散しなかったですね…。そのセリフを今回もそのまま使ってもらっていいですか? (笑)。
一同:(爆笑)。
●でも毎回、これがダメなら解散するくらいの覚悟でやっているというか。
Takayuki:本当にその通りだし、今回もそういう気持ちでやりました。でも前作リリース後の反応は、自分で想像していた範囲内でしかなかったんですよ。正直、"もっと広がってほしい"という気持ちはあったから。
●しかも、ツアー後にはメンバーの脱退もあった。
Takayuki:前のベースからツアー中に辞めたいという話があって、ツアー後に脱退しました。その後は僕がベースボーカルになって4人でライブも何本かやったんですけど、それは自分たちのやりたい形ではなくて…。
●だから、ライブの本数も少なくなっていった?
Maiko:ほとんどライブはしていなかったですね。
Ebi:その時点ではアルバムのリリースどころかレコーディングも決まっていなかったし、どこを目指したらいいのかわからなくなっていて。そういう中途半端な気持ちでライブをやってもしょうがないと思ったんです。
Takayuki:中途半端な形でライブをやるんだったら、曲作りに専念しようと思って。
●今作に向けて、かなりの数のデモを作ったそうですね。
Maiko:前作『Take★Action』の時も素材はいっぱいあったんです。
Takayuki:その時はサビだけとかで本当に素材だったんですけど、今回は完成形まで作ったものが20曲以上はありましたね。
●その中から収録曲を選んだ基準は?
Ebi:"今までのPOP DISASTERで勝負したい"とレーベルから言われたんです。だから、それとはタイプが違う曲は今回あえて外して。
Takayuki:僕らとしてはもっと新しい感じの曲も入れたかったんですけど、レーベルから「そういう曲はここから広がっていった時に出したほうが、もっと色んな人に聴いてもらえるから」と言われて納得しましたね。
●レーベルも今回からmaximum10に移籍したわけですが。
Takayuki:今までもメジャーから声がかかったりしていたんですけど、どれもお断りしていて。たとえば日本語詞の曲や流行りっぽい曲も書かなくちゃいけないとか、色んな制限や制約があるんだろうなと勝手に思っていたんです。でもmaximum10からは、曲について要求されることが一切ないんですよ。逆に、何か言って欲しくなるくらいで(笑)。今回のアルバムでもやりたい放題やれたし、すごくありがたいことですね。
●新メンバーのJunkoさんとはいつ頃出会ったんですか?
Maiko:レーベルのスタッフに紹介してもらって去年の8月くらいに、初めてスタジオで音を合わせたんです。
Takayuki:スタジオで合わせてみたら、メチャクチャ上手かったんですよ。僕らはポップパンクとかが好きで割とストレートな音楽をやっているんですけど、彼女はそういうのとは違うネッチリしたグルーヴを持っていて。POP DISASTERに合うかどうかという不安はありつつ、それ以上に"面白そうだな"っていう気持ちが強かったので、去年の11月に正式加入してもらいました。
●音楽的なルーツが違う?
Junko:私はJ-POP/ROCK系のバンドを今までやっていて、パンク系のバンドはやったことがなかったんです。…自分では全然、ネチッこいベースだなんて思っていなかったんですけど(笑)。
Maiko:でもネチッこさが、バンドの音にも奥行きを出してくれていて(笑)。彼女のプレイを聴くと、色んな音楽をカジってきた人なんだろうなと感じられるというか。一緒にやっていて楽しいし、やりやすいですね。
●バンドにもスムーズに馴染めたと。
Takayuki:僕らは大阪に住んでいて、彼女は東京に住んでいるので必然的にスタジオで一緒に曲作りはできないんですけど、それでも違和感なくやれましたね。言いたいこともお互いに言い合えるから。
Junko:みんなが色んなことを言ってくれるので、こっちも言いやすいというか。変に気を遣わない感じでやれましたね。最初はサウンドに溶け込めるように、自分なりの試行錯誤はしていて。今作を作ったことでようやく、このバンド内で自分のあるべき場所を見つけられた気がします。
●今作には過去の作品からの再録曲もいくつか収録されていますが、そこでも今までとの変化を感じられるのでは?
Takayuki:「ベース1つでこんなに曲が変わるんだ!」っていう発見が、僕ら自身にもあったんです。本当に以前のバージョンよりも良くなっているし、彼女が新たに入れたフレーズもあるので、ベースが今作の聴きどころの1つではあると思います。
●ベースが変わったことで、今までと違う感じの曲もできたりした?
Takayuki:今回、僕が作った中でM-11「Trusty Chords」とM-15「Break My Fall」はポップス寄りの感じなんですけど、どちらもベースがグルーヴィーじゃないとパッとしない曲だと思うんです。最初の段階ではアッサリしていたのに、彼女がベースを弾いてくれたことでノれる感じになって。この2曲はすごく良くなりましたね。
●他に新しいタイプの曲というと?
Takayuki:M-9「Move On」は僕が作った曲なんですけど、最初は自分でも"大丈夫かな?"って思うくらいだったんですよ。ネタのつもりでメンバーに聴かせてみたら、Ebiは意外と反応が良くて。Hossyは首をヒネっていましたけど(笑)。
Hossy:最初に聴かせてもらった段階では歌のバックに打ち込みのドラムとベースが入っているだけだったので、"これを聴いてどうしろって言うんだ?"という感じでした(笑)。
●でもEbiさんの反応は良かった。
Ebi:僕は最初にスタジオで合わせた時から、推し曲にしたいくらいだと思っていましたね。実際、Takayukiからも「次のアルバムの1曲目候補」と言われて聴かされたので、自信があるんだろうなと思ったし。
Takayuki:それくらいパンチがある曲だったから(笑)。最終的には上手くまとまったし、"踊れるロック"みたいになったんじゃないかな。僕が新しい感じの曲を持っていくと、メンバーも最初はとまどったりするんです。でも結果的には、"こういう引き出しもあったんだ"っていうのが見えて良かったですね。メンバー間でも新たな一面を感じられた、意欲作だと思います。
●Fireworksなども手がけるBrian McTernanをプロデューサーに迎えての、初のアメリカレコーディングはどうでしたか?
Takayuki:まずアメリカに行って最初の4~5日で、日本で録っておいたデモをBrianと一緒に聴いてアレンジを見直していったんです。大きくは変わっていないんですけど、そこでもらったアドバイスが今作にスパイス的な感じで活きていると思います。
Ebi:Brianも自分の作品という意識があるから、全然引かないんですよ。こっちも自分のフレーズを変えられたりするのは嫌だし、向こうも考えがあってのことなので引かない。そこの調整は難しかったけど、良くなるものはすごく良くなって。
●意見がぶつかることもあった。
Ebi:最初はちゃんとぶつけていたんですけど、途中で完璧に負けましたね…。シュンとなっていました(笑)。
Takayuki:そこらへんはやっぱり、言葉の壁が大きいですよね。僕は最初にBrianから「このCDは日本人にだけわかったらいいような作品にはしたくないから」と言われて。どこの国の人が聴いても何を歌っているかわかるようにしたいということで、歌詞も一緒に見直しました。
●歌詞に関しても助言をもらったんですね。
Takayuki:「もっと簡単な英語で、シンプルにしなくちゃいけない」と言われて。ちゃんと歌いまわしも計算して、韻を踏むように言われたんです。だから今回は日本語訳だけじゃなくて、英詞のほうもちゃんと見てほしいですね。
Maiko:蛍光ペンで線を引いて、ちゃんと韻を踏んでいるかチェクしていたもんね(笑)。Brianが自分の友だちに聴かせても「日本人が歌っているとは信じられない」と言っていたらしいので、発音も本物なんだと思います。1番最初に録った「Move On」のデモを聴かせた時にそういう反応をもらえたので、"これはいけるな"と思いました。
●サウンド面でも変化はありましたか?
Ebi:音圧とかはそれほど変わらない気がしたけど、プロデューサーの腕がすごいと思いましたね。フロアマイクを2本立てて録った2つの音を混ぜたりしていて。あんなことは自分たちだけでは絶対にできない。
Hossy:出る音は一緒だとしても、それをイジる耳が全然違う。
Takayuki:今作は音質がすごく良いと思うんですよ。Brianのプロデュースやミックスもあってこそなんですけど、Ted Jensen(FACT/GREEN DAY等を担当)のマスタリングが本当にヤバかったですね。音のヌケが全然違うし、日本に帰ってきてからマスタリング後の音源を聴いてみてビックリしました。
Maiko:後から知ったんですけど、ちゃんとマスタリングを見越してBrianはミックスもしてくれたらしくて。マスタリングで、こんなに感動したのは初めてかもしれない。
●本当にすごく良い作品ができましたね。
Junko:セルフタイトルの通り、新しい部分と今までの良さが全部集まってできたアルバムだと思います。
Maiko:今回は入らなかったけど、良い曲がまだいっぱいあるから次への期待もあって。
Hossy:モチベーションも上がってきているし、早く次の作品が作りたいですね。今作を作ってお腹いっぱいになったんですけど、もう1回お腹いっぱいになりたいから。
Takayuki:次がどうなるかはわからないんですけど、今の時点ではこのアルバムを超える自信が全くないですね(笑)。それくらいすごいものができたと思うし、今まで以上にもっと広がるんじゃないかっていう期待感が大きいんですよ。
Interview:IMAI