5月のDVD『15 channel』リリースを皮切りに全国各地でライブを繰り広げ、もはや夏の風物詩となった“MASTER COLISEUM '11”は大盛況ソールドアウト。
盟友SABOTENとのスプリットCD『TROPICAL PARK』のリリース&ツアーの開催etc…。昨年バンド結成15周年を経た彼らはそのキャリアの上に胡坐をかくことなく(そもそもそういう性格じゃないけど)、新メンバー・よこしんを迎えて何の迷いもなく突っ走ってきた。そんなPANの激動の2011年を締め括るのは、アルバムとしてはなんと4年ぶり、自身4枚目のフルアルバム『Positive And Negative』。
驚くなかれ。今作でPANは(15年もキャリアがあっていい加減落ち着いてもいいお年頃なのに)まるで夏の日のあさがおの如く目覚しい成長を遂げている。きっかけは2009年3月にリリースしたシングル『いっせーのせっ!!』で出会ったプロデューサー・伊藤銀次。そこで楽曲制作の価値観をいい意味でぶっ壊されたことがカンフル剤となり、2010年03月にセルフプロデュースでリリースしたミニアルバム『TORIHADA GAME』でネクストステージへと足を踏み入れた彼らの音楽は、今作で完成の域に達したといえる。
そもそも、パンク・パワーポップ・ロックを基調とした彼らの音楽には、一聴しただけでオーディエンスを暴れさせるほどの破壊力と、言葉遊び的ニヒルなギミックが散りばめられていた。そこに音楽的な広がりと人間的な深み(=要するに成長)を余すことなくドバドバと注ぎ込んだことにより、楽曲が突き刺さってくる度合いは過去にないほど半端ないものになった(※当社比)。「相変わらずアホやなぁ」と思わずニヤリとしてしまう仕掛けが随所に見られるが、聴き進めるうちに、そのメロディと言葉に背中を押されていることに気づくだろう。いつの間にか気持ちが高ぶり、PANが鳴らす音からエネルギーをもらっている自分に気づくだろう。
例えば何かイヤなことがあって気分が落ちているとき、人は酒を飲んだりふて寝したりして気を紛らわせるが、そんな人にこそPANのアルバム『Positive And Negative』をオススメする。何もかも忘れて暴れまくりたいとき、大声で歌ったり叫びたいときはPANのツアーへの参戦を強くオススメする。使い古された言葉で本当に申し訳ないしライターとしてどうかと自分でも思うけれど、「聴くだけで元気が出る」、そんなアルバムです。
text:Takeshi.Yamanaka