OLDCODEX(以下、OCD)が新作ミニアルバム『FLOWER』を10/5にリリースする。今回は声優としても活躍する中心人物のTa_2(鈴木達央)が多忙だった事情もあり、今までよりも他のメンバー2人に任せた部分が大きかったという。だが逆にそこで3人の多才なクリエイターが各自の役割に集中して制作した結果、今まで以上の振り幅と突き抜けた感覚を持つ作品が完成した。様々な逆境を乗り越えて再び上昇速度を増した彼らは今、OCDにしか生み出し得ない花を咲かせ始めている。
「本当に色々と考えながらの制作だったけれど、その1つひとつがOCDチームに対する試練だったのかなとも思っていて。それを作品として完成できたことがうれしい」
●前作の3rdシングル『Harsh Wind』を4月にリリースしてから今回のミニアルバム『FLOWER』までの間には、過去最大規模となる赤坂BLITZでのワンマンもありましたが。
Ta_2:ライブはライブだし、特別な想いはなかったですね。会場入りして、YORKE.が描いてくれたデカいバックドロップを見た時にはすごくアガりましたけど。その瞬間に"こういう感じのライブになりそうだな"と思いました。
●あの日のライブはDVD化する予定なんですよね?
YORKE.:そのためにカメラもいっぱい入っていたから、普段と違う緊張感はあったかな。最後はテンションが上がっちゃって、R・O・Nと2人でステージセットの2階に上がっちゃったもんね(笑)。そこからの見晴らしが最高だったし、何もかも忘れるくらい楽しかったな。
R・O・N:アンコールで、俺はギターを弾くのをやめちゃって(笑)。
Ta_2:アンコールの時の写真を見たら、2人ともスーパーマリオみたいなポーズをしていたよ(笑)。
●そこでの経験が今作にも活かされていたりする?
Ta_2:ディレクターから"ライブも盛り上がったし、フロア重視の曲をやってみようか"という提案があったんですよ。自分たちもそういう曲をやれたら楽しいなと思っていたので、作ってみることにしました。
●今作を作る上でライブ感がテーマの1つになった。
YORKE.:6曲それぞれのコンセプトが最初にあったんですよ。
R・O・N:Ta_2に出してもらったコンセプトを俺が解釈して、曲を作っていく感じでした。"メロコア"とか"歌始まり"とか"踊れそうな曲"みたいなことだけでそこまで具体的な要望があるわけではないので、そこに自分の意見を加味してみたりして。
●"メロコア"っていうのはM-4「Sick of it」?
Ta_2:まさにそうですね。今回はミニアルバムっていう形態だったので、色々と試してみたいというのが最初にあって。
R・O・N:「Harsh Wind」の延長線上で作ろうとした曲もあったし、ちょっと違う振り幅を見せようかという意識もありましたね。
●M-1「スクリプト」は「Harsh Wind」の延長線上にあることを思わせる、明るい曲ですよね。
Ta_2:「スクリプト」については「歌から始まるミドルテンポの曲で、みんなで歌える感じがあったら楽しいよね」っていうアイデアを俺が出して、そこから作っていったんです。
R・O・N:"明るい曲を作ろう"っていう方向性は今回もあったんですけど、全体のバランスとしては明るい曲と暗い曲を半分ずつの感じで作りました。M-3「Night flight」は"ダンサブルなもの"っていうテーマがまずあったので、4つ打ちにしてみたりもして。
●M-2「VISION」の制作はYORKE.さんの絵から始まっているんですよね。クレジットにも"Paint:YORKE."と入っていますが。
YORKE.:これは俺が主張したんです。やっぱり絵から始まった曲なので、自分もクレジットされたいなと思って。ただ、JASRACには登録されないんだけど(笑)。
R・O・N:印税が欲しいらしいんですよ(笑)。
●(笑)。
YORKE.:お金が欲しいっていうよりも、"前代未聞なことをやりたい"っていうだけなんです。今回はそこにチャレンジしてみた感じですね。
R・O・N:YORKE.さんが最初に2種類の絵を描いてきて、そこから俺が選んだほうのイメージで曲を作りました。
●どんな絵だったんですか?
R・O・N:ピアノの鍵盤っぽい感じでしたね。俺はYORKE.さんの絵を音源化する時に、なぜかデジタルな音を使いたくなるんですよ。でも前作のカップリング曲「L」みたいに実験的な曲調だと"ライブで楽しめる曲"っていうコンセプトからは外れちゃうので、今回は曲よりも歌詞の内容でYORKE.さんの絵を言葉にしてみました。
●タイトル曲のM-5「FLOWER」はどんなコンセプトから?
Ta_2:この曲に関しては"歌詞先行でやりたい"っていう要望を俺から出して。
R・O・N:Ta_2からもらった歌詞のイメージで曲を書いて、作っていきました。
●Ta_2さんの中で何か書きたいテーマがあったんでしょうか?
Ta_2:今年は急に会えなくなる人が多くて、その衝撃が自分の中で大きすぎたんです。ちょうど"Harsh Wind Tour"をやっている時期だったんですけど、それについて自分の思っていることが強烈だったので何とか形にして出したいなと思って。そこで「歌詞先行で作りたい」っていう話をしたんですよ。
●自分の中での衝撃を歌詞にして吐き出そうとした。
Ta_2:自分では抱えきれなくて、"吐き出さないと、きついな"って思うくらいだったんですよ。この曲は亡くなった人に対する想いを書いた歌詞なんです。その人とは本当に色んな話をさせてもらっていたので、亡くなられた時はもう立ち直れないくらいに打ちのめされちゃったんですよね。その人と話したことを思い出してみると、歌詞の中にある"あなたが植えた花 やっと育ってきたんだ"というようなこともあって。歌詞を書き上げて読み直した時に、そのことを実感して「FLOWER」というタイトルにしました。
●前作では歌詞に苦労したわけですが、この曲はどうだったんですか?
Ta_2:この曲に関しては自分の中で言いたいことが1つ明確にあったので、前作に比べたら歌詞を書く上でのつらさはなかったかな。前作の2曲で歌詞を書いたことが身になっているなと実感できる部分もあったので、やっておいて良かったなと思いました。こういう経験をもっと1つ1つ積み重ねていきたいですね。
●歌詞を書くのはOLDCODEX(以下、OCD)を始めてからだし、新鮮なんじゃないですか?
Ta_2:メチャメチャ新鮮だけど、メチャメチャ苦しい。そういう新鮮な産みの苦しみっていうものを味わっているから、すごく刺激的なんですけどね。
●2009年の結成以来もう3年目になりますが、新鮮さを失わずにやれていると。
R・O・N:元々、このプロジェクトがなければ出会うこともなかった3人のクリエイターが集まっているから、やっぱり一緒にやっていて刺激は受けますよね。俺は長くやっていく上で、ナアナアにはならないように気を付けているんです。曲作りも自己満足にはならないように気を付けています。
Ta_2:俺は自分の中で今までのOCDっていうものが大きかったので、そのイメージに今回は囚われちゃっていたんですよね。今作では最初に「FLOWER」を制作したんですけど、その歌入れ前くらいから俺は他の仕事が忙しくて首が回らない状況になってきて。今までのイメージに囚われて盲目的になっていることにも、そういう時期だったので自分では気付けなかったんです。
●忙しすぎて、自分の心境が客観的に見えていなかった。
Ta_2:ディレクターと話をしていた中でそれに気付かせてもらったんですけど、その時に「じゃあ、今回はメンバーに甘えてもいいんじゃないか」という話をされて。実際に自分の中では余裕が全然なかったし、「今回は歌に集中してみたら」と言われたのでそうしてみようと思ったんです。だから最初に曲ごとのコンセプトは出したけど、「FLOWER」の制作以降は楽曲に関してはR・O・Nに任せたし、ジャケットもほぼYORKE.に任せたんですよ。
YORKE.:Ta_2の状況もよくわかっていたし、「今回は歌に専念したい」っていうことも素直に言ってくれるから、俺もビジュアルの制作に集中できて。あがってくる曲を途中で聴いたり、R・O・Nくんとも制作中に電話で話していたりしたから、制作の流れはいつもと変わらなかったですね。芯はブレないっていうか、誰か1人が苦しい状況になったくらいで崩れるバンドじゃないし、逆に俺もより集中できていたくらいかな。
●それぞれが自分の役割に集中してやれたんですね。
Ta_2:だから実は今までの作品の中で一番、俺が制作に関わっていないんですよ。そうするしかない状況もあったんですけど、それが自分の中ではマイナスの意味じゃなくて、すごく色んなことを考える機会にもなった。でも他の仕事をしてる時もそこでテンパっているはずなのに、無意識下でOCDのことをすごく考えている自分がいるの気付いて。
YORKE.:それって最高だね。
●元々は声優という仕事がありつつOCDを始めたわけですが、自分の中でいつの間にか相当大きくなってきていた。
Ta_2:演者という核は元々あったんですけど、そこにもう1つOCDという核ができた感じですね。それに気付いた時に、今まで以上にOCDというものがすごく好きになって。だから、こういう機会があって良かったなと。今回は本当にひたすら歌っていたという感じです。
●歌に改めて向き合った部分もあるのでは?
Ta_2:"こういうこともやっていいんだな"と気付いた部分がいっぱいありました。それをこれからのライブや作品でも出せていけたらいいなと思っていて。少しだけ"歌"っていうものの深さを知りましたね。今回はすごく2人に甘えた分、これから何か返せるものを作ろうかなとも思っています。
●そもそもTa_2さんが中心となって始めたプロジェクトだから、自分1人が色んなことを考えすぎてしまっていたんでしょうね。
Ta_2:今回、それに気付かせてくれたのがディレクターだったんですよ。俺にとって初めてのバンドがOCDだったので、最初から"気合を入れてやりたい"と思っていて。その姿勢のままで2年間ずっとやってきたことが、自分を盲目的にしてしまった原因だったのかな。それに今回で気付けて良かったし、今は憑きものが落ちたような感覚なんです。
●ラストのM-6「fool K」は今作では一番ヘヴィで、そういう突き抜けた心境も表れている気がします。
R・O・N:この曲は特に指定がなくて、「好きに作っていいよ」と言われたんです。今までもヘヴィな曲は色々と作ってきたし、こういうタイプの曲は元々好きなので作っていて楽しかったですね。
Ta_2:「FLOWER」をラストにするという意見もあったんですけど、俺が「fool K」を最後にしようと言ったんです。「FLOWER」は曲調もしっとりしているし、自分の想いを込めているから感覚的に重すぎるところもあって。この曲の後に「fool K」のヘヴィなイントロが鳴った瞬間、"下を向いている場合じゃないな"って思えるんですよ。
●曲調通り、アッパーな気持ちにしてくれる。
Ta_2:下を向いていた目線が一気にグッと上を向くイメージが自分の中にあって。最初に聴いた時からそのイメージがあったので、絶対にこの曲を最後に入れようと思っていました。実際に並べて聴いてみたら、そういう感じになったので良かったですね。曲調的にも映画の予告編みたいな雰囲気もあるから、次作につながる感じで面白いかなと。
●今回のジャケットはどんなイメージで?
YORKE.:透明なフィルムに"FLOWER"と手書きしたものを持って、そこに照明を当てることで絵の上に文字の影を映してあるんですよ。それをカメラで撮るっていう、アナログな作業をしていて。初回盤のほうは絵を描く前の白いキャンバスに影を映して撮っていて、通常盤のほうは絵を描いた後に撮ったんです。初回盤から通常盤へと、時間が進んでいる感じですね。どちらも良いアプローチができたなと思うので、両方買って下さい(笑)。
R・O・N:今回は初回盤と通常盤でアートワークも全然違うし、初回盤にはスタジオライブも収録したDVDが付いているんです。スタジオでのライブを本当にそのまま撮った感じなので雰囲気も出ているし、これを観てライブに行きたいなと思ってもらえたらうれしいですね。
●12/23には、渋谷O-EASTでのワンマンも予定されています。
Ta_2:今回は本当に色々と考えながらの制作だったけど、その1つ1つがOCDチームに対する試練だったのかなとも思っていて。それを作品として完成できたことがまずうれしいし、今作を聴いて12/23のライブに来てもらって俺たちと一緒に盛り上がれたらいいなと思います。
Interview:IMAI