千葉県柏市を中心に活動する3ピースバンド、odd(オド)が1stフルアルバム『qualia』をリリースする。
パンク/メロコアを基調にしながら、ソウルやボサノバのテイストも取り入れた彼らの音楽性は変幻自在だ。疾走感溢れる楽曲とエモーショナルな泣きのメロディーに、キラーなギターワークと多彩なリズムパターン。
様々な要素を1曲の中に封じ込める抜群のセンスと高いスキルが、他に類を見ない“odd”というオリジナリティを生み出している。進化するメロディックパンクの未来形を描き出す初音源と共に、衝撃的ニューカマーがシーンに登場した。
「一見、奇妙に見えるかもしれないけど、それが自分たちのやりたいスタイルやスタンスなんだっていうことですね」
●"odd"とは英語で"奇妙な"という意味ですが、どんな意図でこのバンド名にしたんですか?
ryo:バンド名には"他に類を見ない、自分たちだけの独自な音楽を作っていきたい"という願いを込めているんです。一見、奇妙に見えるかもしれないけど、それが自分たちのやりたいスタイルやスタンスなんだっていうことですね。
●結成当初から目指す音楽性は明確だった?
ryo:僕はoddをやる前に、3ピースのスカパンクバンドをやっていたんです。その頃に色んな音楽に触れ合ってから、貪欲に聴くようになって。前のバンドが解散した時点で、次はスカ以外の音楽も色々取り入れたバンドをやってみたら面白いんじゃないかという考えは頭の中にありましたね。
●前のバンドでやっていたことを起点にして、色んな音楽を取り入れたサウンドを思いついたと。
ryo:メロコアやパンクみたいな歪んだギターサウンドを主軸にしながら、ボサノバやスカからR&Bやファンクまで貪欲に融合できたらなとは漠然と思っていましたね。そういうスタイルでやっていきたいという気持ちは、最初からあって。
●他のメンバーも元から色んな音楽を聴いていた?
tetsu:僕は前のバンドでハードコアをやっていたんですけど、元からどんな音楽でも好きなんですよ。ハードコアしかやりたくないとは、当時から思っていなかったですね。
ryo:元々、tetsuはスタジオで働いていて、僕はそこのお客さんだったんです。彼がドラムを叩いているのは知っていたし、人柄もすごく良かったので一緒にやろうと誘って。そこから、oddが始まりました。
●masahiroくんは2010年に加入したそうですが。
ryo:masahiroが元々3ピースのバンドをやっていた頃から僕は知っていて、その解散後にやっていたソロのアコースティックライブも観たことがあったんです。彼はギターの引き出しがすごくあるし、僕にはない部分も持っている。そこが噛み合ってきたらどんどん面白いものが作れると思ったので、とりあえずサポートメンバーとして入ってもらうことにして。
masahiro:ちょうどその頃にTIGHT RECORDSからV.A.『KNOW FUTURE』(2010年1月)に誘ってもらって、僕もサポートメンバーとしてレコーディングに参加したんです。oddとは前のバンド時代に対バンもしていたんですけど、その時から"俺ならこう弾くな"というイメージはあって。そのレコーディングで自分が思っていた音が出せたので、"これはまだまだイケるな"と思って正式加入しました。
●この3人になって、バンドが固まった部分もある?
ryo:軸は元々ブレていないんですけど、それが感覚的にハッキリしてきたと思います。自分たちの中に"コレだ!"っていう感覚が芽生えてきたし、それによって楽曲のクオリティも向上したんです。そういう実感が増していったのは、masahiroが加入してからなんですよ。そこから"odd"というものが、どんどん出来上がっていったのかな。
●バンドとして表現したいことが、より明確な形になっていった。
ryo:僕の曲はたとえば"サンバとメロディックを融合させたい"とか、それぞれに最初から何らかのイメージがあるんです。それを3人で形にしていくスピードがグッと上がりましたね。
●今回の1stフルアルバム『qualia』を作るにあたっても、事前に作品全体のイメージがあったんですか?
ryo:初期のデモ音源に収録していた曲もリアレンジして組み込んでいるので、"今のベスト"みたいな感覚はあって。結成当初から、どれを聴いても全く雰囲気が違うような曲を作りたいと思っていたんです。でも芯にあるものは変わらないから、"どれを聴いても、oddだな"と感じられるアルバムにはしたかったですね。
●oddの芯にあるものとは?
ryo:僕らはメロディーありきで、楽曲を作っているんです。色んな要素を取り入れていても、やっぱり耳に一番入ってくるのは歌とメロディーだから。
tetsu:メロディーがしっかりしているので、僕らもある程度好きなことができるというのもありますね。
●ryoくんの作るメロディーが、oddというバンドの芯になっている。
ryo:あと、これまでに色んなバンドを観たり、自分自身も活動してくる中で確信したことがあって。音には、その人の生き様や人間性が本当に出るんですよね。自分の中にはバンドマンとして貫きたいことがあるし、メンバーの人間性もoddの魅力として出せたらいいなと思っています。
●メンバーはryoくんの人間性に惹かれて加入した部分もあるんですか?
tetsu:それは…どうかな? (笑)。
一同:(笑)。
tetsu:最初はやっぱり彼の歌やメロディーセンスに惹かれたんですけど、人間性の部分も結成後にどんどん知っていって。まず音楽に対して真面目なところに、惹かれた部分はあると思います。こんなにナイーブだとは思っていなかったですけどね(笑)。
●ryoくんはナイーブなんですね(笑)。
tetsu:本当に神経質な人なんですけど、そこを僕らが上手くコントロールしているというか(笑)。
ryo:昔から、出来ないことや上手くいかないことでマイナスな状態になっている状況を打破して前に進むことを常に考える人だったんです。そういう意味では繊細だし、ストイックなのかもしれない。でもやっぱり自分に甘いところはあって、ダラけるクセがあるので2人には今までも迷惑をかけていて…。
●迷惑というのは?
masahiro:ライブの時は僕が車でryoの家まで迎えに行くんですけど、家の前で「着いたよ」と携帯に連絡したら「ごめん、ちょっと待って」と言われて。その30分後くらいにようやく、まだ濡れた髪からシャンプーの良い匂いを漂わせながらryoが出てくるという事件がありました(笑)。
●迎えに来てくれた人を家の前で待たせて、自分はシャワーを浴びていたと。
masahiro:そのエピソードにも、彼の人間性が出ていると思います(笑)。
ryo:そういう当たり前の部分が、実はダメだったりもして(笑)。でもバンドマンとしては礼儀を大切にしたり、あいさつもちゃんとしようと心がけているんです。人と接している時は、常にエネルギー全開でいたいんですよ。親しい人でも初めて会う人でも、自分は全身全霊で向き合っているつもりだから。そういうことは大事にしたいと常々思っていますね。
●それはメンバーに対しても同じはずですよね?
ryo:はい…(笑)。メンバーを大事に出来なければ、バンドなんてやっていけないから。自分がサポート出来るところはしたいし、逆に支えてもらっている部分にもちゃんと感謝しつつやっていけたらと思っています。
tetsu:きっと今回のインタビューをキッカケに、迎えが着いてからシャワーを浴びたりする行為はなくなるんじゃないかな(笑)。
●(笑)。今作は"今のベスト"というお話もありましたが、新曲も入っていたりするんですか?
ryo:M-3「doom」とM-8「carnival」は新曲ですね。
●英詞メインの今作で、この2曲とM-5「saudade」だけは日本語詞ですが。
ryo:「saudade」は以前のデモにも収録していたんですけど、当時はちょうど楽曲的な幅も広がり始めていた時期で。そこで歌詞まで日本語と英語の両方にチャレンジしたことでキャパシティがオーバーしてしまって、一度はライブでやらなくなっていたんです。
●それを今作に再び収録したのは?
ryo:この曲を良いと言ってくれる人が周りに多かったのと、自分の中でも大事な曲なのでいつかは出したいと思っていたんです。当時の自分よりも引き出しが増えているし、今ならやれると思って今作に収録することにしました。そこから他にも日本語詞でやってみたいという想いが出てきたので、新たに2曲作ってみたんですよ。
●日本語詞の新曲が出来たことも、自分たちの進化を表しているんでしょうね。
ryo:今は英詞と日本語詞とでは、全く違った心持ちで書けるようになって。英詞を書く時は大まかなイメージをどんどん吐き出していく感じなんですけど、日本語詞では繊細なニュアンスにまでこだわっているんです。たとえば"ひらり"みたいな擬音語を取り入れることで情緒が出せるし、自分が歌う時も気持ちがグッと乗る。そういう部分は日本語の魅力だと思うので、今後も取り入れていきたいですね。
●擬音語を取り入れることで、すごく感覚的な表現も出来るというか。
ryo:今作の『qualia』というタイトルは僕が提案したんですけど、"感覚"とか"感覚質"という意味なんですよ。日常でも色んなところで使われる"~な感じ"という、すごく曖昧だけど確実に存在しているもの。その"~な感じ"というものにグッと惹かれて、このタイトルを付けました。今回の12曲は僕ら3人が今まで生きてきた中で受けた色んな"感じ"から作ったものなので、全国のまだ見ぬ人たちにも今作を聴いて受けた"感じ"を大事にしてもらいたいですね。
●メンバーも同じような感覚がある?
tetsu:100%同じというわけじゃないですけど、自分も思っているようなことがoddの歌詞になっていて。"これはないな"っていうものは、歌詞でもメロディーでも今まで一度もないですね。
ryo:僕が原曲を弾き語りで聴かせてから2人に各パートを考えてもらうんですけど、基本的にはおまかせで。2人の良いところがどんどん出るようにしたいと思っているし、実際の作業でもそうなっているんです。今はすごく良い感じで、3人が意見を言い合いながら曲を作れていますね。
●初のフルアルバムを作り終えた今の心境は?
masahiro:今作を作るにあたって、僕は初めてやることが多くて。新しいことを始めるのは正直、少し怖くて自分の中で勇気が要ることだったんです。自分1人じゃ絶対にやれないことも、この3人だから出来たんだろうなと思うし、やれば出来るんだと感じられましたね。
tetsu:自分たちでも自信のあるものを作れたし、全国のCDショップに置かれることで聴いてくれる人も増えると思うんです。僕らは柏を拠点に活動しているバンドなので、"柏といえばodd"と言われるくらいになりたいですね。これからも今まで以上にもっと色んな音楽を取り入れて、この3人にしか出来ない良い音楽を作っていきたいです。
●リリース後のツアーも楽しみです。
tetsu:やっぱりライブを観てもらうことで一番強い"qualia"を感じられると思うので、今後は出来るだけ全国各地に行きたいですね。ツアーでは、僕らの音楽を直接感じてもらいたいです。
masahiro:ライブを基準にして曲を作っている部分もあるので、生の空気をライブハウスで一緒に感じたいんですよね。だから、ぜひライブを観に来てほしいです。
ryo:まだ見ぬ、これから出会う人たちにツアーで会えることを楽しみにしています。
Interview:IMAI
Assistant:HiGUMA