2008年の結成以来、目を見張るスピードでその規模を拡大し続けてきたNothing’s Carved In Stone。歴戦の猛者4人が集い、前人未踏のアンサンブルと強烈な存在感を放つ世界観を生み続けてきた彼らが、5枚目のフルアルバム『REVOLT』を完成させた。金属的な輝きの中に、生身の人間性と現実を直視する言葉を封じ込めた今作は、自己と対峙し、自らに抗い続けた4人の美しき明日へのマイルストーン。変化することを恐れず、常に進化を続ける有機的集合体Nothing’s Carved In Stoneは、自らの手で新たな扉を開あけた。
●シングル『Out of Control』(2013年3月リリース)の取材時に「アルバムの制作は進めている」という話はありましたが、今回のアルバム『REVOLT』はどれぐらいのタイミングから意識し始めたんですか?
生形:アルバム『Silver Sun』(2012年8月)完成直後の制作のときからの曲も3曲くらい入っています。そのときに作ったのが「Out of Control」とか。確か6曲作ったんですよ。作るだけ作っておいてツアーに出て、ツアーが終わってからシングル『Spirit Inspiration』(2012年11月)の話が来て、そのシングルのカップリング曲は別で作ったんですよね。それが終わったら「Out of Control」を録り始めて、カップリング2曲を録って…って感じで、去年はずっと曲作りとレコーディングをしていたんです。
●いろいろ時期が前後しているんですね。
生形:そうですね。2012年〜2013年の春まではとにかく曲を作っていたイメージです。
●どんなアルバムにしようとか話し合っていたんですか?
村松:特にあまり話はしていなかったですね。前回のアルバムは音を抜いたから、その反動で曲作りは自然と音を増やす傾向にあったんですよ。シンセの音がいっぱい入っていたりだとか、「Out of Control」を作っていた辺りではそんな話をしていた覚えがあるんです。その後のアルバム制作は結構…。
生形:カオスだよね。
●カ、カオス!?
村松:結局、長いスパンでバンドをやっている感じだったんで、あまり話とかはしていなかったよね。
生形:俺個人的には『Silver Sun』がすごく気に入ったアルバムで。だから“次はどうしようかな”っていうのがなかなか思いつかなかったんです。今まではアルバムを作り終わった直後に“次はこういうのをやろう”っていうのがどんどん出てきたんだけど、それがあまりなかったんですよね。
●『Silver Sun』の満足度や達成感が高かったから?
生形:そうですね。ロックの方向でやりきった感があって。シンプルで音数も少なく、隙間を上手く使ったロック。しかも古くさくないものを作れたなと。その達成感がありすぎて、結構“どうしよう”って思っていたんですけどね。普段だったら、ツアー中にやりたい曲とかどんどんできるんですけどね。個人的には今までのバンド活動の中で何回かそういうタイミングがあったんですよ。売り上げとか関係なく“すごいのができた”と思って、その反動なのかなかなか先が見えなくなるというか。
●生形さん発信のアイディアも多いですもんね。
生形:ネタとしてはそうですね。Nothing’sを丸4年やってきて、多少関係が難しくなってきたというか、バンドに慣れ過ぎた部分もあって。
●まるでカップルの倦怠期のような。
生形:そういう話好きですよね(笑)。
●すみません(笑)。
村松:ほんとに好きっすよね(笑)。
●はい。下世話な例えが好きです(笑)。
生形:そういう時期に入ったのは、たぶんメンバー全員がわかっていて。だけど、ぶっちゃけて言うと、めんどくさいからそこからちょっと目を逸らしていて。だから途中までなんとなくなあなあで進んで来た感があって、そういうのも原因だったかもしれないです。だからレコーディングに入る前にみんなで腹を割って話して。
●「なんとかしなきゃいけないんじゃない?」っていうのは、生形さん発信で?
生形:いや、拓ちゃんだったかな? いろんなことがバンドの中であって「話さなきゃダメじゃない?」って拓ちゃんが言ってきて。飲み屋でも話したし。
村松:結構やってたんだよね。ちょこちょこ話をしてた。
生形:Nothing'sをやっている意味…バンドって続けていくと、まさにカップルとかと一緒で、見えていたものが見えなくなることもすごくあるし、そういう時期だったんですよね。リセットじゃないけど、とにかく思っていることを全部話さなきゃいけないんじゃないかなって。
村松:本当に恋人が話すようなことから、って感じだよね。最終的に「どういうところでやろうよ」とか。
●アルバムを4枚作って、一通りのことをやってきたというか。
生形:そういうことなのかな。劇的に状況が変わったわけでもないし、少しずつ良くなっているけど、やっぱりその辺でみんな焦れる部分もあっただろうし、いちばんは“このバンドをやっている意味”っていうのを見失いかけていたというか。それをもう一度4人で話して、「じゃあこうやろうよ」と。
●それが今作にはかなり大きかったと。
生形:大きい。
村松:大きかったね。
生形:それにみんなすごく忙しいし。バンドをやりつつ他のバンドもやって、弾き語りもやって…そういうのがあって、疲れているというのもあったのかもしれないですけどね。いろんな要素がこの4年間で積み重なって。それをみっちりと奥底まで話しました。
●そこでなにかが見えたんでしょうか?
生形:見えたというか、すっきりしたし、その後からの作業もどんどん進んだ。やっぱりバンドっていうのはモチベーションが大事なんですよね。今回のアルバムは、アルバムとしての曲のコンセプトよりも、バンドとして“どういうバンドになりたいか”っていう根本なところから曲を作っている気がします。俺たち4人が作る音楽を突き詰めたい感じかな。
●今作はどの曲にも今までの作品やライブで感じてきた“Nothing'sらしさ”みたいなものが入っていると思うんですけど、今作の全体的な印象としては“美しさ”が共通項になっているような気がしたんです。すごくロックでかっこいいけど、美しいと感じるもの。旋律ひとつだけではなくて、アンサンブルが美しかったり。M-6「Sick」とかM-8「Bog」はいい意味で“この曲は何なんだ!?”と思うんですけど、それでも美しいと感じる。
村松:バンドとしては良いところだけじゃなかったんですよね。すごく感情的というか、メンバーそれぞれのどろどろしたところまで出ていると思う。そういうのがすごく、バンドとしては自然だなと思うんです。今までもあったのかもしれないけど、どろどろした面よりは、キラキラしたポジティブな面が今までは出ていたというか。それが今回のアルバムはどろどろした部分とか、渦巻いた部分が出たと思うんです。そういうのって僕の中では“美しい”なんですよね。取り繕って綺麗に形作っているものはそりゃ綺麗ですけど、汚くてどろっとしているけど美しい、みたいな感覚。
●そうそう。確か『echo』の時点でひなっち(日向)さんが「有機的なものと無機的なものを融合させたい」という話をしていたと思うんですけど、Nothing'sが持つかっこよさって、その“無機的なもの”というイメージが強かったんです。でも今回は湿っぽさというか“有機的なもの”がより多くなっている印象で。そういう意味で、メロディや音に出ている感情の情景が美しいと感じるというか。内面が音に出ている。
生形:それは今回曲作り中にもすごく話したんですけど「個々のフレーズに気持ちの入り方が深いね」って。それもすごく変わったところな気がします。Nothing'sでやっている意味合いもそうだけど、“自分がなぜそこで弾いているのか”っていうのが。同じフレーズを違う人が弾いて同じになっちゃったら意味がないし、自分の音にならないとしょうがない。すごく根本的なことを話したりもしたので、そこが出ているかもしれないですね。人間味というか。
●よりそれぞれが表現者たろうとしたというか。
生形:そういうことなんじゃないかな。確かに俺も今までの音の感じとは違うということはわかっていて。でもそれは「こういう風にしようよ」と言ったわけじゃないんだけど、聴いているとやっぱり演奏している本人もわかる。そこもメンバーで話したこととか、4年間のことが全部現れているんじゃないかと思うんです。
●曲をたくさん作れば作るほど、方法論的なものというか、引き出しがなくなっていくと思うんです。生形さんが最初に曲のアイディアを生み出す感覚ってどういう感じなんですか?
生形:Nothing'sは曲作りが本当にバンドっぽいと思うんですよね。俺は本当にネタを持ってくるだけで。ひなっちが持ってきたやつもあるし、拓ちゃんが持ってきたのもあるし。みんなで作る楽しさを教えてもらったっていうか。“明日までに曲を持って行かなきゃいけないから、とりあえず完成形はイメージできてないけど、これとこれを持って行ってみよう”と思って持って行って、4人で合わせるとすごく良くなったりするんです。自分の予想を越えて。「Sick」なんかは特にそうですね。
●なるほど。
生形:「Sick」はもともとコードがなくて、ギターのリフから始まった歌で。これを何回も繰り返しアレンジして、最終的にはベースから始まる曲になったんですけど、ひなっちがコードを付けたんですよね。そうしたら曲の世界観が一気にぶわっと拡がってみんなで共有できた。
●「Sick」はNothing'sが持つ黒い部分がめっちゃ出てますよね。
生形:Nothing'sのゲロですね。
村松:ゲボだね。
●ゲボって(笑)。濃度が濃いというか。
生形:濃いですよね。なんでこの曲がこうなったかわからないけど、とりあえず凶暴な感じになりました。
●拓さんがアイディアを持ってきた曲は?
村松:M-9「Predestined Lovers」とか。これも最初は全然違う形だったんですけど、コードと「こんな感じで」っていうことだけを伝えて、みんなで合わせながら作ったんです。あとはM-7「朱い群青」のAメロのコード進行は、すごく前に“こういうのやりたいな”って弾いてたのをひなっちが覚えていて「あれやろうよ」って。
●その最初のネタなんですけど、バンドに持ってくる持ってこないものって、生形さんの中の判断基準は何なんですか?
生形:俺はいいと思うものは全部持ってくるようにしているので、“ちょっとNothing'sっぽくないかな”と思っても一応みんなに聴いてもらうようにしています。それは自分の中で基準があって、まず自分で、イントロならイントロ、コード進行ならコード進行で、“これはグッと来る!”と思ったものしか持ってこないんです。グッと来るとか、かっこいいとか、感覚があるんですよね。
●聴いたときに、なにかしら心が動くもの?
生形:そうなんです。そういうものだけを選んで持ってくる。さらにみんなに聴いてもらって、みんなの聴いているときの反応を見ているんですよ。それでいちばんいいものをやろうかな、っていう。
●「心が動くもの」という感覚をもう少し掘り下げたいんですけど、いろんな動き方がするような気がするんですが。
生形:結構いろんな方向がありますね。ただ俺がいちばん思うのは、Nothing'sっていうバンドに自分たちなりのプライドもあるし、そこだけは崩したくないんです。だからみんなに持って行く段階で、そこだけは妥協したくない。言葉で言うのはすごく難しいんですけど、斬新だったり、他にないものだったり。あとはロックのかっこよさ…ロックじゃなくてもいいんですけど…例えば車を見て、フェラーリとかかっこいいと思うじゃないですか。それって別に、意味がないんですよ。
●確かにフェラーリはかっこいい。
生形:ロックってそれとすごく似ていると思っていて。特にギターのリフとか、理由はわからないけどかっこいい。しかもそれって男に多いじゃないですか。Nothing'sのかっこよさって、そこがすごく強い気が昔からしているんです。そこが俺はすごく大事にしているところ。あとは人の心に響くメロディやフレーズだとかっていう。その2つかな。
●かっこよさと心に響くかどうか。車を見てかっこいいと思う気持ちに似た感覚は、Nothing's以前は持っていなかったんですか?
生形:持っていたけど、それが全面ではなかったし、別にそういうバンドを作ろうとは思っていなかったんです。でもNothing'sで1stとかを作るとき、何かそういう感覚があって。そういうことができるバンドってあんまりいないと思ったし。昔だったらLed Zeppelinとかがそうだったのかなと思うんですけど。
村松:Foo Fightersとかかっこいいっしょ?
生形:そうそう。そういうかっこよさは、Nothing'sだったら出来るんじゃないかなと思ったのを覚えています。
●曲のネタとなるもの作るときに、その感覚に当てはまるものを探すというか。
生形:そうですね。リフなんかはおもいっきりそうですね。とにかくかっこよくないと意味がないし。メロディの場合は、やっぱりゾクッと来たりグッとくるものってあるじゃないですか。実はギターのフレーズでもそうなんですけど、コード進行もそういう感じですね。
●その感覚を大事にしていると。
生形:すごく大事にしているし、そこを妥協しちゃ絶対にダメだと思っています。
●今作の幕開けは、Nothing'sのアルバムとして想像していたものとはいい意味で違ったんです。最初からガツンと頭を殴られるくらいのパターンで来るのかなと思いきや、“なにこのいい曲!”みたいな。インタールード的なM-1「Song for an Assassin」とM-2「Assassin」、めちゃめちゃいい幕開けですね。
生形:「Assassin」は最後にできた曲なんですよ。“もうアルバムも完成かな”って思ってたけど、スケジュールに余裕があったのでやってみようと。
●歌詞の内容を読むと、ものすごく内省的なのか、ひっくり返ってものすごく外にベクトルが向いているようにも思えて。
村松:前回のアルバムはいろいろ考えて“こういうものを書こう”って決めてから書いた歌詞が多かったんですけど、今回はあまり決めずに書いた歌詞が多かったんです。そのときのバンドの状態とかを歌っていることが結構多いです。真一が書いている曲も2曲あるんですけど。
生形:俺は「Sick」とM-10「きらめきの花」の歌詞を書きました。
●あ、マジですか。
村松:真一が書いた歌詞って、僕の気持ちを歌ってくれているみたいなところがあって。バンド内でリンクしたことを共有して歌詞に書いたような感じがするんです。そのときの制作中の心境というか。僕もそういうところがあったんですよね。
●「Sick」の“Never end just give into the sound(もう止まらない この音に身を委ねて生きていくんだよ)”とか、“Crazy as can be without a doubt nothing ca stop us preaching dreams/Go further The future(ただ俺たち本当にイカレてるから嘘みたいな目をしてこう言うんだ 「もっと遠くへ まだまだ先を見に」)”という表現がありますけど、これはバンドの強い意志ですよね。
生形:そのまんまですね。さっき話した通り、今回いちばんデカかったのはバンドの状況なんです。歌詞を書くのはレコーディングが終わって歌を録る前だったんで、今回あったことやその日までに感じたことを書こうかなと。「きらめきの花」もそうなんですけど、俺は書きたいことってたくさんはなくて、どのアルバムでも2〜3曲書いているんですけど、どの曲も同じことを書いているんです。自分の中でデカいことって年に1つくらいしかなくて、そのことをひたすら書いている気がしますね。
●毎回“書きたい”と思って書くんですよね。
生形:思ってますね。書いたことによって、なにかしらの達成感はあるんですよ。特に日本語の詞とか。“言葉とメロディが上手くハマった!”とか“綺麗な言葉ができた”みたいなレベルですけど。曲を作るのと一緒ですね。ギターのフレーズがハマるのと一緒。生みの喜びみたいなのはすごくあります。
●「きらめきの花」は表現が豊かだと思いました。
生形:日本語の詞もこれが2曲目なんですよ。「Goodnight & Goodluck」(3rdアルバム『echo』収録)も日本語だったんですけど、日本語ってハメるのがすごく大変で、やっぱり面白いなと。言葉って面白いなと思って、いろんな言葉を使ってみました。表現の仕方がたくさんあるんですよね、日本語って。
●最初の「みんなで話し合った」という話を聞いてから改めて歌詞を見ると、すごくリンクしていますね。
生形:俺、やっぱりリアルなことじゃないとダメで。というか、今回はそれしか思いつかなかった。
●「Sick」は生形さんが歌詞を書いたということですけど、今作は「Sick」も含めて3曲で“ルール”という単語が出てくるんですよね。
生形:似たようなことを考えているんですかね。すごく思うのは、この曲の言葉がまさにそうかもしれないですけど、いわゆる常識というものがよくわからなくなることもあって。それをこのサビでひたすら書いたんです。
村松:俺の言っている“ルール”はどっちかというと自分のしてきたこと、作ってきたルールですね。自分で作ってきた固定観念とか、逆に決めてなくても自分が作ってきたバンドとかの歩んで来た道がルールになっていたりとか。そういう、普段は足枷にならなそうなものも含めてのルールとかを指しているのかな。
●ふむふむ。
村松:そこに対して抗っていたいというか。「バンドをこれからも存続させていくのであれば、それぞれ変わらなきゃいけないところもあるだろう」みたいな話があって。だけどNothing'sはみんなキャリアもあるから、悪く言えば自分で決めたルールがそれぞれにあると思うんですよ。良くも悪くもなんですけど。ミュージシャンだからそういうものがなくちゃダメだし、あるおかげてやれている部分もいっぱいあると思うんだけど、俺は他のメンバーに比べたら少ないなと思って。自分が変化することで、バンドにいい流れができないかなと思ったこともあって、そういうことが歌詞になっていたりします。
●なるほど。今作はバンドで話し合ったことがすごく大きいんですね。今日の2人の話から、断片的にそのときの4人が話し合ったことがなんとなく伺えます。
生形:話すべくして話したというか、そういう時期だったのかな。毎回アルバムができる度にそう思うんですけど、今回は俺にとって特別なアルバムなんですよね。いろんな意思疎通ができて、新しいことに挑戦もできた。確かに、さっき言ってくれた通り人間味というか暖かみがあるんですよ。それは今までのNothing'sにできなかったことで、テクニッックでどうこうなるもんじゃないんで、深みが増したかなという気はしていて、すごく好きなアルバム。それを感じたのは、全部録り終わった後なんですけどね。それまではただがむしゃらに作っていて、出来上がってから何日か経ったときに聴くと、すごくいいアルバムだなと思えて。それが良かったです。
●キャリアがある凄腕の人たちがやっているバンドだと勝手に思っていましたけど、人間らしい歩みですね。
生形:そういうアルバムができたと思います。
●今の話はM-3「You're in Motion」の“I want to sing out loud for next day(今から明日を歌いたいんだ)”というフレーズに通じますよね。この曲は僕の中で“ザ・Nothing's”の曲なんです。ライブで絶対盛り上がるし、サビで絶対感動する。
生形:「You're in Motion」は制作の最後の方にできたんですよ。どんどん新しいことをやっていって「一曲Nothing'sっぽいのを作ろう」って。
●Nothing'sっぽいんですけど、サビまでに持っていく感じが今までにはなかったものというか。
生形:同じにしてもしょうがないですからね。「これぞNothing's」って感じの曲だからこそ、似たようなことは絶対にしたくないなと思って。
●ちなみに、今回いちばん苦労した曲はどれですか?
生形:時間がかかったのは「Sick」と…結構全体的に時間がかかったかな。
村松:「きらめきの花」は意外とかかったよね。
生形:あ、そうだったね。
●「きらめきの花」は歌が全面に出ているなと思ったら、間奏ではギターやベースがすごいことしてますよね。
生形:あれは大変ですよね。
●「大変ですよね」って、あなたが弾いてるじゃないか!
村松:あれヤバいよね。
生形:結構大変ですね。
●人ごとか(笑)。
生形:その辺りがらしいなと思って。「きらめきの花」もすごく好きな曲で、歌がメインであるんだけど、間奏で“やっぱりNothing'sだな”って思ってもらえたら。
●アルバムのタイトルは、直訳すると“反乱・反抗”という意味ですけど、このタイトルにしたのはどういう理由で?
村松:今回はみんなでいろんなものと戦ったなという感じだったんです。前回の『Silver Sun』みたいに“聴いてくれる人を想って”というところとは結構遠かったというか。だから自分たちがしたことをタイトルにした方がいいなと。
●自分たちの“反乱・反抗”があったと。
村松:そうですね。
●その結果、バンドに新たな空気が入ったんでしょうね。
生形:バンドが深くなった気がします。音もそうだし、深みが出た。
●極端に言えば、今までナシだと思っていたものがアリになったとか。
生形:それもそうですね。“これがNothing'sだ”っていうのが良くも悪くもあって。そうじゃないところに足を踏み入れた感じはします。今後は自分たちでもわからないですけどね。でもバンドってそういうもんで、わけがわかんなくなってからが面白いというか。すごく思うのは、バンドが煮詰まれば煮詰まるほど、それと戦っているほど…そのときは自分たちしか見えてないんだけど…周りにどんどん人が集まってくるんですよ。やっぱり惹かれる部分があるんだろうなと思って。仲良しこよしでやっているよりも、少しバチバチして緊張感のある中で作業していて、そこでやったライブではお客さんの反応も明らかに違ったし、動員も増えた。それがここ一年くらいなんです。そこで“音やライブに人間が出ているんだな”って再確認しました。もちろん今までの積み重ねもあるんですけど、ここ1年くらいの活動が人を惹き付けたんだろうなと。
●外から見たら涼しい顔をした4人だと思っていたんですけど、そんなことなかったのか。
生形:どのバンドもそうですよね。絶対に聴いているだけじゃわかんないんだけど、感情とかいろんなぐちゃぐちゃしたものが音の中に入っている。聴いている方は、そこをなんとなく感じ取るんですよね。それで惹かれていくという。“これか”と思いました。
●生形さんは「前作を作った後、達成感が高くて曲のアイディアが出てこなかった」とおっしゃっていましたけど、現時点ではどうですか?
生形:現時点はすごくすっきりしていて、いろいろやりたいことはあります。まだ形には全然してないですけど。
●真っ白になったような感じではない?
生形:ないですね。今回も結構大変だったのに。
村松:俺はもう次のこととか全然考えたくないんだけど(笑)。
●ハハハ(笑)。
生形:ライブもやってないしね。やっぱり人と人の繋がりだから。
●Nothing'sというバンドの流れとして、ベクトルがどんどん外に向いている感じがするんです。ライブハウスの一体感は、1回1回のライブ単位で濃くなっているようなイメージがある。今回は7月末からツアーがありますけど、今後のライブはまた変わってくるでしょうね。
生形:それはもう間違いないです。でも、ツアーについてはまだなにも考えてなんです。今思うのは、とにかくすごくいいライブをみんなと一緒にやりたい。
村松:まだ『REVOLT』がライブでどうなるのか全然わかんなくて。前回のアルバムはお客さんとの繋がりをすごく意識した作品だったし、日本語をやり始めたこともあって、「お客さんに寄り添いたい」とか「聴いてくれる人たちと同じ目線でライブをしたい」とか結構言ってきたことなんです。だから今はそれがオーソドックスになりつつあって。
●そうでしたね。
村松:で、『REVOLT』を持ってどういう風にっていうのが、逆に今は想像がつかないというか。もちろんライブはお客さんと一緒に作るんですけどね。楽しみだし、バンドとしてはできる限り音源に近い状態で、しかももっと生々しい感じにしたい。ライブで感じてもらえるような表現の仕方ができたらと思っているんですけど、それについては準備をしていくつもりなんです。すごくアーティスティックな部分と、生々しい部分をどういう風にバランスを取るようになるのかなっていうのが、まだ自分自身でわからない。ただ、自己満足にしたくないという気持ちはずっとあります。
●こういうアルバムができたことによって、ちょっと湿度が高いというか生々しい部分も今まで以上に出るだろうし。
村松:そうですね。もっと演奏の純度が高くなって、必要のないものが削られるような気がしているんです。
●楽しみですね。
生形:でも練習しなきゃって感じだよね。今回はバンドのアンサンブルが本当に難しくて。
村松:結構難しそうだね、今回は。
●一歩間違えば不協和音になりそうなアンサンブルも多いと思いますけど、でもそれがバシッと決まったときのNothing'sの気持ちよさは他にはないと思うんです。そこがNothing'sの真骨頂だと思っているので、練習をがんばってもらわないとこっちは困るんですが…。
生形:がんばります(笑)。
村松:がんばるしかない(笑)。
interview:Takeshi.Yamanaka
Assistant:森下恭子