昨年4月に華凛が脱退し、4人体制で活動を続けるNoGoDが、2017年9月にリリースしたアルバム『proof』以来となる1年7ヶ月ぶりの新作となるミニ・アルバム『神劇』を完成させた。確かなテクニックに裏付けられた重厚なサウンドと、パワー感のあるメロディは更に鋭く、そして魂の奥深くで鳴り響き、心の根底から解き放たれた言葉はより鋭く胸に突き刺さる。人間くさく、ライブバンドらしく、現体制で新たなスタートを切ったNoGoDの、バンドとしての覚悟と希望が満ちた新作について4人に訊いた。
「自分たちは着飾ってはいますけど、昔からものすごく人間くさいバンドだったんです。それに気づけたのが大きかった」
●2018年4月に華凛さんが脱退されて以降、ベースは色んな方にサポートしてもらって活動されていますが、ゆくゆくは正式メンバーを迎えるつもりなんですよね?
団長:それがまだわからないんですよ。
●え?
団長:入れたくなるのかもしれないんですけど、でも今この形で初めて音源を完成させて。今作『神劇』のベースは全部Kyrieが弾いたんです。
●あっ、そうなんですか。
団長:ライブはもちろんサポートの方にお願いする必要はあるんですけど、レコーディングに関しては現状そこまで不自由がないというか。
●なるほど。
団長:これから数年この4人でやっていって、形としてこれがNoGoDのベーシックなのかもしれないと思ったら、おそらくもうメンバーを入れることはないでしょうし。逆に、音源制作にあたって“Kyrieではないベーシストを入れたい”、“NoGoDがこれから先に進むために新しいエッセンスが欲しい”となったら新メンバーを迎え入れるかもしれない。「この人、めちゃくちゃかっこいいな!」と思える人に出会ってしまったら口説くかもしれない。その辺は割と臨機応変に考えてます。
●今作『神劇』を聴いて、ベースめちゃくちゃかっこいいなと思ったんですが…。
団長:Kyrieは弦楽器の申し子なんでしょうね。できちゃうんです(笑)。
●「メンバーが抜けたから補充しなくちゃいけない」みたいな固定観念を取り払って、臨機応変にやってみれば現メンバーで全然できた。
団長:実際に1年間くらいやってみて、逆に得るものも多かったんです。色んなベーシストの方とスタジオとかライブとかで合わせる機会があったんですけど、やっぱり曲の理解度や視点が人それぞれ違っていて。僕ら自身が「この曲はこういう化け方があったんだ」と発見したこともありましたし、凄腕の方だと我々の技量が試される機会もありましたし。色んなことを経験させてもらえて、おもしろかったんですよね。
●ベーシストが居ないからといって、それを理由に活動を止めたくなかった?
団長:活動を止めるという選択肢は一切考えてませんでした。理由がなかったんですよね。音源はさっき言ったようにKyrieが弾くし、ライブはサポートをお願いすればできるし。でも、それが正しいことなのか? ということを見定めるための1年間だったような気がします。
●なるほど。そんな現体制での初音源となるアルバム『神劇』ですが、タイトルからインパクトがありますね。
Kyrie:歌詞もほぼ日本語がメインだし、僕らは英語が得意な方でもないので、作品タイトルは漢字にすることが多かったんです。でもメジャーデビューしたあたりからそういうことをあまり気にしなくなって、語感とかでタイトルを決めてきたんですけど、それから時間がある程度経って、今回久しぶりに新しい体制で…今までと何かが違うだろうという状態で…新しい作品を出すとなって、ちょっとしたゲン担ぎみたいなもので、初期の頃の感覚に戻ったというか。
●うんうん。
Kyrie:NoGoDというバンドのコンセプトを持ち出して、「神」という言葉を入れようと思って。あとは、M-2「masque」とM-7「そして舞台は続く」という曲から、今作のコンセプトとして“舞台”のようなイメージがあって。そうやって考えた結果、タイトルを『神劇』にしたんです。
●なるほど。
Kyrie:今作は「masque」からスタートした感じがあったんです。この曲のサウンドイメージができて、歌詞が上がってきて。この曲の世界観と「そして舞台は続く」を紐づけたときに、作品としての主軸が見えてきたというか。
●その「masque」なんですが、ある意味この曲は衝撃的だったんです。この曲を団長が歌っている姿を想像しただけでグッとくるものがある。
団長:ハハハ(笑)。
●2017年9月リリースのアルバム『proof』に「Arlequin」という曲がありましたが、あの曲の歌詞と「masque」はすごく通ずるものがあるというか、団長が本心を吐露したような歌詞に惹かれたんです。
団長:制作段階で「masque」の原案が出てきたときに、「歌詞は舞踏会とか舞台をテーマにしてほしい」というオーダーがKyrieからあったんです。サウンド的にもオリエンタルな雰囲気があったので、自然に仮面劇みたいなイメージが浮かんで。仮面劇って「身分を隠しておどける」みたいな要素もあるじゃないですか。その一方で、僕は化粧をすることに対してずっと考えていることがあって。
●化粧をすることに対して?
団長:僕はもともと化粧をしていないメタルバンドをやっていたんですけど、そこから「エンターテイメントをしよう」と思って化粧をしたら、「化粧をするんだったらビジュアル系に行ってくれ」と言われるようになったんですよ。15年くらい前の話ですけど。
●ほう。
団長:一時期、化粧をしたビジュアル系バンドのムーブメントみたいなものはありましたけど、今は以前よりは下火になっていて。ひょっとすると、ビジュアル系というだけで敬遠するような人もいるかもしれませんが、それを理由に「俺たちはビジュアル系じゃないから」と化粧を落として活動するのは、僕は違うと思うんですよ。
●そこにポリシーがあるかないか。
団長:1回したのなら、そのバンドはずっとそのままであるべきだと思うんです。そこはブレちゃだめだって。音楽性も同じだと思うんですけど、絶対にそこは貫かなきゃいけないところだと思うんです。1回それで評価を貰っている以上は、そこをより良くするべきなのに、そこを取り払ってしまうのは、僕は違うなと思っていて。
●うんうん。
団長:もちろん「ビジュアル系」と言われるが故のしがらみとか制限はありますし、できない対バンとか呼ばれないイベントとかもあるんですよ。若い頃は「そういうところを全部ぶち壊していこうぜ!」と思っていたんですけど、そうじゃなくて、しがらみとか制限とかが無くなる状態まで自分たちが高まらないといけないんだなと。そう思ったときに覚悟ができたというか…それは「Arlequin」を作ったときだったんですけど…腹を括ったというか、「俺は一生道化でいよう」と思えたんですよね。
●そうだったんですね。
団長:そういう背景があった上で今回、自分の中で“仮面劇”というテーマと自分の中の覚悟みたいなものが結びついたんです。顔を隠してでも、本心とかは置いておいてでも、自分はエンターテイメントで生きていくしかないっていう覚悟を歌詞で表現できました。
●それと今作の歌詞の共通項として感じたことなんですけど、“前に進もうとする意志”だったり、“未来を見据えている視線”がありますよね。
団長:そこは合わせました。歌詞を書いていく中で自然にそうなっていったという部分もあるんですけど、現状にずっと満足できないし、ずっとハングリーなんですよ。でも今までは、そういう想いがあった上で底抜けに明るい歌詞とかもよく書いていたんです。でも、もうそういうのはいいかなって。
●ほう。
団長:バンドをやるって、しんどいことも多いんですよ。楽しいことばかりじゃないし、それをずっと「俺は大丈夫だ」と言い続けて強気な歌詞も書いてきましたけど、もうそんなことを言っても、自分にも響かない。だから、自分に響く歌詞をちゃんと書こうと思って。だからすごくリアルになりましたね。悪く言うと、ちょっと暗いかも(笑)。
●ハハハ(笑)。暗いとは思わなかったです。叩き上げのライブバンドだからこそ歌える境地というか。
団長:うん。だから今回はセンシティブな内容が多くなりましたね。曲自体がエモーショナルなものが多かったということも影響しているとは思うんですが。
●確かにエモーショナルな楽曲が多いですね。
Shinno:団長の歌詞を見て思ったんですが…普段は敢えて言わないんですけど、変化に対してすごく意識しているんだなって。それはバンドだったり、プライベートなことだったり、団長自身が感じている“変化”っていろいろとあると思うんです。そういうことを意識しているのかなって思います。団長はすごくポジティブな人間なんですけど、だからといって底抜けに明るいわけではない、そういう部分がわかりやすく歌詞に出ている気がします。
K:例えばM-5「far away」って、サビが“far away…”というワンワードだけじゃないですか。こういうのって今まであまり無かったと思うんです。団長は何かしらのメッセージを入れる傾向にあるというか、そういう人だと思うんです。だから他の曲の歌詞とかは自分の気持ちをすごく出していると思うんですが、「far away」は熱いですよね。サビの1つの言葉だけで気持ちを持っていけるというか、すべてを飲み込める熱さがある。
Kyrie:今回の歌詞に関しては、悲観的というわけではないんですけど、ちょっと寂しさが全体的に漂ってるなっていう気がするんです。切なさというか、割り切れない部分がどこかにあるというか。M-3「Borderline」とかM-6「DOOR」みたいな強い曲の歌詞はすごく前向きに書いてはいると思うんですけど、それでもどこかちょっと…強がりというわけではないんですが…無理やり自分を鼓舞しているように聴こえるというか。そういう印象を僕は受けましたね。
●うんうん。
団長:「masque」の主人公の目線なんですよ、他のすべての曲の歌詞も。「masque」の主人公はずっと葛藤を持っていて、それは僕自身もそうだと思うんです。今回は一貫して舞台上に居る1人の人間がテーマになっているので、そういうところでの一貫性と、“寂しさ”や“切なさ”が共通点として出ているのかなって思います。
●なるほど。「masque」で歌っていることを、改めてNoGoDというバンドに照らし合わせてみると、めちゃくちゃかっこいいなと思ったんです。しびれる。
団長:そうなんです、めちゃくちゃかっこいいんです。
●あ、自分で言った(笑)。
団長:やっぱり人間がやっていることですからね。NoGoDはずっとそうなんですけど、同期とか打ち込みとかは入れてなくて、クリックも使っていなくて。だから“人間”でしかないんですよね。人間くさいということがNoGoDの強みだと思いますし、それがうまく表現できた作品だと思います。自分たちは着飾ってはいますけど、昔からものすごく人間くさいバンドだったんです。それに気づけたのが大きかったかな。
●それに気づけた?
団長:色んなもので取り繕って、例えば「今回の作品はこういうコンセプトだから」と、色んなもので外見を固めてやっていた時期もあったんです。でも今回は、内側からコンセプトを作れたというか、そういう作品になった気がします。
●リリース後はワンマンツアーも控えていますが、どういうライブにしたいですか?
Shinno:久しぶりというのもあるんですけど、いい意味で変わることなく、自分たちらしくやれたらいいなと思いますね。
K:ワンマンはとにかく楽しみたいですね。久しぶりのワンマンだし。ワンマンツアーの前に5日連続の2マン“-SPECIAL 2MAN 5DAYS-【D2M5D】 ”もありますけど、5日連続もしっかり楽しんで、ワンマンツアーもしっかり楽しみたいです。
団長:NoGoDってライブバンドでやってきていて、音源よりライブの方が良いという自信を持ってやってきているんです。今作の7曲は確実にライブで泣けるというか、感動できるものを作れた自信がありますので、ワンマンは泣きに来てほしいです。
Kyrie:1年7ヶ月間リリースもなく、去年の華凛ちゃん脱退以降ずっと同じ装いでライブをし続けて来ましたけど、このワンマンツアーでは新しい気持ちでライブができると思うので、新しいNoGoDを楽しんでいただけたらと思います。
Interview:Takeshi.Yamanaka