5月に開催した恵比寿LIQUIDROOM公演で過去最大の動員を記録するなど今、上昇気流に乗っていることを感じさせるNoGoD。その勢いを創作にも反映するかのように、前作のアルバム『V(ファイヴ)』からわずか5ヶ月足らずでニューシングルを完成させた。今回の『神髄 -FRONTIER-』では、彼らのルーツにあるメタルの要素を容赦ないほどに解放。思う存分にNoGoD流のメタルを表現しきった今作と、9月に予定される第2弾シングルとの連続リリースで5人はネクストステージへと一気に駆け上がっていく。
●5/6の恵比寿LIQUIDROOM公演は大盛況でしたが、男性ファンもすごく増えた気がします。
団長:特に首都圏はそうなんですけど、いわゆる“ヴィジュアル系好き”じゃない男の子が増えましたね。メタラーやキッズだったり、いわゆるロックリスナーの支持が増えてきたのかなという実感はあります。
●そういった層や同性のファンを巻き込めていることもあって、動員が伸びているのかなと。
団長:バンドとして認めてもらうためには、同性にも支持されていなきゃいけないと思うんですよ。単に「ヴィジュアル系だから好き」というところから、もう1つ上の価値観で見てもらえないとこの先が厳しいから。そういうふうに見てもらえるようになったのか、もはやルックス的に価値がなくなってしまったのか…。
●それは団長だけだと思いますが(笑)。
団長:いやー、よく言われるんですよね…俺だけがヴィジュアル的に「ちょっと違う」みたいなことを(笑)。
Kyrie:違うよね。今回のアー写を見ても、4対1だし。
●1人だけ別の生き物が…(笑)。この写真を見て、団長が白目をむいているのかと思いました。
団長:今まではわりと全眼カラコンが多かったので、ガラッと雰囲気を変えたかったというのがあって。白のカラコンって怖いイメージが付いちゃうんですけど、たまにはいいかなと。
●今までと雰囲気を変えたかったんですね。
団長:見た目に関しても一度、今までとはスパっと分けたかったんです。前作の『V』というアルバムでNoGoDの現段階での最高水準までは行けた気がするので、そこから先もまた同じものを焼き増ししていくようなことはしたくなかった。新しいことをやっていきたいというところで、衣装も初めて全員が真っ白にして。NoGoDとしてはあまり着たことがない色だったし、基本的に赤と黒のイメージが強いバンドなので、逆に面白いかなと。
●そこでマインド的にも切り替わった?
団長:個人的には、スイッチが切り替わりましたね。今回のシングルのコンセプトを決めた時点で、最初からそうせざるを得なかった気がしているんです。
●というのは?
団長:今回のテーマは、わかりやすさだったんですよ。タイトルの“神髄”という言葉には“1つの物事を極める”みたいな意味合いがあって。『V』では“とにかく今5人がやりたいものを高水準でやる”というところで良い化学反応になったと思うんですけど、今回は180度真逆のことをやっているんです。1つのことを集中的にやるっていうスタイルだったので、作品自体の色もすごくわかりやすくなった。だからルックス的にもわかりやすくしたほうがいいのかなというところで、衣装も全員で統一して白でバシッとキメたというか。
●1つのことを追求するという方向性を、タイトルの『神髄』は表している。
Kyrie:この『神髄』というのは、1つの方向性に焦点を当てた作品に対して付ける冠みたいなものなんですよ。僕たちが今後そういった作品を出す時に、この言葉をアイコンにして作ろうということで。9月に出す次のシングルにもおそらく『神髄』という冠は付くんですけど、内容は今作と似て非なるものというか、同じものを追求はしていないんです。簡単に言うと、1枚の作品の中で1つの方向性を追求するっていうことが『神髄』というもののテーマだと定義していて。
●こういう方向性になったのは、やはり『V』を完成させたことが関係しているんでしょうか?
Kyrie:みんなが表現したいものを形にした『V』という作品を作って、僕なりにちょっと思うところがあったんです。今自分たちが好きな音楽というものについて深く考えた時に「そのルーツって何だったかな?」と思って。自分が中高生の時に聴いて衝撃を受けて、楽器を始めたり音楽の道を志すキッカケになったもの。そういったものを徹底的に追求した作品を作ってみるのはどうだろうかというところに至ったんですよ。
●自分たちのルーツを追求する作品というか。
Kyrie:その一発目が今回の『神髄 -FRONTIER-』という作品なんです。ジャンル的に言ってしまえば、“メタル”ですよね。その中でもM-1「FRONTIER」やM-2「愚かな王」なんかはすごく明確に色が出ているので、好きな人が聴いたら「メロスピだ!」とか「ネオクラだ!」と気付いてもらえるようなものになっていて。「かつて衝撃を受けたものを今、自分たちの手で作れないか?」という模索の第1段階かな。
●それがまずはメタルの追求という形になったと。
団長:メンバー個々に色んな経験を重ねてきた今だからこそ、こういう1つのことしかしていない偏った作品を出しても「これもNoGoDの一面です」と言える。昔だったら「俺はメタルがやりたいわけじゃない」っていう反発もあったと思うんですよ。でも『V』で自分たちはやりたいことをできるバンドだっていうことを全員が再確認できたから、こういう1つの方向に寄せた作品を出すことができるようになったんでしょうね。
Kyrie:昔はメタルバンドにカテゴライズされることが嫌だったのかな。これっぽい曲をやることはできただろうけど、やりたくはなかったというか。「もっとポップで、一般ウケするものを」とか言っていただろうなと(笑)。
●あえてルーツにあるメタルを前面に出さなかった。
団長:「俺たち、J-POPでやっていくんだし!」とか言っていたかもしれない(笑)。
Kyrie:そういうことをくだらないと思えるようになったのは、やっぱりこれだけ続けてきたからなんでしょうね。
●本質的な部分を隠して、取り繕わないというか。
Kyrie:だから今は「メタルバンド」と言われても、抵抗がないんですよ。
団長:昔はそう言われたら、Kyrieさんは必ず否定していましたからね。「メタルバンドじゃないんで」って。
Kyrie:必ずは言っていない(笑)。でも今はそう言われても「うん、そうですよ。やっている音楽がそういう感じですもんね」と自分なりに言える部分もあるし、逆にそう言われなくてもそれはそれで構わない。自分たちに対して、どんな受け止め方をされても別にいいやって思えるようになったのかな。
●周りからの見られ方が気にならなくなった。
団長:『V』のツアーでも自分たちの楽曲を「メタルだ」「ロックだ」「ヴィジュアル系だ」と色んなふうに言ってきたんですよ。ヘヴィメタルな曲をやる時は「メタルだ」って言うけど、ポップスみたいな曲もやったりする。お客さんから見ても、このバンドはヴィジュアル系でもあるし、メタルバンドでもあるし、ロックバンドでもあるし、ポップスバンドでもあるわけで。「この人たちはどこまで行っても何をしてもNoGoDにしかならないんだな。要は“NoGoD”っていうジャンルなんだ」という認識が自分たち自身とファンの間でちゃんと共有できるようになったのが前回のツアーからだった。それがなかったら、こうはならなかったと思いますね。
●何をやっても“NoGoD”になるからこそ、今回はメタルという1つのジャンルを追求できたわけですね。
団長:ただ、随分やっていなかったことなので苦戦はして。メタルのルールを色々と忘れていました(笑)。今まではメタルをバックボーンにしていかに新しいものを作るかを考えていたんですけど、逆にガッチガチの型にはまった中で自分たちらしさを出すということの難しさを改めて今回の作品で痛感しましたね。
●曲ごとの方向性もあらかじめ決めていた?
団長:そのあたりは、Kyrieさんが色々と設計図を書いてくれて。
Kyrie:今回の3曲はどれも構築美や様式美と言われるものが強く出ているので、わりとデモの段階からガチガチに固めていましたね。今作に向けては、8〜10曲くらいデモを作ったんですよ。その中にはもっとヴァイキングメタルっぽいものや、もっとドラゴンフォースみたいなもの、もっと北欧っぽいメロスピとかもあって。自分が影響を受けた音楽のイメージをそれぞれ曲に具体化したデモをまず作って、そこから単純に曲としてどれが良いかをみんなと相談してこの3曲を選びました。
●「FRONTIER」をタイトルにしたのは、新たな境地を切り開こうという意志の現れなのかなと。
団長:確かにバンドというのは常にフロンティア精神を持っていないといけないとは思っていて。ただ、この曲に関してはサビで一気に開けるような感じがあったので、このタイトルにしたんです。あとは字面がメタルっぽかったというのもすごく重要ですね。
●今回はM-2「愚かな王」やM-3「愛する者に薔薇を」もメタルっぽいタイトルですよね。
団長:こっ恥ずかしい感じはするけど、あえて今までやらなかったことをやろうと。その恥ずかしさを「どうだ? 俺たちカッコ良いだろう!?」と言ってしまえる、あの開き直り感もメタルの醍醐味だったりはするので。ダサいTシャツを着て「どうだ? カッコ良いだろう!?」って言う、あの勇気を求めたところはあります。
●ダサさも含めて、意図的にメタルっぽくしたと(笑)。
団長:言ってしまえば、全てがネタですね。タイトルの字面的にはちょっと固いイメージがするけど、内容をいかにNoGoDらしくするかというところが大事なので。そういう意味もあってやりました。
Kyrie:ネタをネタで終わらせるのも逆にカッコ良くするのも、やる人次第ですからね。ダサいからカッコ悪いんじゃなくて、ダサいものをカッコ良くできるからカッコ良いんだと思うんです。それは僕がNoGoDというバンドで追い求めていることの1つでもあって。カッコ良いものは誰がやってもカッコ良いんですよ。でも僕たちは、ダサいものをカッコ良くできるような人間になりたい。
●それができるのがNoGoDならではというか。
団長:僕たちの強みは1つの枠に縛られずに色んなものを追求していけるところなので、そういう意味では本当に変なバンドだなって思いますね。やっぱり音楽が好きなので、「良いな」と思ったものは何でもやりたいんですよ。だからこそこういう突飛なシングルを出しても、「NoGoDだからね」と言ってもらえると思うんです。
●それはこれまでの活動で培ってきたものがあるからこそじゃないですか?
団長:1つ1つの質が上がったんでしょうね。もし何年か前に今回と同じことをやっていたら、安い感じの“メタルっぽい”何かができあがっていたんじゃないかな。今回に関しては誰がどう聴いても美味しい“メタル”を出せる自信がついたので、ご提供させて頂くというか。本当に8年間かけて培ってきたNoGoDの底力の1つが、今回のシングルなんだと思います。これだけ色んなことをやってきた今だから、ガツンとしたメタルができるんだという提示ですね。
●これができたことでまた可能性も広がるのでは?
団長:色々と模索した結果、『V』という作品でNoGoDの方向性を1つ見定めることができて。だから次はまさにネクストステージなんですよ。良い意味で2ndステージに突入したというか、自分たちのポテンシャルを感じて「まだまだ面白いことができるな」と思っていますね。
Interview:IMAI