前作の『SOUNDQUAKE』以来、オリジナルアルバムとしては約4年ぶりとなる新作『GOD OF ROCK』で、NICOTINEが完全復活を果たす。
メンバーチェンジも経験しながら自分たち自身と、そして音楽と真剣に向き合ってきた4年間。
100曲以上もの楽曲を書きあげる中から、彼らはただひたすらに“GOD OF ROCK(ロックの神)”が降臨する時を待ち続けたという。
その成果は、今作をプレイヤーに入れて再生した瞬間にわかるはずだ。
まるで目の前でライブが行われているかのような圧倒的なテンション感に満ちた、紛れもない最高傑作がここに完成した。
「バンドを辞めて働いたほうが今の時代は楽だし、幸せなのかもしれないけど、辞められないんだよね(笑)。突き動かされちゃう。」
●今回のアルバム『GOD OF ROCK』は、オリジナルアルバムとしては2008年の『SOUNDQUAKE』以来ということで約4年ぶりになりますね。その間はメンバーご自身にとって、どんな時間だったんですか?
HOWIE:新生NICOTINEとして、新たにスタートするために必要とした4年間でしたね。オリジナルメンバーと過ごした15年があって、そこからの離脱に要した4年間というか。CDからダウンロードに移行した期間でもあったし、音楽業界の変化に苛立った事もあった。今考えると純粋に音楽に向かい合うために必要だった4年間でもあり、開き直りの4年間でした(笑)。俺達は音楽が好きで、パンクロックというジャンルが好きで、バンドをやっていて。流行りに乗っかるためにバンドをやっているわけではない。その信念を持ち続けていると、4年間はあまりにも早く通り過ぎていきましたね。
Shunp:俺は…時代の流れを見てたかな。何事も、始まりがあれば終わりがあるでしょ? ここ数年はホントに興味深く時代を眺めていましたよ。バンド活動としては出来る事と出来ない事っていうのが両方あって、息苦しいながらも好き勝手にやっていました(笑)。
●その間の2010年には、ベストアルバムを2枚同時リリースされています。共にリテイクされているわけですが、そこで自分たちの原点を再認識したような感覚もあったのでは?
HOWIE:そもそも自分たちの原点を再認識するために制作したのが、2010年に発表したベスト盤2枚だったんです。後から加入した当時のメンバー(ShunpとDr.U)は、結成当初からNICOTINEを知っているレーベルメイトで、家族以上の関係だったので全曲知っていたし、演奏も出来ました。ただ、レコーディングする事で、NICOTINEの歴史すべてを体現したかったんです。言葉では伝わらないので…。
Shunp:自分としては、再認識じゃなくて“確立”ですかね。俺のギター=NICOTINEのギター。それが形になった。
●そんなベストアルバム2枚のリリース後にUさんが脱退されてしまったわけですが、そこから“バンド自らの存在を問う”作曲期間に入られたそうですね。
HOWIE:新生NICOTINEとしての存在意義を、見つめ直さざるを得ない現実に直面したんでしょうね。去って行ったメンバーへの思い入れは今も俺たちを支えてくれているファンにもあるだろうけど、メンバーチェンジの時に離れていったファンにもう一度振り向いてもらうためにはオリジナルメンバーを超える存在になる必要があって。それにはメンバー構成も含めて、新しい自分たちを再構築する時間が必要だったと思いますね。
Shunp:良いタイミングだったんです。せっかくだから、時間は意味のあるものにした方がいいって。
●バンドとしての存在意義を見つめ直しつつ、過去の自分たちを超えられる曲を作っていったというか。制作は順調に進んだんですか?
HOWIE:バンドの状態は、過去最高に良かったんです。変な言い方かもしれないけど、邪魔な意見がなくて集中出来ました。Shunpと腹を割って、言いたいことも言い合って…。楽しかったなぁ。オリジナルメンバーのYASUとでさえ、こんなに楽しい時間はあまりなかったような…。Shunpは、最高なヤツです! 大好きだよ~(笑)。って、ホモじゃないですよ(笑)。NICOTINEというバンドが一番好きなのは、俺とShunpだったのかもしれないね。原動力は、そこにありました!
Shunp:バンドと一言で言っても、それは個の固まりであって、もちろん意見や考えが違う時もある。その時期はもう自分に正直にやるしかなかったし、ケンカもした。そしてそこにたまたま神様がやってきた、っていう感じですかね(笑)。
●タイトルも『GOD OF ROCK』となっていますが、これはどんな意味で使っているんでしょうか?
HOWIE:“GOD OF ROCK”は、読んで字のごとく。ロックの神様です! 俺たちは、ロックにとりつかれているんだろうなって。“ロック崇拝”とでも言うのかな(笑)。バンドを辞めて働いたほうが今の時代は楽だし、幸せなのかもしれないけど、辞められないんだよね(笑)。突き動かされちゃう。
●今回の作曲では“GOD”が降りてくる(インスピレーションが湧く)のを、ひたすら待ち続けたそうですね。
HOWIE:その理由は簡単で、全曲名曲にしたかったんですよ。曲を書くのは簡単だけど、良い曲を書くのは難しくて。書こうと思っても書けない。良い曲っていうのは、書くもんじゃなくて、出来ちゃうもんなんだよね。アレンジでいじくり回さなくたって、初めから完成されている。それを待っただけで。何しろ素晴らしい作品を作らなきゃ、みんな振り向きもしないじゃない(笑)。
●そのために、今回は50曲以上の楽曲を完成させたとお聞きしていますが…。
HOWIE:いや、100曲以上は書きましたよ。ただ、インスピレーションだけで降りてきたのがこの15曲だった。どれもShunpと楽しみながら書いた曲たちだから、良い曲に決まってる! (笑)。
●前作からの4年間で書き貯めた曲も入っているんでしょうか?
HOWIE:結果的には、書き貯めたものっていう解釈でもいいかな。Dr.BEAKが加入してから、本腰を入れたんだけど…。何曲かボツになった曲も、BEAKとライブで試したりはしました。NAOKI~OKKY~U~NAOYA~BEAKっていう流れの中でもたくさんの良い曲が書けたし、とっても素敵な時間をそれぞれと過ごせましたね。サイドギターでも610やKOTA、ピエールたちがサポート加入してくれた時期もあったし、ミュージシャンシップがたくさん持てました。
●曲作りに本腰を入れたのは、BEAKさん加入以降なんですね。
HOWIE:今回はBEAKが加入してから出来た曲がほとんどですよ。M-10「WORTHLESS WORLD」、M-11「ALIBI」、M-13「SOUND OF NOISE」、M-14「LOVE SONG」の4曲は、以前から出来上がっていたけどね。何しろBEAKのビートは、強力だから。8ビートの曲が増やせたのは、デカい! BEAKのドラムは、正確じゃないけど上手いんですよ。生命感がある。生き物って感じ。ダイナミック!
●BEAKさんが加入したことの影響も大きかったと。
HOWIE:もちろん。実はNAOKIが在籍していた頃から、BEAKのドラムには惚れ込んでいたんです。ただその頃、BEAKは他のバンドに在籍していたからね。BEAKの加入でバンドは、かなり安定しましたよ。ドラムに安定感があるもの(笑)。あと、精神的にもバンドに良い影響を与えている。Shunpも動きやすくなったんじゃないかな。バンドの運営を任せられるメンバーが増えたわけだからね。
Shunp:BEAKは俺と同じ歳なんですよ。だから自分の考えをぶつけるのをとても自然にできるというか…もちろん言葉でですけど、ボコボコにしてボコボコにされてます(笑)。
●そういうバンドの良い状況を反映しているからなのか、1曲目の「GOD OF ROCK」から、まるで生々しいライブを観ているかのような強烈なテンションを感じました。まさに何かが降りているような、神がかった感じというか…。実際のレコーディング中は、どんな雰囲気だったんですか?
HOWIE:まさにそんな感じでした。曲が出来た瞬間もShunpと大喜びしたんですけど、その時の感覚を持ったままレコーディングする事が出来たんです。ShunpとBEAKが俺のロック魂を呼び起こしたというか、火をつけてくれました。感謝!
Shunp:RECは…なんかライブしているみたいやったかな。RECテイクで生々しさが音にも出てるって、なかなかないんですけどね。
●続くM-2「JULIET」は一転して、南国調のイントロからの甘いメロディが印象的でした。この曲でPVを作ったのは、メンバー自身も特に気に入っているから?
HOWIE:その通りです! 気に入っています。南国調の甘いメロは、Shunpの仕業ですね(笑)。
Shunp:僕、顔はこわいけど甘いの好きなんです(笑)。
●曲名からは『ロミオとジュリエット』を想像しますが、この曲の歌詞はそういう内容になっている?
HOWIE:思いっきり想像しちゃって~。俺がロミオになって、ジュリエットに捧げた曲です。ストレート過ぎる曲です。シンプル過ぎます。
●タイトルだけ見ると「LOVE SONG」もストレートな気がしますが、曲調は意外やバラードではなく、アップテンポですよね。歌詞も実はストレートじゃなかったりするんでしょうか?
Shunp:「LOVE SONG」は、とてもひねくれた愛の歌です。だからこういう曲調になった! っていう事ではないんだけど、似合う服を着せてみたらこんな曲調だったっていう感じですかね。
●M-4「ENDLESS DESIRE」でもPVを撮られたそうですが、「JULIET」とはまた違うタイプのカッコ良い曲だと思いました。この曲をPV曲に選んだ理由とは?
HOWIE:俺の1番好きな曲ですね。本当は、全曲PVを撮りたいです。ザ・ワガママ(笑)。採用の経緯は、Shunpに聞いて下さい。
Shunp:えーっと、他の曲たちと少し違う生命力があったからかな。なんか表舞台に立ちたいって、曲が言ったような気がしたから。
●曲調的には、「ALIBI」も他とは少し雰囲気が違う曲かなと。言葉は聞き取れませんが、サビ部分でバックに聴こえるコーラスが面白いと思いました。
Shunp:サビのコーラスで何と言っているのかは…今のところ秘密です(笑)。確かに少し違った雰囲気の曲ですが、NICOTINEらしいなっていう曲でもありますよ。
●メタリックな曲調の「WORTHLESS WORLD」はメッセージ性を感じる曲名だと思ったんですが、実際はどんなことを歌っているんですか?
Shunp:この曲の歌詞は俺も書いているんですが、パンクっていうジャンルが好きで音楽をやっていたら、いつの間にかアングラだったパンクがポップスみたいに市民権を得て。そんな時にふと、“つまんない”って思ったんですよ。良いものが世間に認められていくのは悪い事じゃないんですけど、俺から見えた当時の世界はとてもウソ臭く見えた。つまんないと思うものが喝采を浴びるなら、俺は自分の感覚と共に生きていこうと。そんな曲です。
●自分自身の音楽と向き合う覚悟を示しているというか。ラストのM-15「WANNA SAY AHHHH!」は2分にも満たないショートチューンですが、この曲をラストにした理由とは?
Shunp:この曲を最後にしたのは、なんだか自分達を象徴してる曲だなって思ったからかな。タイトルの意味はそのまんま、“あー! っと叫びてぇ!”です(笑)。最近、叫んでます? やっぱ人生、叫ばなきゃいけませんよ。
●自分の中に溜め込み過ぎずに、吐き出したほうが良いですからね(笑)。今作を作り終えたことでも1つ出し切ったというか、達成感のようなものはあるんじゃないですか?
Shunp:達成感はありますが、やりたい事の方が多いんです。ライブも色んなところでやりたいし、すぐに次の作品が作りたいかな。でも“これこそが自分の音だ!”って言える作品が出来たのは確かで。今回のアルバムはホントに自信がありますよ。
HOWIE:今作を振り返って思う事は、“早く次が作りてぇ!”です(笑)。1つのものの完成は、いつも次の始まりですからね。今からはもう、色んな事を形にしていく時間だから。
Interview:IMAI