Dr.大喜多が1人で登場し、拍手に包まれる中でゆっくりとドラムを叩き始める。続いてBa.日向が登場し、大喜多のリズムに乗り込んでいく。続いて現れたG.生形はゆっくりと客席を見渡したあとにギターをかき鳴らす。演奏のボルテージが最高潮になったところでVo./G.村松が現れ、興奮で満たされた空気に「Blow It Up」が鳴り響く。
拳を振り上げてステージの4人と共に気持ちで歌うオーディエンス。そもそもこのライブは、昨年2/27に開催予定だったSPECIAL ONE-MAN LIVE “BEGINNING 2020”の振替公演。更に遡れば、バンド初のライブが2009/2/27(代官山UNIT)であり、2019年から始まったイベント“BEGINNING”は、いわばバンドにとってもオーディエンスにとっても大切なライブ。この日にかける想いの強さはステージの上も下も同じ。コロナ禍であろうがなかろうが、会場にうずまく熱気は凄まじい。ゆっくりとライブを始めた4人の姿は頼もしく、強烈な音の中、村松がパワフルなヴォーカルで圧倒する。
「Like a Shooting Star」「Spirit Inspiration」とテンションを加速していくステージに、フロアも呼応して熱を上げる。遠目から見ていても4人が楽しそうにライブをしているのがわかるし、サウンドが頭上から降り注ぐ快感を観客1人1人が全身で味わっているのもよくわかる。同じ感性を持った者が集い、感覚と感情を共有する快感は何にも代え難いものがある。
1stアルバム『PARALLEL LIVES』を再現するという主旨のもと、ここからはまさに『PARALLEL LIVES』の曲順通りのセットリスト。ステージ後方には同作のジャケットが映し出されてオーディエンスが興奮を露わにし、バンド名を呼ぶSEの後に4人が向かい合って「Isolation」がスタート。腕を振り上げ、ジャンプし、興奮が会場を包む。
鉄槌を下すような迫力あるステージから一転、「Silent Shades」で優しく包み込み、「Same Circle」で会場がひとつになる。12年前に生まれた楽曲が、最新のアンサンブルで強い輝きを放つ光景に見惚れてしまう。
そして「November 15th」、演奏に合わせて過去のライブ映像がスクリーンに映し出された演出には、思わず感極まってしまった。当時会場で彼らのライブを観たこと、そして現在ライブの渦中に居ること。いろんな記憶と感情がどばどばと溢れ出る。
オルタナティヴな展開とダンサブルなリズムの「Hand In Hand」で身体を揺らし、「Moving In Slow-Motion」で拳を振り上げて曲の世界に入り込む。少しばかりの静寂の後、福音のように鳴り響く生形のギターと、そこに艷やかに絡んでいく日向のベース、繊細なタッチで繰り出される大喜多のリズム、エモーショナルな村松の歌。感情の堰が切れた我々は「Diachronic」の一音一音に歓喜する。
「Thermograffiti」の音像にゾクゾクと身体を震わせ、過去の写真や映像がスクリーンに映し出された「New Day」でまたもや筆者の感は極まれり。
目の前がパッと開けるような「Words That Bind Us」で覚醒し、「Sleepless Youth」に酔い、「Tribal Session」「End」という流れにずぶずぶと飲み込まれる。そのステージはまさに縦横無尽。彼らは1stのときからとんでもないバンドだったということを改めて認識する。
生形のギターに感情を焦がされた「Gravity」、思わず暴れ出したくなる衝動を抑えるのが必死だった「Out of Control」。佳境に入ったライブは勢いを更に増し、村松が「届いてるぜ!」と叫んだ「In Future」で強烈なカリスマを見せつけ、「きらめきの花」で会場をひとつにし、「また会いましょう」と「Beginning」で本編終了。
そしてアンコール。新曲のリリースとツアーを発表し、「辛気臭いことは置いといて、俺たちは少しでも楽しくなることばかり考えてます。だからこれからも俺たちに期待して、忘れたいときは頼ってくれていいので」という言葉の後、ワンマンライブを締め括る「Dream in the Dark」の歌と言葉と音に力を貰う。またここで会おうと心に誓う。Nothing's Carved In Stoneは、以前とまったく変わらないスタンスで、そしてより一層輝きを増しながら、ステージに立っていた。
TEXT:Takeshi.Yamanaka
PHOTO:RYOTARO KAWASHIMA
Nothing's Carved In Stone 2009年〜2019年の全作品に関するインタビューまとめ
一切妥協することなくストイックに、そしてエゴイスティックに音を練り上げてきた唯一無二のバンド・Nothing's Carved In Stone。2009年の結成以来、年1枚のペースでアルバムをリリースし、2018年には日本武道館でのワンマンライブがソールドアウト、2019年には自主レーベル"Silver Sun Records"を設立し、10枚目のアルバム『By Your Side』を完成させた。今まで全作品についてインタビューを行ってきたJUNGLE LIFEの記事を以下にズラーッとまとめました。