2018年2月7日、お昼の12時ちょうど、Nothing's Carved In Stoneは武道館でのワンマンライブ開催を発表した。結成10周年を迎え、9枚目のアルバム『Mirror Ocean』をリリースする直前、彼らはまるで未来の自分たちを祝福し、そして鼓舞するかのように、日本武道館でのワンマン公演開催を決めたのだ。武道館公演を発表した直後のインタビューで、Vo./G.村松とG.生形がファンについて話していたことを、改めてここに記してからレポに入りたい。
発表からちょうど8ヶ月後、4人は日本武道館のステージに立った。1曲目の「Isolation」が八角形の大きな空間に鳴り響いた瞬間、彼らがなぜ日本武道館を選んだのか、その理由がストンと心の奥底に入ってきた。彼らは、この会場に集まった全員と一緒に、この瞬間を味わいたかったのだ。
アリーナ最前から3階最上段まで拳を振り上げて声を出す会場の光景。「Isolation」で早くもテンションを振り切り、心から楽しそうに音をぶつけ合う村松、生形、Ba.日向、Dr.大喜多の4人。「Spirit Inspiration」「Like a Shooting Star」と、慣れ親しんだライブチューンが次から次へと武道館サイズで炸裂していき、それにオーディエンスが歓喜の声をあげる情景。8ヶ月前の約束が目の前で音と形になり、それを肌で実感し、心が震え始める。村松が「俺たち4人に共感してくれて、似た感性を持った人たちがこんなに来てくれた」と喜びをあらわにする。
「You're In Motion」などでステージ後方に炎の柱が吹き上がったり、「The Poison Bloom」「Mirror Ocean」などで音に合わせてLEDビジョンに幾何学的な映像が流れたり、「村雨の中で」で無数のレーザー光線が飛び交ったりと、大きな会場を活かした演出はあったが、ライブ自体は彼らの普段通りのものだった。特別なことを話すわけでもなく、長々とMCをするわけでもなく、ゲストが参加するわけでもない。他のどこにもない音楽を聴かせ、最高の演奏と歌を届ける…シンプルに言うとそれだけだったのだが、この日鳴らされたすべての楽曲には必然性があり、特別な輝きを放っていた。なぜここでこの曲を演るのか。なぜみんなにこの歌を聴かせたいのか。それらが音の1つ1つから伝わってきて、過去に何度も何度も彼らのライブを観てきたが、4人が鳴らす音の強さ、必然性、説得力は段違いだった。
「自分はこんなに素晴らしいバンドの日本武道館ワンマンに来ているのか」と、心の底から誇らしい想いがした。要するに僕は、とても嬉しかった。
村松はオーディエンスを「同じ感性を持った仲間たち」と喩え、「武道館に立ちたかったんじゃなくて、武道館にみんなを集めたかった」と言った。大きなLEDビジョンがあるのになぜメンバーを映さないのだろう? と思っていたら、メンバーの顔が映し出されたのはライブ終盤20曲目の「Out of Control」で、そこに映った彼らの表情は、4人が4人とも輝くようななんとも眩しい笑顔で、その瞬間に胸の奥からいろんな感情がドッとこみ上げてきて大変だった。「10周年に相応しいはじまりの歌をやって終わりにします」と本編最後で鳴らした「November 15th」。アンコール最後に4人が向き合い、ものすごく楽しそうに、音楽を愛でるように鳴らした「Around The Clock」。
ライブが終わったあと、武道館直前のインタビューで村松が「1曲目始まって2曲目に入る時の高揚感とか…俺、お客さんより興奮してるんじゃないかなって思うんです(笑)。そういうものの共有なんです」と言っていたことを思い出した。2018年10月7日、Nothing's Carved In Stoneが日本武道館で開催したワンマンライブ“10th Anniversary Live at BUDOKAN”、僕たちはその渦中にいた。
PHOTO:TAKAHIRO TAKINAMI
TEXT:Takeshi.Yamanaka
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