2/27にSPECIAL ONE-MAN LIVE “BEGINNING 2021” feat. 『PARALLEL LIVES』を大成功させ、配信シングル「Wonderer」を3/17にリリースすること、そして3/23からは待望の全国ツアー“Wonderer Tour”を実施することを発表したNothing’s Carved In Stone。同バンドのフロントマン・村松拓を追う当連載では、SPECIAL ONE-MAN LIVE “BEGINNING 2021” feat. 『PARALLEL LIVES』直前に新曲「Wonderer」についてじっくりと話を聞いた。
緊急事態宣言が発令してからはほとんど会えてないですが、どうやって過ごしてました?
どうしてたんだろうな…。あ、最近はみんなで曲作っているんですよ。「2月の頭から曲作りに入ろうか」みたいなことをみんなで決めていたんです。“じゃあ書かなきゃな”と思って家に籠もって、緊急事態宣言が発令されてからは曲作りが主だったかな。その合間に釣りに行ったりして。
はい。人が来なそうなところを選んで行ってという感じでしたね。
いないですよ。まじで人いない。公共の釣り場とか釣り公園とかだと20時で閉まっちゃったりとか、周辺の駐車場が入れなくなってたりとか。釣りはソーシャルディスタンスが保てるので始めたつもりだったのに、釣りもダメなんだなという感じになってます。
なるほど。バンドのメンバーで集まっているのは、デモ曲ができてきたのでアレンジを詰めているということですよね?
そうですね。うぶ(生形)とひなっち(日向)と俺がデモを持ってきてという感じでした。
もともとは去年アコギでポロポロ作っていたんだけど、その時点ではコードとメロディがなんとなくあって。打ち込みも自分でちょっと入れて、「とりあえず置いておこう」という感じで寝かせていた曲なんです。それにもうちょっとリズムを打ち込んだりとか、展開を作ったり、ある程度尺とか決めて作っていきました。
※註:当取材は2/27に開催されたSPECIAL ONE-MAN LIVE “BEGINNING 2021” feat. 『PARALLEL LIVES』以前に実施
3~4日くらい入りますね。俺らにしてはがっつりですね。
そうです(笑)。山中さん、12年前に自分で書いた記事とか読むとちょっとリズム違ったりしないですか?
それもあるし、よくこんなテンポで書いたなとか。ちょっと青二才感が出ているとか。
恥ずかしくなりますよね(笑)。リズムが違うのも青二才感を感じるのも、どっちもあります。
そうですね。だから曲の展開とか、“なんでこんな展開になっているの?”とメンバーそれぞれが感じていると思います。
いい曲だなと思うんだけど、今だったら思いつかない展開というか。無駄ってどんどん削ぎ落としていくじゃないですか。特に僕以外のメンバーはキャリアがあるので、当初から無駄なものは削ぎ落としていたはずなんですけど、その方向性が違うんですかね。なんて言うんだろう…考え方が少し違いますね。
だからフィットさせるのにもう一回その感覚に戻らなきゃいけないというか。そういうことにちょっと時間がかかったりするかもしれないですね。三拍子の曲とか特に。2/27はどうなるのかな(笑)。
久しぶりですね。釣り竿持っていこうかな。あの周辺、たぶんチヌとかシーバスとか釣れますよ。
だってほぼ河口じゃん。ライブしに行くというか釣りをする感じで行こう(笑)。
いいですね(笑)。久しぶりのライブだし、制限も色々とあるけど、ライブに対するスタンスはいつもと同じというか、変に力が入っていない。
はい。“Live on November 15th 2020”の時もそうだったけど、制限がある中でのライブはそこまで気にしてないですね。お客さんが声を出せないけれど、意外と気持ちが伝わってくるというか。拍手だけでも伝わってくるものがあって。
そして今回聞きたかったのは、2/27のライブでリリースを発表する新曲「Wonderer」についてなんです。
この曲、すごく新しいですよね。こういう曲はいままでなかったし、新鮮だった。
新しいですよね。これはひなっちが持ってきたデモがきっかけになっているんですよ。
確かサビだったんだよな。デモではリフがあって、サビのコードとメロディがあったんだと思います。そこに真一がイントロのリフとかAメロを付けたんです。だから真一とひなっちの合作ですね。
事前に2人で曲作りの相談をしていたみたいで、ひなっちがサビを作って真一に聴かせたらしくて。それで真一がリフやAメロを付けて、2人で作ったデモをスタジオに持ってきたんです。
これはいわゆるパーティーロックというか、アメリカンなロックですよね。Nothing's Carved In Stoneは、夕景色が出るのは生形のギターくらいで、ひなっちのベースプレイも実を言うとニューウェーブとかそういうジャンルの影響を受けているからUSっぽさがあるんだけど、そこをどうやって昇華していくか? というのがテーマだったんじゃないかな。
楽曲の雰囲気はすごくドラマチックに感じるんですが、メロディは誰が作ったんですか?
メロディも合作だと。2人でデモを作った段階で手応えがあったんですね。
そうですね。実は「Wonderer」は「Bloom in the Rain」を作っているときにはもう存在していたんですよ。
歌詞は拓さんですよね? デモのイメージからどういう歌詞にしようと考えたんですか?
最近はどういう曲でもまず日本語で書いてみようというテンションなんですよ。日本語で書いたのを見せてメンバーに「嫌だ」という顔をされるんですけど(笑)。
ということは、「Wonderer」は最初は日本語で歌詞を書いたということ?
そうです。その日本語詞を元にして、イメージ膨らませて完成させたという感じです。
完成版の英語詞は、最初に書いた日本語詞と世界観は近いんですか?
そうですね。前に「Bloom in the Rain」についてインタビューしてもらったときに「人生は移り変わる」という話をしたじゃないですか。それがテーマになっているところがあるんです。
「どこかで“ダメになってももう1回がんばればいいじゃん”と思っている」という話ですね。
そうそう。何回でもスタートラインに立てる。例えば40歳になって新しいスタートラインに立つことと、若者がまた新しくスタートラインに立つこと。経験とかの差で色々違うんだけど「心は一緒だよね」というところで、世代を超えた歌にしたいなというのがあって。
山中さんの今までの人生で、自信を持ち始めるのってどういうときですか?
若い頃って根拠の無い自信があるじゃないですか。だんだん自分のやっていることが確信に変わって、自分の生き方に自信を持てるようになる。挫折して忘れてはいけないこととかもありますけど、その中でも自分の生き方に確信というか自信を持ち始めるときってどういうときでした?
え~、難しいですね…。結局は他人(ひと)からの評価になっちゃうのかな~。
うーん、他人からの評価がひとつと、結局他人からの評価に結びつくんですけど…自分の中で“このやり方でいいんだ”と確信できたときというか。
そうですよね。絶対に人と一緒に生きているから、基準には「他人からの評価」があって。今の話と通じると思うんですけど、自信を持つのは色々結果が出てきてからじゃないですか。何でも調べられる時代だし、俺たちには本も元々あるし、色々な情報がある中で育ってきて。でも自分の生き方については教科書が無かったから、色々な経験をしながら生きているじゃないですか。
1つの道を極めようと思って、なんとなくだんだん経験を積んで、生き方の仕組みとかを学んで、それを応用して色々なことを受け入れられるようになってきて。
僕が思う「自信を持ち始めるとき」というのは、他人からの評価を自分自身が受け入れられるようになったときなんです。
良くも悪くも謙遜もせずおごりもせず、「いい」と言ってもらえたことに対して自信が持てること。「よくないね」と言われたことに対して「確かにそうだね」と思えること。その辺から“自分に自信を持てること”というラインが始まっているような気がして。
それって本当に“自分がある”ということなんだよね。そこにスタートラインがあって、そこがわかってくるとなんでも出来る気持ちになるというか。これだけでは伝わらないけど、「Wonderer」の歌詞はそういうことを意識してもらえるような仕掛けとして言葉を選んだつもりです。
「Bloom in the Rain」で歌っていることと近い気がしたのは“君の出番が来る”という歌詞と…拓さんは意識されていないかもしれないけど…コロナ禍というこの世の中に通ずる表現になっていると感じたところなんです。
そうだね。コロナ禍で生まれた曲という感じもする。そうやって背中を押せるような…「背中を押せるような」ってだけ言うとさ、空っぽに聞こえる言葉だなと思うんですけど(笑)。
でもやっぱり「Wonderer」については、“君の出番が来る”ということに尽きるのかなという気はします。
やってみないとわからないことばかりだから。全部1人で完結出来る天才だったら別の話だけど、普通は他人と何かをやっていく中で自分を出すことを覚えたりとか。…気がついたらすごく真面目な話してんな(笑)。
全然いいですよ(笑)。この曲はそういうモードで作ったんですね。
そうですね。この連載で「Bloom in the Rain」について話したことと繋がっていると思う。「やればいいじゃん」という。
「Bloom in the Rain」がリリースになったときにSNSで反応を見てると、やっぱり“二度咲く”という表現がみんなに響いていると感じたんですよね。
満足するのって難しいもんね。経験を積むと客観的に見ることも覚えるし、でもいつまでも感情的になることもあるし、結局うまくバランスをとっていかないとだめっていう。
新しい物事を始めたときに“本当はやりたくないのにこうなっちゃったな”と思い続けていたら結局気持ちは前に進んでいないから、やっていることとかその時間がすごい無駄になるし、自分もそう感じるだろうし。かと言って“今までやってきたことを忘れろ”とかそういうことで解決する話ではない。今までやってきたことがあったからこそ、まるっきり同じことなんてありえないから。
でも仕組みってあるじゃないですか。力学のようなもので。自分がこうやって動くと周りも動いてくれることとか、人を巻き込んでいけるような力学とか。音楽だったら曲の仕組みとか。そういうものは結構応用が利くと思うんですよ。
二足のわらじを履いている人はいっぱいいるじゃないですか。「二兎を追う者は一兎をも得ず」ということわざがあるけど、二兎を得ている人もいっぱいいる。それをただの嫉妬心で考えるべきじゃないと思うんだよね。この「二兎を追う者は一兎をも得ず」ってすごく大事なことを言っているなと思うんですよ。
考えてみると、1つのことを極めた人たちってその過程で挫折もしているだろうし社会的経験も積んできて、その中でいろんな仕組みを勉強していると思うんです。だからそこであった経験の話もおもしろいし、その経験を活かして、その仕組みを使ってまた新たに人と関わって新しいことができる。そこでもまた新しいことを学ぶ。それはすごいことだなと思うようになった。…何の話やねん(笑)。
技術や知識という話ではなく、先ほど拓さんが言っていた力学を応用しているんでしょうね。
過去に学んだことを「全然違うジャンルだから」と放棄するわけではなく、「同じことだ」と捉えて新しいことにチャレンジしている。
うん。そういう人は他人を巻き込んで頼ることもできる、ということなんでしょうね。みんなそうやって生きるしかないから。
なるほど。「Wonderer」の歌詞の話に戻しますけど、この英語詞はかなり洗練されている印象があって。すごく考えていません?
歌詞の意味や韻もそうですけど、言葉選びと耳触りの良さのバランスの完成度が高いと感じるんです。
「Wonderer」の歌詞を作る作業は、“歌詞だから”という感じじゃなかったんですよ。
「歌詞を書こう」とすると散文的なものになる傾向があるんですけど、「ちょっと物語調にしてみよう」という方向性にしたんです。それがよかったと思うんですよね。
「Wonderer」は上から読み綴っていく感じの文章になっていて。散文的なものを当てはめていくと、一部の言葉が際立って聴こえるとかそういう曲になるんだけど、ちゃんと綴って書くとこういう風になるんです。この曲はいつもの英語詞の曲のように、日本語を先に書いてそれを直訳して曲に当てはめていく、というスタイルではなかったので。
はい。さっき言ったように、最初に書いた日本語の歌詞が元にはなっているけど、言葉を元にしたというより、イメージを元にしたという感じ。
何回かしたことあるけど、やっぱり難しいんですよ。日本人じゃけの。
ハハハ(笑)。どの曲にも仕組みがあって、例えばいちばん最初にあるメロディがちゃんとサビに戻ってきて、印象的なフレーズをそこに当てはめておくと曲としてすごくいい仕組みになる。そういう相乗効果を狙えて書けたんじゃないかな。
響きとしていちばん印象に残ったのは“You wonder, slowly ponder”なんですよね。
響きとして印象に残るフレーズが“You wonder, slowly ponder”で、その部分の意味を調べてみると「想いめぐらせ、考えて」という意味で。そういう歌詞が聴いていておもしろかったんですよね。歌詞を書くのは結構時間がかかったんですか?
さっきちょっと言いましたけど、最初は日本語詞で書いて持って行ったんですよ。レコーディングの数日前にスタジオに持って行ってみんなに聴いてもらったら「いやいやいや!」となって。
はい(笑)。いざ歌ってみたら自分でも「うわ」となって。みんなで話して、結局英語でやるかと。それで1ヶ月延ばしたんです。
だから歌詞自体を書くのはあまり時間はかかってないけど、事実上時間は結構かかったという感じ。
ちょっとヘコんだね(苦笑)。努力が足りなかったつもりもないんですけど、チャレンジしすぎちゃって。
聴いたときのメンバーの反応も露骨で(笑)。メンバーは音楽となると厳しいし、みんなセンスの塊だから。何も言わなかったり、「あ~」とか言って(笑)。でも伝えたいことがあったからチャレンジしたんです。
でもいい曲になりましたね。ライブで聴くのがすごく楽しみです。
そこなんだよね。毎回こうやってしゃべって、俺はいいんだけどどう思う?
いや、僕も全然いいんです。ただ「なんかやらなくちゃだめだから」という理由で何かをやるのは嫌なので。やりたいことをやろうというスタンスがいいです。
すぐ「海外行こ」とか「タイにカフェ出そう」とか言うけど(笑)。それこそきっと何年も先の話でしょ。
釣り。俺、よく行ってるから一緒に行ってみる?「普段村松はこんなことをしている」と書いてもらうのもありかもしれないですね。
あとやりたいことある? 山中さんがやりたいことでもいいよ。今度2人でキャンプ行こっか。
じゃあ行きますか。キャンプ。決まった。じゃあ1個はそれ。もう1個くらい考えよう。
岐阜にある200m超のバンジーは行きたいですね。日本一が更新されているので。
富士山も登らなきゃいけないもんね。今年の夏は絶対富士山登らなきゃいけないですよ。
大丈夫ですよ。夏だし。もう本当にダメなときは置いていきますし。
その第一歩として、俺の役者のプロモーションムービー作ってくださいよ。すごくシュールなインスタで載せられるくらいの尺で、“村松拓 役者への道”のプロモーションムービー(笑)。5種類くらい。
すごく真面目なプロモーションムービーで「俳優村松は泣けます」とか「俳優村松は振り返ったときの顔が映えます」みたいな内容になっちゃいますよ。
「俳優村松は肌がきれいなのでメイクはいりません」とか「俳優村松は少食なのでケータリングは少なくてすみます」とかそういう映像ばっかりですけどいいですか?
なんの説明もなく「村松拓 俳優への道」というプロモーションムービーが流れて、いちばん最後に「村松拓は俳優の仕事を募集しています」とテロップが出てGメールのアドレスが書いてあるんですよ。「haiyuumuramatsu@gmail.com」って(笑)。
そのくらいふざけているのはおもしろいかもしれない。「本気で俳優になるの?」って聞かれますかね?
Nothing’s Carved In Stone Official Website / https://www.ncis.jp/
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