11/15に約10ヶ月ぶりとなる有観客形式でのワンマンライブ“Live on November 15th 2020”を大成功させたNothing’s Carved In Stone。同バンドのVo./G.村松拓の連載『続・たっきゅんのキングコングニー』では、ライブの数日後にたっきゅんインタビューを敢行。観客の前では約10ヶ月ぶりというステージに立つまで、彼はどのような気持ちだったのか。あの日、ステージに立っていた彼はどのような想いを抱いていたのか。たっきゅんに根掘り葉掘り訊きました。
“Live on November 15th 2020”お疲れ様でした!
約10ヶ月ぶりのお客さんの前でのライブでしたが、めちゃくちゃよかったです。新型コロナウイルス感染症の影響でイベント自粛要請が出て以降も拓さんは「バンドとしてやることは変わらない」と繰り返し言っていましたよね。
それはコロナ以前から言っていたことですけど、“Live on November 15th 2020”ではそれがすごく形になっていたというか。いつもと変わらないライブをするということがどれほど重要なのかということを思い知らされたんです。
コロナ以降、ステージに立つ人はお客さんが声を出せないとか、モッシュやダイヴができないということに対して少なからず動揺するというか、違和感を感じることが多いと思うんです。
それをなんとかしようとする人もいれば、MCで笑いにする人もいる。でもNothing's Carved In Stoneはそうじゃなかった。
ちょっと大げさかもしれないけど…これは特定のバンドの話じゃなくて全体的な話としてなんですが…僕は“コロナ以降のライブは以前のライブにはかなわないのかな?”と思っていたんです。でも“Live on November 15th 2020”はそうじゃなかった。お客さんの立場からすると、声が出せない状況だろうが距離が取られていようが、“ライブに来る”ということは、熱を持っているはずなんです。
その熱はコロナ以前と変わらないはずなんですよ。そんなお客さんのひとりひとりの気持ちに応えたライブをしていたんじゃないかと。熱かったし、グッときた。
「やれるならやるし、やれないならしょうがない」とずっと言ってきて、やれない状況でも前向きに、次のことを自分たちで準備してきたんです。曲を作るということも会場を押さえるということもそうだし、どんな企画のライブをやるかということもそう。それは今までと変わらずやっていくというスタンスだったんですけど、やっぱりそれなりにしんどかったというのはあったんですよね(笑)。それはやっぱりライブ好きだから。
ライブをやってみて、現実的な話としてお客さんの様子も全然違う。席があって、その席も1つずつ空けてるし。こないだの“Live on November 15th 2020”は、たまたまその席の人が来れなかったんでしょうね、1つ席が空いてたんですけど、誰かが移動してそこが埋まることはないんだよね。だからずっとそこは空いていて。でもなんか、“ずっとライブがしたかった”という実感がブワーッっと湧いてきたんです。
うん。1曲目のサビ終わりで感情が爆発しそうで“あ、歌えないかも”と思った(笑)。それは楽曲の中にある“感傷”とかそういう気持ちではなかったんです。なんかわからないけど、ライブが出来ているという状況に感動しちゃって、“ライブやってるわ”という実感があって。
今までと状況が違ってくるというのはコロナが流行り始めた頃から100%ピンときていんですよ。だから敢えて声を大にして「今まで通りのことをやります」と言ってきたんです。それは自分にも言い聞かせたかったし。
うん。コロナ禍だからこそできるライブもあると思うし、それを俺は否定しない。でも今まで自分たちがやってきたことも否定したくない。今までミュージシャンが想像の枠内で書いてきた歌詞が…これは変な言い方ですけど…コロナがあったおかげでものすごく近い精神的な状況になって、みんなが同じようなことで悩む期間が約1年あったじゃないですか。そうすると気持ちの通じ方も変わるし、言葉の受け取り方も変わる。それはよかったと思っていて。
でもやっぱり自分たちがやってきた表現を変えたくなかったという部分も大きいですね。ライブで俺はいつも通り煽るじゃん。でもお客さんは反応できないしね。そういう無神経さも必要だったし、そういう心構えもあったんです。
どうだろう? でも“Live on November 15th 2020”をやろうと決めていたのは下手したら1年くらい前からだから、準備という意味ではかなり前から始めてますね。コロナ禍になってからも、もともとこの秋は全国をまわる予定だったんです。…それはダメになったけど、“Live on November 15th 2020”だけは絶対に残そうと思っていて。セットリストを考えるとかの準備は2週間くらい前から始めたと思うけど、気持ち的にはずっと待っていたという感じかな。
セットリストが固まったのは直前ですよね? 前に会ったときに「11/12とか11/13に決める」とか言ってませんでしたっけ?
そうそう。11/12に決めたのかな…すごい直前だね、ウケる(笑)。
でもどんなライブにするかというのはあまり俺たちは考える必要がないから。『Futures』を出したことと、いま俺たちがいつものようにライブをして、伝えたいことを伝えましょうという感じ。コロナの中のセットリストだからこうしましょうということは一切無かったですね。
そういう外的な要因は関係ないですよね。でも“Live on November 15th 2020””ということもあり、久々のお客さんの前でのライブということも踏まえてのセットリストという気がしたんです。結構王道だったじゃないですか?
王道ですね。だからツアーじゃなくて、単発ワンマンということが大きいですね。野音でやるとか、そういうことと同じ感覚だから。ちょっと『Futures』に近くなっていくというところはありますけど、それは必然でしたね。
僕的には「Out of Control」がポイントだった気がしているんです。
はい。拓さんの精神的な爆発が「Out of Control」の前のMCであったんじゃないかなと。拓さんは感情が高ぶったときに歌がCD通りのメロディにならないというか、節回しが少し強くなるじゃないですか。ライブの前半でもそういうことがあったんですけど、「Out of Control」からが顕著だったなと。
へ〜。あの日は本当に楽しかったですね(笑)。でも“盛り上がらなくてもいいよ”とも思わなかったし、“もっと盛り上がれよ!”という気持ちも無かったんです。俺がいつもお客さんに求めているものもいつものテンションだったし、お客さんもそれに近い気持ちだったんだろうなと思います。
声は出せないけれど、本当に応えてくれているのが伝わってきたんです。モッシュがあって自由に動き回って叫んでというのがライブだとは思うけど、そうじゃなくても人と人のことだから…。
うん。その場の空気をみんなで作ることができるというか、そういうことをすごく感じてました。
さっきおっしゃっていましたけど、野音のライブとかと感覚が近いんですかね? 席がある会場でのライブ。
そうですね。俺たちはもともとモッシュやダイヴがバリバリあるバンドだったじゃないですか。10年くらいかけてそういう曲が減っていって、段々揉み合いになるライブじゃなくなっていった。席有りの会場やホールでやるようになったけど、その変化って自分たちなりに初めは結構違和感があったんです。
感覚として“ダイヴ減ってきたな”とか、フェスとか出ても”ダイバー少なかった?”みたいに感じていて。そこは自分たちで作った曲の作用なんだけど意図していないから。でもその変化に徐々に順応してきたというか、“こっちの方向のライブでもいいかもしれないな”とか“表現できることがあるな”とか、そこの幅がNothing's Carved In Stoneは広いんだろうなと思います。
それはもともと自分たちの中にあったものだけじゃなくて、ちゃんと10年かけてその幅を自分たちのものにしてきた。そういう感覚があったかな。
お客さんがどうであれ、そこに動じるような経験じゃないですもんね。
あとは「Red Light」「シナプスの砂浜」「BLUE SHADOW」のようなミドルの曲がすごく映えていた印象があって。セットリストの中でも結構重要な位置じゃないですか。ドカンという曲じゃないこの3曲が重要なポイントに置いてあるというのが印象的だったんです。
たぶんNothing's Carved In Stoneの音楽の考え方がこうなんですよね。例えばアルバム1枚を10~11曲で作ったとして、それを5~6曲で割って半分でストーリーを作る。レコードを裏返すようにそこからまた新しいストーリーが始まる。
その日の流れというのは、聴いている人や演っている人の気持ちの流れになってくるじゃないですか。そういうものを作るのが得意というか、好きなんですよね。それがうちのスタイルなんじゃないですかね。
はい。「Dream in the Dark」と「NEW HORIZON」。
意外とよかった。“どうなるんだろう?”と思っていたけど、俺らも初めてやる感じは無かったですね。でもやっぱり変な感じでしたね。
今まではだいたい曲を作って音源が出て1ヶ月後くらいにはバンドでライブができていたわけでしょ? でも「Dream in the Dark」なんて弾き語りでやっている回数のほうが圧倒的に多いし。そうなると、自分の中で色々な想いが蓄積されているから、バンドでやるとなるとこういうことなんだと。
拓さん的には別バージョンの「Dream in the Dark」だった。
「Dream in the Dark」はライブを締めるにふさわしい曲だと思ったんです。めちゃくちゃ盛り上がる曲ではないんだけど、大団円感というか多幸感というか。
すごくいいと思います。暴れてはいないけど、心が踊る。歌詞もグッと来るし。
なんか不思議だよね。初めてライブに来るという人も結構居たっぽいんですよ。
うん。Nothing's Carved In Stoneのライブが初めてという人。あとはコロナ以降初めてのライブだったとか。
そうですよね。席も空いていたし。何かあったんだろうなとかね。
弾き語りライブに関する話で前に拓さんは言っていましたけど、お客さんはお客さんで決断をして来る人もいれば決断して来ない人もいるだろうと。そういう考察もあの日のライブに作用していたと思うんですね。要はお客さんもバンドも一緒だと。
だからこういうコロナ禍でのライブというのはお客さんを信じるしかないのかなと思いますね。
楽しそうなのは観ていてわかりました。拓さんだけじゃなくて他の3人も演奏がエモかった。珍しいくらいに。
テンション上がってたんでしょうね(笑)。俺らが感動する話って、例えば和田アキ子さんがステージに出る前に手がブルブル震えたらしいんですよ。あんなに場数踏んでいる人が。でもステージに出ていくときにはビシッとしている。そこに俺らは感動するんだよね。なぜなら自分たちもそうだから。そういうことを感じることができた日だった。
うん。コロナ以降、決めていたスケジュールがダメになっていて、また次を決めて…ということを繰り返していたけど、それはやっぱり多少なりともしんどいことで。
デートの予定がどんどん先延ばしになるのと同じですよね。心が折れそうになるというか。
そうそう。だからメンバーそれぞれにそういう想いがあったと思います。みんな言わないけど。
言わないですね(笑)。でもそれはNothing's Carved In Stoneのスタンスで、「音楽を通して言いたいことを伝える」とMCでも言っていましたけど、それがどんどん有言実行になってきていますよね。
MCで新曲を作っているという話もありましたが、楽曲制作は進めているんですか?
進めています。今日も帰ったら歌詞を書こうかなと。もう2曲はできているんです。1曲はあとメロディが乗ればいい感じですね。もう1曲は、最近ひなっちが曲を書いて来るんですよ。ひなっちはアメリカンな曲というか、ハードコアやハードロックやオルタナティブな曲がすごく得意なんですよね。独特なポップスさも持ち合わせているから、それが結構いい感じに出ていると思います。
当連載へのメッセージや感想はyamanaka@junglelife.co.jpまで!!