昨年10月7日に開催された日本武道館ワンマン公演“10th Anniversary Live at BUDOKAN”のライブ映像を収録したDVD/Blue-ray『Nothing’s Carved In Stone 10th Anniversary Live at BUDOKAN』のリリース、及び豊洲PITでのワンマンライブ“BEGINNING”を控えているNothing’s Carved In Stone。同バンドのヴォーカリスト村松拓(たっきゅん)が日本一の漢を目指す当連載『続・たっきゅんのキングコングニー』の今月号では、今年1月9日にメンバーが発表したSilver Sun Records設立について、たっきゅんにじっくりと話を訊いた。
今年1月上旬、SNSで前事務所からの独立とSilver Sun Records設立を発表されましたよね。今、いちばん気になるのはその経緯と背景にある想いなんですが。
1/9に発表したんですけど、みんなどう思ってるのかな? 山中さんはネガティブなイメージありました?
いや、無いです。昨年の武道館公演や“Live on November 15th”などで「今後も突っ走っていく」という宣言があった上での発表だったので。
ただ1つ気になるのは、現時点ではSNSでの発表のみで、まだ言葉での説明を聞いていないですよね。だから「今が特ダネのチャンスだ!」と思いまして。
アハハハハ(笑)。まず、3〜4年くらい前から、「独立する」という形ではないんですけど、そういう想いはちょこちょこメンバーの胸の内にあったんです。
バンドをやっている以上、バンドの舵取りは自分たちでするべきだなっていう気持ちが根本にあって。自分たちでハンドリングして、地に足をつけてやっていくことが、これから先の活動を見据えた上ですごく重要になってくるんじゃないかなって、ここ数年考えていたことだったんです。
バンドの未来を考えたとき、自分たち自身の足で進んでいくことが必要だった。
それはメンバーみんな考えていたと思うし、少なくとも俺はそう考えていて。例えばメジャーデビューしたこととか、自分たちの意志でメジャーから離れたこととか。バンドはずーっと同じ動きをしているけれど、周りに付随する一緒に動いてくれる人たちに対して、責任が取り切れない場面が多かったんですよね。
もちろん感謝もあるし、一緒におもしろいことを作ってくれてる人たちだっていう自覚が自分たちの中にあるんです。でもメンバー以外の人たちが動いてくれて、顔になってくれている人たちがいたお陰で、保てていた繋がりもあったんです。それは、どこまで行ってもこれから先は変わらない繋がりだと思っているんですけど、10周年をきっかけにして、地に足をつけて、これからどうやってやっていくのか、もう1回イチからちゃんと考えたとき、自分たちでやっていった方がいいんじゃないかと思ったんです。
具体的に言うと前の事務所との契約は昨年10月末までですよね。今が1月末なので3ヶ月くらい経ちましたが、現在の心境はどうですか?
“始まったな”という感じがある。新しいことが始まって、手探りの部分も多いけど、1個1個確実に掴んでいこうっていうテンションというか。
Silver Sun Recordsはメンバーと最小限のスタッフで、ということですが、メンバー主導で運営していくということは、自分たちで物事を決めないと何も始まらないということですよね。そういう部分に対する不安というか、恐怖感みたいなものはないんですか?
独立はしたし、みんなで会社も作りましたけど、経営の目線で色んなことを考えすぎると、ものづくりに反比例しすぎるというか。
「ヒリヒリする」と言いましたけど、基本的に決めなくちゃいけないことって例えば「対バン誰を誘おう」とか「ツアーはどこに行こう」みたいなことで、その計画の立て方がより具体的になっているくらいだと俺は思っているんです。そこくらいですね、アーティストとして変わっていきたい部分というか。
なるほど。立場が変わったのでそこにまつわる責任は加わったかもしれないけど、アーティストとしてやるべきことははっきりしている。ものづくりや表現がメインだと。
うん。メインステージはそこですよね。だからこそ、今まで以上にそこに関してプレシャーは感じています。いい曲を作らなきゃいけない、より刺さる歌詞を書きたいとか。
そういう目線というか、作品に対する目線がより鋭くなっていくんじゃないかなって。
変わらないですね。独立したのは、10年続けてきた礎があったからで、その礎をもとにしての独立だから、無理に自分たちが変わろうとしているとか、そういうことではない。このまま俺たちはバンド活動を続けていくけど…っていうところですね。だから何も変わらないっていうか、お客さんからしたら変わんないと思います。「変わらない」というのは表現として適切じゃないかもしれないですけど。
バンドや音楽、活動スタンスは今までの延長線上、という意味での「変わらない」ですよね。
そうそう。あのバンドを始めたときのテンションにすごく似てる感じがします。夢があるっていうか、もう1回ちょっとやろうぜ、っていう感じ。当然かもしれないけど、メンバーと話し合う機会も増えたんです。ある意味、前よりも腹を割って話せるようになったというか。
バンドにまつわることの意思決定権は、前だったら事務所とメンバーが持っていて、例えばメンバーの代表と事務所が話して決めればOKだったんですけど、それがフラットになって、4人で決めたことっていうのがリアルに増えてきたんです。それが俺は、大好き。
当たり前の話かもしれないけど、メンバーはやっぱりバンドのことを色々と考えているんです。でもなんというか、バンドの中でアンタッチャブルな話ってあるんですよ。10年もやってると。
そうですね。それも、以前だったら色々考えて“言わなくてもいいかな”って思っていたりもしたけど、そういうものがよりクリアになって、すごくポジティブになってる。…めっちゃリアルな話ですねこれ(笑)。
うん。責任と役割がはっきりしてる。すごくいいことだと思う。それに何より、今まで10年使ってきたスタジオは、自社スタジオだったんですよ。
あそこで今まで作ってきたから、これからあそこで作れないとなるとちょっと不安になるけど…。
拓さんで言うと、マイクなども色々とこだわって選んでましたよね。
でもそれもポジティブに受けとめていて。前と同じだったら、そういうことについても改めて考える機会が無いじゃないですか。
そうか。音作りについても今のタイミングでもう1度深く考えることができる。
うん。こないだVRを体験したんですよ。TOKYO FM『FESTIVAL OUT』のイベント“LIVE FESTIVAL OUT powered by EMTG MUSIC”で。
はい。そこでNothing’s Carved In Stoneのスタジオライブを録音したんですけど、それをVRで観る、みたいなことがあったんです。
それをやったとき、一発録りだし、ギターとかもいつものセッティングでやったんですけど、みんなめっちゃ音いいし、演奏めっちゃ上手いしっていう感じだったんですよ。今までと違うスタジオでのレコーディングはそれが初だったんですけど、実力的には大丈夫だなって。
うん。だから新しい音源を作るのが今から楽しみですね。みんな、自分の中では出したい音がはっきりしているから、環境が変わったとしても問題ない。
そうか。目標がはっきりしているから、そこまでの道程が変わったとしても、結果は変わらない。
それ以上のことをアドバイスしてくれるエンジニアさんもいるんですけど、俺たちの場合はあまりそこを必要としていない部分もあって。
そういう話を聞いていると、やっぱり気になるのは新作なんですが…。
過去のNothing’s Carved In Stoneの流れでいうと、メンバーが曲やアイディアを持ち寄る段階ですね。
俺は知ってる(笑)。真一から「歌詞書いて」と送られてきたから。
ちょうどいま、歌詞を書いてるんですけど…いい感じですね。手応えがある。
でもどういう作品になるか、まだ全然わかんないですけどね。メンバーの手が加わっていない状態だし。たぶん真一の曲をこれから作ることになると思うんですけど、彼のソングライティングのセンスってあるじゃないですか。
それが結構炸裂している曲になるんじゃないかなって思っていて。
楽しみですね。10周年を経て、武道館を経て、次の一歩は“BEGINNING”ですね。ワンマンとしては“Live on November 15th”以来ですが、どんなライブになりそうですか?
俺は、いつものワンマンでいいんじゃないかなと思っていて。ワンマンっていうのは、そのバンドにとってのその時点での最高値を更新する日だと思うんです。それをもってまた走り出す…そういう日にしたいですね。
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