たっきゅんが日本一の漢を目指す連載『続・たっきゅんのキングコングニー』。2/14にNothing’s Carved In Stone 9枚目のアルバムがリリースされ、現在ツアー真っ最中となる今月号では、ライブでの発信が多くなかなか吸収が無いであろうたっきゅんに新たな刺激を受けてもらうため、「人生初となるストリップショーに行きましょう!」と誘い、渋谷のストリップ劇場に突入。まったく体験したことのない世界へと潜入したたっきゅんは、何を感じ、何を想ったのだろうか。
■ 編集長によるストリップ鑑賞レポート
3/26、たっきゅんと私は渋谷の道玄坂で待ち合わせしました。目的地はストリップシアター渋谷道頓堀劇場。1970年に開場、かつては幕間にコント赤信号やダチョウ倶楽部などが出演していたこともある、日本を代表する老舗のストリップ劇場です。
入り口でチケットを購入し、劇場に足を踏み入れます。1階は飲料が売っているカウンターとソファが並んだ休憩コーナーがあり、モニターで劇場の様子も観ることが出来ます。ほどなくショーが始まる時間となり、たっきゅんと私は劇場のある地下へと続く階段を降りていきました。
扉を開けると既に客席には男性客20人弱、女性客2人が座っていました。席の後方には立ち見スペースもあり、ざっと50人くらいは収容できるでしょうか。たっきゅんと私は前から3列目(ステージまで2mくらいの距離)に座りました。
いよいよショーが始まります。最初の踊り子さんは浜崎るりさん。彼女はとにかく笑顔で観客1人1人を見てくれますので、当方も自然に笑顔になってしまいます。ふと我に返って他のお客さんを見てみると全員真顔。客席最前のいちばん端に立っていたおじさんがタンバリンを振り続けます(おそらくお客さん)。
踊り子さんは徐々に衣装を脱ぎ、いつのまにか全裸に。彼女は客席にせり出した円形のステージ(前盆というらしいです)に移動し、せり上がった前盆の上で次から次へときわどいポーズを惜しげもなく披露。ポーズを決めるたびに客席からは拍手。劇場に入ってからの情報量が多く、たっきゅんも私も、いまここで何が起きているのか、まだ状況を把握できておりません。
踊り子さん1人のステージは約20分。最初に4曲踊り、撮影タイム(希望するお客さんと一緒にデジカメ撮影ができる)を経て、最後にオープンショー(露出度高めのサービスタイム、という感じ)。ようやく我々はここの仕組みとルールがなんとなくわかってきました。
2人目はさくらさん。1曲ずつ衣装を変えていく凝った演出で、全力で踊る姿に観客全体がぐっと惹き込まれます。額に汗を浮かべて全力で踊る踊り子さんと、拍手を送るお客さん。なんというか、目には見えないけれど太くて強い関係性が存在しています。
3人目の美月春さんはストーリー性の高い演出。少女が大人の女性になり、快楽の世界へと倒錯していく様を描いていきます。それはダンスというより、1人芝居のような世界観です。
4人目は浅葱アゲハさん。アクティブなダンスを披露したかと思えば、天井から吊るした大きなフープを使ったアクロバティックなステージに魅了されます。
徐々に衣装を脱いでいくと、キュッと引き締まった筋肉が美しい身体。とにかく動きがダイナミックで、女性としての美しさだけではなく、肉体自体が持つ美しさが印象的です。
4曲目が終わったとき、たっきゅんが私を誘いました。「一緒に写真撮ってもらいましょうよ」と。
5人目は愛野いづみさん。いつの間にかさっきまでとは違うタンバリンおじさんが音楽に合わせてタンバリンを振っています。凛々しさと女性らしさを兼ね備えた踊りで、お客さんたちは食い入るように彼女を見つめています。
5人目まで観賞し、ストリップショーは踊り子さんだけではなく、お客さんも含めた全員で成り立っていることに気づきました。撮影タイムのときには希望する人がスムーズに並べるように席を空けるお客さんが居て、演技中にはタンバリンで盛り上げるお客さんが居て、踊り子さんがもっとも魅せてくれた瞬間にお客さんはいちばんの拍手を贈る。不思議な空間です。
そして6人目、最後の踊り子さんはなんと今年20周年を迎えるという虹歩さん。20周年ということは、少なくともたっきゅん以上編集長未満です。彼女は踊りが中心の演目だったのですが、踊りの1部として徐々に衣装を脱いでいき、あらわになった身体を見てびっくり。皮膚が薄くきめ細やかで、とにかくめちゃくちゃ綺麗なんです。ストリッパーの真髄を見たような気がしました。
■ ストリップ観賞後、たっきゅんにインタビューしました
まず僕が気づいたこと。
選曲、ダンスの内容、構成、キャラクターとか、踊り子さんそれぞれがすごく細かく設定されていましたよね。それに人柄が出るというか、自分が好きな曲を選んでいるであろう人も居れば、物語を描くために曲を選んでいる人も居て。
おそらく美月春さんは物語前提で音楽を選んでおられましたよね?
そうそう。思ったんですけど、細かいところにその人の本当の性格みたいなものが出ていて、それがすごく興味深かった。みんなが見たいものを見せるまで、どうやっていくかがそれぞれ違ったし、見せるものがどういう位置付けなのかもそれぞれ違ったし。
あと、撮影タイムのときの対応もそれぞれで、お客さんの対応とショーの内容が反比例しているように僕には見えて、それがおもしろかった。
虹歩さんは20年じゃないですか。でも、あんなに綺麗な女性ってきっとなかなか居ないですよね。それにプロ意識もすごかったし。僕らが知ってるバンドの曲も使っていましたよね。ステージに立つ側の目線で観た部分もあって、色々と感じることは多かったです。
きっと踊り子さんたちはセルフプロデュースだと思うんですけど、自分がやる立場で考えてみたら、エンターテイメントとして昇華させるか、ストレートにお客さんの“欲”を満足させる方向にするか迷いますね。
迷うでしょうね。僕的には、浅葱アゲハさんがいちばん印象的だったんです。
フープとか風船を使ったりもされていましたけど、それを超えた凄みがあった。身体つきもすごかったし、腹筋とか。
そうでしたね。他の踊り子さんはそれぞれが持つ“女性”の部分に惹かれた気がするんですが、浅葱アゲハさんは女性的な美しさはもちろんですが、加えてアスリートの美しさのような。
肉体美ですよね。陸上の選手みたいな。すごかったし、綺麗だった。思わず写真撮ってもらいましたもん。
僕が印象的だったのは、ストリップ劇場という場所でのお客さんも含めたシステムというか。
あ、思った。あれはみんなでルール作りしてますよね。空気作りというか。タンバリン振っている人、2人居ましたけど、あれはきっとお客さんですよね。あのタンバリンは貸し出しなのか自前なのかも気になったし。
1人目のタンバリンおじさんはお客さんというより、ステージ側から客席を見るようにして一心不乱に叩いてたじゃないですか。何とも言えない感じだった。みんなお互いを思いやっている感じもあったし、同時にお互いを監視しているというか劇場を守っている感じもあった。
それもライブハウスに近い感じがあったような気がする。俺たち勘違いしてたような気がするんですけど、みんなただのスケベ心で観に来ていると勝手に思っていたんですけど、実際には全然違ったというか。
だけでしたね。だから踊り子さんが見せてくれているものを逆に直視して、もっと楽しむべきだったと反省しました。
あと、女性のお客さんが居たのも驚いたし、海外から来た観光客っぽい人も居たし。だからストリップというのは1つの文化なんだなって。
あの何とも言えない雰囲気って何なんでしょうね。例えばハリウッド映画とかで、クラブでストリップショーを観ながらお酒を飲んでいるシーンとかあるじゃないですか。日本のストリップがああいう明るい雰囲気にならないのは何ででしょうね?
うーん、やっぱり日本独自の貞操観念というか、社会的に閉じられた世界なんじゃないでしょうか。
そうですよね。どこか保守的というか。日本の昔のお祭り…夜這いの風習みたいな…それに近いような仄暗さというか、色気というか。
でもそこに居る人たちは全然普通に楽しんでいて。僕らは明らかに余所者でしたけど、楽しかったですよね。ああいうの大事にしたいなと思いました。昭和感があったと思うんですけど、戦後の日本を立て直していく中で生まれた文化というか。どこか懐かしさがありましたよね。
それに加えて今のYouTubeのような、みんなが主役の世界に近い価値観もあったような気がするんです。「ちょっと待って。俺にもアイディアあるよ」みたいな、ああいう雰囲気に近い感じがしたんですよね。僕が最近若い世代に対して感じているようなニュアンス。
ああ〜。アイドルに近いかもしれないですよね。会いに行けるアイドルの元祖があそこにあった。
あ、そうだ。アイドルと握手したいファンの気持ちがわかりましたよね。浅葱アゲハさんと握手出来て嬉しかったですもん。
いやらしい気持ちじゃなくて、がんばっている人と握手して「応援してます」って言いたくなる。不思議だったな〜。今日のことは、たぶんずっと忘れないと思います。
うん。また観に行きたいなって思える経験だった。短い時間で本当に色んなことを考えました。本当に今日は超刺激的で。今ツアー中ですけど、自分の中で今までとは違う目標を設けて、色々と試していることがあって。それを考えることに対しての刺激にもなったし、いい材料になったし、何よりもめちゃくちゃエキサイティングだったから。すっげぇ元気が出ました。
理由とかじゃないんですよね。そこに立つべき人が立つのを観ると、元気がもらえるんです。勇気が出る。
当連載へのメッセージや感想はyamanaka@hirax.co.jpまで!!