たっきゅんが日本一の漢を目指す連載『続・たっきゅんのキングコングニー』。Nothing’s Carved In Stone 9枚目のアルバムがリリースされ、10月には武道館を控えつつツアーがスタートしたばかりの今月号では、「スペシャル編!!(その2)」ということで、アルバム『Mirror Ocean』について、ツアーについて、あーだこーだと話しました。
アルバム『Mirror Ocean』のリリースから10日ほど経ちましたが(※インタビューは2月末に敢行)、リリースの少し前、2月頭に日本武道館でのライブ開催が発表になったじゃないですか。現実味を帯びてきました?
例えば拓さんは最近、coldrainとかBRAHMANの日本武道館公演を観に行っているじゃないですか。自分たちのライブではどうしようとか、具体的に考え始めているタイミングでもあるのかなと。
そうですね。武道館の3ヶ月くらい前に1回思い切り風邪をひこうと思っていて。
大事な日に限ってだいたい風邪をひくじゃないですか。例えば遠足の日とか。その日まで時間をかけてちゃんと準備していると、俺は絶対に風邪をひくんですよ。だからそれまでに思い切り風邪をひいておこうかなと。
そう。考えすぎるのも良くないなと。でも色々と想像は膨らませていっている感じです。準備しているのかな。
「2018年は10周年だから何か特別なことを…」という話の中で、日本武道館でやろうと発言したのは拓さんですよね?
Twitterとかの反応を見るとみなさん非常に喜んでくれてる感じがあって。
そうですよね。喜んでくれていて良かったです。だってロックの聖地ですもんね。
色々と考えたんですけど、武道館規模のライブをすることがバンドにとっていいきっかけになると思ったんです。だから今回のツアーは「武道館に向けて」と言うとちょっと語弊があるし、今回のツアーもいつも通りのライブをやるつもりなんですけど…武道館ってどういうものが伝わりやすくて、どういうものが伝わりにくくて、どういう演出が出来てとかの選択肢が無限にあると思っていて。自由というか。
だからどういう風にみせていけばいいのかなって色々と考えてるんですけど、そういう中でcoldrainを観に行って、BRAHMANを観に行って。全然2バンドは違っていて。
武道館のライブを観ていて思ったのは、例えばMCひとつとっても、洗練されていれば洗練されているほど、あれだけの遠くの距離でも届くんだなっていうこと。
ウチのバンドでいうと、俺のキャラクターがあって、俺が話すどんな言葉が洗練されてるのか? っていうことなんだけど、そういうところで…ほら、前に山中さんに薦められて読んだ原田マハさんの『本日は、お日柄もよく』みたいな話になっていくのかもしれないけど…武道館をやるにあたって「あそこの会場で自分たちらしいライブをするにはどうしたらいいか?」ということになるじゃないですか。
いつもライブをやっているライブハウスとは場所も違うし、音も違うし、見え方も違うから。そういうことを考えていくと、1つ1つのことが再構築されて、色んなものが抜けていって、自分たちの本質にも近づいていくと思うし。その中で「もっともっとMCのこともセットリストのことも考えなきゃな」と今は思っていて。
だから今回のツアーの位置付けとしては、アルバム『Mirror Ocean』のリリースツアーであることは当然で…アルバムを聴いてくれてライブハウスに遊びに来てくれた人たちと、そのアルバムの世界観で「最高の夜にしましょう」ということなんだけど…なおかつそれに加えて、バンドとしてもう一皮むけるようなものにしたい。そういう意識がすごく強い。
もっと大きなバンドになれるように、もっと大きな存在としてステージに立てるように、自らに課している。
そうですね。そういう意識になったのは、武道館がきっかけになっていることは間違いないです。
3/8から“Mirror Ocean TOUR”が始まりますが、現在はツアーに向けて準備中という感じでしょうか?
そうですね。『Mirror Ocean』は…曲が難しい…(苦笑)。
「これ出来るのかな?」っていうくらい。まあ出来るんだけど(笑)。
でも今回はまたちょっとハードルが上がっているような気がする。
先日、“Mirror Ocean TOUR”のリハーサルをしているスタジオにお邪魔して他のメンバーとも少し話しましたけど、みんな難しいと言ってましたね。インタビューのときに「Damage」は難しいという話をしていましたが、あの曲だけじゃないんですか?
うーん、全部難しい。難しいですね〜。俺、今年はすごく気合いが入ってて、ちょっとそれが空回りしてるなっていうのはリハで感じていて。
リハに入る前からちょっと空回りしてて、それがリハでわかったことが幸いでした(笑)。アルバムが難しいことはわかってたし、このツアーが終わったらもっといいアルバムを作りたいと思っていたから、そのためにリハが始まるまで毎日ギターを弾いてたんです。
今回のアルバムも満足のいく出来なんですけど、それに見合った歌にしないといけないとかも思っていて、そういうことを色々考えて気合いを入れていたんですけど、ちょっと空回ってました。あと花粉症だし(笑)。
それでリハをやってみたら“うわっ! 全然歌えない!”とびっくりして。
“空回ってる”というのはどういうことですか? 気持ちが先走りすぎてる?
そういうことだと思います。俺は考えれば考えるほどどんどんダメになっていくタイプなんですけど、今回のツアーでそこを乗り越えられたら、バンドとしてもう1段階進むことが出来るのかなって。武道館ってやっぱりいろんなプレッシャーがかかる場所じゃないですか。“普段通りのライブをやればいい”と考えていたらいいんだろうけど、今回は必要以上のプレッシャーを感じるだろうから、いいトレーニングにはなるだろうなって。そこのバランスは難しいけど(笑)。
武道館発表、アルバムリリース、ツアーと、今は色々と考えることがあるんですね。
そうですね。だから悩むというより、バンドのことを色々と考えてますね。
『Mirror Ocean』というアルバムは、テンポがミドル寄りの曲が多いですよね? そういうところが難しさに関係しているんでしょうか?
ああ〜、それはあるかも。それに加えて、アンサンブルがちょっと複雑というか。いちばん最初にスタジオで合わせたときとか、もうびっくりするくらい合ってなくて。
みんな自分の演奏が難しすぎて、周りの音を聴いている余裕がなかったんです。
それが3回くらい合わせると、だんだんNothing’s Carved In Stoneになってくるというか(笑)。そういうレベルで難しいです。
ちなみに、現時点で拓さんがいちばん難しいと感じているのはどの曲ですか?
えー!! この曲、アルバムの中でもかなりキャッチーな部類ですよね?
この曲、AメロBメロとサビでバッと変わるじゃないですか。実はもともとヴォーカル殺しの構成になっているんですよ。サビでオリエンタルなギターフレーズが入っていて、アレンジの最初の段階で付けたんですけど、あれはサビの歌メロに対して付けちゃいけないギターフレーズなんですよ。
ハハハ(笑)。歌いながら弾くのが難しい上に、その音があるせいで歌のラインは半音下がったところで歌いたくなるんですよ。
だからあの曲のサビに入った時点で、俺の頭の中はめちゃくちゃなんです。
へぇ〜。それはギターのアプローチが歌メロに近いということなんでしょうか。
あのギターは、不協和音っぽいのが良くて入れたんですけど、不協和音っぽいので引っ張られるというか。全体として聴いたら全然気にならないんですけど、ギターとメロディの音だけ聴いたらわかる人はすぐわかると思うんです。「あ、これ違うな」って。
全体で聴くと逆に「これが無いと気持ち悪いな」みたいなアンサンブルなんですけどね。
制作時はアレンジャー的な視点でギターフレーズを入れてみたけど、ヴォーカリストとして実際に歌ってみたらめちゃくちゃ邪魔だったという(笑)。
めっちゃ邪魔でした。だってレコーディングではあのギターフレーズを消して歌いましたもん。ワハハハハハハハハ(笑)。
まあツアーはバッチリな状態で挑みます。今回のアルバムの中ではやっぱり「Directions We Know」や「Winter Starts」の反応がいいので、ライブでも盛り上がると思うし。
特にウチのメンバーは長い時間かけて練習することに向いていないので、各々のイメトレと、リハで合わせること…リハとリハの間の日数を空けて、イメトレとリハを何回か繰り返していくことで演奏がうまくなっていくんです。
そうですね。だから今回のアルバムも難しいけど、そうやってイメトレとリハを繰り返して準備万端にして、また新しいNothing’s Carved In Stoneを観てもらうことができると思います。
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