初の全国流通盤となった2ndミニアルバム『Progressive』を今年2月にリリース以降、一躍その名を全国に知らしめたMrs. GREEN APPLE。
自主企画はSOLD OUT、各種イベントやフェスでも入場規制になるほどのオーディエンスを集めるなど、その注目度は高まるばかりだ。そんな中で早くも新作となる3rdミニアルバム『Variety』で、メジャーデビューが決定! 作詞・作曲・編曲全てを手がける大森元貴(Vo./G.)を軸に、個性豊かなメンバーたちが織りなすカラフルでポップなサウンドはさらなる進化を遂げ、より多くの人々の心を掴もうとしている。
●ここ最近のMrs. GREEN APPLEのライブはいつも大盛況で、動員もどんどん伸びている感じがします。
大森:ここ1〜2ヶ月が特にそういう感じですよね。前作の『Progressive』を今年2月に出してから、たくさんの人が観てくれるようになって。
藤澤:インディーズで初の全国流通盤を出したことで、みんな気になってくれているのかなとは感じます。
山中:全国流通盤を出してからは、「初めてライブに来ました」と言ってくれる方もすごく増えたんですよ。そういうところでの実感はありますね。
若井:どこの地方に行っても「CDを聴いて、初めてライブを観に来ました」と言ってくれるお客さんがいて。
髙野:この間も初めて渋谷TSUTAYA O-EASTでやったんですけど、会場がどんどん大きくなっているなっていうのも感じています。
●そういう中で、ライブに対する意識も変わってきていたりする?
藤澤:ステージが大きくなることで、できることがいっぱい増えてくるなと思っていて。それと同時にまだ自分たちにできていないことがたくさんあるんだというのにも気付かせてくれるキッカケにはなりましたね。
大森:リリースしてからは、僕らが顔を知らないようなお客さんも増えたわけで。そこで楽曲に対して客観的に考えるキッカケにもなりました。「他人から見て、Mrs. GREEN APPLEってどうなんだろうね?」みたいなことをメンバーとも話すようになって。お客さんから見た“Mrs. GREEN APPLE”像とそれぞれのメンバー像があると思うから、それを裏切らないようにっていうところを最近は強く意識しています。
●注目度が高まる中で今回メジャーデビューを果たすということに、プレッシャーもあったのでは?
大森:プレッシャーはありましたね。そこはお客さんがどれだけ増えても関係なくて、やっぱり作品を作るごとに自分の中でハードルが高くなっていくから。でも前作を作った経験もあるので、常に更新していかないといけない。『Progressive』は“進歩的な”という意味だったんですけど、今作『Variety』は「“楽しい”という言葉についてどれだけ深く潜れるか」みたいなところですごくストイックに悩んだんです。
藤澤:いつも(大森)元貴が作ってきたデモを元にみんなで進めていく感じなんですけど、今回は(デモ用の)曲作りの段階から元貴がすごくこだわって時間をかけていて。すごく葛藤していましたね。
●「“楽しい”という言葉についてどれだけ深く潜れるか」というテーマは最初から決めていた?
大森:決めていました。『Variety』というタイトルも先に決めていたんです。『Introduction』(1stミニアルバム)は“無常観”、『Progressive』は“対人関係”というコンセプトがあったんですけど、自分の中では3部作になっていて、それが今回で完結すると考えていて。作る段階から「こうしよう」というものはあったし、メンバーにも逐一話したりはしていましたね。
●今回の『Variety』は、ミニアルバム3部作の完結編になっているんですね。
大森:そうです。Mrs. GREEN APPLEの取扱説明書がここで終わるというイメージで良いと思います。
●3部作というアイデアも元々あったんですか?
大森:そこは一番最初からあったわけではないですね。『Progressive』を作るにあたって、根源となる大事なところをまず綴らないと自分たちの飾り付けができないなと思ったんです。そのためには、ちゃんと決め込んでやったほうが良いんだろうなと。だから1枚1枚にコンセプトをがっちり決めて、“コンセプトアルバム”と呼んでも良いくらいに作り込んでいって。『Introduction』の時点ではまだ(3部作というアイデアは)なかったんですけど、『Progressive』が決め手になったと思います。
●今回の収録曲を選ぶ上では、“楽しさ”というのが基準にあったんでしょうか?
大森:“楽しさ”をどこまで深く潜れて、どれだけ“愛”のある曲を入れられるかだと思っていました。M-3「L.P」やM-4「VIP」は憂いをまとった攻撃的な曲なんですけど、僕にとってはラブソングなんです。そういう共通点はありますね。“愛”を歌った曲か、“楽しさ”を気付かせてくれるワードを持つ曲しか入れていないと思います。
●M-2「リスキーゲーム」は『Introduction』にも入っていましたが、それを再録した理由とは?
大森:この曲は昔からあって、一番古い曲なんですよ。当時は「リスキーゲーム」を入り口にして好きになってくれる人が多かったので、そういう意味では僕らにとってすごくお世話になった曲なんです。あと、この曲は自分が20歳を過ぎちゃうと、違う意味合いを持って歌うことになりそうだなと思って。今の時期しか歌えないというところもあって、今作もお世話になることにしました。
●メンバー的にも思い入れが深い?
若井:そうですね。昔からライブで欠かせない曲だから。今回再録するにあたってはアレンジをガラッと変えたりもして、また新しい「リスキーゲーム」になったかなと思っています。
山中:本当に初期のライブからやっている曲なので、今回改めてアレンジを考えた時に自分たちのできることが増えたなと感じさせてくれたんです。自分たちの成長も見せてくれる大切な曲だなと思いました。
●M-5「ゼンマイ」も初期からある曲だそうですが。
大森:ただ「ゼンマイ」は作ってから、触れていなかった期間も長かったんです。当時の自分たちでは、この温かい雰囲気というのはまだ表現できなかったんですよね。16歳くらいの時に作った曲なんですけど、19歳を迎える今になってちょうど良くなったというか。
●曲が持つポテンシャルを活かせるようになった?
大森:曲の持っているポテンシャルとちゃんと向き合えるようになったのかな。当時はちょっと(曲に)飲まれちゃっていた部分があって。今もそういうところはあるんですけど、曲に負けないように頑張る方法を覚えたので(笑)。当時は良い曲ができたと思っても、実際にやってみたら良い曲にはならないということがあったんです。
●自分たちが進化してきた今だから、表現できるようになったんでしょうね。
大森:時間が解決してくれた部分もあるし、経験もあって。この半年間だけでも結構な本数のライブをやったので、そこは大きかったですね。
●「ゼンマイ」では山中さんが歌とぴったり寄り添うコーラスを全面的にしているわけですが、これは新たな試みですよね?
大森:デモの段階から自分で女の子っぽい雰囲気のコーラスを入れていたんですけど、柔らかい曲なので綾華(山中)にお願いしました。
山中:1曲通して歌うのは初めてだったんですけど、「歌ってくれ」と言われた時はすごく嬉しかったです。いつもはコーラスも元貴が入れているので、そのぶんハードルが高かったりもして。元貴が想像している声にどれだけ近付けるかというところがあって、レコーディングで最初に歌った時は「もっとかわいい声を出せないの?」と言われました(笑)。
●ヒドい(笑)。
山中:ハードルが高いなと思いつつも、頑張った曲です。ほぼツインボーカルみたいな感じになりましたね。
●これによって、バンドの引き出しも増えたのでは?
大森:色んな面を出せたらなと思って。「VIP」のベースソロもそういうところからでした。
髙野:ベースにフォーカスを向けられる曲というのが、「VIP」なんですよね。ライブでも何回かやっているんですけど、初めて前に出てお立ち台の上で弾いたりもして(笑)。ライブだと元貴が真ん中にいて、その両脇で若井と涼ちゃん(藤澤)がそれぞれにすごく動くんですよ。その中で自分はどう動いてやろうかなという感じで、ライブで前に出る意識が芽生え始めました。
●M-1「StaRt」は、特にライブの情景が浮かぶ曲かなと。
大森:そこはやっぱりライブをやってきたからこそですね。お客さんが自然とついてきてくれるようになって、手が上がったりする情景を見て。“もっと楽しませてやろう”っていうことでライブから湧いてくるインスピレーションを活かしたものが今作は多いかもしれない。
●歌詞を見てみると最初が“始まり”を表す「StaRt」で、ラストのM-6「道徳と皿」の最後でも“さぁ はじめてみて”と歌っていますよね。最初と最後でループしている感じになっているというか。
大森:そこは意図しました。「道徳と皿」の最後をどうするかですごく悩んだんですけど、最終的に“さぁ はじめてみて”に決まったことで全部がループしてまた次につながるという流れが上手く表現できたんじゃないかなと思います。「StaRt」でも“いつでもスタートで居よう”という歌詞があって。“初心忘るべからず”をメジャー1発目で歌わないといけないなと強く思ったので、そこはすごく意識しましたね。
●曲作りの上でも、メジャーデビュー作ということを意識した部分もあった?
大森:そこはメチャクチャ意識しました。「StaRt」に関しても、こんなにポップなところまで自分は足を踏み入れたことがなかったから。でも最終的に、自分の領域に持っていけたなと。作曲の可能性を広げることもできたし、バンドとしての可能性も広げられたんです。メジャーデビューは自分たちの夢だったから1つの終わりにはなっちゃうんですけど、やっぱり“始まり”だなというのを意識していて。“楽しい”にどれだけ深く潜れるかというのがコンセプトにありつつ、“始まり”というのも今作の一貫したテーマだと思います。
●新たな“始まり”にふさわしい作品になったという実感はある?
藤澤:ありますね。できあがった音源を自分たちで聴いた時に、改めて強く感じました。
山中:しっかりと細かいところにもこだわった上で、「デビュー盤です!」と誇れるものができたと思います。
髙野:全体的なサウンド面ではポップな方向にまとめたので、今回はロックバンドというよりも「ポップバンドです」と言えるものになったんじゃないかな。
若井:前回の『Progressive』はギターロック的なサウンドだったけど、今回はポップな感じになって。「StaRt」のMVも前回のリード曲「ナニヲナニヲ」のMVに比べて、ポップさを前面に出した仕上がりになっているんです。メジャーに行ったことで、すごくフレキシブルになったということを表している1枚だと思いますね。
大森:色んな一面を出せたらなと思っていて。ずっと同じことをやるんじゃなくて、自分たちの可能性を広げることこそがアイデンティティだと思うので、今回はポップに振りきりましたね。
●この先にやりたいことも既に出てきているんでしょうか?
大森:イメージはもうあります。ここで3部作が完結して、次からが本編なのかなっていうふうに思っているんですよ。次回は今までの3作の伏線も全て回収できるような作品にしたいと思っているし、またその次にもつながる作品が作れたらなと。
●9/26には渋谷WWWで初のワンマンライブを予定していますが、そちらも楽しみですね。
髙野:今まではイベントで40分くらいの演奏が多かったんですけど、ワンマンとなると2時間とかになってくるじゃないですか。そこで1つのエンタテインメントとして起承転結を付けてみたりだとか、新しいことにも挑戦していきたいですね。
大森:ワンマンライブも初めてだし、これからも初めてのことが出てくると思うんですよ。「StaRt」でも歌っているように初心を忘れず、常に“初めて”という気持ちでいたいなと。今年の僕らはそういうものを歌っていきたいし、身をもって表現していけたらなと思っています。
Interview:IMAI