三柴理とNESSが5/22にそれぞれの新作を同時リリースしたことを記念して、30年来の仲間3人による特別対談が実現した。NESSからは筋肉少女帯の初期から三柴と活動を共にしてきた内田雄一郎(Ba.)と、有頂天に在籍時から三柴と交流が深い三浦俊一(G.)が参加。三柴の新作『Pianism of King-Show』を話題の軸にしつつ、この3人にしか語り得ない貴重なエピソードも飛び交う必読の内容となっている。
内田:『Pianism』の名前がつくのは、これが3作目なんだよね。普通に聴けば素晴らしいクラシカル・ピアノ・アルバムなんだけど、よく聴いてみると「これは僕が高校生の時にちょろっと作った曲じゃないか…」と(笑)。
三柴:内田の曲は大槻(ケンヂ)の歌詞のドロドロしたダークな部分を音楽でも表しているので、選び甲斐があるんだよね。
内田:本当に高校生の頃、エレクトーンでピロピロと弾いて作ったものだったりするから。逆に言えば今はそういうのを作れないから、本当にピュアな感じがして。その高校生の頃に作ってたピュアな感じが、こうやってピアノ・ソロで弾いてもらえると思い出される…。ピュアっていうか、中高生の悪フザケなんだけど(笑)。
三柴:それにしては曲が個性的だった。悪フザケをするロックの人はたくさんいる中で、内田の個性は群を抜いていて。まだ加入する前に、初めて筋肉少女帯のライブを観た時にビックリして。「変なのがいたよ!」みたいな感じだったから(笑)。
内田:そう言ってる本人も変だったけどね。変なもの同士が出会ったわけで(笑)。僕は他に何もないので、フザケ続けていくしかない…。
三柴:内田はまともでありながら、すごく個性的だったんだと思う。やっぱり内田はエレクトーンをやっていたこともあって、音楽的にそこまでおかしい進行とかはなくて。それでいて、大槻の独特の歌詞とは非常にマッチしている。曲がそういうものじゃないと本当にファミレスのBGMになっちゃうので、そこは今回も気をつけたところかな。あと、大槻のボーカルも個性的で音符に直せないので、そこはすごく考えたね。
内田:大変だったろうな…(笑)。特に1stアルバム『仏陀L』の最後に入っていた「ペテン師、新月の夜に死す!」なんて、大変だったな〜。今回の中で前半4曲が1stアルバムの曲なんだけど、やっぱり1stアルバムって力が入っているからすごくよく覚えてるんだよね。バンドとして技術が伴っていなかったんだよ。
三柴:でも「こういうのがやりたい!」という気持ちはあって。
内田:だから頑張って、すごい時間もかかって録り終えた。ミックスダウンも深夜までかかって…。朝の4時頃にエンジニアさんがもう煮詰まって「ダメだー!」って叫んで、フェーダーを全部下げちゃったという(笑)。要はリセットっていうことなんだけど。
三柴:あれはビックリしたね。みんながすごく悲しんでた(笑)。「ペテン師〜」は僕と内田との共作なんだけど、内田の家で一緒に作ったんだよね。「こんなのできたよ」「じゃあ、こうしない?」とか言いながら2人で、本当に一から共作して。
内田:この曲は1stアルバムのために書き下ろしたんだ。そう言われると、遠い目をしてしまう…(笑)。
三柴:僕も弾いていて感極まって、最後のサビ前でガッと止まったりしてるよ(笑)。
内田:筋少でアルバムを2枚作った後に、エディ(三柴)が辞めちゃったんだよね。「あんなすごいピアニストはいないし、困った。どうしよう?」というところから、とりあえず変テコな曲を出しておこうということで作ったのが「ボヨヨンロック」で。オールナイトニッポンで適当に作った曲をレコーディングして、さらにひどいことをやろうと。そこで助けに来てくれたのがミューちゃん(三浦)だった。
三浦:僕がオルガンを入れたんだよね。何で自分が呼ばれているのかわからなかった(笑)。バンド同士は既に交流があったけど、僕はメジャーデビュー寸前に有頂天に入ったので、最初から仲が良かったわけじゃなくて。有頂天の「べにくじら」って曲を三柴が編曲してくれた時があって、その時にものすごく近くなった。そうだ、三柴がアレンジしてくれたフレーズを僕が弾けなくて、「ごめん、ソロだけは弾いて!」って頼んだんだよ(笑)。
三柴:そうだったっけ? その時はドラムが一番大変だったんだよね。
三浦:ドラムだけで17時間くらいかかった(笑)。とにかく、そこで関係が深くなって。僕は自己流で演奏してたから、鍵盤の基礎がなかったんだよね。それで三柴からフレーズを教わったりもしたんだけど、これはどう頑張っても追いつかないなと。「キーボードをやめよう」と思ったキッカケの1人です(笑)。
三柴:ミューは大人だったと思うよ。僕は生活全般のことがちゃんとできないので、ツアー先でも面倒を全部見てもらって。泊まる部屋も決めてもらったし、勝手に出て行ったら「何で出て行くの!?」って怒られて(笑)。
三浦:リハーサルの最中に勝手に出て行くから…。
三柴:そういうものだっていうのも知らなかったんだよね。ジュースが飲みたくなったから、出て行ったっていうだけで(笑)。やりたいことをすぐやっちゃうので、周りの人たちが大変っていう…。音楽を聴いたり音楽をやっている時だけは自信が持てる瞬間で、それに対してだけは真面目なんだけど、他はもう全部ダメ。生活というものに自信がない。
一同:ハハハ(笑)。
三柴:ミューは今も、ちゃんとやれることをやってるんだと思う。
三浦:やりたい放題やっている人たちの周りで、いまだに大変な立場にいるんだよ(笑)。
内田:後始末をやってるんだよね(笑)。
三浦:やりたい放題やる人を、社会性を持った人のように見せる仕事が向いてるんだろうね(笑)。
三柴:そもそも今回の企画があった時に、ファンのことを考えたらシングル曲を入れるべきじゃない? でも(レーベルオーナーでもある三浦から)一切そういう指示はなかった(笑)。
三浦:「知ってる曲が4つも入ってるから、素晴らしい!」っていう。
三柴:それ、あなたが知ってるだけじゃん! (笑)。
三浦:僕も社会性、皆無(笑)。
内田:でも筋少を知っていて、このピアノ・ソロ・アルバムを聴きたいという人にはとても良い作品だと思うよ。「シングルじゃないとダメ」とか言う人ばかりじゃなくて、最近は筋少の暗黒面を堪能してくれる若い人たちが増えているから。そういう人たちにはとても楽しめるアルバムじゃないかな。筋少を知らない人がここから筋少に入っていっても面白いと思うし。
三柴:そういう入り口になってくれると嬉しいね。
三浦:ちなみに、NESSの新作はどうだった?
三柴:僕はわりとミューの曲が好きだったな。ポップな曲はあんまり好きじゃないんだけど、「ポップって、こんなあり方もあるんだな」と思った。それと内田のベースが日々進化していて、すごく良くなっていることにもビックリしたね。あと、内田と河塚くんで作った曲(「Pavillon」)がかなり笑えた(笑)。
一同:ハハハ(笑)。
三柴:「どこまで展開するんだよ」っていうくらい展開するけど、テーマがはっきりしていて、すごく面白かったな。戸田くんの曲も僕にはすごく新鮮だったし、バラエティに富んだ曲がある中で最後はミューがきちっとまとめているのがすごく良くて。
三浦:後始末をやる役だからね(笑)。
三柴:すごくまとまっていて、最後に「聴いたな〜」っていう感じがした。バラエティに富んでいて飽きないし、すごく良かったです。
Interview:IMAI