2012年10月に結成されて以来、凄まじい勢いで進化を続けるMELLOWSHiP。各地強者ツアーバンドのサポートアクトや、大型フェスへの出演など精力的に活動の幅を拡げている彼らが、初のフルアルバムをリリース! 『CREATE THE WORLD』と題された今作は、前身バンド時代から現時点までの中で厳選された、珠玉の11曲が収録されている渾身の1枚だ。ジャンルに囚われず様々な音楽を昇華した彼らが創造するNEW WORLDを体感せよ!!
●初インタビューということで、まずは結成の成り行きから教えて頂けますでしょうか。
$ENKIN:もともと僕とtomokiはSPIKE26というバンドで6年間一緒にやっていたんですけど、2012年に解散しちゃったんです。ただ不完全燃焼なまま終わったところがあったので「まだ一緒にやるよね」みたいな感じで、メンバーを探し始めて。ちょうどその頃TatsuyaのやっていたNUGGETというバンドも、たまたま1日違いで解散することになって。
●すごいタイミングですね。
$ENKIN:そうなんです。もともとTatsuyaはメロコア系のバンドで2ビートを得意としてやっていたから、ジャンル的に僕がやりたい方向とは全然違ったんですよ。ただ“あいつのドラムで曲を作りたい”と思ったし、純粋にプレイヤーとして尊敬できる存在だったから、ドラムに関しては最初から「Tatsuyaしかいないでしょ」って思ってました。
tomoki:Tatsuyaくん以外は候補が思いつかなかったくらい。
$ENKIN:“ダメだったらどうしよう?”くらいの感じで。でも誘ってみたら、意外にもTatsuyaが求めていた方向性とMELLOWSHiPの音楽がバチッとハマったんですよね。そうこうしているうちに、「ギターがもうひとりほしい」ってことになって、tomokiが「Toshikiがいいんじゃない?」って。
●ということは、前々から知っていた仲なんですか?
tomoki:そうですね。候補は何人かいたんですけど、最終的にToshikiになりました。Toshikiはメンバーの中でいちばん若いんですけど、ライブでもいちばん勢いがあるし、僕らがライブを始めたくらいの気持ちを持っているからいろいろ思い出させてくれる。
$ENKIN:あいつがいなかったらここまで「行くぞ!」って感じにならなかったと思うし。とにかくライブもやりたがるし、ケツを叩かれるというか。長くバンドをやっていると、ある程度慎重になってまうやないですか。そういうときにToshikiが「行きましょう!」っていうと、そのエネルギーに背中を押されることがあるんです。その勢いは大事やなって思いますね。
●初期衝動の塊みたいですね。
$ENKIN:その通りです! その言葉、ぜひ使ってください(笑)。そこから4人でスタジオに入って音を合わせたら、すぐに「決まりやろ」ってなって。
tomoki:メンバー集めは思っていたよりスムーズにいきました。結成から5ヶ月後には、初ライブで初企画をやってましたね。
$ENKIN:5ヶ月の間にレコーディングをして9月に1stミニアルバムをリリース、10月に企画イベントをやってそのままツアーって感じで。
●め、めちゃくちゃアクティブだ!
$ENKIN:とにかく止まってない感を出したかったから「初っ端からいったろう」って。「前のバンドは解散したけど、まだ俺らは死んでないぞ」っていうのを周りに発信したい気持ちがありました。
●不完全燃焼だったものをぶつけていきたかったと。今回初のフルアルバムをリリースされるわけですが、M-2「Dear all my families」やM-3「JUST FOREVER」、M-7「Down Down Down」のように、過去の作品に収録されていた曲もあるんですね。
tomoki:「Dear all my families」は前身バンドのときからあった曲なんですけど、レコーディングをしたのはMELLOWSHiPになってからなんですよ。すごく思い入れがあったんで、“これはやりたいな”と。
$ENKIN:誰にとっても大事な人っていると思うんですけど、その人らに向けて書いた曲です。夢を追っていると、迷惑をかけないようにしようと思っても、身近な人たちに迷惑をかけちゃうことが絶対にあると思うんですよ。その感謝を面と向かって言うのはなかなか難しいですけど、バンドマンやしそこは曲で伝えようかなって。
tomoki:前の僕らを知ってくれている人も喜んでくれたし、MELLOWSHiPになってから新しく出会った人たちにも届いているなって思います。今ではみんなから求められる1曲になりました。
$ENKIN:「JUST FOREVER」はこのバンドになって1〜2曲目くらいに作った曲ですね。僕は今までずっと英語詞しか書いていなかったんですけど、このときに初めて日本語詞に挑戦しました。
●初の日本語詞ということで、難しいところもあったのでは?
$ENKIN:本当に難しかったですね。伝えようと思って書いているけど、いざ自分で読んでみたらめっちゃ照れくさい言葉になるんで…。“日本語で歌ってはる人ってすごいな”というのを改めて思いました。
●日本語だと伝わりやすい分ごまかしが効かないし、勇気が要るように思います。またこの曲には、前身バンドを彷彿させるような単語も入っていますね。
$ENKIN:それには決意的な意味合いがありますね。突然、いちばん大事にしていた“バンド”というものがなくなって…“いちばん大事なものを失ったから、次は絶対に失いたくない”という想いがあったんです。どんなに大事なものでもいつかはなくなるものだけど、日々の行いや気持ち次第で、より永遠に近いものにすることはできると思うんですよ。MELLOWSHiPをやるときはそれを大事にしたいと思ったので、自分に言い聞かせているというか。
●このバンドを始めてすぐにできたのも、きっと偶然じゃなくて必然だったんでしょうね。
$ENKIN:“次こそは!”って思っていたんで、そのときに書いた曲はそういう歌詞ばっかりでしたね。
tomoki:このバンドに入っていちばん最初に聴いた曲やったな。「こんな音楽をやっていきたい」って感じで聴かせてもらったんですけど、そこに僕がほしい要素がいっぱいあったんで「あ、いいな」みたいな。
●“こういう曲ができるなら、このバンドでやっていける”という感触があった?
tomoki:そういう自信が持てました。ライブでは必ずやっている曲ですし、この曲があったからこそ今に至っているところがあると思う。
$ENKIN:この曲で初めに方向性がわかりやすく決まったかもしれない。それをメンバーにも示せたと思います。
●1stフルアルバムを出すにあたって、絶対に欠かせない曲ですね。3〜4年前くらいにできた曲を今の作品に入れられるというのも、当時の気持ちをずっと変わらずに持っているのが大きい?
$ENKIN:そうですね、意味合い的にはすごくデカいです。逆に歌詞を読み返して“こんなこと考えてたな”って思い出すこともありますけど。
●“考え方が変わった”と実感することもある?
$ENKIN:たまにあります。“若かったな”みたいな(笑)。
●アハハ(笑)。「Down Down Down」はどういう経緯でできた曲ですか?
$ENKIN:アンセム的なものがほしいと思って書いた曲ですね。歌詞にはそんなに深い意味はなくて、雰囲気を出したいなと思って書いた曲でもあります。お酒を飲みながら音楽を聴いて、ワーッと騒ぐような感じ。
●“考えるより感じろ!”みたいな。
$ENKIN:しかも今回入れるにあたって録り直したので、デモのときよりも更によくなっていると思います。
●前の曲を知っている人でも、また楽しめますね。対してM-4「SPIT FIRE」は比較的最近できた曲だそうですが。
$ENKIN:ライブでやることをイメージしてできた曲で、“アツさ”をすごく意識して作りました。ライブハウスって特有の熱気があるじゃないですか。そこで感じるような熱や、燃えているものをずっと心の内に持っていたいなという気持ちがあって。そういう意味で「FIRE」という単語を入れたかんですよね。かつ、The Prodigyの「Spitfire」という曲にインスパイアを受けたっていうのもあります。
●MELLOWSHiPの曲は、随所にアーティスト名や曲名が入っているものが多いですね。M-5「Reason why I'm here」ではDragon Ashの「Life goes on」という単語が出てきますし。
$ENKIN:あえて固有名詞はいっぱい入れていこうと思って。聴く人によっては“この人らは、このバンドが好きなんや”っていうところから共感してくれることもあると思うし、僕自身も実際にありますからね。
●確かに、好きなバンドや作品の名前が入っているとつい反応しちゃいます。M-6「The Delicious Rap Show Massacre」は、映画からインスピレーションを受けてできた曲だそうですね。
$ENKIN:「The Texas Chainsaw Massacre」っていうスプラッタ系の映画があるんですけど、それを観た後に“この迫力感をどうにか曲に出せへんかな”と思ってできた曲です。僕らはあまり勢いで押す曲がないので、そういうのがあってもいいかなって。他の楽曲と違うカラーを出したかったんですよね。
●アルバムの中でも特に爆発力があると思いました。M-10「CREATE THE WORLD」は、作品タイトルにもなっていますね。
$ENKIN:「CREATE THE WORLD」ができたとき、この言葉の意味が自分の中でスパンとハマったんです。だからタイトルにしたいとずっと思っていたし、メンバーも共感してくれたんで。このアルバムの中でもめっちゃ好きな曲です。
●“世界を創造する”っていう意味合いのタイトルですよね。それがすっと入ってくるような心境だった?
$ENKIN:そうですね。僕ら自身“もっと活動の場を広げていきたい”という気持ちがあったので、全国流通1枚目のタイトルとして合うんじゃないかと思ったんです。
●まさにピッタリですね。
$ENKIN:あと、この曲はゲストコーラスにEGG BRAINのJOEYさんが参加してくださったんです。
tomoki:いちばん初めと最後のナレーションで叫んでもらいました。
$ENKIN:ちなみに「SPIT FIRE」では、同じくEGG BRAINのKUNIHIKO先輩にコーラスで参加して頂きました。これがめちゃくちゃ綺麗なんですよ。本人は「邪魔やったら消して!」って言ってましたけど(笑)。
●アハハ(笑)。そういうコラボっていいですね。
$ENKIN:憧れの先輩でもあるのですごく嬉しかったし、純粋に“すごいな”と思いました。先輩達の声が一言入るだけで、空気感が変わるんですよ。僕ももっと勉強せなあかんなって思いました。
●いろいろと得るものがあったんですね。この曲はアルバムタイトルになっていますけど、リードではないんですか?
$ENKIN:リード曲はM-1「The Way」で行きたかったんですよね。感じるものがあったというか、“リードはこれだ”っていう気持ちは全員一致していました。
●アルバムを引っ張って行くのは「The Way」だという気持ちだった。
$ENKIN:アルバム全体のテーマとして掲げたいのは「CREATE THE WORLD」ですけど、曲としてとにかく聴いてほしかったのは「The Way」なんです。ずっと思っていることを歌詞にしたので、曲作りも特に悩むこともなく。
●「ずっと思っていること」とは?
$ENKIN:“夢を追うこと”というか。僕は病的なくらい自分の夢に対して執着があるんですよ(笑)。まだまだ全然掴めてはいないですけど、バンドを続ける中で思うことがたくさんあって、それを曲として落とし込んだ感じです。これは僕らにしか歌われへんかなっていう自負はありますね。
●ずっと追ってきた人の言葉だからこそ、訴えかけてくるものがあるんだと思います。M-11「beautiful somewhere」は?
$ENKIN:これはMELLOWSHiPでも初期にできた曲です。昔、自分がなんで夢を追っているのかわからなくなったことがあって。改めて自分はなにがしたいのかを考えたときに思ったのが、“ステージから観る景色って他にないな”ってことやったんです。
●と、いうと?
$ENKIN:お客さんが自分らの曲で楽しんでくれたときに見える映像や興奮って、他では味わえないものじゃないですか。だから、現状僕らが見えている景色以上のものを目指してやっているんやろうなって。“なにかわからへんけどヤバい景色”っていうのを形にしてみようと思ったんです。
●“こんな景色をみたい”っていう決意表明でもあると。具体的に“こういうロケーションでやってみたい”というイメージはありますか?
$ENKIN:ずっと切磋琢磨しながらやっているバンドと、デカいフェスとかで共演してみたいですね。そこで一緒にお酒が飲めたりしたら、それが“beautiful somewhere”のひとつじゃないかな。ずっと“そういうのができたら最高やろうな”と思って夢を見ていますね。
●絶対楽しいですよね。それを達成したいという思いは「The Way」にも通ずるところがあるというか。
$ENKIN:僕の書く歌詞って、基本的な指針は一緒ですね。ネガティブなことよりもポジティブに書くことの方が多いです。
●なるほど。こうやって渾身の11曲が詰まった音源が完成したわけですが、今の心境はどうですか?
$ENKIN:ワクワクしまくってます。“どうなるんやろう”っていう気持ちもあるけど、とにかく聴いてほしいっていう想いが強いです。
tomoki:ライバルとか同世代のバンドマンとかには絶対に負けたくないなと思いますね。最近は“そのためにどうしたらいいか”を毎日考えています。勝ち負けではないかもしれないけど、できることがいっぱいある中でどうしていくかっていう。
●相手を認めていて、好きだからこそ負けたくないっていう気持ちがある?
tomoki:そうですね、めっちゃあります。
$ENKIN:年齢的に辞めていった仲間もいっぱいおるんで、そいつらの代わりにアルバムができて聴いてもらうっていうことにも思うところがありますね。“ちゃんと実現できるんだ”っていう。
●そういう曲がリードにもきているし、その想いがあると。リリースツアーも既に決まってるんですか?
$ENKIN:7月に大阪からスタートして、各所を回りつつ9月にファイナルって感じです。初日は僕らの企画で“BATTLESHiP”っていうイベントをやるんですよ。
●“BATTLESHiP”というくらいですから、ライバル的存在な対バンになるんでしょうか。
$ENKIN:そうですね。仲がいいバンドを呼ぶのは普通ですけど、なあなあでやるよりもその中でぶつかり合えたらいいなと思っているので。
●ちなみに、普段はどんなバンドとよく対バンしているんですか?
tomoki:特定のバンドはあんまりないですね。いろんな方面の人とやってます。
$ENKIN:いっこのところでとことんやるのも大切ですけど、僕らはあえて挑戦していきたいと思っているんで。あまり枠に縛られずに、これからもバチバチ攻めていきたいですね。
Interview:森下恭子