2012年から続いた“THE FATAL EXPERIENCE”のシリーズツアーファイナル、Zepp DiverCity Tokyoを埋め尽くした数多くのファンたち。照明が落ちて1曲目「ADORE」のイントロが響き渡った瞬間から、その熱狂がトップスピードで加速していく。誰しもが力の限り腕を掲げ、声を上げる。激しく勢いがほとばしるように、次々と繰り出される楽曲たち。濃密な空間はあっという間に加熱し、会場は狂乱といってもいいほどのエネルギーに満ちていった。
収拾がつかないほどに膨れ上がった興奮の声援は、Vo.葉月の「シィー!」という囁き一閃で静まりかえる。直後に披露されたのは、このライヴ直前にリリースされたシングル曲「BALLAD」だ。lynch.の持つメロディアスな側面をクローズアップした1曲に、先ほどまでとはガラリと変わって静かに聴き入るフロア。表層的には沈静化しているように見えるが、熱量はマグマのようにフロアに溜まり続けている…。
続いて奏でられたのは、同じく最新シングルに収められた「CRYSTALIZE」。ダンサブルなリズムに、バンド史上最高と言っていいほどのポップさが新鮮なナンバーだ。ラウドやヘヴィという形容で語られることが多いlynch.の楽曲群の中では異色にも映るが、優れたバンドには必ず優れたポップセンスが息づいている。この曲も彼らの持つ魅力の一端を表しているのだろう。
MCらしいMCもないままに迫力のバンドサウンドが繰り広げられ、息つく暇なく駆け抜けていった本編25曲。葉月は頻繁に笑顔を見せ、時に感極まったかのごとく言葉に詰まる。攻撃的に突き進み続けていた以前とは少し違う、ポジティブな推進力がバンド全体から感じられた。大声援に迎えられたアンコールで5曲を披露した後、再びステージに現れたダブルアンコールの際に葉月が口にしたシャウト。「次に会うlynch.は過去最高のlynch.だ!」。そんな宣言のような誓いに無限の期待を懸けてしまうほど、この日のライブは圧倒的だった。
TEXT:石田