これまでも様々なジャンルの音楽的要素を取り入れてポップでキャッチーな楽曲を作り上げてきたLM.Cが、約1年ぶりに放つシングルは何とバッキバキのEDMサウンド! 前回のアルバム『STRONG POP』(2012年4月)リリース以降は海外ツアーも敢行するなどライブを軸にした活動をしてきた彼らだが、その間も楽曲制作は行っていたという。今まで以上に振り切ったアプローチを見せながらも、キャッチーなメロディとフロアの盛り上がり必至のビートは“らしさ”を研ぎ澄ましてきた証明でもある。来年2月予定のニューアルバムが待ち切れなくなる1枚だ。
●今回リリースする『My Favorite Monster』は、前作の『DOUBLE DRAGON』から約1年ぶりのシングルということで少し期間が空きましたが。
maya:自然な流れでしたね。LM.Cというユニット自体が、“毎年アルバムを出さなければいけない”みたいな雰囲気で始まったものではないから。無理をしてリリースするということもなく、自然にツアーもやって。前回のアルバム『STRONG POP』以降では海外ツアーも挟んでいるので、わりと期間が空いたのかな。
Aiji:ただ、その間にもB面集(『B-Side BEST!!』)を出していて、そこに新曲も入っているので自分たちとしては何かしらリリースしているなという印象はあって。それを持ってツアーもしていたので、あんまり期間が空いている感はないんですよね。
●その間も制作はしていたんですか?
Aiji:ずっとしていましたね。今年の夏のツアーに出る前には、次のアルバムに関してもトラック制作自体は終わっていて。今回のM-1「My Favorite Monster」も、実は去年の夏の時点でレコーディングは終わっていたんですよ。
●そんなに前から録ってあったんですね。
Aiji:同時期に、前作の「DOUBLE DRAGON」や他の曲も録ってあって。その中から“次はこういうことをやったら面白いかな?”って考えながら、カードを切っていく感じだったんです。ゆくゆくはアルバムを出そうということで制作はしていたんですけど、明確なコンセプトは決めずにその時やりたい曲をひたすら作っていた感じですね。
●曲作り自体は順調に進んでいたと。
maya:曲はいっぱい貯まっていましたね。今振り返ってみると、活動が長くなるにつれて“録っては出して”という状況になっていた時期もあって。そういう意味では、今が自分たちとして一番健全に活動がまわっているのかもしれない。自分たちのやり方というものを見直してみたりもしたんですよ。ツアーもあった中で、どういうタイミングでリリースしていくのが僕らには一番似合うのかなっていうことを考えた結果、こういう形になっています。
●自分たちで最も適した時期を考えながら、リリースできている。
Aiji:自分たちにとって無理のないサイクルになっているというか。正直、過去には“無理しているな”って思うくらいのペースでリリースしていた時期もあったんですけど、今はもうそういう時期じゃないなと。作品ごとに一番良いタイミングを探りたいなと思っていますね。
maya:活動を始めた当初は隔月くらいのペースで音源を出していたんですけど、それは自分たちに対する認知のされ方というか“こう見てほしい”っていうものを早く広めたかったからなんです。でも今それをやっても、似合わない気がしているので。今の自分たちに合うやり方というのは、常に探していますね。
●その中で今回、表題曲のようにバキバキのEDM的な曲を出そうと思った理由とは?
Aiji:これまで自分たちが作品を出してきた流れの中で、今までやっていないアプローチというか。キャッチーな部分はあるけど、徹底してポップというわけではないと思うんですよ。そういう曲を今までシングルで切ったことがなかったし、もう少しサウンド志向の曲を出した時にお客さんも含めてどんな反応があるのかというのも知りたかったんです。“これを受け入れてもらえたら、この先の未来も広がるな”っていう感覚があって。
●LM.Cとしての可能性を広げられるというか。
Aiji:そうですね。また別の、新しい楽しみ方を提示できるようになるんじゃないかと思います。
●「DOUBLE DRAGON」と同時期に録ったということですが、曲調は全く違いますよね。
maya:制作作業の中で何曲かできた中から“今どれを出すか”というだけなので、結果的にこうなったという感じですね。色んなタイプの曲があるほうが、それぞれに役割を振れるのでやりやすい気がするんですよ。色んな曲があったから、「My Favorite Monster」自体もこういう方向に着地することができたというか。カップリングのM-2「Dolce Vitter」も同時期に作っていたものだし、本当にたまたまなんです。
●「Dolce Vitter」もサウンド的にはEDM的な感じがします。
Aiji:ビートの感じはEDM的な匂いがするんですけど、自分としては(「My Favorite Monster」と)真逆のタイプだと思っているんです。歌モノだし、いわゆるテクノポップと言えばいいのかな。テクノポップがEDMっぽくなっているというイメージだと思います。
●キャッチーさでいえば、こちらがリード曲でもおかしくないくらいのクオリティはあるかなと。
Aiji:メロディのクオリティだとか、そういう部分はA面であろうとB面であろうと関係なく作っているから。たまたま今回は「My Favorite Monster」がリード曲になっているというだけで、作る気持ちも向き合う気持ちも熱量は一緒ですね。
maya:結局、そこに似合うかどうかが一番大事なんですよ。たとえばタイアップが付いているならそれに似合うように輝かせて、シングルの2曲目だったらその場所に似合うように輝かせるようにする。どっちのほうが重要とかじゃなくて、片方が輝くことでもう一方も輝けるようなバランスが良いなと思って作っています。
●お互いを引き立たせ合いつつ、それぞれの方向性で振り切った曲というか。
Aiji:そうですね。今思い返すと、“振り切る”っていうことが最近のテーマかもしれない。そういうところでのバランスを取る時代は、LM.Cの歴史上では終わった気がしていて。もっと振り切っていければ良いなと思って、やり始めた時期の2曲ですね。
●振り切っても大丈夫と思えるようになったのは、自分たちらしさが確立できた自信の裏返しでは?
Aiji:それもあると思います。良い意味で仕事的に、どんな曲でもLM.Cブランドの味付けをすることができるようになったというか。いつでもそこに落とし込めるテクニックと自信は付きましたね。
maya:実際、最近「My Favorite Monster」がラジオとかで流れ始めても、ファンからはあまり驚きの声を聞かなくて。僕らが何をやっても、「今回はこういう感じなんだ」というくらいで驚かないんですよ。結局、僕が歌っていれば、特に言葉の響きとかで「あ、LM.Cだね」ってわかるというか。自分が昔から好きで聴いているバンドもそうなんですけど、ボーカリストがその人の声で歌った瞬間にそのバンドになっちゃうっていう現象に近付いてきたのかなと。結成から7年経って、そういう歴史を重ねてこられたんだと思うと嬉しいですね。
●自分の歌についても“色”が年々濃くなっている。
maya:最近は歌に関しても声の感じだったりとかで、新たな理想が出てきたんですよ。初期の頃はまだ“歌”というものがよくわかっていなかったので、そういう色も薄かった気がするんですよね。自分がどういうふうにあれば良いのかもよくわかっていなかったところが、今振り返れば楽しくもあって。珍しいと思うんですけど、僕は自分の声が元々好きなんです。
●最初から自分の声が好きというのは珍しいですね。
maya:元々がボーカリストじゃないというのもあって、自分のことを客観的に見ているのかもしれない。だから自分の好きな部分だったり、“こういうふうにいてほしい”というものを一歩引いたところから見られるのかな。それがライブでのパフォーマンスだけじゃなくて、歌の声の感じとか色んなことにもつながっていくような気がしています。
●理想の姿に近付きつつ、今回のシングルのように新たな可能性も広げていっている。
maya:少しずつLM.Cの宇宙を広げていきたいイメージはあるんですよね。今回はそこに一役買ってくれそうな2曲だと思います。
●こういう曲だと、ライブでのお客さんのノリ方も今までと少し変わってくるのかなと。
maya:でもこういうビートの曲自体は今までもあったので、わりと対応してくれるとは思いますね。
Aiji:EDM的な要素を持った曲は今までもリリースしてきたので、免疫はできていると思います(笑)。今まではもっとポップな曲が多かったから、そういう意味では“ちょっと毛色が違うな”と思うくらいじゃないかな。
●そこはファンを信頼しているというか。
maya:全然、心配はしていないです。どんな曲が来たとしても今なら大丈夫な気がするっていうのは、今年の夏のツアーで特に思いましたね。頼もしいというか、単純に盛り上がるんですよ…なぜか(笑)。
●バンドが歴史を重ねて進化しているように、一緒に歩んできたファンも進化しているんでしょうね。
maya:“長く続けているとこうなるのかな”とは思いましたね。夏のツアーは本当に雰囲気が良かったんですよ。今まではこちら側の力量もあって、(オーディエンスの)心を完全に開放させてあげられていなかったのかなという気はしていて。それが最近は開いてきて、感情が爆発してきている感じがするんです。そういうのを見ると、やっぱりライブは大きいなと思います。
●普段は内に秘めた感情を解放させるというのは、「My Favorite Monster」の歌詞に近いのかなと。
maya:そう言われてみれば、そうかもしれない。いつも「なりたい自分になれたら良いよね」と言っているんですけど、「本当はこういうことを言いたい、こんな格好をしたい」って思いながら、そういう自分とは違う“今の自分”がいるのはおかしいことだから。特にライブハウスに来る時って、最初はみんなドキドキしていたと思うんですよ。見たことない世界で、ちょっと悪いことをしている感じというか(笑)。だけど別に何も間違っていなくて、だんだん世界を知っていく内にその時だけ服装が変わったりとか、普段出さないような声を出したりするようになる。そういう“日常と違う自分”に会えるっていうのは、ライブの感覚と近いかもしれないですね。
●この曲の“愛と勇気じゃボクらは救えない 幻想をもっと お願いモンスター”という歌詞が象徴的で、すごく良いなと思ったんです。
maya:今まで“愛”が大事だなと思って色んな言葉を書き連ねてきたんですけど、この曲の主人公はそれだけでは満足できないと。もっと夢見ていたいんだっていう意味で、“幻想をもっと お願い”と歌っている感じですね。
●そのイメージは次のアルバムタイトル『PERFECT FANTASY』にもつながってくるのかなと…。
maya:“幻想”っていう言葉が僕は好きで、前からよく使っていて。実は前回の「DOUBLE DRAGON」にも入っているんですよ。結局、シングルでもアルバムでも、それこそ曲のタイトル1つを取っても全部LM.Cだなと。前作の『STRONG POP』というタイトルもLM.Cをよく表していると思っているけど、『PERFECT FANTASY』もそういうことですね。たぶんLM.Cをいつも応援してくれている人が聴いたら、「はいはい、LM.Cね」っていう感じだと思います(笑)。また1つ歴史を重ねられそうな感じはしていますけどね。
Interview:IMAI
Assistant:森下恭子