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Light Novels 異能の2人による即興的交感が生み出す 無垢なノイズ、純真なサイケデリック。

Light Novels 異能の2人による即興的交感が生み出す 無垢なノイズ、純真なサイケデリック。


 
元・地下アイドルにしてノイジシャンの野中比喩(トキノマキナ)とギタリストの菊池誠(andmo’)による即興ノイズ・フォークロック・デュオ、Light Novelsが1stアルバム『Night Song』を完成させた。2016年から2017年にかけて難波ベアーズで行ったライブ演奏を編集・再構成したという全3曲は、即興演奏ならではの緊張感を漂わせつつ、長尺でも聴き飽きさせない物語性を有している。現代的なノイズ・アンビエントと60年代的なサイケデリック・フォークロックに“アイドル”が同居する、懐かしくて新しい現在進行形のミクスチャーサウンドを生み出した2人に迫るインタビュー。
 


 
「大学教授と元アイドルが何をしたら物語になるかなと考えた時に、その組み合わせの時点で既にライトノベルみたいやなと思って(笑)」


 

●Light Novelsは、お2人が難波ベアーズで出会って結成されたそうですが。
 
菊池:僕が別のバンド(※andmo')でベアーズに出演した時に、野中さんもソロで同じイベントに出ていたんです。その時に野中さんは変なコントみたいなことをしたり、ノイズを出したりしていて…。
 
野中:ピカルミンとかを持って、ちょっとしたコントをやっていました。“サウンドハウスあるある”みたいなネタを当時やっていたと思います。
 
●そのライブを見て、菊池さんは一緒にやりたいと思ったんですか?
 
菊池:ちょうど、ノイズの人と一緒にやりたいなと考えていた時期で。andmo'は変拍子プログレみたいな感じでわりと難しい音楽をやっているんですけど、それとは別に“即興ノイズ・フォークロック”みたいなものをやりたいと思っていたんです。そういう時に野中さんのライブを見て、“これはフォークロックが合うんやないか”と思いました。
 
野中:わ〜、嬉しい!
 
●野中さんは最初、どんな印象でしたか?
 
野中:最初にお声がけ頂いた時は、“(自分で)良いのかな…?”と思いました。andmo'のほうではきちんとした音楽をやられているので、“ホンマに? 大丈夫なん?”というのが正直な気持ちやったんです。
 
●不安な気持ちがあった。
 
野中:当時はまだソロで再活動を始めたばかりの頃で、自信もなくて…。でも菊池さんから“面白いことをやっている”と言って頂いたことで、めっちゃ自信が出たんですよ。自分の音の幅を広げたいとも思っていたので、“ぜひ一緒に活動させて頂きたいです”というところから始まりました。
 
菊池:最初は“まず1回、一緒にやってみませんか”という話になって。その後も続けるかどうかは考えていなかったんですけど、とりあえず“やるなら名前だけは付けておこう”ということで、“Light Novels”という名前を2016年末にやった1回目のライブから付けたんです。そしたらまたベアーズからお誘いが来て、その後もライブが続いている感じですね。
 
●“Light Novels”という名前の由来とは?
 
野中:菊池さんは本業が大学教授で、私が元アイドルという組み合わせが、今風のライトノベルにありそうな設定やなと思ったんですよ。大学教授と元アイドルが何をしたら物語になるかなと考えた時に、その組み合わせの時点で既にライトノベルみたいやなと思って(笑)。そこで、その名前が思い浮かびました。
 
●名前は野中さんが考えたんですね。
 
野中:最初に“モチーフを決めて、ライブをしよう”という話があって。そこで小説の題名みたいなものを先に決めて、物語性を付けてノイズをやれば、即興で音を出すにしてもある程度の統一感が出るんじゃないかなと思ったんです。そういう流れもあって、Light Novelsという名前に決まりました。
 
●初ライブのモチーフは何だったんですか?
 
野中:最初は“液体”でした。
 
菊池:“水っぽいイメージでやりましょう”という話になって。そういう漠然としたイメージだけで、即興でライブをやりましたね。
 
●ライブは完全に即興なんでしょうか?
 
菊池:野中さんは完全に即興だと思うんですが、僕はギターを弾くのでコード進行みたいなものは少し考えていきました。でも基本的にはその場で音を合わせるので、即興ではありますね。
 
野中:私も下準備としてノイズのパターンをいくつか作って、持っていったりはしていますけどね。1つ1つの楽器によって出る音が違うので、“菊池さんがこういう音を出すなら、こっちはこういう音を出そうかな”という感じでやり取りしています。
 
●野中さんのパート表記が“声/ピカルミン/テルミン/ニンテンドーDS/その他のエレクトロニクス”となっていますが、ライブごとに使っている機材が違う?
 
野中:ミキサーに色んなものをつないでいて。曲ごとにいらないものは外して、合うものを使うようにしています。
 
菊池:ライブごとに野中さんは違う機材を持ってきていますけど、ピカルミンとテルミンは欠かさないんじゃないかな。
 
●M-2「夜の歌 Night Song」(以下「夜の歌」)の曲中でカメラのシャッター音のようなものが聞こえたのですが、あれも野中さんが出しているんでしょうか?
 
菊池:あれはお客さんのカメラの音ですね。(ライブでは)“どんどん撮って下さい”と言っていて。“演奏に参加するつもりで、シャッター音を鳴らして下さい”と宣言しているんですよ。
 
●実際のライブで鳴ったシャッター音が入っているんですね…。楽曲の一部として、意図的に入れたものかと思っていました。
 
菊池:わりと良いところに入ってくるんですよね。でも実際には全て、会場で鳴っていたシャッター音を使っていて。ヘッドホンでよく聴くと、現場のお客さんの声や椅子の音なんかも入っています。客席のエアー録音とライン録音を両方混ぜて使っているんですが、エアー録音のほうに入っている客席の音もそのまま残してあるんです。
 
●今作は“ライブ編集アルバム”ということですが、色んなライブの録音を組み合わせて制作されている?
 
菊池:そうですね。1曲でも3回分くらいのライブ録音のパーツを組み合わせて、つないだものになっています。だから全部ライブ演奏なんですけど、音源のまま(実際のライブで)やっているわけではなくて。たとえば「夜の歌」に関しても大きなモチーフは同じなんですが、1回の演奏を収めたものではないです。真ん中のかなり長い部分には全く別の日の録音が入っていますし、逆にバシバシ切ったところもあるんですよ。
 
●とはいえ音源で聴く限り、どれも自然につながっているように感じました。
 
菊池:そこがノイズの面白いところで(笑)。実際はかなり編集しています。作曲の代わりに、編集している感じですね。
 
●同じモチーフで演奏したライブ録音をつないでいる感じでしょうか?
 
菊池:たとえば“光”をモチーフにした日もあれば、“夜”をモチーフにした日もあって。「夜の歌」の場合は“夜”をモチーフにした日の演奏をメインにして、そこに他の日の演奏をつないでいます。M-1「光 Luminous」は3つくらいのライブ録音をつないでいるんですが、“光”をモチーフにした日のパートも使っているのでこのタイトルにしました。あと、M-3「新しい今日 New Day, Today」(以下「新しい今日」)に関しては、野中さんの歌詞から僕がタイトルになる言葉を拾ったんです。
 
野中:あ、そうやったんですね!
 
●知らなかったんですね(笑)。「夜の歌」の最後で野中さんが“ほら、空が明るくなってきた”と言った後に「新しい今日」が始まるところは、すごく自然な流れを感じました。
 
菊池:そこは狙って、編集しています。(収録した)3曲の構成として夕方から夜になり、そして朝になっていくような並びにしてあるんです。素材を全部揃えてから順番を考えたんですが、アルバム全体を通して“夜から朝へ”となるように作りましたね。
 

 
●今作のような流れでいつもライブをやっているわけではない?
 
菊池:ないですね。たとえば「夜の歌」をやれば、1曲だけでライブの持ち時間が終わってしまいますから(笑)。3曲で50分強あるので、普段の(イベント)ライブで全部はできないんです。
 
●確かに。即興ということですが、普段から2人でスタジオに入って音を合わせたりもしないんでしょうか?
 
菊池:一度もしたことがないです。今回のアーティスト写真の撮影日が、僕ら2人がベアーズ以外で会った唯一の日ですから(笑)。
 
●本当にライブ当日に会って、そのまま即興で演奏する感じなんですね…!
 
菊池:即興なので、スタジオで練習したからと言って、ライブでそのとおりやるわけではないですから。事前にイメージやテーマだけはメールで打ち合わせておいて、お互いに何かしら準備していくんです。それでサウンドチェックの時に(相手の演奏を見て)“ああ、そうするのか!”となって。そこから本番までの間にどうしようか考える感じですね。
 
●あえて準備しすぎないようにしている?
 
菊池:そのほうが良いかなと思います。準備しすぎると、僕は難しい曲を作っちゃうから(笑)。ちょっと古くさいシンプルな感じのフォークロックにがっつりノイズが乗って、そこに野中さんのウィスパーボイスの歌が重なれば面白いんじゃないかなと最初から思っていて。だから、あえて作り込まなくても良いだろうとは思っていました。
 
●野中さんの声も、音楽性に大きな影響を与えているのでは?
 
菊池:単なるフォークロックと違って、アイドル声で歌っているというのは1つのポイントだと思います。
 
野中:自分としては“この音に合うのは、この声かな”というものをセレクトしている感じで。すごく力強いパワー系の声で無理して歌うことは絶対にないですし、菊池さんのギターに合うのはそういう声じゃないと思うんです。“物語みたいな感じでやりましょう”という最初の打ち合わせも踏まえて、世界観を大事にしようとした結果、今の歌い方になりましたね。
 
●歌詞や語りの部分の言葉も全て即興なんでしょうか?
 
野中:即興でリフに合うメロディを乗せて、それに文字数が当てはまる単語を頭の中で模索しながら出しています。ライブの時は菊池さんが何回か同じリフを弾いて下さるので、それを聴きながら“こういう音が合うやろうな”というノイズを出していて。“その雰囲気に合う単語はないかな”と頭の中で探して、音に埋め込むような感じですね。
 
●菊池さんのギターリフに合うノイズや言葉を紡いでいるわけですね。
 
菊池:でもわりと“そう来ますか!”みたいなところがあって。その場で一緒に作っているので、僕も合わせている部分はありますね。お互いのイメージが合った日が、上手くいったライブという感じがしています。
 
●即興な分、完成形もないわけですよね?
 
菊池:ないですね。目標としては、聴いてくれる人に“毎回違うけれども、今日も良かった”と思ってもらえるのが一番良いというか。
 
野中:私も持っていく楽器がその時その時で違うので、毎回違う感じの音にはなっていて。前に使ったであろう言葉もある程度書き出しておいて、それは使わないように意識しています。私自身がものすごく飽き性なので毎回違うことをしたいし、そっちのほうが見ている側も面白いだろうから。今やっている中で、そういう要素を一番入れているのがLight Novelsだと思いますね。
 
●毎回違うから、いつも新鮮に感じられる。
 
菊池:即興というのがそもそものコンセプトなので、慣れすぎない感じのほうが良いと思うんですよ。そういう感じよりも、スリルがあるほうが良いなと。
 
野中:毎回、良い意味での絶対的な緊張感はありますね。練習をしていない分、何が出てくるのか本当にわからないところがあって。そこで反射神経的に返せるかどうかが重要なんです。
 
●そういう感じが今作にも表れているので、聴き飽きないものになっているのかなと思います。
 
菊池:そこはやはり、編集しているというところも大きくて。ただライブをそのまま収録したわけじゃなくて、その音源を編集して作品を作っているというのも聴いて頂きたいところなんですよ。逆にダレる部分を削ってしまったことで、常に緊張を強いられるところはありますね(笑)。それで最後にホッとする曲(=「新しい今日)を入れたというのはあります。
 
●ご自身でも納得のいく作品できた実感があるのでは?
 
菊池:そうですね。アルバムのキャッチフレーズとして“無垢なノイズ、純真なサイケデリック”と書いたんですが、それが自分の目指したところに近くて。ただのフォークロックではなくて、サイケデリックなフォークロックになっていると思うんです。サイケなところはノイズにも表れていると思うし、野中さんの歌や語りにも表れていると思っていて。トリッピーな感じはあると思うので、サイケの文脈でもぜひ聴いて頂けると嬉しいです。
 
野中:本当に聴いて頂かないとわからないものになっているというか。色んなジャンルを組み合わせていて、古くて新しいミクスチャーみたいなサウンドになっているので、口頭ではすごく説明しにくいんですよ。ジャンルを問わずに聴いて頂けたら、ありがたいなと思います。
 
 
Interview:IMAI
 
 

Member
野中比喩(声/ピカルミン/テルミン/ニンテンドーDS/その他のエレクトロニクス)
菊池誠(エレクトリック・ギター/編集)

リリース情報
1st Album
『Night Song』

ギューンカセット
CD95-77
¥1,500+税
2019/5/25 Release

ライブ情報
ギューンカセットpre.
ライトノヴェルズ〜Night Songレコ発!
5/31(金) 難波ベアーズ

more info→
野中比喩Official Twitter
https://twitter.com/hiyu_nonaka
菊池誠Official Twitter
https://twitter.com/kikumaco

 
 
 

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