中間色で描かれた情景と、異なるジャンルを越境する瑞々しい音の粒。2007年、グランジやシューゲイザーをスタート地点にしてJunが鳴らし始めたピュアな音は、メンバーの手を介して濁りと深みを増し、LIFESHOPという唯一無二の音楽へと姿を変えた。10/10にリリースされるミニアルバム『People always praying』は、そんな彼らと我々にとっての福音が詰め込まれている。
●2007年の結成から今まではどういう経緯だったんですか?
Jun:僕はいくつかバンドをやっていたんですけど、どのバンドもなかなか続かなかったんですよ。だからしっかりとしたバンドをやりたいと思い、その準備としてしばらく宅録で楽曲を作りつつ、並行してメンバーを探したんです。その後メンバーが揃い、2007年にこのバンドを始めました。とは言いつつ、このバンドでも何度かメンバーチェンジを経験して。例えばko-heiはもともと僕らのライブを観に来ていたお客さんだったんですけど、前ベースが抜けたタイミングで誘ったんです。
●なるほど。
Jun:2010年10月に自主で『Forever song for last』というミニアルバムをリリースし、その頃からstrange world's endとLosingMySilentDoorsと僕らの3バンドで“音景”というイベントを始めて、今も定期的にやっているんです。だから2010年くらいから本格的に活動できるようになったという感じです。
●結成当初からバンドや音楽のイメージは明確にあったんですか?
Jun:ありましたけど、今よりもグランジやシューゲイザー色が強かったですね。
ko-hei:昔はギターもベースもドラムも、Junくんがある程度まで作ってきたものをバンドで少しずつ修正をかけていく感じだったんですけど、今作に関してはコード進行とかイメージをJunくんが持ってきて、それをバンドでやってみるという作り方が多かった。
Jun:バンドをやっていくうちに、自分が持っていない発想から生まれた音をこのバンドで聴きたいなと思うようになったんですよ。色んな人間と出会って、メンバーとして苦楽を共にしてきた中で、自分の想像だけで終わる音より、自分が高揚するような音を与えてもらう方が次のステップに進めるんじゃないかと思えるようになったんです。当然メンバーそれぞれが培ってきた音楽観もあるわけで、例えばko-heiとかはHIP HOPとかも好きだから、そういう個々の要素を織り交ぜるようになり、それをポップフォーマットでやる…そういった感じでバンドとしての音楽が固まっていったんです。
●今回の7曲は色んなパターンがあって、例えばM-1「ヒューマナイズオポチュニティ」やM-7「君は静かに沈黙を夢見る」は歌が中心ですけど、リフからできたような曲もあれば、ビート感が中心になっている曲もある。それはLIFESHOPというバンドの変遷が形になっているんですね。
Jun:そうですね。だからバリエーションが増えました。次作でどういう展開になっていくかはまだわからないですけど、今作は2007年の結成から今までの総決算というか。ここからいい意味での展開が生まれていけばいいなと思っています。
●楽曲は基本的に情景描写や俯瞰的な視点が多いと感じるんですが、M-4「I DON’T SEE」だけは明確なメッセージが込められていて。それは歌詞にある“踊れ”というメッセージだと受け取ったんですけど、PVにもなっているこの曲はちょっと印象が違いますよね。
Jun:“踊れ”というキーワードは、“音景”というイベントを通して出てきたんです。去年、震災でシーン全体が敏感になった時期の開催があったんですけど、そこで何も考えずに音楽に身を任せているお客さんたちの姿が印象的だったんですよ。自分も踊りたかったし、そこで必要なものが見えた気がして。
●宅録で作っていたら絶対に出てこなかったキーワードですね。
Jun:極端に言えば、このアルバムはそこだけ伝わればいいくらいに思っていて。愛とか平和とかじゃなくて、“踊ればいいじゃん”っていう。僕自身、震災の前と後では音楽への身体の預け方が変わったんですよ。前はどこか“表現しなきゃいけない”という想いが強かったんです。今もそれはありますけど、心の在り方がはっきりとわかりました。
●Junさん1人の世界観からスタートしたわけですが、このメンバーでいろんな経験をして今の音楽にたどり着いたんですね。ko-heiさんとismiさんはLIFESHOPのどのようなところに魅力を感じていますか?
ismi:Junさんが持ってきたギターのフレーズや歌に対して、自分の音を乗せたときの情景がたまらないんです。僕がこのLIFESHOPというバンドから受けるイメージはやっぱり情景なんですよ。それは静止しているものではなくて、ストーリーというか、人間的なもの。混ざり合っていたり、渦巻いたりしていて。だからメンバーの音と合わせて、自分が見えている情景にバンドの音が近づいたときにいちばん喜びを感じます。情景と僕が一体化したとき。そういう瞬間に、僕はLIFESHOPというバンドのメンバーでよかったと思います。だからその情景をお客さんとも一体化させたいんです。
●ko-heiさんは?
ko-hei:僕はもともとこのバンドのファンとしてライブを観に行っていて、その感覚は今も変わらないんです。僕がLIFESHOPのいちばんのファンだし、更に僕がそんなバンドの一員であることがシンプルに嬉しい。好きなバンドの曲をいちばん最初に聴けるし、弾けるし、しかも自分の好きなようにアレンジできる。聴いたことのない音楽が出てくるので楽しいんですよ。それに尽きますね。
interview:Takeshi.Yamanaka