2015年の活動再開以来、2016年のメンバーチェンジを経て、アルバム『Riot Bulb』のリリースやヨーロッパツアーの敢行など、ワールドワイドに活動してきたガールズロックバンド・LAZYgunsBRISKY。そんな彼女たちが完成させた新作『Riot Bulb』は、シンセサウンドとHIP HOP要素を大胆に採り入れ、バンドとしての成長と進化を存分に感じることができる意欲作。2006年の結成以来、様々な経験を積んできたバンドが手にしたのは、自分たちなりの強さ。女性だからこそ鳴らすことができる、この4人だからこそ作り得たLAZYgunsBRISKYのロックを体感せよ。
「私たちが楽しくないと誰も楽しくないし、誰も幸せにできないから。だから“楽しむ”ことをいちばん真面目に考えてます」
●2012年に解散し、そして2015年5月に活動を再開されましたが、2016年にメンバーチェンジがあったじゃないですか。元FLIPのYukoさんがギタリストとして加入されましたが、あれはどういう経緯だったんですか?
Azu:FLiPは同い年で、デビューのタイミングも同じだったんですけど、FLiPが活動休止をして、その後に私たちは前任のギターが抜けることになって。「どうしよう?」ということになったんですけど、すぐにYukoのことが浮かんだんです。
Lucy:ギターはYukoしかいないって。FLiPとは対バンは数えるほどしかやっていないんですけど、同い年で同期だし、オレスカバンドも含めた3バンドのメンバーで年に1回くらい飲み会をやっていて、もともと仲が良くて。
Azu:正式メンバーになってほしかったんですけど、いきなりだと重いかなと思ったのでサポートでお願いして。
Lucy:FLiPの活動休止からあまり時間が経ってなかったので、Yukoもどうしたいかっていうのがあるだろうし、様子見というか。それでサポートしてもらっていたんですけど「いけるんじゃね?」みたいな感じになってきて。音を出した瞬間から…寄せてくれたのかもしれないですけど…LAZYgunsBRISKYっぽさがすごく出ていて。ロックが好きなんだっていうのがすぐわかって、「Yukoしかいない」ってどんどん確信に変わっていって。それで「正式メンバーになってもらえますか」って告白したんです。
●なるほど。それで2016年10月に現体制になり、2017年3月にはアルバム『NO BUTS』をリリース、そして今回2年ぶりの新作として『Riot Bulb』をリリースされるわけですが、2017年のアルバム『NO BUTS』やここ最近配信リリースされている楽曲と比べてみて、今作『Riot Bulb』はかなり変わったという印象があって。
2人:はい。
●今までのLAZYgunsBRISKYの延長線上にある作品だとは思うんですが、シンセを全面的に採り入れていて、音像の印象がかなり今までと違っていて。
Lucy:今作を作るにあたって、最初からシンセのサウンドは入れたいと思っていて。2018年10月にデジタルリリースしたシングル『Hello, again!』の段階からそういう構想はあったんです。
●そうだったんですね。
Lucy:曲の候補もあって、Azuが何年も作り貯めてきたデモとか、YukoがFLiP活動休止後に作り続けていた自分用のデモ音源があって。それをみんなで聴いてイメージしていく中で、Yukoの曲が結構シンセや打ち込みが入っているものが多かったんです。そのときの印象も大きかったと思うんですけど、でも「新しいことをしよう!」みたいにあるときからサウンドを変えようと思ったわけでもなくて。
●自分たちとしては自然に変わっていった?
Lucy:すごく自然でしたね。
Azu:私とYukoで“YA.”というユニットをやっていてSEやインスト曲を作ったりしているんですけど、そこには結構シンセが入っていて。実は『Hello, again!』の楽曲も、私の中ではどっぷりシンセが入っていたデモ音源から、バンドに落とし込む過程でシンセを抜いたという経緯があったんです。
●なるほど。
Azu:当時のLAZYgunsBRISKYはシンセをバッキバキに入れたりしていなかったので、シンセサウンドを省いたんですけど、そういう流れがあったので、シンセを全面的に入れていくっていうことにはあまり抵抗がなかったんです。むしろそっちを追求したいという気持ちが大きくなってきた。
●うんうん。
Lucy:アルバム『NO BUTS』はもともとのLAZYgunsBRISKYらしさをブラッシュアップして研ぎ澄ませて、“オルタナティブ”というところに重きを置いたんです。それから2年経って…これは今作が完成してから思ったことなんですけど…今のタイミングでシンセを入れるっていうのがすごくいいなと思えました。私たちは同じ道の上を今も歩いているんですけど、わかりやすく進化した感じが表現できたなって。
●うん。前に進んでいるということがはっきりとわかる作品だと思います。
Azu:それにプレイをすることを考えても、特にギターとか、土台をシンセに任せることができるので、アプローチ的にもいろんな引き出しからアイディアを出すことができたなって。それがおもしろかったんです。
Lucy:そもそものYukoらしいカッティングとか、すごくメロディアスなリフとか、彼女のいいところもすごく出たと思うし、そのぶん歪は少ないですけど。
●確かに歪は少ないですね。
Lucy:よく言われます(笑)。自分たち的には変わったことをそこまで重く捉えていなくて、さっきも言ったように自然な流れなんですけど、聴いてくれた人はやっぱりびっくりされますね。
Azu:『NO BUTS』と比べるとびっくりするかもしれないけど、私たちの中ではその間にリリースしたシングル『Hello, again!』が緩衝材になっているんじゃないかな。
Lucy:ああ〜、そうかもね。
●今作『Riot Bulb』は6曲収録されていますが、AzuさんとYukoさんのデモ音源はかなりの数があったわけですよね? そこからどういう基準で収録曲を選んでいったんですか?
Azu:結局自分たちで決められなくなっちゃって(笑)。
●あれれ。
Azu:バラエティに富みすぎていたんです。デモ音源が50曲分くらいになっちゃって収集がつかなくなって、テーマを決めてある程度絞り、それからプロデューサーの猫田ヒデヲさんと話し合って方向性を定め、そこからまた更に1曲1曲アレンジを詰めていった感じですね。例えば私が作ってきたM-4「Colors of Change」なんかは、もともとJ-POPのバラードみたいな感じだったんです。
●え。
Lucy:もともと泣かせるBメロとか入ってたんですけど、削ぎ落としていったんだよね。
Azu:うん。残ったものはAメロとサビとコーラス。
●「Colors of Change」は情景的で雰囲気のある曲ですが、もともとはそうだったんですね。
Azu:だからどの曲も、アレンジ作業でかなり練ったんです。デモの段階であったいいところを活かして、また新しいセンスを加える、みたいな。
●リード曲のM-1「Riot」の歌詞は、バンドの想いが綴られていると感じたんです。サウンドの感触は変わったとはいえ、ロックンロールの血が根底に流れていることを感じる楽曲というか。
Lucy:もともと今作のすべての曲のテーマとして「女性らしい強さ」というものがあったんです。その中で「Riot」を作っているときに、“ランウェイ”という単語が出てきて、絶対に歌詞に入れようと思っていて。
●なるほど。
Lucy:“ハイヒール”という単語もそうなんですが、女の子が使う単語を散りばめていって…イメージとしては、今までにない表現をした感じなんです。
●それは“今の自分”を表現したということ?
Lucy:うん、今の自分ですね。高校生のときからバンドを始めていろんな表現をしてきて、今の自分が思う“女の強さ”を“ランウェイ”に例えて。まっすぐに歩いて、もがいて、抗って、戦ってきて…女性はみんな社会の中で戦っていると思うんですけど…そういう女性たちに対して「終わりは必ず来るけど、まだ終わらないで。もう一歩先に」という気持ちを“Riot”と呼んで。
●この曲で綴っている想いは、LAZYgunsBRISKYの歴史や未来を投影しているんですか?
Lucy:そうですね。がむしゃらにやってきたので…女4人でバンドをやっていて、これからみんな結婚も考えるだろうし、子供だってほしいだろうし、これから女性としての悩みがどんどん増えていくと思うんですね。
●はい。
Lucy:女性的な悩みをみんな抱えながら生きているから、それでも強く4人でやっていきたいっていう気持ちがありますね。やっぱり命には限りがあるし、女性としての鮮度もあるし。すべての女性がそうだと思いますけど、みんな結婚したいと思っているし、みんな出世したいと思ってるだろうし、私たちも強いバンドとしてやっているけど悩みはあって、苦しいこともいっぱいあって、未だにもがいてるんです。だから全然違う世界にいて、好きなことをやっているように見えるかもしれないけど、きっと共通している気持ちはあるんだろうし、強く生きていきたいなって思いますよね。
●「女性らしい強さ」が今作のテーマだとおっしゃいましたが、なぜそういうテーマになったんでしょうか?
Lucy:今作の中ではいちばん最初にM-6「The Rule」が完成したんですけど、これが軸になっているんですよ。6曲の中でこの曲がいちばんシンセが多く入っているじゃないですか。
●そうですね。
Lucy:歌詞もそうで、「The Rule」に関しては女性的というより、路地裏で生きるか死ぬかの人生を送っている男の子が主人公のイメージで作り始めたんです。それで歌詞を書くために単語を集めて並べてみたときに、自分ぽくない言葉がいくつかあったんですよね。そこではみ出した言葉たちは全部除外して、残った言葉たちの共通点がすごく女性っぽかったんですよね。
●自分に当てはまらないものを除外した結果、「女性らしい強さ」というテーマが浮き彫りになった。
Lucy:「The Rule」を書いたことによって見えたのが女性というか「私らしい強さ」で。自分なりの強さって考えてみると…私ってウワーッ! ってパッションというか、男勝りで女をあまり出さないライブをやってきたけれども…それはLAZYgunsBRISKYというバンドのイメージでもあるんでしょうけど…いまそれはやり切れないなと。いまの私がそれをやろうとしたら演じちゃうなと。
●ああ〜。なるほど。
Lucy:だから自然に“女性らしい”というところに行き着いた感じがありますね。
●自分に嘘をつかないようにと考えて表現する結果だと。
Lucy:うん、そうですね。まったく嘘がない。
●バンドとしての挑戦と進化、そして現在のLAZYgunsBRISKYが詰め込まれた作品になりましたが、今後LAZYgunsBRISKYの音楽はどう変化していくんでしょうか?
Azu:これからのライブは同期を入れてやっていくつもりなんですけど、どういう音像でどういう感触になるか、私たち自身まだ体験していないんですよね。
●ということは今回のツアーが試金石になると。
Azu:今回のツアーでは、パフォーマンスは今まで通り感情的な方向性にしようと思っているんです。でも自分たちは自然な流れで今作にたどり着きましたけど、たぶんお客さんには変わったと受け取られると思うんですよね。だからそこで生まれたものを、次の段階で表現したいなと思っていて。
●ツアーで吸収したことを次の段階につなげる。
Lucy:前アルバムの『NO BUTS』は、私たちがそれまで持っていた“かっこよさ”をすごく研ぎ澄ませて、“ライブバンド”というところを強く意識して作った作品だったんです。ライブに対して向き合って、「どういうライブがいいのか?」というところを突き詰めて。
●ふむふむ。
Lucy:そこで育ってきたいまのライブがあって。そもそもライブは、考えてきたことを突き詰めて表現する場所で、そういう意味で今回のツアーはいままで以上に楽曲に寄り添えるライブになる予感がしているんです。ライブが一回り二回り大きくなるんじゃないかなと思ってます。
●ツアーが楽しみですね。
Lucy:楽しみですね。ライブを演っているときはバカみたいに楽しいんですよ(笑)。
●ハハハ(笑)。いいですね(笑)。
Azu:毎日つまんないけど、ライブの日があると“いいな”と思えるよね。
Lucy:クソみたいな毎日だけど、ライブハウスで救われるからね。私たちが楽しくなければ誰も楽しめない…まあ“楽しい”にもいろいろあるけど、どんなに暗い音楽でも“楽”という言葉は入っているし。私たちが楽しくないと誰も楽しくないし、誰も幸せにできないから。だから“楽しむ”ことをいちばん真面目に考えてます。
interview:Takeshi.Yamanaka