2015年に吉祥寺で活動をスタートさせたロックバンド・Lana。何度かのメンバーチェンジを経て2018年に現体制となり、9/16には吉祥寺Planet Kにて2マン企画ライブ “或る生活のサイクルと幸福の定義 vol.2”を開催する。音楽を諦めず、自らが生み出す音楽とメンバーのセンスを信じて活動を続けてきた彼らは、今年に入ってからまるで覚醒したかのようにライブパフォーマンスを向上させたと注目を集めている。唯一のオリジナルメンバーであるVo./G.野崎 友納が生み出す世界観と、クリエイティビティを備えた各メンバーのセンスとの化学反応が生み出すLanaの音楽に迫るインタビュー。
「一緒にやって気持ちのある1日にしたいという想いが強くて、だったらTHE GUNG BALOONとの2マンしかない」
●9/16に吉祥寺Planet Kで2マン企画イベント“或る生活のサイクルと幸福の定義 vol.2”を開催されるということですが、Lanaはもともとどういうきっかけで始まったバンドなんですか?
野崎:僕は吉祥寺を拠点にした3ピースバンドを組んでたんですけど、ベースが就職活動するからそのバンドの活動が止まることになったんです。でもバンドを続けたかったので、残ったメンバーで「前のバンドとは違う歌モノをやろうよ」って始めたのがLanaなんです。
●なぜ続けたかったんですか?
野崎:辞めるという選択肢がなかったから。バンドを始めたときから、辞めるなら自分の意志で辞めようと思っていて、メンバーが抜けたからといって僕まで辞める必要はないなと。まだ書きたい曲もあったし、曲のストックもあったし。それで弾き語りをしながら、友達のツテでメンバーを探し始めたんです。
●それが2015年10月ということですが、現在の体制になるまで3年近くかかっていますよね。
野崎:はい。メンバーチェンジとか色々あってなかなか固まらなかったんですけど、現在の体制になって「サポートメンバーがいない」という状況がぐっと来ましたね。やっとというか、感慨深いです。
●曲を作っているのは野崎さんなんですよね? どういう感じでバンドに落とし込んでいくんですか?
野崎:もともとは僕がある程度作り込んだデモをメンバーに送って、それを元にアレンジを詰めるという感じだったんです。でもこのメンバーになって1年半くらい経ち、最近は弾き語りにちょっとエレキのフレーズが入ってるものをスタジオで僕が演奏して、そこにみんなが加わってくるという作り方も出来るようになってきたんです。
●野崎さんから「この曲にはこういうイメージで」みたいな話はするんですか?
野崎:イメージがあるときはしますね。先日スタジオに新曲を持っていったんですけど、そのときは「朝焼けの空気が青い感じのイメージでコードとか歌詞を作ったんだよね」と言ったらドラムとギターから「アメリカの農場の匂いしません?」って言われて(笑)。
●アメリカの農場の匂いを嗅いだこと無いからわかんないですけど…(苦笑)。
ハヤト:広大な畑におじさんがいる感じ(笑)。
森中:そうそう。
●かなり抽象的なイメージですね。
野崎:僕からイメージは伝えるものの、メンバーの受け取った印象が違ってもそれはそれでいいかなと思っていて。
●曲を作るきっかけはあるんですか?
野崎:決まったきっかけは無いですけど、例えば先月有名なミュージシャンの方が亡くなって、僕はその人の音楽を全く通っていないので「そうなんだ」くらいにしか思わなかったんですけど、僕の友達はそのバンドがめちゃくちゃ好きだったから、すごく悲しんでいて。僕にとってはそのミュージシャンが亡くなったことよりも、友達が悲しんでることのほうが大事だなと。そう思ったことがきっかけで曲を書いたりする場合もあるんです。
●Lanaの楽曲を聴いて、明確なモチーフというか背景になっている出来事があるのかな? と思ったんですよね。例えば「ウーロンハイ」とか「スウェード」って、映像や物語的なものを想起させますよね。
野崎:「ウーロンハイ」に関しては具体的なモチーフがあるんです。或る感覚というバンドが大好きなんですけど、彼らの「エンドビールで乾杯」という曲があってめちゃくちゃかっこいいんです。でも僕、ビール好きじゃないんですよ。だから「僕だったらビールじゃないな」と思ったのがきっかけで。
●音楽的に刺激を受けたというか、アンサーソングというか。
野崎:そうですね。それと「スウェード」は、実はああいうテンポの曲、聴くジャンルとして苦手なんですよ。
●え、ミドルテンポは苦手なんですか。
野崎:はい。僕はもともとメロコアとか聴いていたタイプの人間で。そもそも15〜16歳の頃、Hi-STANDARDやOVER ARM THROW、ELLEGARDENとかからバンドに興味を持って、そこからLUNKHEADとかNUMBER GIRLを聴いて日本語のギターロックに寄ってきた感じだったんです。
●そうだったんですね。
野崎:現体制になって、ハヤトが「こういうのやりたい」とリズムパターンを持ってきて作ったのが「スウェード」なんです。
●ハヤトさんのアイディアがきっかけになったんですね。
野崎:それで歌詞をどうしようかなと考えたんですけど、歌詞に出てくる“赤いスウェードのスニーカー”というのは当時の僕がめちゃくちゃ気に入ってたスニーカーなんです。
ハヤト:僕は具体的な言葉で「こういうことがやりたい」と伝えるのをすごく意識していて。「スウェード」だったら「夜中に寝れないからちょっとタバコ吸う時に聴きたい曲を作りたい」とか。「ペトリコール」は「雨の曲を作りたい」と言ってリズムパターンを持ってきて。
野崎:“ペトリコール”という言葉は“雨が降ったときに地面から上がってくる匂い”という意味なんです。
●あ、そうなんですね。なるほど。
ハヤト:そういう感じで、僕がアイディアを持ってくるときは、イメージをざっくりと伝えて、ビートやリズムパターンを持ってくる場合が多いですね。
●森中さんはもともと名古屋でバンド活動をしていて、その後上京してLanaに加入されたらしいですが、名古屋に居た当時は曲を作っていたんですか?
森中:僕はもともとギターヴォーカルで、曲も作ってました。今もたまに自分で作ってみたりするんですけど、“Lana向きじゃない”と思ってそっと自分のタンスにしまっておく感じですね。やっぱりみんなで“いい音楽”と思ってるものを発信していくというのがこのバンドのコンセプトなので、今のところ僕のエゴだけで作った曲は合ってないかなと。
●山岸さんは曲づくりの経験は?
山岸:Lanaに入る前は自分でバンドを作ろうといたこともあったので、曲も作ろうとはしてました。一応ギターもやるしドラムもちょっと叩けるので。でも僕は3人に比べたらいちばん音楽的知識が薄いので、まだまだ勉強中ですね。
●要するにLanaのオリジナルメンバーは野崎さんだけですが、メンバー全員にクリエイティビティがありつつ、野崎さんの歌と曲に惹かれていると。
ハヤト:そうですね。「こういう曲が作りたいです」って色々セッションで試してみて、曲が固まっていく中で自分が想像してなかったような歌詞が返ってくることがあるんですよ。そういうのがいちばんおもしろいですね。
●バンドマジックですね。
森中:それに野崎は音楽オタクというか、4人の中でいちばん音楽に対して真摯に向き合っているんです。だから曲だけで闘える。僕が好きな音楽はGRAPEVINEやUNISON SQUARE GARDENなんですけど、曲を演るだけでライブが成立するバンドにすごく惹かれるんです。だから、Lanaなら自分がやりたいバンドになれるかなと。売れるためにリズム変えたり、今風のおもしろい歌詞を書いたり、お笑いの要素入れてみたりしなくても大丈夫かなって。
●このバンドに希望を見たわけですね。山岸さんはどうですか?
山岸:そもそも僕は物を作るのが好きなんですよね。もともと僕は料理人だったんですけど。
●え、まじで。珍しいですね。
山岸:幼少期からものづくりが好きで、だから自分でオリジナルの曲を作って認めてもらいたいという承認欲求はあったんです。でも、それこそ友納さん(野崎)とハヤトが話したアイディアを投げられて、自分なりにベースラインを作ったりすることにやりがいを感じるんです。
野崎:山岸以外は音楽的な知識が多いですけど、山岸だけはちょっとタイプが違うんです。言葉がまっすぐなんですよね。メンバーで唯一、普通の人の感覚を持っているというか。
●それと9/16の2マン企画のイベントタイトルもそうですが、野崎さんは“生活”という言葉をよく使ってるじゃないですか。その生活の中で生じた喪失感や刹那的な気持ちをテーマに歌詞を書いているという印象があるんですが。
野崎:そうですね。そもそも100%ポジティブな言葉をぶつけられると「なんなの?」と思うタイプなんですよ。「がんばれば夢は叶う」の「がんばれ」のところをなんでちゃんと描写しないのかなって。発信側の怠惰だと思っていて。
●ほう、発信側の怠惰。
野崎:もちろん言いたいことを歌とメロディに全部入れるのは難しいし、そこまでするんだったら音楽じゃない方法の方が伝わるとも思うし。だから若干ネガティブな方向から発することの方が多いんです。それに世の中は、体調に影響が出るくらい精神が疲れてしまっている人だけじゃないというか。生活の中で少し落ち込むことって誰でもあることだと思うんです。僕はそういう人に焦点を当てたい。僕にとっての音楽はそういうものなんです。
●なるほど。それと9/16に開催する2マン企画“或る生活のサイクルと幸福の定義 vol.2”に出演するTHE GUNG BALOONですが、彼らの企画イベントにも呼んでもらっていたりして、繋がりが深いんですか?
野崎:THE GUNG BALOONのBa.圭二は、めちゃくちゃ人当たりがいい奴なんですよ。あまりにも人当たりが良すぎて逆に嘘くさいというか。
●眩しすぎて、恥ずかしくて直視できないような人っていますよね(笑)。
野崎:「ビジネス人当たりがいい奴」っているじゃないですか。でも圭二は一緒に過ごしていくにつれて「こいつはマジでいい奴なんだな」と。それで仲良くなったんですけど、Lanaが活動休止期間を経て、ハヤトが加入して活動を再開したときの1発目のライブはTHE GUNG BALOONの企画だったんです。
●苦しい時に支えてくれた仲間だと。
野崎:まさにそうですね。
●どういうきっかけで今回のツーマンは決めたんですか?
野崎:去年末に憧れのバンド…LUNKHEADとライブさせていただいて、緊張でずっと吐きそうだったんです。それを乗り越えて「次に進もう」と思った時に、普通に3〜4バンド集めて企画やるのはなにか違うなと。
●意味のあるイベントにしたかった。
野崎:一緒にやって気持ちのある1日にしたいという想いが強くて、だったらTHE GUNG BALOONとの2マンしかないなって。僕らのお客さんにもTHE GUNG BALOONを観てもらいたいと思うくらい大好きなバンドだし、大切な仲間だし。この2マンを経たら、自分たちの感覚の中では何かが明確になるんじゃないかなって。
●Lanaのライブは未だ観たことがないんですが、メロコアなどのルーツからすると、音源から受ける歌モノという印象といい意味で違って、熱くて激しいんでしょうか?
野崎:そうですね。ふざけているというか、ステージで作ってるとかではなく、ただやってて楽しいからはじけている感じですね。森中がギターソロを弾いているときとか邪魔したりしてます(笑)。
●え? ギターソロの邪魔?
野崎:ステージの上では何でもありというか、心の赴くままに弾けているというか。とにかく楽しいんです。
●ステージの上で素を出すタイプ?
野崎:ですかね。僕、ライブのときはゴリゴリに浮かれてます。
●昔からそういうステージングだったんでしょうか?
野崎:いや、最近ですね。今年の1/8くらい。
●めちゃくちゃ最近だし、明確な日付まで覚えてる!
野崎:今年1発目のライブで解禁したというか、今までとは違う発想でライブをやってみたらハマったというか。
●気持ちを解放したんでしょうか?
野崎:そんな感じですね。五体満足でステージに立って歌い始める状況に至った…ということだけで、僕の中では勝ちというか成立してるんです。曲書いて歌ってるだけでもう優勝、みたいな。だからライブは、その喜びが溢れている。
●ということは、最近のLanaのライブはやばいと。さきほど「100%ポジティブな言葉は理解できない」という話をされていましたけど、ステージの上の野崎さんは100%ポジティブだと。
ハヤト:僕もそうだと思います(笑)。やっぱりガチガチにやってた頃はそのガチガチがこっちにも伝わってくるから全体的に身体が動かなかったりとか。友納さんがそれが取れて吹っ切れたので、逆に僕らはいい意味で冷静になれました。
●9/16の2マンが楽しみですね。2マン以降の目標みたいなものはあるんですか?
野崎:明確な目標は持たないようにしてるんです。最初に言った通り「もうやらない!」って自分が思うまでやり続けるっていう前提があるので。ただ、もっとたくさんの人に聴いて欲しい。僕らのことを知らない人でも、僕らのことを観て心が軽くなる瞬間がある人は絶対いると思うんです。そういう人たちに知ってもらいたいですね。
interview:Takeshi.Yamanaka
assistant:Yuina.Hiramoto