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KING RECORDS Presents “Dream Vocal Audition”

統括プロデューサー 浅沼 正人氏に訊く

 日本を代表する老舗レコードメーカー・キングレコード。数々のアーティストを輩出してきた同社が80周年を迎えた2012年、新たな女性ボーカリストを発掘するためのオーディション“Dream Vocal Audition”を開催する。

10年後、20年後の音楽シーンに残る新たな才能を発掘するという同オーディションの統括プロデューサー・浅沼 正人氏に話を訊いた。

Interview

「びっくりしたいんですよ。その時代に流行っているものは新しい時代を作れないと思っているんです。その時代にないものが新しいムーブメントを作る」

●浅沼さんは1/1から募集が始まった"Dream Vocal Audition"の統括プロデューサーということですが、普段はどういうお仕事をされているんですか?

浅沼:キングレコード株式会社には演歌セクションとかアニメセクションとかがある中で、第二クリエイティブというセクションはJ-POPを中心としたセクションなんですよ。そこの制作/宣伝/販促業務をやっている本部長という立場です。所属アーティストとしては、AKB48や植村花菜、前田敦子、板野友美、バンド物で言えばlynch.、摩天楼オペラ、THE KIDDIE、カミナリグモなどが所属しています。

●浅沼さんの立場から見て、今現在のJ-POPシーンの変遷をどういう風に見られていますか?

浅沼:今現在、J-POPというシーンは非常に厳しい状況ですね。パッケージは売れないですし、その分を一時期カバーしていた配信も下がってきているし。よく言われていますけど、違法ダウンロードがその何十倍もあったりとか。

●はい。

浅沼:違法ダウンロードについていえば法律も徐々に整備されてきていますけど、無料で音楽をダウンロードできるという世の中の風潮になってくれば、法律の整備だけでは追いつかない部分もあると思うんです。

●そうでしょうね。

浅沼:一方で、キングレコードがやっているアイドルとかアニメで、パッケージに音以外の付加価値を求められるという、いわゆるコア・マーケットのニーズに応えることがメインになってきていて。そういう意味では、ロックとかポップスはやや元気がない状況だと感じています。

●なるほど。

浅沼:しかし、レコード会社に入ってきたのは"音楽を作りたい"という人間なので、やっぱりロックやポップスにがんばってほしいという気持ちが正直なところあります。2011年というのはK-POPやアイドルがメインの年だったと思うんですが、うちの娘とか見ているとアニメ『けいおん!』の影響とかで"自分たちでバンドやろう"っていう風潮も出てきていると思うんですよ。だから音楽業界に生きている者としてはそういうジャンルが活発になって欲しいなと思ったこともあって、今回の "Dream Vocal Audition"を企画したという部分もあるんです。

●なるほど。そういった世の中の流れの中で、キングレコードとしてもポップスを強化していきたいと。

浅沼:そうですね。もともとキングレコードという会社はコア・マーケットに特化したものが強いメーカーではあったんですが、そういうところは支持されるようになったので、逆に今度は音楽業界の先頭にたって盛り上げていきたいなと。

●CDが売れなくなってきているというのはここ数年よく言われていますが、その辺はどうお考えですか?

浅沼:CDというパッケージがなくなることは絶対にないとは思うんですけど、レコード会社の在り方というものを変えていかなければいけないと思うんですよ。キングレコードはちょっと遅れているんですけど、各レコード会社はマネジメントをやり始めているじゃないですか。

●そうですね。最近は各メーカーそういう動きが多いと感じます。

浅沼:アメリカとかは特にそうなんですけど、パッケージが落ちている分、コンサートなどはすごく動員が増えていたりして。音楽もトータルとしてのビジネスになっていくんじゃないかなと考えているんです。レコード会社の人間がこういう言い方をしたら良くないのかもしれませんが、最終的にはCDがプロモーションツールになって、それが広まることによってコンサートの動員やグッズが売れる。マーチャンダイズまで含めたトータルのビジネス…よく360°のビジネスと言いますけど…にある程度変わっていくんじゃないかなと思うんです。

●はい。

浅沼:その中で音楽を作り出すことは必要ですし、絶対になくならないとは思うんですが、今は"レコード会社は音楽を作っていればいい"というところからの分岐点かなと。

●音楽シーンを見ているとそういう動きは肌で感じます。

浅沼:キングレコードも去年辺りからマネジメントにはもう1度力を入れようということで、所属しているlynch.と摩天楼オペラはマネジメントも含めてキンググループでやり始めたんです。

●そうなんですね。

浅沼:今回の"Dream Vocal Audition"も、基本的にはキンググループでマネジメントまでやることを前提で考えています。もちろんそれだけに限った話ではないですが。

●"Dream Vocal Audition"はどういう経緯で始まったんでしょうか?

浅沼:背景としては先程話したようなことがあるんですが、キングレコードは今年80周年を迎えているんですけど、その80周年の企画という側面もあるんです。それと親会社の講談社と何かを一緒にやったことがないので、講談社の雑誌である『ViVi』『with』『ヤングマガジン』と一緒に何かをやっていきましょう、ということが最初のスタートですね。

●はい。

浅沼:それと先ほど言った"360°のビジネス"に繋がるんですが、基本的に今はだいたいのアーティストがレコード会社と2年の契約を結んで、2年の間にヒットしたら移籍ということもありますし、契約条件が釣り上がるということもあるじゃないですか。もちろん全部メーカーがやっていい面と悪い面もあるかと思うんですが、バランスが取れる範囲で360°の音楽ビジネスをやっていければということですね。

●なるほど。"Dream Vocal Audition"は女性ボーカル限定で、ソロ・ユニット・バンドなどの形態やジャンルは問わないという条件ですよね。

浅沼:そうですね。一緒にやる講談社の雑誌2つが女性誌ということもありますし、キングレコードは昔だと中山美穂とか、最近では植村花菜やAKB48だったりと、ジャンルは違いますが女性アーティストのノウハウがありますので、女性ボーカル限定という形にしたんです。

●求めているアーティスト像はありますか?

浅沼:僕は今53歳ですし、"Dream Vocal Audition"のスタッフだとしても20代後半から30代が多いんですが、要するに"アーティスト像"みたいなイメージが固まっているんですよね。

●ああ~、なるほど。

浅沼:なので「こういうもの」と言うより、それを超える人を求めています。だからバンドをバリバリとやっている人はもちろんですが、そういったバンドを観に来ている…音楽が好きなんだけど表現方法もわからないような…人だったりでも大歓迎なんです。

●完成されていなくても、想像を超える才能を見つけたいと。

浅沼:びっくりしたんですよ。ちょっと話は逸れるんですが、僕がTCR横浜銀蝿RSをやっていたとき、オーディションに36回落ちたんです。そこで何度も言われたのが「おもしろいけど今の時代に流行らないよね」ということ。それで37回目に受けたオーディションで意欲みたいなものを買ってくれて受かったんですが、その時代に流行っているものは新しいムーブメントを起こせないじゃないですか。

●確かにそうですね。

浅沼:例えば今までコア・ジャンルだったAKB48のようなアイドルが今はメインになっていて。その時代に流行っているものは新しい時代を作れないと思っているんです。

●二番煎じということですね。

浅沼:その時代にないものが新しいムーブメントを作る。僕たちレコード会社の人間は業界も長いですし、既成概念として"こういうものがヒットするんじゃないか"というものがあるんですけど、そこに当てはまらないような人が来てくれたら嬉しいですね。「こんなことやってる子がいるんだ」とか「こんな歌い方をする子がいるんだ」みたいなことを応募してきてくれることを望んでいます。

●なるほど。

浅沼:今回の"Dream Vocal Audition"は最終審査で3人選ぶことになっているんですが、音楽活動をバリバリとやっている人たちにも応募していただきたいんですが、カラオケが大好きとか、音楽が大好きな人たちも応募してほしいんです。気軽にチャレンジして欲しいです。

interview:Takeshi.Yamanaka

DVA統括プロデューサー 浅沼 正人
キングレコード株式会社 執行役員
第二クリエイティブ本部長兼制作部長

1979年、20歳のときにTCR横浜銀蝿RSのリードギタリスト・Johnnyとしてデビュー。1988年、ミュージシャン活動を終えてキングレコードに入社。ディレクターとして様々な作品の制作を手がけ、同社のレーベル・ベルウッドレコードのプロデューサー、J-POPセクションでの宣伝部部長を経て、執行役員に就任。植村花菜やAKB48のエグゼクティブ・スーパーバイザー。

 KING RECORDS Presents “Dream Vocal Audition”

【応募資格】
1. 満13歳~23歳までの女性(※2012年1月1日現在の年齢)
2. ソロ・ユニット・バンドなど形態・ジャンル問わず。
(※ボーカルが女性であれば、メンバー内に男性がいても可)
3. オリジナル楽曲がない人でもエントリー可能!
4. 特定のレコード会社・音楽出版社・プロダクションに専属契約がない方に限ります。
※自薦・他薦など一切問いません。

【受賞】
受賞者3組
・DREAM VOCALIST Loved by ViVi
・DREAM VOCALIST Loved by with
・DREAM VOCALIST Loved by ヤングマガジン

※CDデビュー&各誌誌面デビュー
(副賞:賞金100万円&海外旅行プレゼント)

【スケジュール】
■1次審査:書類・デモ音源審査

■2次審査:実技審査ほか
北海道地区
関東地区
関西地区
九州地区
東海地区

■3次審査:WEB審査
2次審査時のLIVE映像と画像をアップ。
公式サイト閲覧者が決勝に進めるアーティストを審査!
期間:4/2(月)投票スタート予定!
(最終審査発表4月下旬予定)

■最終審査:ライブ審査
5/26(土)赤坂BLITZ

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